香具師の種類

 
 香具師には以下の3種類あります。

1)口上を述べて売る者
2)口上を述べず、商品をただ並べて売る者
3)そのほか

 以下、その詳細です。

1)口上を述べて売る者
 「啖呵売(たんかばい)」と総称されるもので、広い場所を使うのが「大占(おーじめ)」、台を使うのが「ころび」「さんずん(三寸)」。

【「おーじめ」に属するもの】
ミンサイ(催眠術、気合術)
リツシ(法律関係のリーフレット)
トザンウチ(薬草書)
ガマトロ(ガマの油)、ムシマ(マムシ薬)
「この薬はガマを蒸し焼きにしたとき、釜の底にわずかに出来るもので、それを長年ためて増やしたものを、私が病気で困っている人にお分けしようと思って、持って参ったもの。ここにもある、かしこにもあるというものではございません」と言って練り薬や、アルコールに色素を混ぜたものを高値で売りつける
カエンシ(艶歌師=唄本売り)
モミ(賭博)
 1寸四方の紙に1等から6等まで書いた籤

【「ころび」「さんずん」に属するもの】
タタキ(バナナの叩き売り)。バサバイとも
ボンシャ(石鹸)
 売れ残りの石鹸をわざと焦がし、「火災にあった石鹸工場の始末品だよ。本来なら180銭するところ、焼けたのと今後のご愛用を願うため、30銭で特に安売りだ」
スリク(インク消し)
ルフテ(古着)
クロトリ(ほくろ取り)
ヅマシ(手品の種)
モリコウ(傘)
モノカナ(金物)
コツシ(歯抜き薬)
 このほか、連珠、将棋、メリヤス、万年筆、茶碗など何でも販売


2)口上を述べず、商品をただ並べて売る者。コミセ(小店)、ナシオト(無音)と総称される
アカホン(絵本)
ヨコボク(歯ブラシ)
スエヒロ(団扇、扇子)
ガキ(絵葉書)
ハボク(植木)
スイコリー(氷水)
スクリン(アイスクリーム)
カンスイ(清涼飲料水、イロスイとも)
ロップク(袋物)
コハン(印鑑)
ヤホン(古雑誌、古本)
ネキ(飴)
チカ(風船)
モチヤ(玩具)
ワユビ(指輪)
ジンレキ(布きれ)
ヒツジノロップク(封筒)
スコー(香水)


3)そのほか
たかもの(高物)
 軽業、見世物などの興行物。仮設小屋を組む規模の大きいもので、中規模のものは「ひっぱりもの」、小規模のものは「ずれもの」
ろくま(易者、占い師)
「観相料は10銭です。この煩雑なる世の中で、自己を知るということは最も大切なことです」
ヤサゴミ(行商)=朝鮮人、支那人を装って小間物を売る
チバシ、ゴミシ、ノレンシ(暖簾師)=詐欺師の一種。
・傷んだタマゴをタダ同然で仕入れ、上部に上等なタマゴを詰めて、高値で売却
・小間物屋で仲間が次々に同じ商品を買い、店主がこの商品の大量仕入れを考えた頃、メーカーの者だと言って営業をかけ、契約金を奪う
(以上、『隠語構成の様式並其語集』より)