日光東照宮・五重塔の秘密
「浮いた心柱」と「十二支」を見に行く

日光東照宮五重塔
高さ36mの五重塔


 スカイツリーの工事中、「これが地震で倒れたらどうなるんだろう」とみんな言ってましたが(笑)、その疑問を東武鉄道の担当者にぶつけたら、「絶対に倒れません」とニッコリ笑ってました。そりゃそうだね。
 で、そのスカイツリーは、日光東照宮にある五重塔の制振構造を応用して作られています。

 簡単にいうと、塔の外側は634mありますが、その中に375mの芯があると。外側と芯は分離構造なので、地震が来ても揺れ方が異なり、塔全体で揺れが相殺される仕組みです。地震が来て下が一方向に揺れると、上は芯の重さがオモリになって逆方向に動くので安定するんですね。これを「心柱制振」と呼んでいます。

スカイツリー
スカイツリーの心柱は直径8m。芯は鉄筋コンクリート製。
上層部はオイルダンパーで外側と結合しています


 五重塔の構造はもっとすごくて、塔を貫く心柱は地面に据えつけられておらず、上から吊されています(懸垂式)。中央の芯が浮いてるんですよ??
 今ひとつ意味がわからなかったんですが、スカイツリー完成を記念して、東照宮が五重塔の心柱を初公開したので見てきたよ。

日光東照宮五重塔
五重塔の心柱は直径60cm。浮いてるのがわかるでしょ?


 さて、この五重塔は慶安3年(1650)に小浜藩主(福井県)の酒井忠勝が奉納しました。その後、火災に遭い、文政元年(1818)に酒井忠進が再建しました。
 嘉永4年(1851)、4層目から吊した心柱が垂れ下がり、倒壊寸前になりましたが、幕府の棟梁が柱の下を少し切って、塔を安定させたそうです(1878年刊行の『工芸志料』による)。映画『火天の城』にも似たようなシーンがありましたが、柱をちょっと切っただけで建物が安定することって、実際にあるんですねぇ。

 この五重塔の1層目には、地元の名工・後藤正秀が手がけた十二支の彫刻があります。東西南北の4面に3種類ずつ並んでるんですが、東側(正面)には寅・卯・辰がいます。これは、偶然ですが、徳川3代将軍(家康、秀忠、家光)の干支に対応するそうですよ。

日光東照宮五重塔の十二支
東面、向かって右から寅・卯・辰。上から見て時計回りに並んでます


 この十二支の彫刻も普段は全部見られないんですが、今回、すべて見学できました。そんなわけで、十二支の彫刻をすべて公開です。


日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支
<北面>丑・子・亥

日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支
<東面>辰・卯・寅

日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支
<南面>未・午・巳

日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支 日光東照宮の五重塔の十二支
<西面>戌・酉・申

制作:2012年7月2日

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