株で440万円飛ばした話


 僕が「サイバード」株を買い始めたのは2005年末のことです。この年の夏、日経平均は1万2000円台から1万6000円台に回復していて、雑誌には「バブル復活か」という記事であふれていました。

 そこで、IT分野に詳しかった僕は、サイバードに焦点を当てることにしました。当時は「コンテンツの時代」などと呼ばれており、『細木数子六星占術』や『名探偵コナン』の公式サイトなどコンテンツ開発に熱心だったこの会社に大きな将来性を感じたのです。

 また、日本テレビや朝日放送などから第三者割り当て増資を実施したり、リクルートと業務提携したり、有名大企業からのバックアップがあることも好感触でした。

 当時35歳で、ローンを抱えておらず、家を買うつもりもなかったので、銀行口座にはかなりの額の貯金がありました。

 そこで、その大部分をサイバードをはじめとするIT企業にぶち込むことにしたのです。
(それまでトヨタなど手堅い株を持っていたこともありますが、たいした値動きもせず、IT企業の株価高騰に強い関心を覚えたからです)

 僕はもともと株を買っても株価にはあんまり興味はなく、ずっと放置して、1割でも儲かればラッキーという考えでした。ふだんは株の売買などせず、夏休みとか冬休みとかに思い出したように一気に売買するやり方でした。

 このときも、12月になってあわてて「バブル」に乗り遅れないよう、売買することにしたのです。

 最初に買ったのは2005年12月28日で、7株を単価24万8000円で買いました(総額174万円)。ここで株価が上がり、1日で14万円も儲かりました。調子に乗って、その場で(2005年12月29日)すぐに5株を単価27万円で購入(135万)したのです。

 年が明けて、株価もどしどし上がっており、そろそろ売ろうかと思っていたところ、2006年1月16日、ホリエモン逮捕によるライブドアショックが起きたのです。

 ここで、損切りして(損を覚悟で)すぐに全株を売り払うべきでした。しかし、何を血迷ったのか、株価が下がったサイバード株をさらに買い増してしまったのです。

2006年1月20日、10株(単価26万3000円、263万円)購入。必ず株価は反発すると踏んでいたからです。

 こうして、僕は22株、時価にして572万、1株あたりちょうど26万円で買ったことになりました。

 その後、株価はひたすら下がりまくり、サイバード株は巨額の含み損を抱えていました。しかし、もともと株を放置するタイプだったので、塩漬けのまま置いておきました。

 事態が変わったのは、赤字決算が続くサイバードが、2007年12月、MBO(マネジメント・バイ・アウト=経営陣による株式買収)を実施したことです。1株あたり6万円で強制的に株を取り上げられてしまったのです。

 こうして、僕は1株あたり20万、22株で合計440万円の損失が確定したのです。

 当時、ホリエモンの影響で「ホワイトナイト」「クラウンジュエル」などさまざまな投資用語が街中にあふれていました。まさか自分がそんな空疎な言葉の犠牲になるとは思ってもいませんでした。

 いま思えば、どうしてサイバードをそれほど評価していたのかわかりません。ITに詳しいと思いつつ、名前が格好いいからという理由で買っていただけでした。

 あと、社長の堀主知ロバートが日本テレビアナウンサーの永井美奈子と結婚しており、また、世界経済フォーラム(ダボス会議)の若きリーダーの1人に選出されたりと、なんとなく「この会社は悪いことはするまい」と思っていただけでした。

 当たり前ですが、コンテンツの時代なんて来ることはなかったのです。

 余談ですが、僕はたまたまその後、サイバードの社員と出会い、この件で文句を言ったことがあります。そのとき、その社員は申し訳なさそうに「あのMBOで損した人は多いんですよ。今でもよく文句を言われます」と言ってました。

 ふざけんな、金返せ! いまでも思い出すと、僕は怒りに震えるのです。

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