朝鮮半島の軍事境界線
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板門店「38度線」を越える
北朝鮮側からDMZへ
軍事境界線(手前が北朝鮮、奥が韓国)
2018年4月27日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は、軍事境界線を超えて初めて韓国を訪問。待ち受けた韓国の文在寅大統領と笑顔で握手を交わし、その後、朝鮮半島の「完全な非核化」を掲げた「板門店宣言」に署名しました。
同時に、現在も休戦状態にある朝鮮戦争の年内終結を目指すことも発表。つまり、朝鮮戦争は現在も継続中ということです。
中国人民義勇兵
1950年6月25日、北朝鮮軍が38度線を超えて南に侵攻し、朝鮮戦争が勃発しました。
北朝鮮軍は3日後にソウルを陥落させ、韓国政府は釜山に退避。米軍主導の国連軍参戦で、9月にソウル奪還。北朝鮮軍はそのまま中国国境付近まで退却するも、中国人民志願軍の参戦で、再びソウルが奪われます。
その後、戦線は38度線付近で膠着し、1951年7月、ソ連の仲介で休戦会談が始まります。しかし、実際に休戦協定が結ばれたのは、2年後の1953年7月27日でした。
軍事境界線のイメージ
板門店の休戦協定(アサヒグラフ1953年8月12日号)
国連軍、北朝鮮軍、中国人民志願軍の間で結ばれた協定で、38度線付近に軍事境界線を引いて双方2km(合計4km幅)、全長248kmの非武装地帯(DMZ=DeMilitarized Zone)を設けることが決まりました。しかし、韓国は休戦に反対し、署名を拒否。このため、現在も朝鮮戦争は終わっていないのです。
板門店付近のイメージ
このあたりはもともと穀倉地帯で、食料は豊富。温泉がわいていて、冬でも水が凍らない場所があるため、非常に住みやすい場所でした。その証拠に、10世紀、高句麗復興をスローガンに掲げた「後高句麗」を建国した弓裔(クンエ)は、このDMZ内に居城を築いています。
鉄条網で囲われたDMZ
DMZは鉄条網で囲われ、民間人は入れません。さらに韓国は、DMZの南側に幅10kmほどの民間人統制区域を設けています。
広大なエリアが60年以上放置されてきた結果、このあたりは野生動物の楽園となりました。ツキノワグマ、シベリアトラなど絶滅危惧種の動物に加え、クロツラヘラサギ、ツル、オオワシなどの野鳥も多く確認されています。その数は、60種類以上の絶滅危機種と2700種の野生動植物となっています。
朝鮮戦争によって、多くの家族が分断され、DMZに沿って流れる「イムジン河」はその象徴となりました。
ザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」は、こんな歌詞です。
《イムジン河 水清く とうとうと流る 水鳥自由に むらがり飛びかうよ 我が祖国 南の地 おもいははるか》
イムジン河の支流
板門店は、当時、休戦協定が調印された場所で、現在でも韓国と北朝鮮が共同警備しています。
本サイトの管理人は、1995年、北朝鮮側からこの板門店に入りました。
板門店までは、なにもない道が続く
板門店入口。フェンスの向こうがDMZ
板門店では、軍事境界線上に立つ青い建物(「中立国監督委員会」と「軍事停戦委員会」の本会議場)を挟んで、北朝鮮と韓国人の兵士が向き合っています。韓国側は常に兵士がいるわけではなく、北朝鮮側のほうが厳重な印象でした。
本会議場
遠くにはためく韓国旗
そしてなんと、青い建物内では軍事境界線を超えられるのです。
本会議場の内部
分断線を超えた!(向かって左が韓国、右が北朝鮮)
現在も南北双方で200万人の軍隊が対峙しているとされるDMZ。ここからソウルまでは70km。2016年に北朝鮮が開発した新型放射砲の最大射程は200kmとされます。つまり、ミサイルなどなくても、ソウルを火の海にするのは簡単なのです。だからこそ、両国の統一が望まれてきたのですね。
ソウルまで70km
更新:2018年4月28日
<おまけ>
韓国では近年、北朝鮮への融和政策の流れのなかで、民間人統制区域近くまで開発が進んでいます。その結果、野生動植物にも大きな被害が出ているようです。
韓国は「DMZ生態・平和ビジョン」を宣言し、この地をユネスコの「生物圏保護区」に指定されるよう、運動を続けています(2012年には却下)。しかし、朝鮮統一が進むと、DMZに埋められている大量の地雷ともども、この聖地も消えてしまうんでしょうね。
迅速な監視兵の交代