徴兵之儀<別紙>之通被 仰出候間、此旨相達候事
<別紙>
兵制の儀、先般先ず石高に応じ定員被 仰出候処、兵事は護国之急務、皇威を発揮する之基礎に付、宇内古今の沿革得失を御洞察被為在、前途兵制一変、全国募兵之御目的に候処、即、今先ず左の規則を以て徴募被 仰出候間、来る未の正月より順次を以て、各道府藩県士族・卒・庶人に不拘、身体強壮にして兵卒の任に堪べき者を撰み、一万石に五人づゝ大阪出張、兵部省へ可差出候事。
但、従来之常備は勿論、各地方緩急応変の守備と可相心得事。
庚午十一月 太政官
<徴兵規則>
●第一条
兵卒年齢二十より三十を限り、身体強幹・筋骨壮健、長ケ五尺以上にして兵役に堪ゆべき者を撰挙すべき事。
但、医官の検査を受け合格せざる者兵役に服するを許さず
●第二条
一家の主人、又は一子にして老父母ある者、或いは不具の父母ある者等、選挙すべからざる事
●第三条
服役先ず四年を以て期限とす。役を終へ帰郷する者には、在役中の階級に応じ賑恤金(しんじゅつきん)を賜与すべし。期限中、私の故を以て帰郷願ふべからざる事。
但、四年の服役終る後、帰郷を欲せず再役を乞ふ者は之を許す
●第四条
在役中、役任の故を以て傷痍等にて終身不具と相成候者には、扶助金を賜ふべき事
●第五条
衣食給料等、総て省より賜与すべし。各地方より大阪迄差出候費用は、其地方官より相弁ずべし。免役の節路費は省より可差遣事
●第六条
検査に依り、服役相成難き者有之節は、再選代人差出すべき事。
但、此往復の路費は地方官より弁ず可き事
●第七条
始て営所に来る費用の外は、一切、地方官より給興すべからざる事
●第八条
地方官庁にて選挙の上、左の通、送り状を本人に附し、大阪出張兵部省へ可差出事。但、地方官員召連れ罷在候儀、其便宜に従す
記
辛未徴兵何人之内 何国何郡何村(町)産
月 日 何府(藩・県)印 |
右毎人に可附事
別紙
辛未徴兵何人
士族或農工商
士族或農工商
合何人 当府(藩・県)支配地・何万何千石、当年之徴兵、前書之通り差出申候間御検査可被成下候也 月 日 何府(藩・県)印
兵部省
|
朕惟ルニ古昔郡県ノ制全国ノ丁壮ヲ募リ軍団ヲ設ケ以テ国家ヲ保護ス固ヨリ兵農ノ分ナシ中世以降兵権武門ニ帰シ兵農始テ分レ遂ニ封建ノ治ヲ成ス戊辰ノ一新ハ実ニ千有余年来ノ一大変革ナリ此際ニ当リ海陸兵制モ亦時ニ従ヒ宜ヲ制セサルヘカラス今本邦古昔ノ制ニ基キ海外各国ノ式ヲ斟酌シ全国募兵ノ法ヲ設ケ国家保護ノ基ヲ立ント欲ス汝百官有司厚ク朕カ意ヲ体シ普ク之ヲ全国ニ告諭セヨ
明治五年壬申十一月二十八日
徴兵告諭(注:長いので句読点をつけました)
我 朝上古ノ制海内挙テ兵ナラサルハナシ、有事ノ日、天子之カ元帥トナリ丁壮兵役ニ堪ユル者ヲ募リ以テ不服ヲ征ス。役ヲ解キ家ニ帰レハ農タリ工タリ又商賣タリ、固ヨリ後世ノ双刀ヲ帯ヒ武士ト称シ抗顔坐食シ、甚シキニ至テハ人ヲ殺シ官其罪ヲ問ハサル者ノ如キニ非ス。
抑、神武天皇珍彦ヲ以テ葛城ノ国造トナセシヨリ爾後、軍団ヲ設ケ衛士防人ノ制ヲ定メ神亀天平ノ際ニ至リ六府二鎮ノ設ケ始テ備ル。保元平治以後、朝綱頽弛兵権終ニ武門ノ手ニ墜チ、国ハ封建ノ勢ヲ為シ人ハ兵農ノ別ヲ為ス。降テ後世ニ至リ、名分全ク泯没シ、其弊勝テ言フ可カラス。
然ルニ太政維新列藩版図ヲ奉還シ辛未ノ歳ニ及ヒ、遠ク郡県ノ古ニ復ス。世襲坐食ノ士ハ其禄ヲ減ジ刀剣ヲ脱スルヲ許シ四民漸ク自由ノ権ヲ得セシメントス。是レ上下ヲ平均シ人権ヲ斉一ニスル道ニシテ、則チ兵農ヲ合一ニスル基ナリ。是ニ於テ士ハ従前ノ士ニ非ス民ハ従前ノ民ニアラス均シク皇国一般ノ民ニシテ国ニ報スルノ道モ固ヨリ其別ナカルヘシ。
凡ソ天地ノ間、一事一物トシテ税アラサルハナシ以テ国用ニ允ツ。然ラハ則チ人タルモノ固ョリ心力ヲ尽シ国ニ報ヒサルヘカラス。西人之ヲ称シテ、血税ト云フ。其生血ヲ以テ国ニ報スルノ謂ナリ、且ツ国家ニ災害アレハ、人々其災害ノ一分ヲ受サルヲ得ス。是故ニ人々心力ヲ尽シ国家ノ災害ヲ防クハ則チ自己ノ災害ヲ防クノ基タルヲ知ルヘシ。
苟モ国アレハ則チ兵備アリ、兵備アレハ則チ人々其役ニ就カサルヲ得ス。是ニ由テ之ヲ観レハ、民兵ノ法タル固ヨリ天然ノ理ニシテ、偶然作意法ニ非ス。然而シテ其制ノ如キハ、古今ヲ斟酌シ時ト宜ヲ制セサルヘカラス。西洋諸国数百年来研究実践以テ兵制ヲ定ム故ヲ以テ、其法、極メテ精密ナリ。
然レトモ政体地理ノ異ナル悉ク之ヲ用フ可カラス。故ニ今其長スル所ヲ取リ、古昔ノ軍制ヲ補ヒ、海陸二軍ヲ備ヘ全国四民男児二十歳ニ至ル者ハ尽ク兵籍ニ編入シ、以テ緩急ノ用ニ備フヘシ。郷長里正厚ク此 御趣意ヲ奉シ徴兵令ニ依リ民庶ヲ説諭シ、国家保護ノ大本ヲ知ラシムヘキモノ也
明治五年壬申十一月二十八日
陸海軍の組織化と、国民皆兵への道は、完全にリンクしてるのが分かるでしょ? そして、
●明治27年(1894)、日清戦争が勃発するんですねぇ。
海軍省および海軍軍令部(霞ヶ関、明治27年)
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