1964年、東京五輪
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1964年、東京オリンピック開会式
亀倉雄策による東京オリンピックポスター(左から2号、1号、3号ポスター、JOCのサイトより)
1964年の東京オリンピックは、10月10日から24日まで開催されました。
IOC総会で開催地が東京に決まったのは、1959年5月26日です。そして、「オリンピック東京大会組織委員会(OOC)」が設立されたのが、この年9月30日。当時は、まだ東京のスポーツ施設は整ってなかったので、たった5年で施設や交通網を整備する必要がありました。
会場となった明治公園の模型(1962年、左から体育館、国立霞ヶ丘競技場、野球場2つ、ラグビー場)
東京オリンピックには莫大な予算が投入されました。
競技場の建設など直接的な費用は295億円。
道路や地下鉄、上下水道整備など間接費用は9600億円(都内の道路整備に1750億円、東海道新幹線の東京〜大阪の建設に3800億円……)もかかりました。そのおかげで、日本のインフラは充実し、東京は大きく発展したのです。
代々木競技場と選手村の模型
駒沢公園の模型
さて、開会式の練習は1964年9月19日、27日、10月1日、3日、7日、9日と何度も行われ、いよいよ当日になりました。
本サイトが入手した当時の内部資料「開閉会式実施要項」によれば、式典本部の下、運営に多くの係が作られました。具体的には以下の通り。
通信保守係、通訳管理係、通告係、電光掲示係、儀典係、集合場係、入退場行進係、プラカード係、音楽係、旗係、祝砲係、放鳩係、煙火係、風船係、照明係、たいまつ係、聖火係、会場(用具)係、連絡係、ジェット機係……
たとえば通信保守係は、防衛庁47名と電通5名の人員で編成されました。プラカード係は防衛大学の学生114名、旗係は防衛庁224名、たいまつ係は東京女子体育大学の学生200名といった具合です。
鳩係は、日本鳩レース協会125名と日本住書鳩協会125名の合計250名が担当しました。
当時の実施要項
本番は、13時30分から始まっています。以下、30秒単位のタイムスケジュールを紹介しておきます。
開会式要項
●13:30 開式準備
式典準備の一切を終了し、再確認する。場内放送は日本語、英語、フランス語で大要と諸注意を説明。電光掲示は「オリンピック東京大会開会式」とクーベルタンの言葉
●13:45 天皇陛下奉迎
奉迎者は定められた時間に、正面玄関に集合し待機する。天皇陛下には、奉迎を受けられ接見の後、貴賓室で休憩される。電光掲示は五輪マークと「東京1964」
●13:50 各国旗一斉掲揚
スタンド周辺(電光掲示板上の3本を含む)のポールに各国旗等を一斉掲揚する。音楽はオリンピック序曲。
なお、序曲のヤマ場で掲揚し、その後、北出入口から標旗が入る
●13:58 天皇陛下、式場にご臨場
序曲終了後、電子音楽が場内拡張され、ご臨場される。音楽は電子音楽
●13:59 日本国歌演奏
天皇陛下、席にお着きの時、日本国歌を演奏する
●14:00 選手団入場行進開始
各国選手団は、人数にしたがった縦列で入場する。歩度120、歩巾75cm。音楽は行進曲。電光掲示は「選手入場」
東京オリンピックの入場行進
(タンガニーカ共和国など、すでにない国も。けっこう誤植も……)
●14:45 選手団整列完了
トラックを一巡の後、フィールドに入り所定の縦列で整列する。行進の後半、IOC、OOC会長は式台の位置に移動を開始する。日本選手団通過 後、標旗は南出入口から退場する
開会式の入場
●14:45:30 OOC会長挨拶
行進曲終了後登壇し、3分以内で挨拶する(挨拶の中にオリンピック復興70周年を祝う言葉とクーベルタン男爵の録音を含める)。電光掲示は、挨拶の要旨
●14:48:30 IOC会長歓迎の辞
OOC会長と入れ替わり、3分以内で歓迎の辞をのべ、天皇陛下に開会の宣言を依頼する。電光掲示は、歓迎の辞の要旨。OOC、IOC両会長は、開会宣言の後、自席にもどる
●14:52 開会宣言
ロイヤルボックスの自席で起立され、宣言する。宣言終了後ただちにファンファーレ吹奏。隊の位置は聖火台の下
●14:53:30 オリンピック旗掲揚
海上自衛隊員8人に保持されたオリンピック旗が、オリンピック賛歌に合わせて南出入口より入場し、インフィールドのポールに掲揚する。歩度100、歩巾90cm
●14:58 オリンピックの旗の引きつぎ
