夏休み自由研究
世界最大の日時計を作ってみた

スカイツリーで日時計
スカイツリーで日時計


 アナログ時計の針は、なぜ右回りなのか?
 この答えは「時計の誕生」にまとめたので詳しく書きませんが、要は日時計から派生しました。太陽が東から南を通って西に動けば、地面に突き刺した棒の影は左から右に動くわけです。
 ついでに、棒の影は太陽の高度によって長くなったり短くなったりしますが、南中(昼12時ごろ)だと最も短くなるはずです。

 しかし、それってホントなのか、さっそく日時計を作って実験してみることにしました。
 せっかくだから、世界最大の日時計でやってみましょう。使うのは、もちろん世界最大のタワーである東京スカイツリー(高さ634m)です。

 実験というのは、なるべく繰り返すのが基本なので、

 ①実際にスカイツリーの影の先端部を追いかけてマッピング
 ②地図に同じ縮尺の棒を立てて、その影をマッピング

 の2パターンで実験し、本当に影が左から右に動くのか、そして12時の影が一番短いのか、この2点を確認してみます。実験は朝10時から夕方4時まで、1時間ごとに全部で7回観測してみます。

 まず用意するものは、本屋で普通に売ってる墨田区の8000分の1の地図。これを画板に貼り付けて、ここに7.9cmの鉛筆を立てます。 7.9cmというのは、634m÷8000から算出した数字です。
 けっこう鉛筆を7.9cmぴったりに削るのは難しいんですが、何度かチャレンジして成功しました。この鉛筆を地図に垂直に立て、その影を調べます。

 ここで重要なのは、観測時に地図の方向を正確に北に合わせることと、地図を水平にすることです。このため、方位磁石と水平器を手に入れました。
 準備はこれで完了。

 8月5日午前10時、さっそく東京スカイツリー駅近くで鉛筆の影の位置を測定してみました。すると、地図上では、非常に鮮明な影ができました。 即座にその位置をマッピング!

スカイツリーで日時計
地図上では影がハッキリと(10:00)


 続いて、地図上の影を参考に、本物の影を探しに行きました。しかし……、なんということでしょう! スカイツリーの影がどこにあるのかまったくわからないではないですか!
 これは、正直、予想外。いや、知識として長い影がどんどん薄くなるのは知ってましたが、これほど不鮮明とは!

 だってこの、ソラマチに張ってあったポスターの写真を見て下さいよ。影が黒々とはっきり写ってるじゃないですか。当然、地面にもある程度きっちり影が見えるはずと思っていたら……まったくわからなかった。
 いきなり実験①が大失敗です。

スカイツリーで日時計
張ってあったポスターの鮮明な影


 ちょっと困ったものの、スカイツリーの麓(ふもと)なら影は鮮明に見えるはずと思い、10時半に直下に出向いてみると、おぉ、こちらはちゃんと見えました! 面白いのは、遠目だと影がはっきりわかるけど、近くに寄れば寄るほど、日向と日陰の差が不明瞭になることです。

 しかしまぁ、影の長さはわからないとはいえ、方向は確認できることがわかって一安心。これで、影がどっちの方向に動くかは観測できますね。

スカイツリーで日時計
場所によっては影がくっきり(10:30)


 やる気満々になったところで、信じられないことに、突然空が巨大な雲に覆われ、太陽が消えてしまいました。やばいよ、これ……どうしよう。
 結局、12時直前に雲が晴れ、南中時の影のマッピングは地図上で成功しました。実際の影も、ツリーの頂上部分がほぼ断定できましたが、やはり鮮明ではありません。

スカイツリーで日時計
南中時の影(12:00)

スカイツリーで日時計
スカイツリーの陰の先端部(12:10)


 その後、厚い雲と戦いながら、13時15分と13時30分に測定。しかし、ここで大きな問題が。わずか15分しか経っていないのに、あきらかに地図上で影の位置が違うんですよ。

スカイツリーで日時計
線路に延びたスカイツリーの影(13:15)


 っていうか、実はこれ、朝の段階で気づいてたんですが、地図上の影の位置が測定場所によって全然違うんですね。きっと方位、水平が正確に合ってないからなんですが、それ以上に地図に立てた鉛筆がほんの少し動くだけで、影の位置が大きくずれるんですよ。

 正直言うと、同じ時間、少し場所を変えて測定しただけで、影の先端は平気で2〜3cmずれました。現実の距離にすると、2kmほどですね……。こんなに違うのに、これを実験と言っていいのでしょうか……。

スカイツリーで日時計 スカイツリーで日時計
地図上の影と実際の影(13:30)


 その後も雲と戦いつつ、雲が切れるとギラギラした日差しに耐え忍びながら、14時35分と15時に測定。このとき気づいたんですが、15時以降はイーストタワー(ビル)が邪魔して、影がスカイツリーなのかビルなのかよくわからないんですよ。
 
 もういい加減、熱射にやられて死にそうだったので、実験はここで終了。結局、測定時間はバラバラなれど、たしかに影は左から右に動き、また12時の影が最短だと判明したのです。

 まぁ、マッピングした影の位置はかなり不正確だとの説もありますが……(ホントは、測定したものの、あまりに位置がおかしくて抹殺した観測データが膨大にあるのです・涙)。

 というわけで、世界最大の日時計による実験は終わりました。よい子の皆さんは、この実験を再現するなら、鉛筆をこれでもかと言うくらい固定することをおすすめします。

スカイツリーで日時計
ツリーの影かビルの影がよくわからなくなってきた(14:35)


 なお、影はどうして遠くに行くほど薄くなるのか。小学生には、以下の2つの現象から説明しましょう。

 (1)光の回折
  本来、直進するはずの光が、障害物があると回り込んでしまう
 (2)光の散乱
  光が空気の“粒"にあたって直進しなくなる

 とりあえず今回の実験からわかったことは、スカイツリーの影は先端がまったく見えないということと、太陽は熱すぎるということでした(涙)。
 今回は、全然科学的でなかったですな。申し訳なし。

スカイツリーで日時計
実験結果

制作:2013年8月10日

<おまけ>

 スカイツリーの実際の影の長さはどうやって求めればいいのか。
 まずネットで太陽の高度を求めます。これは「緯度」「経度」「日付」を入れると、その日の太陽高度が算出できるサイトを利用します。
 スカイツリーの緯度・経度は北緯35.71°、東経139.81°なので、2013年8月5日の南中は11:45で、太陽高度71.24°だと判明します。
 影の長さは、【ツリーの高さ634m÷tan(高度)】で計算できます。グーグルの検索窓に次のように書き込むと……

 634/tan(71.24degree)=

 影の長さは215.3mと判明するのですな。
 ちなみに太陽の影が作る曲線は「日影曲線」と言いますが、ウィキペディア英語版の下図で、青い線が冬至、ピンクの線が春分と秋分、赤い線が夏至となります。
 次回は、秋分の日の影は本当に真っ直ぐかどうか調べてみたいですな。
スカイツリーで日時計
 
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