あいきゃく
〔相客〕泊りあわせている客。
あいきょうがこわれる
〔愛敬が毀れる〕空気が白け渡る。
あいくち
〔合口〕気が合う仲。「あいつとはどうも合口だ」。「ウマ合」に同じ。
あいぐら
〔合鞍〕2人一しょに一つ馬へのること。
「一匹の駱駝(らくだ)をやとひて合鞍に三人等(ひと)しく打乗りて、」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)
あいこでせえ
じゃん拳で両方が同じ紙なら紙、鋏(はさみ)なら鋏がでたときのはやしことば。今は「相子でしょ」。
あいしめ
〔愛し目〕秋波。ウインク。
アイスクリーム
高利貸のことで、「氷菓子」の洒落。「アイス」とも略す。
あいずり
〔相ずり〕共謀者。ぐるになって悪事をする人。
「その相ずりの尻押(しりおし)は(略)居所(ゐどこ)定めぬ南郷力丸、面ァ見知って貰ひやせう。」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)
あいそづかし
〔愛想尽かし〕絶交するための憎まれ口や冷淡な態度。転じて勘定書のこと。
「宵にや真赤にさわいでいたが、朝の勘定で青くなる」と俗曲にあるように、ガッカリさせられるからである。
あいたい
〔相対〕むきあってすること。互に承知してやること。合意の上でのこと。「相対づく」は納得づく。「相対死(じに)」は心中、情死。「相対間男」は美人局(つつもたせ)。
あいなか
〔合中〕間仲。
「あんな嘘つきの奴はありません(中略)人の合中をつツつくひどい奴ですから。」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
あいのり
〔合乗〕いっしょに乗物に乗ること。また「合乗車」の略。
あいのりぐるま
〔合乗車〕2人乗りの人力車。戦後輪タクにこの現象が見られた。情人の乗客が多かったが、同性が用談その他を話し合いながら行く場合もあった。明治10年代、落語家立川談志が人気を博したナンセンス舞踊「郭巨(かっきよ)の釜掘り」には、「合乗幌(ほろ)かけ頬ぺたおッつけテケレツノパー」という一節があった。東京では明治末年亡びたが、永井荷風「十年振」には、「京都には今でも合乗の人力車がある。芸者とお客の合乗をして行くのを見ても、往来の人は別に不思議な顔もしない。」大正11年11月の話である。
あいばこ
〔合箱〕→「あいのりぐるま」
あいふだ
〔合札〕ものを預った証拠に渡しておく札。
あいぼう
〔相棒〕駕籠やもっこをいっしょにかつぐ相手。前の者を「先棒」、後の者を「後棒」という。
「『それを云へば、おれだって同じ商売で、片棒をかついでゐるのぢゃあねえか。そのおれが斯うして働いてゐるのに相棒の権三が寝てゐるといふ法があるものか。』『相棒と云っても内の人は先棒だよ。ちっとは遠慮をするものさ。』」(岡本綺堂「権三と助十」)
あいまいや
〔曖昧屋〕料理屋や商家らしくみせかけている淫売屋。曖昧宿。
あいみじん
〔藍微塵〕藍いろの微塵縞(タテヨコ共に同一の2色の糸を1本おきに織り合わせてつくった細かな縞の略)。遊び人などのやや崩れた人態(にんてい)に合う。例えば源氏店に「さんげさんげ」の下座で登場する向う疵(むこうきず)の与三郎。
あいむなぐら
〔相胸倉〕共に胸倉を取り合う格好。
あいやど
〔相宿〕一つ部屋へいく組かの旅人が合宿すること。
あおい
未熟。人格・技量・言動の各面に使う形容。蜀山人の狂歌に「まだ青い素人義太夫黒がって赤い顔して黄な声を出す」というのがある。
あおっぴげ
〔青っ髭〕髭が濃いため、常に深くそり、そのあとが青くなっていて凄く見える顔。
あおづめ
〔青爪〕爪の青い馬。
あおのく
〔仰向く〕「あおむく」の江戸なまり。
あおり
〔煽り〕駕籠のタレ。
あおんぞ
青しゃびれている(青い不景気な顔の人)。
あか
〔赤〕赤ン坊。
あか
〔垢〕舟へ溜まる水。
あかいきれ
〔赤い切れ〕遊女。「赤いきれとねたよ」
あかいしきせ
〔赤い仕着〕刑務所で着せられる赤い衣服。刑務所へ行くことを、「赤い仕着を着る」という。
あかえりざかり
〔赤襟盛り〕赤い半襟(はんえり)をよろこぶ少女時代。
「十五六の赤襟盛に在(あ)る事で、唯奇麗事(ただきれいごと)でありさへすれば好いのですから、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
あがき
〔足掻き〕始末。都合。「あがきがっかない」「あがきが悪い」などいう。
あかだんご
〔赤団子〕灸(きゅう)の児童語。
アカチア
アカシヤの木のこと。
あがったり
〔上ったり〕ガックリと駄目になること。繁昌しなくなること。「お手上り」(今日ではお手上げという)も同じ。駄目になった人を、あがったり屋。
あかにし
〔赤螺〕ケチな人のこと。落語の主人公に「赤螺屋」という屋号の男がいる。
あかばしゃ
〔赤馬車〕赤く塗った乗合馬車。「また九段坂、本所緑町通ひの赤馬車は、両国橋際に停車して、本所行或は万世橋行と呼びて客を招き、」(明治30年代の「東京名所図会」)

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赤馬車

あがりぐち
〔上り口〕落塊(らくはく)する気配のみえて来たとき。
あがりなまず
〔上り鯰〕花柳界で派手につかった人が、おちぶれるのを、鯰が死んだ姿にたとえた。
あきだなのえびす
〔空店の夷〕ひとりでニコニコしている人のこと。「空店」は空家。→「たな」
あきだるかい
〔空樽買い〕空いた樽を専門に買って歩く商売が昔はあった。
あきのなみ・はるのいろ
〔秋の波・春の色〕わかいおんなが憎からずおもうひとへの目づかい、表情の形容。色目。流し目。ウインク。秋波。
あくざもくざ
〔悪作妄作〕さまざまの悪事。「あいつは悪作妄作をつくした」などという。また、悪雑藻屑(あくぞもくぞ)というと、さんざんにいう悪口の意味になる。
あくしょう
〔悪性〕不実な。薄情な。
「殿御(とのご)殿御の気が知れぬ、気が知れぬ。悪性な悪性な気が知れぬ。恨み恨みてかこち泣き」(長唄「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」)
あくち
〔悪智〕悪智恵(わるぢえ)。
あくぬける
〔悪抜ける〕改心する。
あくば
〔悪婆〕老婆ではなくて、悪事を働く中年以上の女。妖婦毒婦のごとく色じかけでない場合をいう(芝居用語)。莫連女(ばくれんおんな)。「於染久松色読販」(おそめひさまつうきなのよみうり)の土手のお六、「処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)」の切られお富、「蟒於由曙評仇討(うわばみおよしうわさのあだうち)」のうわばみお由、「善悪両面児手柏」(ぜんあくりょうめんこのてかしわ)の姐妃(だっき)のお百。
あけ
〔明け〕夜明け。遊里では明け方まで飲んでいて、明け方の廓内をひやかすのを「明けをひやかす」という。
あげあぐら
〔上げ胡座〕普通の胡座でなく、左方の足を右足の上へことさらにのせてかいた胡座。凄味のもので、歌舞伎の強請場(ゆすりば)に見られる姿。
あけすけものを遠慮なくいうこと。何でもかくさずにいうこと。あけりゃんこ。
あげだいきん
〔揚代金〕遊女を買う金。宝暦、天明の頃の吉原第一流の遊女は、昼三(ちゅうさん)といい、昼夜三歩の女郎のことで、昼三をあげづめにすると1両2分、片仕舞(かたじまい、昼なり夜なりだけあげる)は1歩2朱。古川柳に「春宵一刻価(あたい)三歩なり」「噛みしめて見れば三歩は三歩なり」。
あけに
〔明荷〕旅行用の一種のつづら。
あけばん
〔明番〕勤務時間が終ること。→「ばん」
あげまき
〔総角〕振分髪(ふりわけがみ)を左右に分けて結ぶ髪形。
あごつき
〔顎付〕食事つきということ。
あさがえり
〔朝帰り〕遊女屋を翌朝、客が立ち出でて自宅へかえること。後衣(きぬぎぬ)の別れを惜しむ姿なども見られた。
あさがお
〔朝顔〕男の小便所の便器をいい、天井から光線をいれる窓も、朝顔の花を逆さにしたようなので、そういった。昔、駅の停夫が発車のときに振った鈴(新聞売や煮豆屋もつかった)も、同じく朝顔の花に見立ててそういう。
あじ
〔阿字〕真言宗で、阿字(宇宙不滅の玄理の象徴)をみる法。阿字観。
あしあがり
〔足上り〕奉公人が主人の家を追い出されること。「足が上がる」ともいう。東京ですたれ、大阪ではかなり近くまでつかわれていた。
あしだかみち
〔足高道〕爪先(つまさき)上りの道。
あしだまり
〔足溜り〕滞在。
あしなみちょうれん
〔足並調練〕兵隊が隊をつくってやって来るときのように足音を揃えて大ぜいが来ること。「足並調練で通った」
あしぶみ
〔足踏〕訪問。
あじろ
〔足代〕足場。足がかりのために組み合わせた丸太。
あしをちかく
〔足を近く〕しばしば。せっせと。
「そりゃお前さんが足を近く来たから二階で名を知られ、今更となり恥をかくのさ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)
あずまげた
〔吾妻下駄〕日和下駄の丸みのあるもので、畳表(たたみおもて)を付けたもの。婦人用。
あずまコー卜
〔吾妻コート〕明治時代にはやった、和服用の婦人の外套(がいとう)。そのころおなじ用をなすものにあった被布(ひふ)より長く、ラシャやセルでつくられた。

aduma
吾妻コート

あだあだしい
〔仇々しい〕仇っぼい。
あだもの
〔婀娜者〕仇っぽい女。
あたりぼう
〔当り棒〕すりこぎのこと。縁起をかつぐ花柳界や芸界では、する(損する)ことを嫌って「すずり箱」を「あたり箱」、「するめ」を「あたりめ」といった、その一つ。
あたりめ
→「あたりぽう」
あっけらかん
ポカンとしていること。あんけらけん。あんけらかん。
あっこうもっこう
〔悪口帽頭〕わるくち。もっこうは悪口にかさねて、語呂の上で意を強めたもの。→「あくぎもくざ」
あづちまちのくすり
〔安土町の薬〕千金丹のこと。大阪安土町信山家伝(かでん)だった。明治10年代の夏になると、東京の町々を洋傘をさした男たちが、節面白くこの薬を売り歩いた。啖咳溜飲(たんせきりゅういん)下痢にきくといった。
あとげつ
〔跡月〕先月。あとのつき。今なら「ちょうど3年前」というところを当時は「ちょうど3年あと」といっていた。
あとばら
〔後腹〕事業などの失敗で、いつまでも身にふりかかる金。「あとばらが病める」
あとびっしゃり
〔後びっしゃり〕オドオド後へ下がること。後(あと)びしょり。
あとぼう
〔後棒〕後肩。「先棒(さきぼう)」の対。→「あいぼう」
あとめそうぞく
〔跡目相続〕その家の当主の死後又は隠居した後、代ってその立場をつぐこと。
あとやさき
〔後や先〕しどろもどろ。
「女の文のあとや先、まゐらせそろではかどらず」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」祇園町一力の場)
あなっぱいり
〔穴っ入り〕女道楽。女あそびにこること。
あにさん・あねさん
〔兄さん・姉さん〕大正初年まで東京には「にいさん・ねえさん」という頭音を延ばした呼び方はなかった。上へは「おあにいさん・おあねえさん」「あにさま・あねさま」「おあにいさま・おあねえさま」、下へは「あにい・あねえ」と変化しはしたが、あくまで「あに・あね」であり「にい・ねえ」ではなかった。「あんちゃん」も「あにさん」の崩しであろう。
この種の江戸人・東京人の呼び方を覚えるのに好適な「ひいじいさん」という小唄がある。「ひいじいさん、ひいばあさん、おじいさんにおばあさん、お父(と)っつぁんにおっ母(か)さん、おじ御(ご)におば御(ご)、息子に嫁御(ご)、お兄(あにい)さんに弟御(ご)さん、姉に妹、孫曾孫(まごひこ)やしゃご、いとこにはとこ、おい御(ご)にめい御(ご)、御養子、御養女、あとは御縁がちと遠い」
あねさまかぶり
〔姉さまかぶり〕手拭を額(ひたい)にあてて、その左右を頭へのせるかぶり方。
あのこや
〔あの娘や〕花魁(おいらん)が禿(かむろ)を呼ぶことば。
あばあば
さよならの児童語。あばよ。
あぶたま
〔油卵〕油揚(あぶらげ)を細く切り、玉子をかけてかきまわし、あまく煮たもの。吉原にはじまったたべもの。
あぶら
〔油〕おせじ。油をかける。「油じゃないが、じつにえらい」「油すぎるよ」などという。
あぶらむし
〔油虫〕人にたかっておごらせること。廓のひやかし客をもいう。
あぶれ
〔溢〕商売がないこと。「きょうはあぶれた」などという。
あまだい
〔甘台〕甘味の台の物という意味。前田雀郎の川柳に「甘台の客代筆をたのまれる」。そういうケチな遊びゆえ、遊女にもバカにされて、手紙の代筆をたのまれたという句で、よく甘台の感じがでている。→「だいのもの」
あまっちょ
〔阿魔女〕江戸の下級な人たちのことばで、わかい女を悪意的に呼んで、こういう。
あみのぼんぼり
〔網の雪洞〕灯が消えぬよう風除(かざよ)けの網がつくられてある手燭(てしょく)。
あめ
〔飴〕飴をしゃぶらせる、つまりわざと負けてやること。
「ナニ此の盲将棊(めくらしょうぎ)め。太吉(たき)なざァ、一番糖(あめ)をねぶらせると、本気で勝ったつもりで居る。」(式亭三馬「浮世風呂」)
アメとう
「アメリカ唐桟(とうざん)」の略。
あめふりかざま
〔雨降り風間〕雨の日、風の日。「雨降り風間にはついあいつのことをおもいだすんです」
アメリカごけ
〔アメリカ後家〕夫が出稼ぎをしている妻。単に別居している妻をもいった。
あや
〔綾〕面倒な点。
あやどる
〔綾どる〕十字にかける。「襷(たすき)十字に綾どって……」
あやまりこうじょう
〔謝り口状〕謝罪状。
「それを又謝り口状を云ってよこすなんざァほれてるてえものは妙なもんでねえ。」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
あゆみ
〔歩み〕「歩み板」の略。
あゆみいた
〔歩み板〕渡るためにものの上に渡す板。舟から岸へ渡す板も、畳のしいてある寄席で客席の歩く所の板も、歌舞伎で両花道を使う場合の仮花道も(東の歩み)、本花道と仮花道を客席後方でつなぐ板をもいう。
あらあら
〔大略〕あら方。あらまし。大てい。
あらいかた
〔洗い方〕詮議。探索。調査。→「かた」
あらいざらい
〔洗い浚い〕すっかり。根こそぎ。
「ここの内の洗ひざらひ、釜の下の灰までおれのものだ。」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
あらいながし
〔洗い流し〕釜やおはちを洗うとき、ついていて流れ出る飯粒(めしつぶ)。
あらうち
〔荒打〕あら壁を塗る段階。
あらきだ
〔荒木田〕荒木田土。元、東京都下荒木田産の赤土で、粘着力があって、壁や瓦葺(かわらぶき)の下にもちいる。
あらくま
〔荒熊〕昔、一人は顔を墨で塗って四つばいになり、一人は竹の棒を手にしてそばに立ち、「丹波の国から生け捕りました荒熊でござい」と呼んで歩く乞食があった。古川柳に「荒熊は乞食の中のつらよごし」。

