占領軍がやってきた!

日本に来た占領軍GHQ
続々とやってきた進駐軍


 1945年8月15日、日本はアメリカに敗戦します。当然、アメリカは占領軍(進駐軍)として日本にやってくるわけですが、これを日本人はどう受け止めたのか?
 連合軍の先遣隊が神奈川県の厚木飛行場に到着したのが8月28日。マッカーサーは30日に到着しました。
 
 ここに面白い資料があります。8月23日ごろ神奈川県で回された回覧板です。

占領軍GHQ対策の回覧板
敗戦直後の回覧板


《連合軍の進駐は一切我政府と折衝の結果、平和的になされるので、暴行、掠奪等万無きものと信じられますから皆様は平常通り安心して生活して居て下さい……連合軍が進駐した後も従来通り警察、憲兵が治安の取締りに当って居りますから決して心配する必要はありません》


 いったい今後どうなるのか、という不安な様子が文章から見て取れますね。


 実は、日本の内務省は、敗戦後すぐの8月26日、「米兵から良家の子女を守るため」に、特殊慰安施設協会(RAA)を組織します。要は国営の売春機関です。
米兵慰安所の急設を指示した内務省文書
「米兵慰安所の急設」を指示した内務省文書
「米兵ノ不法行為対策資料ニ関スル件」(国立公文書館)


 大蔵省の融資を受けて東京大森に第1号国営売春施設「小町園」がオープンしたのが8月27日。朝日新聞などに出た募集広告に応じて、戦争未亡人など千数百人の女性が集まりました。
 
 RAAは買春施設以外にも、さまざまな施設を作ります。

《松坂屋の横にOasis of Ginzaと書いた派手な大看板が出ている。下にR・A・Aとある。Recreation Amusement Associationの略である。松坂屋の横の地下室に特殊慰安施設協会のキャバレーがあるのだ……地下二階で「浮世絵展覧会」をやっている。その下の三階がキャバレーで、アメリカ兵と一緒に降りていくと、三階への降り口に「連合国軍隊ニ限ル」と貼紙があった》(高見順『敗戦日記』11月14日付け)

 なんというか、今日にも通じる日本人のある種の“卑屈さ”を感じますね。別に占領軍にゲリラで戦えとは言わないけど、わざわざ売春施設を作ったりするのはどうなんでしょうか。

 もっとも、日本女性は政府の予想以上にオープンで、皇居のお濠端では、

《アメリカ兵にいかにも声を掛けられたそうな、物欲しそうな様子で、でもまだ一人歩きの勇気はなく、二人三人と連れだって、アメリカ兵のいる前を 選んで、歩いている娘たち》(『敗戦日記』10月18日)もいっぱいいました。

 RAAでは、女性1人あたり、毎日15〜60人の米兵を相手にしましたが、ピーク時には全国で7万人もの女性が集まったそうです。しかし、性病の蔓延などを理由として廃止され、その後は1対1で囲われる「オンリーさん」や「パンパン」(ストリートガール)の時代になりました。

パンパンガール
街のパンパンガール


 なお、RAAについては、磯村英一元東洋大学長が、米軍の指示で開設したと語っています。

「終戦直後、私は東京都の渉外部長で、占領軍司令部の命令に“サービス”を提供する役割を課された。命令は宿舎を造って、占領軍の兵隊のために“女性”を集めろということだった。命令は英語で“レクリエーション・センター”の設置である。最初は室内運動場の整備だと思ったが、そうではない。旧“ヨシワラ”のそれであった」(産経新聞2006年9月17日)

RAA
横須賀に作られたRAA(ウィキペディアより)


 米軍は自分たちで慰安所は作りませんでしたが、その役割を日本に肩代わりさせていたのです。
 そして、GHQは1946年1月、公娼廃止例を公布。これにより売春地帯「赤線」が成立していきます。

売春防止法の成立
売春防止法の成立


 さて、ついでにあと2つ、有名人の終戦日記を公開しときます。

 まずは作家の内田百閒(ひゃっけん)。

《何しろ済んだ事は仕方がない。「出なほし(出直し)遣りなほし(やり直し)新規まきなほし」非常な苦難に遭つて新らしい日本の芽が新らしく出て来るに違ひない》(8月21日)

 負けて1週間もたっていないのに、この明るさはどうだ?
 もっとすごいのがこれ。

《泣けて泣けて仕様がない。……大泣きに泣いて帰つて来たらすつかり気持も浄化されたやうな気持がした》

 天皇の侍従長・入江相政の日記ですが、なんと8月16日付けです。戦争に負けた次の日に、「気持ちが浄化された」というのは、ちょっと信じられません。

 日本人のこの淡泊さと明るさには、きっと占領軍もビックリしたでしょうね。ですが、まさにこれこそが、戦後の日本の発展をもたらしたパワーだったわけです。

韓国軍の従軍慰安婦たち
韓国・従軍慰安婦博物館に行ってみた


制作:2003年4月14日

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