1901年から見た2001年
世界初の「火星旅行飛行機」の図
なんだか世の中もずいぶん暗いですが、「明るい未来」というのは、今後、来るんでしょうか?
一応、まだ未来への希望が残ってたはずの100年前、人々は20世紀をどう考えていたのかを知るべく、1901年に発表された未来予測をアップしときましょう。出典は報知新聞・明治34年1月2〜3日掲載分で、適当に現代語訳しときました。
19世紀における世界の進歩は非常に驚くべきものがあった。さらに歩みを進めて20世紀は一体どんな時代になるのだろうか。その大時期の冒頭にあたり、人気のジュール・ヴェルヌの未来小説のように、遙か未来を予見するのも面白い。
世界の列国の政治状況はひとまず措き、物質上の進歩を想像してみよう。
●無線電信および電話
マルコーニが発明した無線はいっそう進歩して、無線電話で東京からロンドンやニューヨークと自由に話せるようになる。
●遠距離の写真
数十年後にヨーロッパで戦争が起こったときには、東京の新聞記者は編集局にいながらにしてカラー写真を電送できるだろう。
●野獣の滅亡
ライオンや虎、ワニといった野獣はアフリカからも絶滅し、ごくわずかが大都会の博物館で生き延びることになる。
●サハラ砂漠
サハラ砂漠は次第に沃野になり、東半球の文明は中国・日本・アフリカで徐々に発達するだろう。
●7日間世界一周
19世紀の末では少なくとも80日間かかった世界一周も、20世紀には7日もあれば十分だろう。文明国の人間は、男女を問わず必ず一回は世界漫遊の旅をする。
●空中軍艦、空中砲台
ツェッペリン式の空中船は大いに発達し、軍艦は空を飛び、空中には砲台が設置されるはずだ。
●蚊およびノミの滅亡
衛生状態が改善され蚊やノミがだんだんに絶滅する。
●暑さ寒さ知らず
暑さ寒さを調節する器械が発明され、この器械のおかげでアフリカも進歩する。
●植物と電気
電気で野菜を成長させられる。このため空豆はオレンジほどの大きさになり、菊・牡丹・バラは黒や緑の花を咲かすものも出てくる。グリーンランドにさえ熱帯植物が育つだろう。
●人声10里に達す
伝声機が改良され、10里(40キロ)離れた男女が延々と愛を語れるようになる。
●写真電話
電話は相手の顔が見られる。
●買い物が便利に
写真電話を使えば、遠距離の品物を選んで購入できるようになる。品物は地中の鉄管を通って瞬時に届く。
●電気の世界
薪も石炭も枯渇し、電気が燃料となる。
●鉄道の速力
列車は非常に進化し、暖房冷房装置が完備するなど、あらゆる便利が実現する。早さは急行ならば時速50マイル以上(約80キロ)で、東京神戸間で2時間半。今日4日半かかるニューヨーク・サンフランシスコ間は一昼夜で行けるようになる。
もちろん動力は石炭を使わないから、煤煙の汚水も出ず給水する必要もない。
●市街鉄道
馬車鉄道や鋼索鉄道は老人の昔話にだけ残り、電気車や圧搾空気車は大改良され、車輪はゴム製となる。文明国の都会では街路上ではなく、空中および地中を走るようになる。
●鉄道の連絡
航海が便利になる上、鉄道は5大陸を貫通して自由に行き来できる。
●暴風を防ぐ
気象観測が進歩し、1ヶ月以上前に天災を予知できるようになる。もっとも恐ろしい天災である暴風が起これば、大砲を空中に撃つことで雨に変えることが可能となる。
20世紀も後半になれば、難船や津波もなくなるだろう。地震は消滅しないが、家屋や道路は地震に耐えられる。
●人の身幹
運動術や外科手術により、人の身長は6尺(180cm)以上に達する。
●医術の進歩
薬剤を飲むことはなくなり、電気針で痛みなしに患部に薬液を注射できる。顕微鏡とエックス線が発達することで病原の摘出、治療が自由になる。内
科手術はほとんど外科になり、将来は、肺結核でさえ肺を摘出して防腐のうえ殺菌できる。もちろん切開は電気により全く痛みがない。
●自動車の世
馬車は廃止になり、自動車が安くなる。軍用も馬に代わって自転車と自動車がとってかわる。その結果、馬は奇特な人間がわずかに飼育するだけのものになる。
●人と獣との会話自在
獣語の研究が進み、小学校に獣語科ができる。人と犬猫猿は自由に会話できるから、下女、下男は多くが犬に占められ、犬が人の使いをする世の中になる。
●幼稚園の廃止
人智は遺伝により大いに発達し、家庭に無教養な人間はいなくなるから、幼稚園の必要がなくなる。男女とも大学を卒業しないと一人前と見なされない。
●電気の輸送
日本は琵琶湖の水を使い、アメリカはナイアガラの滝を使って水力発電を起こす。そして電気を全国内に輸送することになる。
以上のように考えてみると、いくらでも思いつくから、後は読者の皆さんの想像に任せよう。とにかく20世紀は奇異な時代だろう。
意外に未来予測って当たるんですね。
ちなみに、このページのトップにいれた画像は、ロシアの軍事飛行顧問だったデヨーチデポシーザツ博士が1920年に発表した世界初の火星旅行飛行機。ガス噴射を利用して、出発して数日で到達できる計画でした。まだみんな火星人がいるかもしれないと思ってた、古き良き時代の話です(出典は「世界改造大観」毎日通信社・1920)。
●1920年の未来予測
●1990年の未来予測
●未来予測の画像集
●2030年-2050年の未来