arakuma
荒熊

アラビヤうま
〔亜刺比亜馬〕男根の大きい人をこのように呼んだ。
「自分の亜刺比亜馬を棚へ掲げておいてか。」(梅亭金鵞(ばいていきんが)「滑稽立志編」)
あらまさ
〔粗理〕「あらまさめ」の略。荒い柾目(まさめ)。
あらみ
〔新刀〕新しくきたえた刀。
「犬嚇(いぬおどし)とも知らねえで、大小さしてゐなさるからは、大方新身の胴試(どうだめ)し、命の無心と思ったに……」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
あらわれこぐち
〔顕れ小口〕露見する端緒。悪事の分かる糸ぐち。
「それでは片時(へんし、少しの間)もすて置かれぬ、自分の悪事の顕れ小口でございますから、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
ありあけあんどう
〔有明行灯〕夜明けまでともしておく行灯。
ありがた
〔有形〕在来あった形。「有形より小さいが」という風につかう。
ありっきり
あるったけ。
ありていに
〔有体に〕見聞したとおりに。包み隠さず。
ありに
ななめに。ハスに。
「上の釘一本をありに打ちせえすりやァ(三遊亭円朝「名人長二」)
ありまつ
〔有松〕「有松絞り」の略。
ありまつしぼり
〔有松絞り〕愛知県知多郡有松町で産する木綿の絞り染。
ありもの
〔有物〕特別に他から用意しないでも自分が所有するところのもの。ありあわせもの。「有物で間にあわせよう」
アリャアリャ
火事場へ駈けつける仕事師や見舞の江戸っ子が、景気をつけて走りながら叫んで行く掛声。
ありゃりゃんりゅうと
〔アリャリャン竜吐〕火消が火事場へ駈けつける勇しい形容。アリャリャンは「アリャアリャ」と同様掛声で、竜吐は火を消す道具。大きな匝(はこ)の中に押上げポンプの装置をし、その上に取り付けた横木を上下して、匝の中の水をはじき出すようにしたもの。竜吐水(りゅうとすい)、竜こしともいう。
あるへいぼう
〔有平棒〕
有平糖のような棒の意味で、今日も理髪店の店頭に立てられている看板。石井研堂「明治事物起原」は「武江年表」明治4年4月西洋風髪剪所(かみはさみどころ)を引き「右の棹(さお)へは、朱、白、藍色の左巻といふ塗分にして立る」とあるを説明して「アルヘイ棒にて(中略)もとは皆高さ五六尺のものを大道に立ておきしこと、当時の画にて知らる。この看板は、西洋の理髪師の原始は医師にして、紅白色の纏ふは人身の動脈静脈を表わし、即ち医師の看板より転用されしものなりと、坪井氏の〔看板考〕に見えたり」。有平(豊臣時代につたわった菓子で、白砂糖と飴とを煮つめてつくったもの、ポルトガル語alféloaの転訛)の感じに似ていたので、このようにいった。
あわせものははなれもの
〔合わせ物は離れ物〕元々別々のところに育ったもの同士がそったのが夫婦ゆえ、緑がなければまた離婚するのも当然だという意味。
あわゆき
〔泡雪〕玉子の白味を泡だて、塩砂糖で調味したもの。
あんい
〔安意〕安心。
あんけんさつ
〔暗剣殺〕悪い方角の意味から変って、あっては具合の悪い人のいる方角。また災難にあう方へゆくこと。「暗剣殺にむかった」
あんこうぎり
〔鮟鱇切〕鮟鱇形ともいう。竹でできた花いけの一種。あくびがたという別名もある。
「鮟鱇切の水に埃(ほこり)を浮べて小机の傍(かたえ)に在り、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
あんころ
〔餡ころ〕表でころび、泥だらけになること。どろんこ。
あんにゃもんにゃ
分からずや。
あんねえ
〔姉え〕→「あにさん・あねさん」。古川柳に「姉(あんねえ)は女郎、弟は角兵衛獅子」というあわれな句がある。
あんばいしき
〔塩梅しき〕「塩梅」に同じ。
あんぽつ
〔箯輿〕上流の人々や病人、または葬礼の輿(こし)の代用で、四方竹の網代漆塗(あじろうるしぬり)で、引戸がついている。あんだともいうが、あんだは板を台にして、へりを竹で編み、竹でつるしたそまつな輿で、病気の囚人などをのせた。あおた。
あんぽんたん
〔安本丹〕バカ。うすのろ。
あんまこう
〔按摩膏〕肩の凝りにきく膏薬。3寸ばかりの大きさで黄色い紙に塗られている。按摩代用の意味で今日でもある。
あんまとり
〔按摩取〕按摩のこと。古川柳に「関取のうしろに暗いあんま取」。取という言葉を2つつづけて、力士と按摩の姿の明るさ暗さを対照させた句である。
あんも
〔甘餅〕あんころ餅の児童語。
いあいごし
〔居合腰〕居合(剣道の一派。坐ったままで素早く刀を抜き、敵を斬り倒す技術で、崎林重信創案)をするときの(ような)腰つき。
いいかかったこと
いいがかり。
いいしゅう
〔貴顕衆〕高貴の人々。紳士。
いいたて
〔言立て〕口実。
いえみまい
〔家見舞〕新宅祝い。落語の「こいがめ」は、「家見舞」とも題している。
いかい
おびただしい。はなはだしい。
いかけやのてんびん
〔鋳掛屋の天秤〕さしでがましい人。ですぎた人。いかけやの天びん棒は両端へゆくほど長く太く、棒の先が普通の荷をかつぐ綱のあるところより出過ぎている。いかてん。
いかさま
〔いか様〕なるほど。左様。
いかな
いかに、いかなるに同じ。なんという。「いかなおとなしい人でも」とか、「いかなこった」という風につかう。
いかもの
〔以下物〕ごまかしもの。昔は、将軍へお目見得のできない軽輩(けいはい)をお目見得以下、さらに略して以下ものといった。転じてそれがろくでもないものの意味となった。→「ごけにん」
いきぐみ
〔意気込〕勢い。いきごみとは今日もたまにいうが、いきぐみは江戸なまり。
いきごとすじ
〔意気事筋〕恋愛関係。
いきづえ
〔息杖〕駕籠屋の突いて歩く杖。これを突いて行きつつ、息の調節ができたゆえにいう。
いきなりさんぼう
〔行きなり三宝〕投げやりにしておくこと。「あいつはいきなりさんぼうだ」
いきにんぎょ
〔生人形〕等身大にこしらえた見世物の人形で、活けるがごとくにみえるゆえ、生人形となづけた。安本亀八、山本福松などが、その造り手として名高かった。
いきぶし
〔生節〕ごく新しい木の節。
いきれ悪く
むし暑い状態。「草いきれ」「人いきれ」
いきれる
うだること。空気が熱くなること。
「襖(からかみ)を閉切(たてき)っていきれるからこう枕元に立って立番(たちばん)をしてゐるので、」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
いくさば
〔戦場〕戦線。
いくせのおもい
〔幾瀬の思い〕いくつもいくつもの瀬(急流)をわたる思い。やっとの思い。
いくらか
〔幾固か〕かなりに沢山あるという場合を、今日ではむしろ少ない方の意味に取れる「いくらか」で表現した。
いくらかくら
いくらいくら
いけ
〔生……〕極度の。はなはだしい。憎悪・軽蔑をこめた強意のため、頭につけることば。「いけ騒々しい」「いけ図迂図迂(ずうずう)しい」「いけぞんざいな」「いけぞんぜえ者」「いけっ太(ぶて)え」「いけしゃあしゃあ」「いけ好かない」
いけすのこい
〔生洲の鯉〕いけすのなかの鯉はいつ殺されるか分からないということからでて、世間の移り変りをいう。
いけどし
〔いけ年〕いい年。「いけ年をしやがって」
いけぶね
〔括船〕釣船の底に水がたたえてあって、釣った魚をそこへ投じ、活かしておくところ。
いざ
〔紛紜〕ゴタゴタ。もめごと。いざこざ。「少しイザがあったんでネ」
いざきん
躄の睾丸(いざりのきんたま)の略。地にすれ切っているという所から、すれっからしの人をいう。
いさみはだ
〔勇肌〕鳶人足などをいう。俠気。
いざんまい
〔居三昧〕坐りよう。「居三昧をただして(坐り直して)」
いしうすげい
〔石臼芸〕多芸だが、みなくわしくないことをいう。
いしがき
〔石垣〕石崖(がけ)。
いしきかいゆ
〔違式戒諭〕規則を破った人を教え、さとすこと。
いじきたな
〔意地汚な〕食欲だけでなく、女あさりの形容にもつかう。
いしゃっぽう
〔医者っぽう〕医者のこと。江戸っ子が悪意でなく、ややおどけて医者をよぶ言葉。「土佐っぼう」「会津っぽう」の類。
いしやのひっこし
〔石屋の引越し〕荷が重過ぎるというしゃれ。
いしゅ
〔意趣〕遺恨。怨み。「意趣返し」はしかえし。「意趣斬り」は意趣をもって人を斬ること。
いじょう
〔以上〕五節句や具足開きなどの式日に登城して、将軍家にお目見得できる、すなわち「お目見得以上」の略。→「いかもの」。
「一万石以上を大名と云ひ九千九百九十石以下御目見得までを旗本と云ひ、御目見得以下を御家人(ごけにん)と云った。」(岡本綺堂「江戸に就ての話」)
いじょく
〔居職〕自分の家にいてやる職業。例えば、彫金師とか、袋物をこしらえる人とかいう風にである。
いしをだく
〔石を抱く〕昔は、拷問のとき重い石を膝に抱かされた。膝が破れて血を見ることがある。
いじんかん
〔異人館〕西洋人の家。
いすかのはし
〔鶍の嘴〕諸事万事行き違ってやろうとおもったことが駄目になること。鶍という鳥のくちばしはくいちがっているゆえにいう。
「それからといふものはする事なす事鶍の嘴、」(三遊亭円朝「名人長二」)
いすり
強請(ゆすり)の江戸なまり。
いせのつぼやのかみたばこいれ
〔伊勢の壷屋の紙煙草入〕参宮土産の紙製の安価な煙草入。壷屋は、その専門販売店。先代木村重友口演「小金井小次郎」千葉県船橋市の大神宮にもでて来る。四世小金井芦洲(昭和23年末歿−先代)は、原地には同様の店が2軒並んでいて、その各自が「本家の隣りに贋物(にせもの)あり」と店頭に大書していたと、やはり「小次郎伝」の鹿沼の粂吉が丹波屋伝兵衛の許へ行く伊勢道中のくだりでいった。
いたいぼう
〔痛い棒〕昔は牢屋で拷問のとき、両手を後へ廻して棒と一しょにしばり上げて責めた、そのことをいう。
「まだ其頃は旧幕の時分に痛え棒を背負(しょ)ひ」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」)
いたがえし
〔板返し〕小さい厚紙の表紙と裏表紙のようなものの間に、さまざまの草花模様などがかいてあり、この表表紙と裏表紙を軽く指でおさえてひらいたりとじたりすると、中の絵がクルクル変るおもちゃ。上野や浅草の公園や、祭礼、縁日などで売っていた。他に、屋根をふきかえることをも、いう。
いたごと
〔痛事〕金がかかりすぎたこと。「これは痛事だった」
いただく
不快にさせること。
いたちのみち
〔鼬の道〕ゆききをしなくなったこと。鼬がゆく先を突っ切ると不幸なことがあるという。「近ごろはとんといたちの道で、お立ち寄り下さいませんねえ」
いたちのめかざし
〔鼬の目かざし〕手を目の上に上げ、遠くを見ること。
いたみしょ
〔痛所〕からだの痛む部分。
いたりせんさく
〔至り穿鑿〕スミからスミまでしらべ上げること。
いちご越後
(えちご)のなまり。
いちごうとっても
〔一合取っても〕最々下級の禄をとっても武士は武士であるという意味。
いちじき
〔一食〕1回分の食事。1日2食を「二じきですます」といった。
いちずいに
〔一図意に〕一図に。ひたすらな心で。
「良人(おっと)を思ふ一図意に屏風のもとまで忍んで来ました。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
いちだいじんしょう
〔一代身上〕一代で築き上げた財産。
いちぶへん
〔一分片〕一分(25銭)と少し。「一分片ばかりもっている」
いちぶんがたつ
〔一分が立つ〕士族(武士出身)のことばで、男が立つ。面目が立つ。
いちまいかんばん
〔一枚看板〕ナンバーワン。昔の寄席の入口には高く招き行灯がかかげられていたが、そこへ大てい3、4人の花形の名がかかれるのに、特別にお客をよぶバリューのある芸人のときは、たったひとりの名のみが筆太(ふでぶと)に行灯へもポスターへもかかれた。

