丁野の養猫会社丁野は、三味線はみな猫の皮で張るもので、その皮は生皮でも1枚1円くらいするものだと聞き、養猫会社を起こし、ひとつ大儲けしようと考えた。そこで資本金を借りに丙野家へお百度を踏む。
まず猫を1万匹飼うエサはネズミが一番だ。
そのネズミを飼うには、芋のしっぽや魚の頭を拾い集めればエサ代はタダで、1年飼えば1万円儲かる、と縁の下や天井裏を這い回ってネズミの子を探し集めた
猫も1匹や2匹ならなんでもないが、1万匹もいると檻からぴょこぴょこ飛び出して行方不明になるのがたくさんある。
今日も上等の皮、いや猫が逃げて屋根の上にいるので、丁野はそれを捕まえると屋根から真っ逆さまに墜落した。
脳天をひどく打ったので気が変になり、床の上に仰臥しながら、
「猫が1万匹さ、それが子を産むネズミはネズミ算で殖えるさ。僕の身代もネズミ算。エサはタダでさ、アハハハ、あれあれ猫が逃げた、ネズミが逃げた。誰か来てくれ、オイオイオイ」