五一五事件「檄文」

 五・一五事件の実行犯・三上卓らが車からまいたビラ全文公開です。


日本国民に激[檄]す!


 日本国民よ!
 刻下の祖国日本を直視せよ
 政治、外交、経済、教育、思想、軍事、何処に皇国日本の姿ありや
  政権党利に盲ひたる政党と之に結托して民衆の膏血を搾る財閥と 更に之を擁護して圧政日に長ずる官憲と 軟弱外交と堕落せる教育と 腐敗せる軍部と 悪化せる思想と塗炭に苦しむ農民労働者階級と 而して群拠する 口舌の徒と……
 日本は今や斯くの如き錯騒[綜]せる堕落の淵に死なんとしてゐる
 革新の時機!! 今にして立たずむば日本は滅亡せんのみ
 国民よ
 武器を執つて立て! 今や邦家救済の道は唯一つ「直接行動」以外に何者もない
 国民諸君よ!
 天皇の御名に於て君側の奸を屠れ!
 国民の敵たる既成政党と財閥を殺せ!
 横暴極まる官憲を膺懲せよ!
 奸賊、特権階級を抹殺せよ!
 農民よ、労働者よ、全国民よ……  
   祖国日本を守れ
 而して……
  陛下聖明の下、建国の青神[精神に]帰り国民自治の大精神に徹して人材を登用し 朗らかな維新日本を建設せよ
 民衆よ!
  この建設を念願しつゝ先づ破壊だ!
  凡ての現存する醜悪なる制度をぶち壊せ!
  威[偉]大なる建設の前には徹底的な破壊を要す
  吾等は日本の現状を哭して赤手世に魁けて諸君と共に昭和維新の炬火を点ぜんとするもの
  素より現存する左傾右傾の何れの団体にも属せぬ
  日本の興亡は吾等(国民前衛隊)決行の成否に非ずして吾等の精神を持して続起する国民諸君の実行力如何に懸る
  起て!
  起つて真の日本を建設せよ!

昭和七年五月十五日
陸海軍青年将校
農民同志


(『検察秘録 五・一五事件』より)

 ところで余談ですが、実行犯はどうやって拳銃を入手したのか? 「予審終結決定書」(『今村力三郎 訴訟記録』)によれば、《武道精神の鼓吹と東亜民族提携を目的とする》天行会が提供したそうです。具体的には

4月17日 拳銃3丁、実弾50発
4月20日 拳銃2丁、実弾25発
4月30日 拳銃1丁、実弾75発

 で、軍から入手していないのも面白いところ。この天行会の幹部の弁護も林逸郎が行っています。

制作:2003年5月15日(515事件記念日)

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