itimai
一枚看板

いちまつ
〔市松〕「市松縞」の略。
いちまつじま
〔市松縞〕黒と白とたがいちがいに碁盤縞(ごばんじま)のように並べた模様で、佐野川市松(享保から宝暦ごろの上方役者で、たびたび江戸へ下り、女形として好評だった)が「高野山心中」の小姓粂之助で、その袴(はかま)にはじめてこの模様をつかってから、はやった。
いちもんあきない
〔一文商い〕小さな商売。
いちもんふつう
〔一文不通〕目に一丁字(いっていじ)もない意味。無筆(むひつ)。
いちらつ
〔一埒〕一件。「この一埒がつかないといけない」
いちりゅうまんばい
〔一粒万倍〕一と粒まいた種から、それが成長し、何層倍かの実がえられること。酒をつぎ過ぎて方々へこぼれ、ちらばった酒のしずくを、一粒の種が万倍にみのった光景に見立てていう冗談もあった。
いっかのがれ
〔一か遁れ〕一時逃れ。
いっきうちのなんじょ
〔一騎打の難所〕山と一騎打(いのちがけ)のおもいで越さねばならぬけわしい危険な道。
いっきだち
〔一己立〕ひとり立ち。一個が「キ」になまった。
いっけん
〔一件〕あの。例の。問題の。話題になっている所の。評判の女などにもつかう。
「おらあ上野の一件と思って影を隠したが、それぢゃあ比企(ひき)の一件か。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)
いっさんまい
〔一三昧〕一心。一事に集中した心境。
いっしょういちだい
一世(いっせ)一代のなまり。
いっせんじょうき
〔一銭蒸汽〕明治の中頃以後、隅田川をゆく小さい蒸汽船で、永代橋・吾妻橋間と吾妻橋・千住間とあり、船中には説明入りでエハガキや赤本を売りに来る行商人があった。はじめ1銭均一でこの名があったが、太平洋戦争の前に廃されるころにはもちろん1銭ではなかった。
いつぞは
いつかは。いつぞやは。
いっち
一ばん。殊に。とりわけ。「あの女がいっちいい」
いっちょこ
〔一猪口〕一杯。「一猪口さし上げたいなあ」
いつづけ
〔流連・居続け〕色町で一夜明かした遊客が翌日もかえらず遊びつづけること。
「いつぞや主(ぬし)の居続けに、寝巻のままに引寄せて、たがひに語る楽しみの」(新内「明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき)ーー浦里時次郎」)
いっぽん
100両。
「塩噌(えんそ)の銭にも困ったとこから、百両(いっぽん)ばかり挊(かせ)がうと、損料物(そんりょうもの)の振袖で役者気取りの女形。」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)。
「百目」「一つ」ともいう。金額をあらわにいわない都会人の神経から、江戸時代には金の数え方に関するおびただしい隠語ができた。たとえば「半分(50両)」「片手(5両)」「千疋(びき)(2両2分)」など。しかし、「三つ」といっても必ず「300両」とは限らない。3朱、3両、30両、3000両というふうにその場その場の条件次第で単位は違う。
いっぽんどっこ
〔一本独鈷〕仏具の独鈷(とっこ)に似た模様を織り出した厚地。琥珀(こはく)織及び博多織帯に多い。→「けんじょうはかた」
いとおり
〔糸織〕縒織(さおり、ねじって強くした糸で織ったもの)の絹織物。
いとだて
〔糸立〕タテを麻糸、横を藁(わら)で織った莚(むしろ)。旅行などに日除(ひよけ)、雨覆(あまおい)としてもちいる。「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)」の与右衛門、「田舎源氏露東雲(いなかげんじつゆのしののめ)の光氏、「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大詰のお嬢吉三がまとっている。ともに、雨雪をしのぐと同時に人目をもさけようとしていることがわかる。
いどばたかいぎ
〔井戸端会議〕長屋の神さんたちが、共同でつかう井戸のそばで世間ばなしをすること。井戸は、明治中期以後は共同水道に変ったが、井戸端会議のことばはその後もつかわれた。
いとまさ
〔糸柾〕木材の木理(きめ)の糸のようにこまかいもの。
いな
→「いなかっペえ」
いなかっペえ
〔田舎っペえ〕田舎もの。略して「いな」ともいった。江戸人が地方人をさげすんでいうときのことば。→「ひゃくしょう」
いなせ
〔鯔背〕勇み肌。鉄火(てっか)。語源は、日本橋魚河岸の威勢のいい人々が髷(まげ)を鯔の背の形にゆったことにある。
いなり
〔居形〕その職業らしい住居と服装。
「玄関がまえでも医者居形(いしゃいなり)で、これまでこけをおどして来たのよ。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
いぬおどし
〔犬威し〕犬をおどかす役にぐらいしか立たない刀。伊勢屋稲荷に犬の糞が江戸の名物であった時代、のら犬は明治中期まで東京に少なくなかった。
「犬威(いぬおど)しでも大小を伊達にさしちやあ歩かねえ。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
いぬしし
猪(いのしし)のなまり。「いぬししァ豆くってホーイホーイ」
いぬのかわばた
〔犬の川端〕川っぷちは寂しく人通りがないゆえ、犬が通ってもたベものが落ちていない。そのように途中で飲食をしないで、どこかへ行くことをいう。略して「きょうはイヌカワだよ」。
いのこり
〔居残り〕支払いができないで、遊女屋や待合へのこっていること。落語の「居残り佐平次」のような豪のものもある。
いのこりめし
〔居残飯〕「居残り」がたべるひどいそまつな食事。
いばりをつける
〔威張をつける〕いばってみせること。「意張をつけるなア後(あと)にして、」(仮名垣魯文(かながきろぶん)「西洋道中膝栗毛」)
いまがに
いまだに。
いまさか
〔今坂〕「今坂餅」の略。
いまさかもち
〔今坂餅〕餡(あん)を包んだ楕円形の、紅や緑に着色して、焼板の上で焦目(こげめ)を付けた餅。ようかんや大福と同じようにごく大衆的な菓子だったから、落語家の芸名にも、明治時代の古今亭今輔の門人には、餡古楼(あんころう)今坂があった。
いまとうせい
〔今当世〕今の時代にピッタリという意味。ニュールックにもあたる。
「今当世の身装(みなり)だ」などという。鏑木清方「明治の東京語」に「古くは今当代と云っている」。
いまどやき
〔今戸焼〕台東区浅草今戸で焼いた火入(ひいれ)などのそまつな瀬戸物。福助やおかめや猫など。器量の悪い女のこともいった。「橋場今戸の朝煙」と邦楽にあるは、この今戸焼を焼く煙である。
いみ
〔忌〕80日間の喪(も)。「忌中(いみちゅう)」
いもしょせい
〔芋書生〕書生をののしる言葉。下宿で芋ばかりたべている奴という意味。
いもすけ
〔芋助〕百姓をののしることば。ものにうとい人。
いもむしころころ
〔芋虫ころころ〕大ぜいつながって芋虫のはうような恰好(かっこう)をして歩く女の子の遊戯。
いりかわ
〔入側〕書院造りの座敷と縁側との間にある一間幅(いっけんはば)の通路。
いりかわつき
〔入側付き〕「入側」のついた造作。
いりざけ
〔煎酒〕酒、醤油、鰹節を加えたものをいって、さしみや膾(なます)の味付けにつかうもの。
いりひ
〔入樋〕水の入口や吐口(はきくち)にある樋(とい)。
いりふねのクロス
〔入船の十字架〕港へ入って来た外国船の西洋人。みなクリスチャンで胸に十字架をさげていたから、そういった。
いりめ
〔入費〕費用。
いりやまがた
〔入山形〕iryamagataという形が入山形で、袖口を両方ひっくり返したときなど、この形になるので、「袖を入山形にして」といった。
いりわけ
〔事情〕わけ。理由。
いれごみ
〔入込み〕男女混浴。男女一しょに入るお湯。
いれずみなおし
〔再刺〕前科二犯。昔は一犯ごとに腕へ懲罰の刺墨をした。それを消すために、ことさらに灸で焼いた者さえある。
「お前もおれも押借(おしがり)で、二度まで墨が入ったからは、どうで始終(しじゅう)は斬られる体。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)
いれぶつじ
〔入れ仏事〕仏の供養につかう費用の意味だが、費用ばかりかかって利益の少ない場合にもいう。
「裸でやっても二十と三十掛けねばならぬ、まことにそれは入れ仏事。」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
いろあるはなはにおいうせず
〔色ある花は匂い失せず〕天性の美人は、初老にちかくなっても残んの色香がただよっている。元の意味は、美しい花は盛りを過ぎてもいい香りがなかなか消えない。
いろきのゆみ
〔色木の弓〕塗ってある弓。
いろけづら
〔色気面〕いろっぽい顔立ち。
いろどりする
〔色取する〕よろしく見つくろう。
「お母(っか)さん何か一寸お飯物(まんまもの)を色取してどうか……」(三遊亭円朝「松と藤芸妓(げいしゃ)の替紋(かえもん)」)
いろのなかだち
〔色の仲立〕情事の仲介。
いろのなかやど
〔情交の仲宿〕好いた同士を密会せしめるところ。温泉マークではなく、私的に恋びとたちのあうのに部屋を貸してやること。
いろめえた
〔色めえた〕色めいた。色っぽい。浮ついた。
「今はかうしてゐるものの、囲(かこ)はれ者とは表向、枕かはすはさておいて、色めいたことはこれほどもなく……」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなきけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
いわくつき
〔曰附〕因縁つき。
いわしのあたまもしんじんがら
〔鰯の頭も信心柄〕鰯の頭でも自分の信心次第で効(きき)めがある。近頃は、「信心から」として、鰯の頭でも一心に信じて祈ることから御利益があるという風に解している。
いんぎ
縁起(えんぎ)のなまり。
いんぎょう
〔印形〕実印、認印など。
いんじゅん
〔因循〕ハキハキしないこと。「あいつは因循している」という風につかう。
いんず
〔員数〕数のことをいう。
「落せし金の員数といひ、おのれが仕業(しわぎ)と認めしゆゑ、」(河竹黙阿弥「富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま)ーー女書生」)
いんだら
淫乱でだらしのない人。円太郎馬車をなまって、エンダラ馬車といったのと、のちには意味がまじりあった。
いんちゃんてれす
淫乱でデレスケ。好色な人をののしっていう。元は外国タバコの名。
いんのくそでかたき
〔犬の糞で仇〕いんはいぬのなまり。わずかなことをうらまれ、つまらぬ所で復讐されること。
いんぷく
〔陰服〕物忌み。人の死後、殺生や肉食を初七日までつつしむこと。
「七日の間は陰服といって、田舎などではエラやかましくって、とんぼ一つ鳥一つ捕ることが出来ねえ。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
いんりょく
〔引力〕引立て。
「羽振のいい渡辺織江の引力でございます。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
いんろう
〔印籠〕楕円形の三重か五重の小さい美しい箱。左右のハシに緒締(おじめ)、根附(ねつけ)をつけて帯にはさみ、丸薬(がんやく)や当座薬(とうざやく、イザというときにすぐつかえる薬)を入れた。江戸時代の礼服の装飾品(アクセサリー)で、梨地蒔絵(なしじまきえ)、螺鈿(らでん)、堆朱(ついしゅ)の加工品が多い。
「一つ印龍一つ前、これ助六が前渡り、風情なりける次第なり」(河東節「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」)

