「鉄道唱歌」第5集 付録
奈良めぐり
奈良の大仏
明治33年(1900年)に発表された「鉄道唱歌」第5集の付録「奈良めぐり」全文公開です。作詞は大和田建樹、作曲は目賀田万世です。
平城京跡
1
奈良は千年(ちとせ)の其(その)むかし
七代(しちだい)さかえし帝都の地
七代伽藍(がらん)の鐘の音に
残る響(ひびき)ぞ身にはしむ
東大寺鐘突堂(1911年)
2
東を見れば三笠山
いづる朝日の曇りなく
春日の森の木(こ)の間には
おきふす鹿も面白や
三笠山(1911)
3
麓に立てる興福寺
五重塔のかげうつす
池は猿沢きぬかけの
柳は風になびくなり
奈良猿沢池(1911)
4
世に名も高き大仏の
光を仰ぐ東大寺
傘さしてぬけらるる
仏の鼻の大きさよ
東大寺大仏殿(1911)
5
西は法華寺西大寺
都の夢はやぶれたる
旅のまくらに秋篠の
里の砧(きぬた)もひびくなり
龍田山の紅葉(戦前)
6
建築ふるき法隆寺
紅葉そめなす龍田山
散歩がてらに片道を
乗りたる汽車は半時間
法隆寺金堂(焼失前)
7
北にめぐれば佐保山に
見ゆる御陵(ごりょう)は聖武帝
をがむ袂(たもと)の露(つゆ)けきは
草も昔やしのぶらん
8
なごり残して別れゆく
奈良のみやげは何々(なになに)ぞ
奈良人形に春日塗
張子の鹿に奈良扇
鉄道唱歌・奈良めぐり(原本)
広告