『ヨイコドモ』の皆さん!

靖国神社で英米撃滅を祈願する子供たち
靖国神社で英米撃滅を祈願する子供たち(昭和19年冬)

 昭和16年(1941)12月8日、日本は米英に宣戦布告します。
 NHK『真珠湾への道』によれば、開戦直前、近衛文麿首相は

・中国・仏印からの完全撤退
・日独伊3国軍事同盟の死文化

 などを条件に日米開戦を避けようとしたそうですが、その意志はアメリカに伝わらず、真珠湾攻撃を迎えてしまいます。

 攻撃の翌日、新聞には宣戦布告に関する記事が出ますが、人々はその様子を知ることができませんでした。結局、翌1942年の元旦、大々的に写真が発表され、国民の戦意は大いに盛り上がるわけです。
 この日の紙面に、面白いものが載っています。首相に就任したばかりの東条英機が、子供たちにメッセージを送っているんですね。それが《『ヨイコドモ』の皆さん!》で、大日本帝国にとって理想的な子供の姿とは何かがよ〜くわかります。教育基本法の改正が叫ばれる現在、ちょっと読んでみるのもいいでしょう。
 というわけで、以下、全文公開です。
 
 ※テキストは元旦の朝日新聞より
 


『ヨイコドモ』の皆さん!
内閣総理大臣兼内務大臣、陸軍大臣 東條英機


 日本全国の少年少女諸君、戦勝に輝く新年を迎えられて、まことにおめでとう。

 われらの皇国日本は、遂にアメリカとイギリスに対し、正義の剣を抜きました。正しく強く必ず勝つ神武の剣であります。開戦と同時に、皆さんの御承知の如く、皇軍の攻め征くところ、陸に海に空に、敵をさんざんに撃ち破りました。日本無敵なりとの声は、世界中に強く響いています。この大東亜戦争が始まりまして既に約一ヶ月、皇国の国土は、まだ一度も敵空軍の来襲さえ許さず、このような静かなお正月を全国民が更に必勝の信念をもって、めでたく迎えることができますのは、ひとえにこれ 御稜威(みいつ)のいたすところであります。皆さんは、この記念すべき戦勝のお正月にあたり、何よりもまず、有りがたい世界無比の皇国日本に生れた光栄を、心から深く深く感謝しなければなりません。

 この大戦は、われらと同じく大東亜に住んでいる人たちが、日本と相共に力をあわせて助けあい、今まで自分たちをおさえつけていたアメリカとイギリスの悪い力を払いのけて、輝かしい幸福な国々を、新しく建てて行くための義戦でありますから「大東亜戦争」と呼ぶことになったのであります。そしてこの大戦の目的を、十分に成しとげるためには、すなわち皆さんが大きくなってから後も、しっかりと「大東亜戦争」の結果を受けついで、皇国日本の弥栄ゆる将来を、千代に八千代に立派に推し進めて行かなければなりません。この栄光ある大きな責任を、どうか皆さんが今から心の底に、深く覚悟して貰いたいのであります。

 このためには、今のうちから皆さんが、毎日のつとめを、立派に成しとげて行くことが、実に大切であります。即ち良い子供になって、お父さんやお母さんや先生方の仰しゃることを十分に守り、良く学び良く遊び、心とからだを、あくまでも強くし、今第一線に出て戦っていられる兵隊さんや国内で力をつくしていられるお家の方々よりも、またさらに皆さんが、立派な日本人にならなければなりません。これこそ皆さんが 天皇陛下の御為につくしたてまつる第一のご奉公であります。

 どうか全国の少年少女諸君、お国のために良い子供になり、そして立派な日本人になって下さい。この新年にあたりまして私は、おめでとうとのお祝いと共に、以上のことを、しっかりと皆さんに申上げたいのであります。

昭和十七年元旦


 あんまり具体的なことは言ってませんが、それはまだ時代に余裕があったせいでしょう。あと数年もすれば、学徒出陣などで、子供たちはみな戦争に巻き込まれていくのでした。

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制作:2003年1月2日

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