〔鵜〕底の底まで知りつくしていること。通(つう)なこと。鵜は水深くくぐって魚をとるからである。「あの家のことなら俺は鵜だ」
うかと
〔浮かと〕うっかりと。
うけしょ
〔請書〕うけたまわったことを記して差し出す文書。
うけたまわり
〔承り〕遊女が自分の金で情人をあそばせること。→「みあがり」
うけにん
〔受人・請人〕保証人。身許引受人。
うける
〔受ける〕もらう(バクチ用語)。
うこんのかみなり
〔鬱金の雷〕うこんは黄色ゆえ、黄色い雷でキライというシャレ。
うこんのはちまき
〔鬱金の鉢巻〕黄色い鉢巻で額(ひたい)を廻して巻くゆえ、気(黄)が廻るというシャレ。大阪の花柳界では、永くつかっていた。
うさあねえ
〔嘘はねえ〕ほんとうだ。ちがいない。
うさいかく
〔烏犀角〕黒色の犀の角。子どもの熱さましにつかう。
うさぎ
〔兎〕明治4年から兎の売買が大流行し、方々に「兎市」まで立って変った毛並の兎は600円に売れるなど、話題をのこし、同6年弊害多く、ついに禁止されたが、それまでつづいた。
「いつか兎で30円お前に貸した金があるが、」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)
うじうじ
優柔不断の形容。にえきらないこと。ハッキリしない人のこと。
うじこはんじょう
〔氏子繁昌〕身内(同志)が賑わうこと。転じて、自分自身が儲かることにもいう。
うしにもうまにもふまれぬ
〔牛にも馬にも踏まれぬ〕孤児がだれからも迫害されず、成長して社会へ出ることをいう。
うしぬすっと
〔牛盗人〕無口でハキハキしない人。
うしみつ
〔丑三つ〕午前3時。丑の刻(とき)は四分されており、丑一つ(2時)丑二つ(2時半)丑三つ(3時)丑四つ(3時半)。そして寅一つが4時。
うしろかげ
〔後影〕後というにおなじ。後姿。
「見すぼらしげなうしろ影」(近松門左衛門「丹波与作待夜小室節(たんばよさくまつよのこむろぶし)」上の巻・道中双六の段)
うしろまく
〔後幕〕寄席の高座の正面にかけられている花やかな色彩の幕。客から芸人へおくった幕で、昔はこれの多い少ないで人気が分かった。今は改名や真打になった祝いのときだけにおくられる。
うしろみ
〔後身〕後へ身体全体を振り向けること。
「達者で屋敷へお帰んなせえよ」と後見になって此方(こなた)を伸び上って見る。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
うしろみ
〔後見〕その人の背景になって力を貸すこと。今日では「こうけん」とだけ発音する。
うすがいぶんがわるい
〔簿外聞が悪い〕うすみっともない。少しみっともない。
うすかわ
〔薄皮〕皮の薄い今坂餅。→「いまさかもち」
うずら
〔鶉〕劇場の観客席の名称。舞台へむかって左右の一ばん後(その代り一般席より座席が高くなっている)の席で一つの桝(ます)へ約4人入れる。
「うづらを取置けとて、都なれぬ書生を芝居茶屋に遺(つかわ)せしに、」(斎藤緑雨「おぼえ帳」)
うそっぺい
〔嘘っペい〕うそ。うそっ八。
うたいこみ
〔うたい込み〕遊女屋その他の色町で、特に目的の女の名をいって遊びにあがること。名ざし。
うたぐちをしめす
〔歌口を湿す〕笛の唇へあてがう孔(あな)の部分を唾液(つばき)でぬらす。
「すすめに随ひ藤の方、涙にしめす歌口も、震(ふる)うて音をぞ、すましける」(並木宗輔他「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」熊谷陣屋の場)
うたぐり
〔疑り〕うたがい。
うだつ
〔梲〕新築で棟上(むねあげ)するときに立てる柱をいう。出世することを「うだつが上がった」。
うたぶくろはいかいぶくろ
〔歌囊俳諧囊〕短歌をつくるセンス、俳詣俳句に遊ぶセンス。囊は、知恵袋の袋。
うちかた
〔内方〕夫。うちのひと。
「うちかたは何でもハアひとりで心配ぶって、みっともねい事はしたくねえが、誰か識者(ものしり)に儀式(ようす)を聞きてえもんだ。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
うちかぶと
〔内兜〕内幕。その人、その家の何から何まで。「内兜をみすかされた」
うちげいしゃ
〔内芸者〕料理屋、遊女屋にかかえられ、その家に居住の芸者。内ばこ。
うちつけ
〔打つけ〕無遠慮。だしぬけ。露骨。
うちは
〔内端〕控え目。遠慮がち。
うちひも
〔打紐〕二筋以上の糸で組んだ紐。
うちょうてんかい
〔有頂天界〕天高く舞い上がるよう。喜びにワクワクフワフワ夢中になること。有頂天。
「このような若いきれいな別嬪(べっぴん)にもたつかれた事なれば、有頂天界に飛上り、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
うっさん
〔鬱散〕気晴らし。
うっすらあけ
〔うっすら明け〕やっと夜の明けそめたころ。
うでこき
〔腕こき〕「腕ッこき」ともいう。その道の腕におぼえのある者(職人などの場合に一ばんつかう)。今ならべテランとかエキスパートとかいうところ。
うでまもり
〔腕守〕二の腕につけた腕貫(うでぬき、二の腕にはめて飾りとする環)などに入れた神仏の守り札。
うでをつっぱる
〔腕を突っ張る〕腕力をふるう。
うどたら
〔独活鱈〕ウドと鱈の煮付け。
うなう
〔耘う〕たがやす。
「あるときは畑を耕ひ、庭や表のはき掃除をし、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
うなや
おだやか。
「どうせな、家もうなやにやアゆくめえと文吉も心配して居るが、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」
うのう
「打つ」の児童語。
うまがよい
〔馬通い〕馬へ荷を付け商売に行くこと。
うまご
〔午後〕正午(うまのこく)以後を、「ごご」といわず、「うまご」といった。大正末年、京都落語界の老匠桂枝太郎(先代)は「雷の褌(ふんどし)」という落語の中で「明日のうまご三時に夕立がござります」といっていた。
うまにはのってみろひとにはそってみろ
〔馬には乗って見ろ、人には添って見ろ〕何でも人間、一どは体験して見るものだ。
うままつり
〔午祭〕はつ午。
うまや
〔馬屋〕しまつや(始末屋)に同じ。勘定のできない客についていって、支払いをもらう、附馬(つきうま)を専門にする店。
うまれだち
〔産れ立〕生れながらの性質。「この子の性格は産れ立で直らない」などという。
うめあわせ
〔埋合せ〕差引ゼロ。バランスがとれた状態。
うやふや
要領を得ないこと。ウヤムヤ。
うら
〔裏〕「初会(しょかい)」のつぎ。二度目。「裏を返す」という。三度目から馴染(なじみ)になれる。廓のことば。
うらがえり
〔裏帰り〕裏切り。「ひっくり返る」ということばもある。
うらだな
〔裏店〕→「たな」
うらどおしをする
〔間道をする〕本街道以外を通る。
うらばしご
〔裏梯子〕料亭や遊女屋などで(一般の家にもあったが)入り口には大きな梯子段があるが、別に座敷の裏から下へかよう細い梯子があり、それをいった。
「手をたたいて会計なんざ野暮ですよ。いいかい、程のいいところで、お前が裏梯子かなんかから厠(はばかり)へいくふりをして降りてツて、一ツ手で会計をします。」(落語「明烏(あけがらす)」)
うらや
〔うら家〕便所。
うりたおす
〔売り倒す〕売りとばすこと。
ウルコール
「オルゴール」のなまり。
うるしい
「嬉しい」のなまり。
うるしのごとくにかわのごとく
〔漆の如く膠の如く〕男女の情交の余りにも濃やかで離れない姿。
うろうろぶね
〔うろうろ舟〕水上で菓子、酒、くだもの、その他を売る舟。うろうろこいで廻っているところから、いう。
うろっか
うろうろ。
うろん
〔胡乱〕あやしい。身の上の分からないこと。「うろんなものじゃない」とか、「うろんな奴だ」という風につかう。
うわじめ
〔上締〕衣類の上へしめる伊達巻またはその代用。「下締」の対。
うわぞうり
〔上草履〕遊女が遊女屋にいるときに、はいて歩く厚い草履。深夜、廊下を歩くその昔に、悲しい廓情調が感じられ、古川柳には「廊下から秋をおぼえる上草履」。

uwazori
上草履

うわて
〔上手〕上流。ただし江戸、東京でただ「うわて」といえば隅田川のそれにきまっている。「船頭さん、船をもう少し上手へやってもらおうか。船もいいが一日中乗っていると、退屈で退屈でならない」などと落語「あくび指南」の隠居もいう。
うわてくんだり
〔上手くんだり〕「うわて」にあった忍び逢い好適の茶屋。水神の八百松、梅若境内の植半など。
うわながし
〔上流し〕家の中にある流し(炊事場)。
うわのり
〔上乗〕荷とともに船へ乗り、それを処理、監督すること。今ではトラックの上乗などにいう。
うわんまえ
〔上ン前〕「上前(うわまえ)」のなまり。着物を重ねたとき、おもてへでる方。
うんしゅう
〔雲州〕金のない人。雲州みかんは種がないからである。
うんじょうじょ
〔運上所〕税関のこと。
うんぜえまんぜえ
大ぜいの意味。雲勢(雲霞の如くという意味で)万勢とかくのであろう。
「君方(きみがた)は大ぜい寄って集(たか)ってうんぜえまんぜえ他人(ひと)の宅へ押込んで何をするんです。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)
うんてれがん
間が抜けてデレッとだらしのない男。好色でおろかな人。
うんでんばんり
「雲泥万里(うんでいばんり)」のなまり。うんでんばんてん。
うんどう
〔運動〕散歩のこと。
うんぷてんぷ
〔運否天賦〕そのときの運しだいという意味。
えいえい
〔永々〕末永く。将来。
えいぶつ
〔英物〕すぐれた人。
えががり
「毯粟(いがぐり)」のなまり。五分刈りの頭。
えきしょ
〔役所〕刑務所のこと。苦役(ちょうえき)をする所の意味。
えきていきょく
〔駅逓局〕郵便局。
えずへかな
〔絵図へ仮名〕地図とちがって、山は山の絵、池は池の絵をかいた、わかりやすい道案内の図を絵図といったが、その絵図へさらにカナをふる。つまりくどいほどわかりやすくいってやること。
えぞうしや
〔絵草紙屋〕小説類の小売店であるが、絵草紙がおもな売品だった。一枚絵、二枚続き、三枚続きの錦絵、子どものおもちゃ絵、千代紙、芝居の似顔絵が店中にかかげられてあったが、明治の中頃、エハガキの流行とともにだんだんはやらなくなった。
「錦絵とはまことに能く附けた名で、その美しいことは云ふまでもないが、殊に各座の新狂言の似顔絵が絵双紙屋の店先にずらりと列んで懸けたのを仰ぎ見た時には、花と云はうか紅葉と云はうか、わたし等のやうな子供でも実に恍然(こうぜん)として足を停めずにはゐられなかった。
(中略)春雨や傘さして見る絵双紙屋 子規
かういふ風情は現代の若い人たちには十分に会得(えとく)されまいと思ふ。」(岡本綺堂「ランプの下にて」)
えだがわ
〔枝川〕大きい川のわかれ。支流。
えて
〔得手〕得意。「得手に帆をあげ」
えてきち
〔得手吉〕得意なもの。また男根をもいう。
えどぐち
〔江戸口〕江戸人の口にあうような調理法。
えどだすけ
〔江戸助け〕他人の代りに盃の酒をのんでやり、また一杯についで返すをいう。
えどぢか
〔江戸近〕江戸にちかいところ。
えどづめ
〔江戸詰〕「江戸屋敷詰」の略。家来がその主君たる大名の江戸屋敷の方へ転勤すること。「国詰」の逆。
えにかいたじしん
〔絵にかいた地震〕動かないこと。「サー話のつくまでは、絵にかいた地震じゃねえが、一寸たりともここは動かねえ」
エビシ
ABCのこと。
えびす
〔夷〕「えみし」の変化したもの。未開人。古代・中世はいわゆる「蝦夷(えぞ)」を指したが、近世からは一般的に「いなかもの」という程度に使われた。「お前のようなエビスになにがわかるか」
えびすぜん
〔夷膳〕膳をタテ板(普通は横板にすえるのに)にすえること。不吉という。
えふ
〔会符〕荷物につける目じるしの札。今日の小包へつける小さい紙とちがい、大名用の長持などは大きな板札を立てた。大正期まで荷物の木札をいっていた。
えり(もと)につく
〔襟(許)に付く〕えらい人のごきげんばかり取って利益を計る。権力に迎合する。
えんぎなおし
〔縁起直し〕不吉を祓い清めること。
えんこ
坐ること。児童語。
えんごくもの
〔遠国者〕四国とか九州とか東北、北海道とかの人を、昔はいった。
えんしゅうすかし
〔遠州透〕小堀遠江守政一の考えた型の透(すかしをこしらえた部分)。書棚の透かしになっている装飾の部分もいう。
えんすけ
〔円助〕1円のこと。初代三遊亭円遊の落語の幇間(たいこもち)が、「円助頂戴」などといって流行させた。
えんそ
〔塩噌〕塩とみそ。生活費。
「塩噌(えんそ)の銭にも困ったとこから、百両(いっぽん)ばかり挊(かせ)がうと、」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」)
「今日は塩噌の銭もねえ。」(同「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」
えんだり
プラスマイナス。差引き。つうぺ。
「今のお嫁入とえんだりにしませう。(不吉なことがあってもーー)」(三遊亭円朝「業平文治漂流奇談」)
えんたろうばしゃ
〔円太郎馬車〕乗合馬車のこと。四世橘家円太郎が、高座でこの馬車の真似をして、「おばあさんあぶないよ」と馭者(ぎょしゃ)のようにラッパをふいたのでこの名が起った。乗合馬車(無軌道)が鉄道馬車に流行をうばわれ、ガタ馬車がガタクリ馬車とののしられだすと円太郎もエンダラとなまり、「エンダラ帽子」「エンダラタバコ」といけないものの名に変った。

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円太郎馬車

えんつうふつう
〔えんつう不通〕音信をしないこと。
えんとうぶね
〔遠島船〕流罪(島流し)になる犯罪。「おれは遠島船を腰につけてるんだ。ちっとのことにおどろくか。」
えんりょあけ
〔遠慮明け〕謹慎中の期日が終った事。
おあい
〔お相〕お相手のこと。酒のときなど「お相をしましよう」という。
おあらため
〔お改め〕臨検。「程なくお改めが参ります」
おいからし
〔追枯し〕役に立たなくなるまで使いまくること。
おいこみ
〔追込み〕尾行、追跡。あとをどこまでも追って行くこと。
おいじき
〔追敷〕一どあつらえた食物が足りず、また追加すること。飯なら、「おいだき」。
おいずる
〔笈摺〕巡礼が着物の上に着る袖なし羽織に似た薄い白衣。笈(おい)とは仏具・食器・衣服などを入れて背におう葛籠(つづら)に似て、四隅に脚があり、開閉す可(べ)き戸を設けた箱で、それをおうとき背の摺(す)れるのを防ぐために着たのが最初であるという。
おいせん
〔負銭〕損をした上にまた金をだす。
おいそら
おいそれ。右から左へすぐ。
おいち
〔お市〕駄菓子の一種。
おいなりさん
〔お稲荷さん〕いなりずしのこと。昔は夜ふけに「おいなりさん」といって売り歩いた。
おいねえ
→「おえねえ」
おいめひきおい
〔負目引負〕売買や負債を他人が勝手にやり、その損失を自分が引き受ける破目となること。
「家事不取締りとなりまして、店の者がそれぞれに負目引負をしたために、身代(しんだい)は余程傾(かたむ)いた。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
おいもとご
〔お妹御〕
→「あにさん・あねさん」
おいら
〔俺ら〕自分の呼びかた。昔は女も使った。
「この『おいら』というのは、江戸文芸では女も云ってをり、家内の祖母はやはり『おいら』だったさうだが、これがごく軽く上品に出て、字面で感じるやうにいかついことはなかったというから巽(たつみ、深川)の芸者の、あの読むといかにもあらっぽい、いけぞんざいな(といふこの『いけぞんざい』が既に明治の語に属する)ロのききかたも、直(じか)にはもっと色気も味もあったのだらう。」(鏑木清方「明治の東京語」)
おいらんごろし
〔花魁殺し〕花魁泣かせ。「後家殺し」「女殺し」などの「殺し」。
おいらんどうちゅう
〔花魁道中〕名高い廓で一定の日にスター級の遊女が盛装して廓内を練り歩くパレードをいう。歌舞伎「籠釣瓶」の佐野次郎左衛門も落語「千早振」の竜田川も、これを見たばかりに魂うばわれ悲劇の人となっている。

