GHQの手紙の検閲について
検閲された軍事郵便
とある1通の葉書。表にあるのは「検閲済」スタンプです。戦前、手紙は完全に検閲の対象でした。この手紙は、そんな検閲をパスしたものです。では、中身を読んでみましょう。
《昭和の御聖代茲(ここ)に第17年 戦勝輝く新春を迎へ……小生も此の新年を雪深い北満の広野に迎ふる事を男子の本懐と存じ……大東亜戦の開戦以来打ち続く捷報に胸躍らして北の守りを固め……》
日付は昭和17年元旦。太平洋戦争が始まって最初の正月です。差出人は満州第7849部隊の兵士です。
NHKスペシャル『届かなかった手紙〜関東軍はなにを検閲していたか〜』によれば、満州にいた人間は、日本人・中国人・朝鮮人・ロシア人など誰彼かまわず関東軍の検閲の対象になったようです。
ノモンハンの大敗北を知らせようとした手紙、満州の生活苦を伝えようとした手紙などはもちろん、異郷の家族を想う手紙なども、戦意をくじくことから没収されました。
その数は、少なく見ても4万点。検閲の記録は、中国・長春の歴史資料館に保存されています。
冒頭の兵士の葉書は、そんな検閲を通過した手紙です。逆に言えば、本音を隠した表面的な内容しか書いてないのですが、それでも届かないよりは、届いた方が幸せだったのかもしれません。
戦争が終わって、日本人はようやく自由を手にしました。
たとえば作家の高見順は、昭和20年9月30日の日記にこう書いています。
《生れて初めての自由! 自国の政府により当然国民に与えられるべきであった自由が与えられずに、自国を占領した他国の軍隊によって初めて自由が与えられるとは、——かえりみて羞恥の感なきを得ない》
そう、GHQのおかげで手にしたありがたい自由。人々はそう思ってました。
しかし、やっぱり本当の自由なんてありえませんでした。GHQもまた、庶民の手紙を当たり前のように検閲するのです。これがその証拠。
GHQの検閲
問題なのは、占領軍が「言論の自由、信書の自由」を強調したものだから、基本的には検閲が隠された点です。それで一般人はアメリカがくれた自由に酔ってしまったわけです。
そしてそのアメリカが作った憲法には、当然の如くこんな自由が謳われました。
《第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない》
なんだかとっても茶番な感じなのでした。
制作:2003年8月22日
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