オリンピックの旗の掲揚後、ただちに北出入ロよりローマ市代表が旗を保持して入場し、式台に待機するIOC会長に渡され、さらに東京都知事に渡される。音楽は鼓隊
●15:01 祝砲
オリンピックの旗が東京都知事に渡された時に第1発、5秒間隔で第2、3発を発射する。絵画館前広場では、祝砲3発目を合図に風船を一斉にあげる
●15:03 聖火入場と点火
北出入ロより入場の後、聖火台に点火する(この時、場内に香をただよわせる)。点火を合図にオリンピック東京大会
賛歌Aを合唱する。合唱直後、各国の旗手は集合する。電光掲示は「聖火 入場 点火」
第4号ポスター(JOCのサイトより)
●15:08 選手宣誓
日本選手1名が宣誓台から、日本国旗を左手に持ち、右手をあげて宣誓する。他の国の旗手は宜誓台のまわりに半円形に並ぶ
●15:09 放鳩
宣誓終了後ただちに正面の鳩を放ち、つづいて一円から一斉に放鳩する。電光掲示は「放鳩 より速く、より高く、より強く」
●15:11 日本国歌斉唱
鳩が競技場を去った頃、日本国歌を斉唱する。終了後、旗手は元の位置にもどる。
15:13、航空自衛隊のジェット機が競技場の上空に五輪をえがく
●15:17 天皇陛下ご退場
ジェット機が去った頃、電子音楽が拡声されご退場される。移動ルートはロイヤルボックス→貴賓室→正面玄関
●15:18 選手退場
天皇陛下が式場をでられた時、マーチを始め、南北両出入口より退場する。音楽は行進曲。電光掲示は「選手退場」
●15:43 退場完了
国立競技場から退場する選手団の移動コース
こうして東京オリンピックは開場します。
開会式は、史上初のカラー中継が行われました(ただし、ほとんどの視聴者は白黒テレビで受信)。
しかも、前年には世界初の静止衛星シンコムが打ち上げられており、日本はシンンコム3号を使って、深夜のアメリカに生中継することに成功します。
放送は、1日1競技だけカラーで放送されました。
21日の男子マラソンは、ヘリコプターを使うことで、全コースの中継に初めて成功。そして、「東洋の魔女」が登場した23日夜の女子バレー決勝は、なんと85%の高視聴率を記録するのです。
日本は選手強化費用23億円を計上し、科学的なスポーツ指導を行っていました。結果は、金メダル16、銀メダル5、銅メダル8個と、驚異の好成績を収めたのでした。
東京五輪の連絡図
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1940年、幻の東京オリンピック
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札幌オリンピック夢の跡
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聖火リレーを追いかけろ in 長野
制作:2013年9月9日
<おまけ>
新幹線を整備した最大の功労者は、技師長の島秀雄です。安全で高速な大量輸送を実現したわけですが、その島が開業から10年後の1994年7月、次のように語っています。
《新幹線をつくった本当の目的を忘れてしまったのね。在来東海道線の貨物輸送を立派にする。それが根本だった》(朝日新聞)
東京オリンピックを機に開業した新幹線の本来の目的は、旅客を新幹線に誘導することで、貨物を在来線に集中させることでした。
しかし、1969年に東名高速が全通したこともあり、国鉄はその後、貨物の運営には不熱心で、流通はほとんどが道路輸送に変わっていきます。その結果、日本の空気はひたすら汚染が進みました。光化学スモッグが東京で初めて確認されたのは、1970年のことでした。
<おまけ2>
「開会式次第」をまとめときます。
1.天皇陛下ご臨場
2.日本国歌演奏
3.選手団入場
4.組織委員会会長挨拶
5.国際オリンピック委員会会長歓迎の辞
6.天皇陛下開会宣言
7.オリンピック旗の入場・掲揚
8.オリンピックの旗の授受
9.祝砲
10.聖火入場・点火
11.選手宣誓
12.日本国歌斉唱
13.天皇陛下ご退場
14.選手団退場
(備考:オリンピック憲章第57条による)
「閉会式次第」も書いておきます。
1.天皇陛下ご臨場
2.日本国歌演奏
3.旗手・選手入場
4.国旗の掲揚及び国歌の演奏
1)ギリシャ
2)日本
3)メキシコ
5.閉会宣言
6.聖火の消滅
7.オリンピック旗の降納・退場
8.礼砲
9.別れの歌合唱
10.旗手・選手退場
11.天皇陛下ご退場
12.花火
(備考:オリンピック憲章第59条による)
2020年東京オリンピックの会場模型