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花魁道中

おうえさま
〔お上様〕旦那さま奥さまとうやまって呼ぶ代りの言葉。
おうたいじょ
〔応対所〕応接間。
おうちゃくもの
〔横着者〕一般にはしっていても何にもしない人をいうが、悪人の意味にもつかわれた。
おうてい
〔押丁〕刑務所で看守長や看守を助けて囚人をとりしまる下役。
おうでまえ
〔お腕前〕凄腕。「君もなかなかお腕前だね。大方(おおかた)君はあの婦人を、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
おうどう
〔横道〕無理。横車。わがまま。
おうむせき
〔鸚鵡石〕声色(こわいろ、声帯模写)をつかう人のために、昔の芝居の中で売っ
た名ゼリフ集。劇場の公演のたびに新しく売り出し、表紙は役者の似顔絵。明治以後は「影芝居(かげしばい)」という名に変り、表紙は図案風になった。
オウライ
〔応来〕すぐにいうことをきいて男の自由になること。応来芸者。英語のAll rightつまり「オウライ」の転入か。
おえない
〔負えない〕始末におえない。手におえない。しようがない。心ない。くだらない。→「おえねえ」
おえねえ
→「おえない」「おいねえ」とも発音する。
「『お前から預った50両の証文を又とられてしまった。』『ええ、おえねえ事をするぢゃあありませんか。』」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
おえねえもの
〔負えねえもの〕ろくでなし。手のつけられない人。
おおあせ
〔大汗〕汗みずく。汗だく。
おおあつあつ
〔大熱々〕夢中になること。ほれて熟を上げること。
おおいりば
〔大入場〕劇場の2階の観客席の奥で、立見(たちみ)の前にある大衆席。
おおかたならず
〔大方ならず〕一と方ならず。「大抵(たいてい)や大方、案じたことではない」など。
おおかみのきんたま
〔狼の睾丸〕だれも手をつけないこと。「うんこのひしゃく」に同じ。
おおかめ狼(おおかみ)のなまり。
おおぎょう
〔大形〕大そうらしいこと。仰山。
おおぐち
〔大口〕「大口袴」の略。
おおぐちばかま
〔大口袴〕束帯(そくたい、礼服を着し、大帯をたばねる)のとき、表袴(うえのはかま)の下にはいた一種の袴で、紅の生絹、平絹、張絹(はりぎぬ)などで製し、裾の口の大きく広いもの。直垂(ひたたれ)、水干(すいかん)の下にももちいられた。
おおくぼみ
〔大凹〕川の一ばん深いところ。
おおけいき
〔大景気〕景気のいいこと。
おおざっぱ
〔大雑把〕あらかた。あらまし。大体のところ。ぞんざい(テイネイでない)という意味にもつかわれる。
おおじあわせ
〔大仕合せ〕大へん幸福。
おおしかられ
〔大叱られ〕大小言。大目玉。
おおず
〔大図〕大体ということ。
おおぜいまんぜい
〔大勢万ぜい〕大勢に万ぜいと重ねて意味を強めた。万ぜいの語はいま全くに亡びた。
おおぜいろ
〔大蒸籠〕そばの沢山入っている蒸寵(せいろう)をいう。
おおせきける
〔仰せ聞ける〕おっしゃる。
おおせつけられ
〔被仰付〕御命令。「殿のおおせつけられだから仕方がない」。御命令状を「被仰付書」(おおせつけられかき)。
おおだい
〔大台〕豪華な台の物。→「だいのもの」
おおだいこ
〔大幇間〕一流幇間のこと。古川柳の「幇間持あげての上の幇間持」で商家の旦那が道楽のはてに身を投じたのがあり、吉原松廼家露八のごとく彰義隊の成れの果があり、みなインテリで風流人だった。また明治落語界の名物となった円遊のすててこは吉原の民中(みんちゅう)がアレンジしたもの。立川談志の「郭巨(かっきよ)の釜掘り」は同じく吉原の宇治喜美太夫が創作した。その座敷振りも品があって、おのずからユーモアがあふれていた。額(ひたい)を叩いて駄洒落(だじゃれ)を飛ばし、祝儀にありつくことをのみ専門としている連中とは全くちがっていたといわれる。
おおだな
〔大店〕大商店。→「たな」
おおたば
〔大束〕大きなこと。「大束なことばかりいう」「大束をぬかすな」
おおたぶさ
〔大髻〕男子の結んだ髻(もとどり)を大きく取って結んだもの。力士や俠客の髷(まげ)に見られる。
おおっぴら
おおびら。かくさないこと。
おおどけい
〔大時計〕町中にある時計台のこと。

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大時計

おおどぶ
〔大溝〕昔の東京下町には小川にちかい大きさの溝があり、それをいう。
「わるくそばへやがると、大どぶへさらひ込むぞ、鼻の穴へ屋形船を蹴込むぞ。口を引裂くぞ。こりや又何のこつたエ。」(津打治兵衛「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」三浦屋格子先の場)
おおひら
〔大平〕お椀の大きなもので、おひらともいう。
おおふでかし
〔大不出来し〕大きな不出来し。→「ふでかし」
おおへこみ
〔大へこみ〕参ったとか、やりこめられてくさったとか、いう意味。
おおみ
〔大見〕大そうしばしば見ていること。
おおめいてい
〔大酩酊〕大酔。
おおもらい
〔大貰〕十二分以上に沢山貰ったこと。
おおらんちき
〔大乱ちき〕大さわぎ。それも迷惑のかかるようなさわぎという意味である。
おかいこぐるみ
〔お蚕ぐるみ〕当時は安かった木綿の着物に対して、蚕(かいこ)が吹き出す高級品の絹物専用。ぐるみは身体を包(くる)みの意。何不自由なく育てること。絹布(けんぷ)ぐるみ。
おかご
〔お駕籠〕色町へ泊りつづけること。→「いつづけ」
おかざりまつ
〔お飾松〕門松。おかざり。
おかしら
〔お頭〕番頭(ばんがしら)の意味。武家の番衆ーーつまり御殿につとめ、雑務や警衛(けいえい)をつかさどる人々の長。
おかぞくたばこ
〔お華族煙草〕上流紳士の煙草をすうエチケットをいう。
おかち
〔お徒士〕徒歩でお供や行列の一ばん先の案内役を務めた侍。転じて「おかちでお越しになった」などにいう。
おかちん
〔お餅〕正月用の餅。
おかどおおい
〔お門多い〕訪問先の多い。「お門多いところをこんなものを頂きまして」
おかばしょ
〔岡場所〕新宿・品川・板橋・千住の「四宿(ししゅく)」をはじめとする吉原以
外の花街。
おかぼれ
〔傍惚〕他人の恋人にほれること。動詞は「おかぼれる」。「おかぼれて」は「おかぼって」とも発音する。
おかまい
〔お構い〕→「かまう」。お構いになった者を「お構い者」。
「お坊吉三と肩書の武家お構ひのごろつきだ。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買」(さんにんきちさくるわのはつがい)大川端庚申塚の場)
おかまいうち
〔お構い内〕かこいの中。柵(さく)の中。
おかまをおこす
〔お釜を興す〕立派に世間でもみとめるような家となること。
おがみうち
〔拝み討ち〕両手をおがむときの形にして斬りおろすこと。刀の柄(つか)を両手でにぎり、真向(まっこう)に振りかざして斬り付けること。
おかみどおり
〔お上通り〕殿さまのすぐおそばにいて公認のお妾。
おがみをあげる
〔拝をあげる〕拝む。祈祷をする。
おかやき
〔傍焼〕自分に関係のないことに焼くヤキモチ。「傍焼半分にいやアがった」
おきつぎ
〔置つぎ〕相手の盃の膳の上においてあるのを、取り上げさせないで酒をつぐこと。
おきてぬぐい
〔置手拭〕頭や肩へ手拭をのせておく。
おきなごうし
〔翁格子〕格子(こうし)の中にさらに多くの細い格子をあらわした縞(しま)。「天保六花撰」では、3000歳の廓抜けに片岡直次郎がお召縮緬翁格子の褞袍(どてら)を着ていて、そのためにアリバイがうたぐられる事件がある。
おきまり
〔お定り〕いつもいう同じこと。きまっていること。おさだまり。遊女屋などであがる前にきめた一定(一般的な)の金額。→「きまり」
おきゃくらい
〔お客来〕訪問客のあること。
おきょうげんし
〔お狂言師〕千代田城大奥の御殿女中へ、座興(ざきょう)のため簡単にできる芝居を教える振附師(ふりつけし)。
おきんいん
〔お金印〕登山記念に神社で衣服に押してもらう印。今日ならスタンプ。
おく
〔奥〕妻。
「奥。金(きん)の働きぶりをみろ。」(落語「素人鰻(しろとうなぎ)」)
「奥や」「旦那さま」「植木屋さんにおひたしを……」(落語「青菜」)
おくぐら
〔奥蔵〕店につづいた蔵でなく、奥にある土蔵。落語「質屋蔵」の、お化けの出る蔵などがそれであろう。
おぐし
〔お髪〕髪のこと。「大そうおぐしがよくおできに」などという。
おくのかこい
〔奥の囲い〕奥の四畳半。足利義政のころ、茶道の祖珠光(しゅこう)が、慈照寺の銀閣にもうけた四畳半の茶室を屏障(へいしょう、しきり)で四方を囲ったことが語源である。
おくびょうまど
〔臆病窓〕商家の雨戸にある小窓。夜は盗人をおそれ、そこをあけて商売をした。
おくみ
〔お組〕「お組屋敷」の略。
おくみやしき
〔お組屋敷〕幕府の与力(よりき)、同心などが一と組になって住まった邸。
おくむき
〔奥向〕居間(いま)の方。家政万般。家庭的事情。その処理を「奥向の切盛(きりもり)」という。
おくゆるし
〔奥許〕芸道の最後の秘密を教えてもらい、それを自分のものとすることを許されること。
おくら
〔お蔵〕やめること。蔵へしまってしまうという意味。劇場からでたことばで、「あの狂言はおくらにした」。
おくりおおかみ
〔送り狼〕女のあとを追い、あわよくば自由にしようとくっついて行く男。
おくる
腹を立てる。不きげんになる。むくれる。
おくんさる
「おくんなさる」(「おくれなさる」「おくだしなさる」)の略。
おけいはく
〔お軽薄〕お世辞。「あいつはお軽薄をいっていけない」
おけし
〔お消〕消炭の略。遊女屋の若い奉公人の男女。ねるとすぐ起されて用事をいいつけられるので、すぐ起るという所から消炭としゃれていった。お消はその愛称。
おげし
→「げし」
おこそずきん
〔お高祖頭巾〕目だけを出し、他の頭や顔の部分を全部包むもの。主として婦人の防寒用。日蓮宗高祖(こうそ)日蓮上人の像の頭巾に似ているゆえである。

