「桃太郎の子孫」に独占インタビュー!

桃太郎伝説
はたして桃太郎の正体は?

 香川県には桃太郎の墓があるらしい、ということで見てきたよ! 
 場所は高松市鬼無(きなし)町。桃太郎が鬼を倒したから“鬼が無い”と書く。鬼無駅から歩いて、目指すは桃太郎神社。そこにひっそりと桃太郎一行の墓がありました!

桃太郎伝説
左からキジ、サル、桃太郎、イヌの墓。ちなみに近くには鬼の墓もあるんですな。

 

 それにしても、いったいどうしてこの地に桃太郎がいたのか? それは昭和5年にさかのぼります。この年、地元新聞「四国民報」(現「四国新聞」)に『童話「桃太郎」の発祥地は讃岐の鬼無』という論文が掲載されました。筆者は地元の小学校教師・橋本仙太郎。

 橋本説によれば、桃太郎は孝霊天皇(第7代・紀元前342〜215年)の8番目の子・稚武彦命(わかたけひこのみこと)で、瀬戸内海の海賊(=鬼)を成敗に来たという。お供のイヌは備前(岡山)犬島の住人、サルは讃岐(香川)綾南町の陶芸家猿王、キジは鬼無の雉ケ谷の住人とされています。

 実は高松市の沖合には鬼ヶ島(女木島)があって、ここには450メートルに及ぶ人工洞窟が掘られているんですな。たしかに海賊の秘密基地といった感じ。で、昭和6年、この洞窟が橋本仙太郎によって発見され、桃太郎=香川発祥説が、にわかに大ブームとなるわけです。

桃太郎伝説
鬼ヶ島洞窟内部


 橋本仙太郎は、桃太郎の子孫は地元のK家だと断定しています。そこで、さっそくKさんの家を訪ねてみると、
「えぇ、地元では、確かに私が桃太郎の子孫だといわれていますね」
 と笑顔で答えてくれるじゃありませんか。

「K家はもともと大分県の宇佐神宮の神職をしていたんです。今から780年ほど前にこちらに召還されたんですね。現在、このあたりには50軒ほど家があって、私はその36代目当主にあたるんです」

 実際、K家には宇佐津彦命からの系図が残っている。面白いのはここからで、地元に流れる本津川でK家の娘が洗濯していると、桃太郎が川を航行してきて一目惚れ、すぐさま結婚し、その両親とともに暮らしたという。つまり桃太郎は元祖マスオさんだったわけだ!

桃太郎伝説
本津川には、洗濯場という地名が残る

 それにしても、780年前では年代が合わない気もするが……
「正直言って、私は橋本先生の本の内容をよく知りません。でも、これはロマンですから」
 う〜ん、渋い!


※桃太郎伝説は、実際のところ日本各地にあります。以下、簡単に各地の伝承を追うと……

●いちばん有名なのが岡山ですね。『日本書紀』孝霊天皇の項には、《稚武彦命は吉備臣の先祖である》とあって、伝説に信憑性を感じさせてくれます。ちなみに岡山で桃太郎とされている吉備津彦命(吉備津神社の祭神)は稚武彦命の義理の兄。
●孝霊天皇の黒田廬戸宮(くろだいほどのみや)跡がある奈良県田原本町。町を流れる初瀬川(大和川)には「むかしこの川で洪水があったとき、大きな甕(かめ)が流れてきて、中から出てきた男の子が神になった」(林羅山『本朝神社考』)という伝説があり、桃太郎との関連が感じられます。この伝説は柳田國男『桃太郎の誕生』でも「記録の徴証」として引用されています。
●桃太郎の像が残っていた敦賀。ここには稚武彦命の孫・建功狭日命が赴任しています(こう考えると、桃太郎伝説は、大和朝廷による国土制圧の歴史に重なってくるわけですね。まさに、歴史のロマン!)
●愛知県犬山市にも桃太郎神社があります。ここの祭神は桃の精霊・大神実命で、黄泉の国から逃げる伊弉諾尊(いざなぎのみこと)を助けた神様。鬼退治に結びつくと言えば言えますが……。

制作:2002年9月15日

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