戦前の飛行機工場に行く
MC-20と二式大艇の製造現場
発動機の制作
戦前の飛行機はどのように作られるのか。国産機で名高い三菱「MC-20」と、川西航空機「二式大艇」の製造現場の写真を公開します。
設計についてはここでは触れませんが、風洞試験などさまざまなテストを経て試作機が出来上がると、強度試験が行われます。これは具体的にどのようなものか。
実際に予想される荷重の1.8倍を「計画荷重」と呼び、ジャッキで破壊されるまで負荷をかけ続けるのです。「二式大艇」や戦闘機「紫電改」を製造した川西航空機の菊原静雄は、強度試験についてこう書いています。
《ジャッキがクルクルと音を立てて弛(ゆる)められて行く。ポン、ガタン、ミシッと音を立てながら荷重は翼にかかり、撓(たわ)みが大きくなる。足は硬(こわ)ばり、掌(てのひら)には汗を握り、目は皿のように一点を凝視したまま緊張は頂点に達する。ミシッという度にギクリとして骨を刻まれる思いである》(『航空朝日』昭和18年2月号)
こうして試作機が強度検査に合格すると、次は量産です。まずはMC-20の製造現場です(『工業グラフ』昭和17年6月号)。
(1)部品の制作
設計が出来上がり、種々の試験が済むと、製作に取りかかる。まず部品を作るが、部品工場ではすべてが分業的に効率的に作業される。写真はジュラルミンの切断作業
(2)骨組みの制作
胴体工場では、部品工場から送られてきたジュラルミンの枠で骨組みが組み立てられる。骨組みは設計どおり、少しも歪みがないよう、測定機によって正確に位置が測られる。小さな鋲一つ打込むのにも正確さが要求される
(3)胴体の制作
骨組みができると、ジュラルミンの板で胴が張られる。防錆用の塗料を下塗りと上塗りして胴体が完成
(4)翼の制作
主翼や尾翼などは、冶具作業によって短時間に多量にかつ正確に組み立てられる。方向舵、昇降舵、補助翼など布張りの縫い合わせが必要なものは女子工員が担当
(5)翼の取り付け
艤装が終わった胴体や翼は総組み立て工場に運ばれ、まず主翼が、次いで尾翼、方向舵、昇降舵が取り付けられていく。写真は主翼の取り付け
(6)車輪の取り付け
翼の取り付けと同時に車輪が取り付けられる。取付後、脚引込装置の試験がおこなわれる
(7)発動機の制作
別工場で発動機が製造される。写真は発動機の検査。翼と車輪を付けた後に、運び込まれた発動機を取り付け
(8)プロペラの取り付け
別の専門工場で作られたプロペラを取り付け
(9)装備
操縦席や旅客席、各種計器、無線装置などが取り付けられる
続いて、川西航空機の「二式大艇」製造の現場写真を一挙掲載しときます(『航空朝日』昭和18年3月号「川西大艇の組み立て」より)。
1設計
2機械設計
3進行管理
4鋳物制作
5石膏の型を取る
6現図制作
7木型制作
8製材
9木部品工場
10材料切り取り
11鋼材熱処理
12軽合金の熱処理
13軽合板製造
14組立治具の製造
15アセチレンガスによる切除
16部品検査
17部品集成
18小骨の集成
19骨格の集成
20桁の集成
21主翼の組み立て
22半製品保存
23燃料槽の組み立て
24昇降舵の組み立て
25主翼後縁部の組み立て
26尾翼の組み立て
27艇本体の組み立て
28動力部の艤装
29発動機の取り付け
30総組み立て
31艤装部品の集成
32塗装
33翼内の燃料槽取り付け
34垂直安定板の取り付け
35客室内の防音工事
36完成した客室
37航空士室
38完成した客室
39清潔なトイレ
40完成
●大東亜航空圏の誕生
制作:2019年4月27日