okoso
お高祖頭巾

おけどうふ
〔桶豆腐〕吉原独自のさわらでこしらえ、据風呂桶(すえふろおけ)を小さくしたようなてつぽう(鉄か銅でできた火をたく筒)がついている桶に豆腐が入っていて煮ながらたべる、風流な湯豆腐である。吉原では湯豆腐のみは台屋(だいや、遊女屋へ料理をいれる店)でなく豆腐屋からじかにいれるのは、吉原のはじめには台屋などなく或は豆腐屋が唯一便利の食料品店だったので、その報恩ゆえかといわれている。
おこうがえり
〔お講帰り〕真宗で、その開祖親鸞上人の忌日に行う仏事。報恩講。
おこも
〔お薦〕乞食。大正初年までの東京人の家庭用語であった。
おこもり
〔お籠り〕信心のため堂などに泊って祈りつづけること。
おこり
〔瘧疾〕今日のマラリアと同じ蚊の媒介(ばいかい)で一定時間に起きる熱病。
「京へ来て紫宸殿(ししんでん)のお砂をにぎって見イ、瘧が落ちるという位やで。」(八世桂文治「祇園会」)
「いかさまなあ。この五丁町へ脛を踏ん込む野郎めらおれが名を聞いておけ。まづ第一(でえいち)瘧疾が落ちる。」(津打治兵衛「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」三浦屋格子先の場)
おさがり
〔お下り〕退出時間。
おさきとも
〔お先供〕→「さきども」
おざしき
〔お座敷〕茶屋または私邸へ余興に出演すること。芸者が行く商売先、出先をもいう。
おざしきさき
〔お座敷先〕芸者がよばれて行った先の相手の客。
おさしたて
〔お差立〕護送。
おさだまり
〔お定り〕→「おきまり」
おざつき
〔お座附〕芸妓が宴席で一ばん先に歌う御祝儀(ごしゅうぎ)の歌曲。
おさめ
〔納め〕おしまい。これで最後のこと。遊びおさめとか、また今年最後の不動尊の縁日を、おさめの不動尊とかいう。
おさをふる
〔長を振る〕一ばん勢力を示す。頭になっていばる。
おしい
味噌汁。
おしかけ
〔押掛〕客が指名しないのにこちらから顔をだすこと。「おしかけ女房」
おしきせ
〔お仕着せ〕→「しきせ」
おじぎなしに
〔お辞儀なしに〕御遠慮なしに頂きますの意味。
おじごく
〔男地獄〕女に身を売る役者。
おしこみ
〔押込〕強盗。
おしつけわざ
〔押附業〕おしつけがましいやり方。
おしつまり
〔押詰り〕月末ちかく。「押詰り月」は12月のこと。
おしぶち
〔災難〕わざわい。
おしまい
化粧のこと。
おしゃます
ものをいうことをからかっていう。「猫じゃ猫じゃとおしゃますが」。おっしゃいますではない。
おしゃらく
〔お洒落〕おしゃれをする人。服装をかざる人。
おじゃん
ダメになること。
おしゅうしちがい
〔お宗旨ちがい〕下戸に上戸らしいもの、上戸に下戸らしいものをすすめること。
おしゅぎょう
〔お修行〕お修行に対する敬意の寸志。
おじょう
〔お嬢〕娘さん。下につく「さん」「さま」をはぶいたいいかたで、親しみのこもる効果がある。例のお嬢吉三は友禅入りの振袖姿でかせぎ廻るところからつけられた呼び名。
おしょく
〔お職〕一軒の遊女屋で一ばん売れる遊女。今日のキャバレーやダンス・ホールでいうなら「ナンバー・ワン」である。また、ナンバー・ワンの位置を保つことを「お職を張る」という。
おすえ
〔お末〕将軍家または諸大名の水仕(みずし、飯をたいたりする役)女中。「お末のわざをしがらきや」(奈河亀輔「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」御殿飯焚き場)
おすまいさま
〔お住居様〕御守殿(ごしゅでん)にお住みになるおくさま。→「ごしゅでん」。
「旧幕のお大名で、赤い御門のあったお屋敷には、将軍家からお姫さまがお輿入(こしいれ)をなさいました目印(めじるし)でした。目印と申しては失礼に当りますが、そうしたお大名には、御門を赤く塗ってあったものです。ソノ御輿入をば『おすまゐさま』と申し上げていました。」(篠田鉱造「幕末明治女百話」)
おすまし
ツンとしている人。感情をみせず、とりかたづけている人。
おすわけ
「おすそわけ」の略。もらった品を少しずつ分けて方々の人に上げること。
おすわり
〔お据り〕「据り餅」の略。鏡餅。おそなえ。
おそなはる
〔遅なはる〕遅くなる。「遅なはりしは不調法(ぶちょうほう)。」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵」殿中松の間の場)
おそば
〔お側〕奥のおそば近くにつかえる女。
おそばごようおとりつぎ
〔お側御用お取次〕近侍(そばづかい)の頭のまた上の役で、直接に主君とものがいえる秘書役。
おそれべ
恐れますという意味。半可通(はんかつう)が「恐れべでゲス」などとつかった。
おたかの
〔お鷹野〕飼いならした鷹を放って野鳥を捕えさせる狩猟。鷹狩。→「たかしょう」
おたきあげ
〔お焼上げ〕行者の祈祷。毎月きまってやるのを「お月割(つきわり)のおたき上げ」という。→「かじ」
おたな
〔お店〕自分のつとめている店舗。→「たな」
おたふく
〔お多福〕おかめの面になぞらえ醜婦をいう。
おだま
〔男玉〕→「たま」
おだまき
〔緒手巻〕苧環。麻やからむしの葉の皮の繊維からつくった糸を、巻いたもの。「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」のいじらしいヒロイン杉酒屋のお三輪が恋しい男の裾に糸をつけそれをたどって追ってゆく姿(道行恋緒環、みちゆきこいのおだまき)は有名だが、あの白と赤の糸巻が緒環(おだまき)である。
おたまりこぼし
〔お溜小法師〕たまるものかということを、おどけてこういう。広津柳浪(ひろつりゅうろう)「今戸心中」に「お酒が毒になって、お溜小法師があるもんか」。おたまりこぶし。
おためごかし
〔お為転〕腹にもない都合のいいことばや行動。
おたらい
〔お盥〕妾などの好んでゆう髷(まげ)。鉄火(てっか)な感じの髷。

otarai
お盥

おだわらぢょうちん
〔小田原提灯〕不用のときは畳んで腰にさし、つかうときはひろげるようにした細長い提灯。享保のころ、小田原で売り出した。
おちいさいだい
〔お小さい台〕台の物の手軽な方。→「だいのもの」
おちこぼれ
〔落ちこぼれ〕うっかり忘れたこと。「落ちこぼれがあるといけない」
おちびん
出過ぎた人。
おちゃづけ
〔お茶潰〕遊女が自分のなじみの客のほかの知合のお客と情交すること。
おちゃのこさいさい
〔御茶の子さいさい〕何でもなくできるということ。平チャラに同じ。
おちゅうし
〔御中仕〕お中酒ともかく。さしみ、焼魚、おわん、くちとり、酒一本と飯のこと。中通(ちゅうどおり)の四つ物の意味。
おちょちょらもの
〔オチョチョラ者〕追従(ついしょう)をいうもの。おべっかをいうもの。
おつ
へんなこと。粋(いき)なこと。微妙なこと。
「『今度は妙(おつ)にすますんだな』と男は乗出して覗(のぞ)き込んだが。」(永井荷風「夢の女」)
おっかなびっくり
〔おっかな吃驚〕オドオド。少しこわがりながらという意味。「おっかな吃驚でしのんでいったよ」
おつかれすじ
〔お疲れ筋〕男女が同衾(どうきん)して、そのために疲れたことをひやかしていうことば。
おつぎ
〔お次〕奥方の部屋の次の間にあってつかえる人。
おつきもとじめ
〔お附き元締〕近習頭。殿さまのおそばにいるお小姓(こしょう)の一ばんえらい人。
おつきやごようたし
〔お搗屋御用達〕諸大名の米をつく御用を一手にうけたまわる商人。
おっけはれて
〔おっけ晴れて〕遠慮なしに。正々堂々と。「おっけ晴れて夫婦になろう」
おっく
お薬の児童語。
おっこち
情人。相手におぼれ、落ち込むという意味から来た。落語のマクラ(本題へ入る前のはなし)に、横町の清元の師匠の所へ行くという人に、「おっこちだネ」といって喜ばせ、うなぎをおごられる一節がある。
おつじ
〔お辻〕「辻番所」のこと。→「つじばんしょ」
おっしゃりきけ
〔仰しゃり聞け〕御伝言。
おっしゃりつけ
〔仰しゃり付け〕命令。仰しゃり聞け。
おっしゃりぶん
〔仰しゃり分〕おいいになりよう。
おったてじり
〔追立尻〕長くいる客に困って、主人がかえれといわないばかりの態度をすること。
おっつけ
〔追付け〕間もなく。
おっと
酒の児童語。
おっとうじん
〔男ッ唐人〕男の外人。→「めっとうじん」
おっぱる
〔押っ張る〕元気に心を取り直す。
おっぴしょる
折ること。
おっぴらき
5つとか50のこと。1つは人さし指1本、2つは人さし指と中指、3つは人さし指と中指と薬指、4つは人さし指、中指、薬指、小指で示すが、5つのときは5本の指をひらいてみせるからいう。片手。
おっぷ
豆腐の児童語。
おつぶしもの
〔お潰し物〕通用しないもの。不美人をもいう。また金や銀や鋼などの細工で、出来の悪いのはつぶしにして売ってしまおうなどという。
おっぽりだす
投げてほうりだすこと。
おつむ
頭の児童語。頭を叩くことを、「おつむてんてん」という。おつも。
おつりき
いいこと。おつなこと。気のきいていること。「あいつはおつりきなやつだよ」
おでいりがしら
〔御出入頭〕大名へ出入する商人の代表。
おてがらさま
〔お手柄様〕お手柄。戦時中の用語でなら、殊勲(しゅくん)甲。
おてさき
〔お手先〕→「てさき」
おてのもの
〔お手の物〕得意のもの。自分の自由にあつかえるもの。
おでばな
〔お出花〕煎茶へ湯をさし、ちょうどおいしいとき。お煮花(にばな)。花柳界では芸者が売れて方々の出先(お座敷)へ行けるようお出花といい、遊女屋や寄席では客があがる(来る)よう「あがり花」、略して「あがり」。
おてんきし
〔お天気師〕詐欺師。
おどうじ
〔お動じ〕さしひびいておどろくこと。
おとおりがけおめみえ
〔お通り掛けお目見得〕改まってあってもらうことでなく、殿さま御通行の際、はじめて存在を知って頂く方法。
おとこころし
〔男殺し〕男を悩殺する美人。
おとこひでり
〔男旱魃〕→「ひでり」
おとこべや
〔男部屋〕下男部屋。→「おんなべや」
おとし
〔落板〕木製火鉢の灰を入れるところを銅製にした部分。
おとしざし
〔落し差〕刀をこじりさがり(刀の鞘(さや)の末が下方へ下がるよう)にさすこと。衣類と帯の間にこじり下りにさすのは、直参(じきさん、幕府にじかにやとわれている武士)だけが許された。先代市川左団次の由良之助は直参でないのにこのさし方をしたので、講談界の名人だった錦城斎典山(きんじょうさいてんざん)が注意したことがある。
おとつい
〔一昨日〕おとといのこと。「おととい来い」といえば、二どと来るなということ。
おどつき
〔おど付き〕おどおどする。
おととご
〔弟御〕→「あにさん・あねさん」
おともさん
〔お供さん〕供の者を呼ぶ言葉。今日はほとんどつかわなくなった。
おどり
〔躍り〕重ねてつく特別のりそく。
おとりぜん
〔お取膳〕仲好く男女お膳をはさんでたべていること。新婚や恋人同士の場合に特にいう。大正初年まで町家の夫婦は連れ立っての外出に町内を離れるまでは別々に歩いていた。こういう時代には新夫婦のお取膳は随分からかわれたりしたものだった。
おなおり
代りにすえる。あとをつぐ。その家をつぐ。主人の死んだあと、その女の夫になる。
「色の浅黒い苦味ばしった、あのお方が後へおなほりなすったって、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
おなかい
〔御仲居〕お邸の奥向(おくむき、奥のこと)につとめて、膳所(ぜんどころ、台所)の炊事献立をつかさどった女。
おなかぐち
〔お中ロ〕武家屋敷の裏門と表門の間。中木戸。
おながれ
〔お流れ〕中止になること。えらい人ののんだあとの盃をうけること。「あの会はお流れになった」「お流れがいただきたい」
おなさけどころ
〔お情所〕女の陰部。
おなり
〔御成〕将軍の御外出。「御成先」は御成の先供。地名「御成街道」「御成門」
おなんどけんじょう
〔御納戸献上〕お納戸いろ(鼠がかった藍いろ)の博多帯。→「けんじょうはかた」
おにころし
〔鬼殺し〕ごくつよいもの。丈夫なもの。酒やタバコの名にあり、品物の丈夫なのもいう。
おにのへど
〔鬼の反吐〕やせて骨ばかりの人。鬼もたべるのがいやになり、ヘドを吐くだろうから、いう。
おにやく
〔鬼役〕人のいやがる役。主人の代りに毒味(飲食物を試験的に先へたべる)をする役。
おにょし
〔お女子〕女の子。
おのりだし
〔お乗出し〕御出世。落語「三味線栗毛」に酒井雅楽頭(うたのかみ)の妾腹(しょうふく)の子の角太郎がにわかに家督(かとく)をつぐことになるのを「お乗出しになりました」といっている。
おはきもの
〔お履物〕廓で遊女の情人を遠ざけること。下駄をはいては座敷に上がれぬから、上へ通さぬことをいう。
おはこ得意の芸。箱へ入ったよう、キチンと美しくでき上がっているという意味。十八番に同じ。芸以外では、「酒をのむとノロケをいうのが、あいつのおはこだ」という風につかう。
おはこばせ
〔お運ばせ〕おいでを頂く。御来駕(ごらいが)。「ーーを受ける」というふうに使う。
おはち
〔お鉢〕順番のこと。「お鉢が廻る」
おはつう
〔お初う〕「お初穂」の略。
おはつほ
〔お初穂〕神仏へ一ばん先に上げる食物。
おばなばら
〔尾花原〕薄(すすき)野原。
おばば
〔お馬場〕昔の大名屋敷の内には、馬術練習のため馬場が造られていた。落語「柳の馬場」にその光景が見てとられる。その入口を「お馬場口」という。
おはぶり
〔お羽振〕人に対する面目(めんもく)。
おはらいとり
〔お払い取り〕集金人。掛取り。
おはらいばこ
〔お払い箱〕奉公人にヒマをだすこと。
おはらだちさま
〔お腹立ち様〕御立腹という以上にテイネイなこうした江戸弁に注意したい。「さぞお腹立ちさまでございましょうが、お許し下さい」
おひきずり
〔お引ずり〕良家の女の着る長く裾(すそ)を引いた贅沢な着物。→「ひきずり」
おひきまわし
〔お引廻し〕お引立。
おひざおくり
〔お膝送り〕場内(じょうない)が満員のとき、もっとつめてアトの人をいれてくれということ。「お膝送りをねがいます」
おびしょりはだか
→「おびひろはだか」
おひねり
〔お捻り〕祝儀・布施(ふせ)のため小額の銭を紙に包み捻って渡すをいう。
おびひろはだか
〔帯広裸体〕男なら細紐(ほそひも)、女なら伊達巻1つ巻き付け、帯もしないままの、余りにも略装的な姿。
おひやる
おだてる。そそのかす。おべっかをいう。
「花魁(おいらん)は初会(しょかい)から少しおかぼれで居る所へ、番頭新造(ばんとうしんぞう)がそばからおヒヤリました。」(三遊亭円朝「後閑榛名梅香(おくれぎきはるなのうめがか)ーー安中草三郎)
おひら
〔お平〕平椀(ひらわん)にもった料理。
おぶえばだかろう
〔負えば抱かろう〕一つ世話してやれば、またさらに厄介をかけようという態度、そういう態度をよくとる人。今は「だっこでおんぶ」などという。
おふく
〔お福〕お多福、おかめのこと。お福の面。
おふなごよう
〔お舟御用〕将軍や大名の船の調達(ちょうだつ)一切をうけたまわる商人。
おぼうさん
〔お坊さん〕お坊っちゃん。
「こりゃあ己(おれ)が悪かった。人の名を聞く其時は、まあこっちから名乗るが礼義、ここが綽名(あだな)のお坊さん。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
おぼこ
生娘(きむすめ)。処女。
おまえさんのひと
〔お前さんの人〕あなたの亭主ということ。
「お前様(さん)の人は何所(どこ)へお行でなすったね?此(こう)降るのに稼ぎでもなからうが、」(小栗風葉「恋慕(れんぼ)流し」)
おまち
〔お町〕「お町衆」の略。
おまんぶ
巾着(きんちゃく)の児童語。
おみおび
〔御帯〕帯のこと。
おみじょう
〔お身性〕→「みじょう」
おみつき
〔お見附〕見た目。体裁。
おみやげ
〔お土産〕→「ごじさん」
おめくさん
〔盲目さん〕めくらのことをいう。「お娘御(むすめご)」を「おむす」と略すニュアンスに近い。
おめっち
お前たち。
おもいいれ
〔思入れ〕沢山。うんと。おもい切り(副詞)。感情をこめること。またその表情しぐさ(名詞)。つめて「おもいれ」と発音することもある。「いかにも口惜しいという思入れで」「あんまり腹が立つので思入れ悪態(あくたい)をついてやりました」など。
おもたたき
〔重叩き〕烈しく打ちたたく刑罰。杖刑。→「ひゃくたたき」
おもちりょう
〔お持料〕自家用。御自分の所有品。
「それにこの金側(きんかわ)の時計も(中略)お持料になされて下さい。」(三遊亭円朝「松と藤芸妓(げいしゃ)の替紋(かえもん)」)
おもて
〔表〕殿さまのいる方の御殿。争いごとを明るみへ出すのを、表沙汰にするというのは、殿のお耳へいれるということからはじまった。
おもてかた
〔表方〕劇場の営業事務にあたる人々。表口の事務所に詰めているゆえにこうよばれた。
おもてだな
〔表店〕→「たな」
おもてつき
〔表付〕下駄に畳表(たたみおもて)をはった場合をいう。
おもやく
〔重役〕重要な地位にある人。
おもらい
〔刎首〕斬罪。首をはねられること。
「とうにくれえこんで刎首(おもれえ)にでもなったかと思やア、又出て来やがった。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
おもりもの
〔御盛物〕神仏へ供える食物。お供物
おやくそく
〔お約束〕きまりきった具合。境涯・場景・容姿・葛藤などが非常に類型的であること。また別に、前から客に予約されている座敷(芸者の)をもいう。
おやざと
〔親里〕遊女となる契約をする上でかりに親になってくれる家。
おやしきさん
〔お屋敷さん〕邸育ち。武家出身。→「やしきもの」
おやだま
〔親玉〕数珠の中心になる大きな玉。転じて人の頭(かしら)に立つ人。庶民階級の人妻が亭主のことをいうことばでもある。「おらんちの親玉はね」
おやだまこんじょう
〔親玉根性〕親分らしい量見。
おやもとみうけ
〔親元身請〕遊女を、客でなく、売った親が金をだしてその身を引き取ってやること。もちろん、客がひかせる場合より、安価の費用ですむ。
およがせられる
〔泳がせられる〕花柳界で先方のいいように金をつかわせられること。
およばれ
〔お呼ばれ〕御招待を受けること。
およる
「寝る」の敬語。
おらっち
俺たち。俺っち。
オランダつけぎ
〔和蘭陀附木〕マッチのこと。
おらんち
〔俺ん家〕おれのうち。今日では「おれんち」になっている。
おり
〔折〕料理を詰めた折。大正中頃まで料理屋でたべ残しをキレイに折へつめ、ブラ下げてかえる風習があった。
おりいろ
〔織色〕まず糸を染めてから織った(織り上げたものを染めたのでなく)織物の色具合をいう。濃い浅黄いろのこともいう。
おりかがみ
〔折屈〕膝の屈折する部分。転じて礼節・エチケットにも通用する。「折屈正しい人」など。
おりがみ
〔折紙〕保証。鑑定書は奉書、鳥の子、檀紙などの和紙を横に二つ折りだったところから、転じて上記の意味となる。「折紙つき」。
「折角(せっかく)手に入るこの下坂(しもさか、刀の銘)も、折紙なければ鈍刀(なまくら)同然。」(近松徳叟(とくそう)「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」古市油屋の場)
おりすけ
〔折助〕武家の下僕(しもべ)。→「こんかんばん」「しんちゅうまき」「ちゅうげんこもの」
おりすけこんじょう
〔折助根性〕影日向(かげひなた)をしてはたらくこと。
おりせつ
〔折節〕折ふし。時々。
おりど
〔折戸〕枝(し)折戸。
おりのし
〔折熨斗〕熨斗包(のしつつみ)の紙をそのまま熨斗に代用するもの。
おれくち
〔折れ口〕知人の死んだこと。「今日は折れ口で行くんだ」
おろくぐし
〔お六櫛〕くしの一種。
「木祖村藪原を中心として製出されるお六櫛は、昔から木曾名産として名高いものである。(中略)歯の細い梳櫛(すきぐし)などは今も矢張りこのお六櫛が最上のものとして用ゐられてゐる。(中略)享和の頃、妻籠(つまごめ)宿のお六といふ女が脳の病を患って御嶽山に願を懸けたところ『みねばりの木もて櫛を作り、朝に夕に黒髪を櫛(くしけずら)ば、日ならずして必ず癒えなん』との御告(おつげ)を受けて、質の緻密(ちみつ)なミネバリの木を以て創(はじ)めて製(つく)ったのがその起源。」(母袋未知庵(もたいみちあん)「川柳信濃国」)
おわいや
〔汚穢屋〕清掃会社の汲取人。昔は肥桶(こえたご)をかつぎ、「汚穢汚積」とよび歩いて汲みに来た。
おんおくり
〔恩送り〕恩返しの贈り物。昔は「恩を返す」より「恩を送る」の方が多く使われたようだ。
おんか
〔恩家〕恩のある家。
おんきん
〔恩金〕人の恩情に浴して得た金。
おんじゃく
〔温石〕焼いた軽石を布などに包んで、冬日または病気のとき身体を温めるもの。塩を固めて焼いたり、瓦に塩をまぶして焼いたものをもちいる。今日は懐炉(かいろ)。
おんせいをはっす
〔音声を発す〕唄を歌う。
おんなぎゃはん
〔女脚絆〕婦人用の脛(すね)にしめる日本風のゲートル。
おんなだゆう
〔女太夫〕非人の妻や娘が、街上、三味線をひき、流し歩くをいう。正月は鳥追として元旦から七草まで鳥追歌を歌って流す。麗人が多く、武家の息子がほれて身を亡ぼすこともあった。抱一上人の句に、
 鳥追の昔もようや梅に鳥
 鳥追の足袋の白さや川向う
「編笠を冠り衣類は一切綿服にて絹物を用ひず何れも仕付(しつけ)の掛りし儘を着す只編笠の紐を結ぶ腮(あご)の所へは緋鹿(ひが)の子(こ)縮緬を捻(よじ)りて当て白粉化粧美しく衣類の着こなしもキリリとして姿よく美人多し大体は二人連れにて三味線を弾き三下(さんさが)りのチャンチャラスチャラカと鳥追歌を唱へ来る町内受持の小屋頭附来る者へは十二銅のおひねりを与ふ。」(高砂屋浦舟「江戸の夕栄」)

onnadayu
女太夫

おんなひでり
〔女旱魃〕→「ひでり」
おんなべや
〔女部屋〕下女部屋。
おんば
〔乳母〕「おうば」の音便。有福に育ったことを「おんば日傘で育った」という。
おんびんざた
〔穏便沙汰〕おだやかな態度。

〔窠〕格子(こうし)形のキチンとした模様。
かいえき
〔改易〕取潰し。断絶。武士の名称をのぞき、領地や財産や屋敷を没収し、平民にする刑。蟄居(ちっきょ、おしこめ)より重く、切腹より軽い。
かいかく
〔海角〕海へ陸地が突出し、岬になっているところ。
「海角に添ふ広間へ通ってからは、お浪は最(も)う殆ど上気した様に両の頬を赤くして、唯安からぬ思ひにのみ沈められて了(しま)ふ。」(永井荷風「夢の女」)
かいきん
〔廻勤〕方々の家を廻って挨拶して来ること。廻礼。
かいくれ
〔掻暮〕全然。
がいけい
〔外軽〕外部から軽んぜられること。世間への恥さらし。
「これを表向にすれば、第一はこの江沼の外軽にもなり、」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」
かいこく
〔廻国〕諸国巡礼して霊場や札所を参詣して歩く。
かいざんさま
〔開山様〕元祖。「あいつはいくじなしの開山さまだ」
かいしき
〔皆式〕全部。のこらず。「これでかいしき終った」
かいしょ
〔会所〕町の人々の集会する会場。吉原では大門を入って右側にあり、八丁堀の役人も出張、廓内の事件を取り締まった。
かいしょう
〔甲斐性〕生活力。
かいせき
〔会席〕「会席膳」の略。
かいせきぜん
〔会席料理〕上等の料理で、会席膳(12寸四方で、脚なく、黒塗、朱塗、溜塗(ためぬり)など)をもちいる。
かいせんどんや
〔廻船問屋〕旅客または貨物を運送する船のことを取り扱う店。
がいそう
〔外装〕「世間の手前こう申すのは外装で」などと、書生が得意でこうした漢語をつかった。
かいだんせき
〔戒壇石〕禅宗、律宗の門前に「不許葷酒入山門(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)」ときざんで建てた石の柱。戒壇とは、僧侶に戒を授けるために設けた土または石の壇であるが、お寺全体を戒壇と見て、その前に立てた石ゆえ、かくなづけた。
かいのてぬぐい
〔会の手拭〕花会(はながい)の挨拶にとどけて来る手拭。もらえば、祝儀をつつむ。→「はながい」
かいぶん
〔廻文〕廻読させる手紙。廻状。→「じゅんたつちょう」
かいぼり
〔掻掘〕池や沼の底まで水をすくいだしてしまうこと。
「池か川ならば、かいぼりをして、」(河竹黙阿弥「浪底親睦会」(なみのそこしんぼくかい))
かいまきどてら
〔掻巻褞袍〕掻巻であってどてらをもかねるもの。
かいめい
〔開明〕ひらけた世の中。文明開化。
かえしごと
〔返し言〕口答え。古くは、返歌(歌をよんでよこしたその返事の歌)のことをもいう。
かえりあと
〔去跡〕遊女屋でお客がかえったためにあいた部屋のこと。
「去跡になりましたから、花魁(おいらん)のお座敷へ行らっしゃいよ。」(広津柳浪(ひろつりゅうろう)「今戸心中」)
かおあか
〔顔赤〕恥しくなる。赤面。気がさす。
かかえっこ
〔抱子〕かかえている芸者。かかえ。丸がかえといって芸者屋に借金があり、自由の利かない若い芸者をもいう。
かがみつき
〔鏡付〕鏡の付いている化粧台の略。
「長火鉢から茶棚鏡附の化粧台抔(など)日常の生活道具が据ゑられてある。」(永井荷風「夢の女」)
かがみど
〔鏡戸〕鏡をはめこんだ戸。
かかりご
〔かかり子〕ゆくゆく老後の面倒を見てもらおうとおもっているわが子。
かかんどし
〔書かん同士〕→「よまんどし・かかんどし」
かぎ
〔鈎〕→「てかぎ」
かきいれ
〔書入〕一日の抵当。
かきいれ
〔掻入〕かきいれどき。一ばん利益の多いとき。
かきざらさ
〔柿更紗〕明治4年以後東京に流行して高価に売買された兎の中で、柿更紗(柿色の更紗模様)の兎はことにもてはやされた。
かきそ
〔柿素〕柿いろの布子(ぬのこ)、そまつな着物。
かきね
賄賂(わいろ)のこと。
かきやく
〔書役〕書記。
かくしおんな
〔隠し女〕世間に秘密の情人。
かくそで
〔角袖〕角袖(平服)巡査の略。
かくとう
〔角灯〕巡査がさげていたガラスで四方を張った四角形の手提灯(てさげとう)。
かくはい
〔各盃〕盃のやりとりなしに、おのおの自分の盃でのみ飲むこと。
かくばん
〔各番〕各自が順番をきめて物事をすること。
かくや香の物を細かくきざんで醤油にひたしたもの。鰹節をかければ、酒の肴にもいい。徳川家康のころ、料理人岩下覚弥(かくや)の創案ともいい、高野山で隔夜(かくや、一と晩おき)に堂を守る歯の弱い老僧のために製したともいう。落語「酢豆腐(すどうふ)」には銭のない町内の若い者が、ぬかみその古づけをカタヤにきざんでのもうという一節がある。
がくやとんび
〔楽屋鳶〕劇場の楽屋をあちこち訪問する人。
かくらん
〔霍乱〕炎暑の頃の急激な吐瀉病。今日の急性腸カタル、疫痢(えきり)、コレラに当るといわれる。丈夫の人が珍しくわずらうと、「鬼の霍乱だ」という。
かけ
〔掛〕掛売。未収代金。勘定。別に帯の、しめはじめる方のハシをもいう。
かけ
〔掛〕白色の掛帯。婦人が衣裳の装飾にもちいた帯で、肩から胸にかけるもの。
かけ
〔駈〕馬にのって早く走ること。ひとりで敵陣へのりこむこと。だから二度の駈というと、二ど敵陣へあばれ込むことになる。
かけがね
〔掛金〕「かきがね」のなまり。戸へさす鐶(かん)。
かけかまい
〔掛構い〕関係。かかりあい。「私の方とは掛構いがない」などという。
かけこみうったえ
〔駈込み訴え〕所轄(管理)の役所にうったえないで、当局者の家に至り、または路上でその人の行列に駈け込んで直接に訴え出ること。
かけこみねがい
〔駈込み願い〕→「かけこみうったえ」
かけこむ
〔駈け込む〕駈込み訴えをする。
かけざお
〔掛竿〕衣服、手拭などを掛ける横につるした竿。今日のハンガー。
かけさき
〔掛先〕商取引をした先の支払い。→「かけ」
かけながし
〔掛流し〕きょうだけかけたらあとはすててかえりみないこと。
かげべんけい
〔影弁慶〕うちにいると強いことをいって、おもてへでると弱くなる人。→「しじめっかい」
かけまもり
〔掛守〕信仰または災厄をまぬかれる意味で襟(えり)にかける守り袋。
かけまわり
〔掛廻り〕掛け(勘定)を取って歩くこと。
かけむく
〔掛無垢〕棺にかけ、おおう白無垢の衣。
かこいもの
〔囲者〕パトロンから月々のてあてをもらって一軒をかまえ、生活している女。明治時代までは色町の女の、そういう境遇を妾といい、素人女をかこいものと区別したように、当時の文章からはさっしられるがーー。
「その白ばけか黒塀に、格子造りの囲ひ者。」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
かござかな
〔籠肴〕青竹で編んだ籠へ入れた進物(しんもつ)用の肴(さかな)。
かこつ
怨む。こぼす。ぐちをいう。他のことにかけていう。
「恨み恨みてかこち泣き」(長唄「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」
かごぶとん
〔駕籠蒲団〕駕籠の座席の大きさに作った蒲団。
かごぼんぼり
〔籠雪洞〕細い竹で編んだ、籠に紙をはり、それをおおいにした行灯の一種。
かさ
〔瘡〕一般には「できもの」全部をいうが、特に梅毒をさす場合も多い。
かさぎ
〔笠木〕鳥居の上にわたしてある横木。
かさだい
〔笠台〕首のこと。笠の土台の略。首を斬られるのを「笠台が飛ぶ」。
かさっかき
〔瘡っかき〕梅毒患者。「うぬぼれとかさっかきのないものはない」
かさっけ
〔瘡っ気〕梅毒の気味。
かさねあつ
〔重ね厚〕背の三つ棟(むね)になっているカサネの部分の厚い刀剣。
かじ
〔加持〕いろいろの仏の大悲が行者に加わり、行者の信心が仏との因縁を感じ、病気災難をのぞくこと。どこそこのお寺でお加持があるというと、一定の日をきめてその寺で信者をあつめておがむことで、老若男女が参詣して賑やかである。
かじ
〔○日路〕○日間の旅程。「四日路もかかる」
かしき
〔炊事〕飯をたくこと。生活、活計をもいう。「どうもかしきが立ちません」。
かしぐら
〔河岸蔵〕河岸添いの土蔵。

kasigura
河岸蔵

かしざしき
〔貸座敷〕遊女屋のこと。
かしせき
〔貸席〕料金を取って集会や温習(おさらい)会に座敷を提供するところ。待合茶屋。
かしだな
〔貸店〕貸家のこと。→「たな」
かしだんす
〔菓子箪笥〕菓子を入れておく小型の箪笥。「春昼(しゅんちゅう)やあけても見たる菓子だんす竜雨」
かしぢょうちん
〔貸提灯〕昔の夜道は暗かったゆえ、料亭で店名入りの小提灯を客に貸した。しかし多くは宣伝用で貸しあたえてしまった。
かじぼう
〔梶棒〕人力車夫が両手でつかんで走る車の前についている棒。黒塗りが多い。

kajibo
梶棒

かしぼんや
〔貸本屋〕今日の貸本屋とちがい、明治中頃までの貸本屋は、自分でしょって得意先を廻った。これが廃れたのは、ボール表紙の洋装が出来、背負って歩くに不便となったからで、封切(新刊本)は特別料金で汚さぬよう読ませ、お宅へ一ばん最初に持って来ましたなどと数軒から高い貸本料を得ていたという。
「双子の着物に盲縞(めくらじま)の前かけ、己が背よりも高く細長い風呂敷包みを背負(しょ)ひ込んで古風な貸本屋が、我々の家へも廻って来たのは明治十五六年まで、悠々(ゆうゆう)と茶の間へ坐りこんで面白をかしくお家騒動や仇討物の荒筋を説明、お約束の封切と称する新刊物を始め相手のお好みを狙って草双紙(くさぞうし)や読み本を二種づつ置いて行く。これが舟板べいの妾宅や花柳界、大店(おおだな)の奥向(おくむき)など当時の有閑マダムを上得意にして一寸オツな商売。」(山本笑月「明治世相百話」)
カシミール
カシミヤ。印度カシミヤ地方に産する山羊(やぎ)の毛織物。
「華美(はで)なるカシミールのショール肩掛と紅(くれない)のリボンかけし垂髪(おさげ)と、」(徳冨蘆花「不如帰」)
かじやのせいぼ
〔鍛冶屋の歳暮〕やせた人のこと。鍛冶屋の歳暮は火箸をくれたから。
かしら
〔頭〕町内の鳶頭(とびがしら)。昔は、町内の大商店には出入りの鳶の頭があり、非常の場合には駈け付けて事件をさばいた。「弁天小僧」の強請場(ゆすりば)、「加賀鳶」の道玄の強請場にこの光景は見られる。明治大正のころまで頭は朝食はどのお店(たな)で、昼食はどのお店(たな)でという風に、日々の食事がみな出入り先でできたくらいである。→「とび」「たな」
かしわもち
〔柏餅〕夜具ふとん一枚へ、掛けぶとんがないため、くるまって寝ること。菓子の柏餅に見立てて、いう。
かす
小言。「かすをくう」
かすがどうろう
〔春日灯籠〕笠が大きくなく、丈が高く、火袋は六角または四角、二方に雌雄(めすおす)の鹿、二方に雲形に日月を浮彫(うきぼ)りにした灯籠。白川御影石(京都・白川産
の白色の地に黒い錆を帯びた花崗岩(みかげいし)の一種)などが使われる。
かずさかごえ
〔数坂越〕数々の山坂を越えて行くこと。
かずさど
〔上総戸〕上総、安房などから船で江戸へ輸送して来た既製品の雨戸。節があろうとかまわずにこしらえる粗製品で、もっぱら貸長屋に使用した。また上総は狩野山はじめ杉の産地、上総女は働き者ゆえ、出稼ぎ人以外は戸の製作に当るが、女の打つ釘はきかぬたとえで、いよいよ粗製濫造なのである。円朝の作品にはしばしば見られ、「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」では、飛騨山中のあばら屋の雨戸にまで、上総戸云々とある。
がすはちじょう
〔瓦斯八丈〕瓦斯糸(木綿糸のおもてを瓦斯の焰で焼いてスベスベした光りをだしたもの)で織った八丈。
かすり
上前。
「鬼といはれた源七が爰(ここ)で命を捨てるのも、餓鬼より弱い生業(しょうべい)の地獄(下級の娼婦)のかすりを取った報いだ。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈ーー髪結新三」深川閣魔堂橋の場)
かする
「かすり」をとる。上前をはねる。
かすれかすれ
断続。とぎれとぎれ。
かぜ
〔風〕警八風(けいはちかぜ)の略。風俗係の刑事の臨検をいう。犯人が検挙や逮捕を事前に察知して逃げるのを「風をくらって逃げる」という。
がせい
〔我勢〕骨身をおしまず、はたらくこと。
かせぎにん
〔稼ぎ人〕泥棒のこと。
かた
〔○○方〕職分。職業、勤務の分担の呼び方。「立方(舞踊手)」「出方」「裏方」「下方」「地(じ)方(演奏者側)」「催促方(督促係)」など。
かた
〔○○方〕しかた、方法の意味から広く転じて、上につく動詞の意味を安定、強勢させるために使う接尾語的な用法も多い。「読み方」「書き方」「払い方(支払)」「暮し方(生活)」「食い方(食事、食生活、生活)」「飲み方(飲酒)」「始末方」「借財方」。犯罪調査を「洗い方」といい、詮議するというのを「洗い方する」という。
かたあきない
〔片商〕半商売。遊び半分の商売。
かたうでをする
〔片腕をする〕半分、手助けをする。「わが悪事の片腕をいたした老爺(おやじ)、あいつを生かして置いては枕を高くは寝られぬ。」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
かたうま
〔半駄〕四斗樽の半分(2斗)。
かたおとし
〔偏頗〕一方だけを非とすること。片手落。「勘八のみおとがめがありましては、偏頗のおしらべかと心得ます。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
かたがき
〔肩書〕音の華族とか軍人とか博士などの場合もいったが、物凄い俗称のある無頼漢同士の意味にもつかった。「肩書つきの大泥棒だよ」
かたかげ
〔片陰〕盛夏、ようやく日がかたむきそめるとできる日かげのこと。小ばなしの一節に、「甘酒屋」「へい」「暑いか」「へい、熱うがす」「日かげを歩け」と甘酒屋をからかうくだりがある。
 片かげを早行く夜店車(よみせぐるま)かな 風生
 片蔭に立ちて扇をつかひをり 鼓天
かたきき
〔片聞〕一方だけで事情を聞く。
かたくねもの
〔頑固もの〕融通のきかない人。かたくなもの。
かたしょうばい
〔片商売〕遊び半分にかたわらでやる仕事。アルバイト。かたあきない。
かたす
〔片す〕脇へ除(ど)ける。片づける。この語、今日ではかえって関西にのこっている。
かたぞう
〔堅造〕まじめすぎる人。道楽をしない人。
かたな
〔方名〕おふみの方(かた)とかお堂の方(かた)とかいうたぐいの方号(かたごう)。
かたぬけ
〔肩脱け〕責任がなくなること。手をひいてもいいこと。「ヤレヤレ肩脱けだ」
かたはずし
〔片はずし〕奥女中の髪の一種。髪を輪に結び、笄(こうがい)をさし、その上部をはずしたもの。笄を抜けば、下げ髪となる。「先代萩」の政岡、「重の井子別れ」の重の井などがそうであるし、またこれらの役柄そのものが「片はずし」と呼ばれている。

katahadusi
片はずし

かたはのあし
〔片葉の蘆〕片方にしか葉のはえていない蘆。「本所七不思議」の片葉の蘆は、緑町3丁目から震災記念堂へ行く道の小川にあったという。岡本綺堂「室町御所」には片葉の蘆の伝説(ただし淀川の)が巧みに織り込まれている。
かたびいき
〔片贔屓〕片寄ったひいき。→「かたおとし」
かたびら
〔帷子〕麻糸で織った薄地の単衣(ひとえ)
かたもちのやきざまし
〔堅餅の焼冷し〕歯がたたないほど堅い人間の形容。
ガチガチする
ガツガツする。せき立てるようにする。
がちゃ
警官。巡査。サーベルの音からつけた名。
かつう
鰹(かつお)のなまり。「初がつう」
かつぎあきない
〔担ぎ商い〕荷をかついで売り歩く商い。
かっけい
〔活計〕生活。
かっこ
下駄の児童語。
かっこみうったえ
〔駈込み訴え〕→「かけこみうったえ」
かっこみねがい
〔駈込み願い〕→「かけこみうったえ」
かっこむ
〔駈っこむ〕→「かけこむ」
かっこんとう
〔葛根湯〕葛(くず)の根からこしらえた漢方薬で、風邪の薬。よく汗がでる。
がっさいぶくろ
〔合切袋〕こまごました携帯品を入れる袋。両口または一方口を紐でくくる。
がっそう
〔兀僧〕総髪(そうはつ、髪を後へなでつけにしていること)の人。

gasso
兀僧

がったい
〔合体〕合意。
「丈助とその方と合体して国綱の刀を盗み取り、三ケ年以前父小左衛門を鴻(こう)の台にて殺せし大悪人。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
かったいにぼううち
〔癩病に棒打ち〕癩病(らいびょう)で五体が崩れ、どうにも仕方のないものを、打ち叩いても意味ない。ムダというたとえにつかう。
かっちけなしのみありのたね
〔忝け梨の実ありの種〕「かっちけ」は「忝(かたじ)け」で、「辱(かたじ)けなし」を梨の実へかけ、梨の実だから梨(ありのみ)の種でありがたいというしゃれ。梨を「有りの実」というのは忌詞(いみことば)の一つで、音が「無し」に通じるからである。
かっちけねえ
忝(かたじ)けない。大盗賊や謀叛人が秘宝を手に入れたり難関を突破したりしたときに「ちぇえ、ありがてえ、かっちけねえ。大願成就疑いなし」などという。
かってふにょい
〔勝手不如意〕金銭に事を欠く。手許不如意。
かっぱごけにん
〔合羽御家人〕赤合羽を着てお供をする卑しい御家人。かっぱとガバと。「かっぱと伏して泣きゐたる」など浄瑠璃によく使われている。
かっぱのへ
〔河童の屈〕何でもないこと。何の苦労もなく出来ること。何のタシにもならないこと。「あんなことは河童の屁だ」。「木ッ端(こっぱ)の火」から転じたという説もある。「屈の河童」ともいう。
かど
〔廉〕理由の箇条(かじょう)、個所(かしょ)。問題点。「無礼のかどをもってお手討に相成る」など。
かとう
〔下等〕三等列車のこと。
「住田まで上等が五銭で下等が三銭だからわずか二銭ちがいで区別がつく。こういうおれでさえ上等を奮発して白きっぷをにぎってるんでもわかる。もっともいなか者はけちだから、たった二銭の出入りでもすこぶる苦になるとみえて、たいていは下等へ乗る。赤シャツのあとからマドンナとマドンナのおふくろが上等へはいりこんだ。うらなり君は活版でおしたように下等ばかりへ乗る男だ。」(夏目漱石「坊ちゃん」)
かとうば
〔裏頭歯〕丸くくってある下駄の歯。裏頭は、五条の橋の弁慶のように僧侶の頭を袈裟(けさ)で包んだ形をいう。
かどかどしい
〔角々しい〕ごつい。ごつごつした。角ばった。
かどがまえ
〔角構〕角に建てられている家のこと。
かどにとる
〔廉に取る〕いい立てにする。条件にする。
「覚えもねえ事を廉に取って、離縁を取るべえとするか。お父さんの遺言を汝(われ)忘れたか。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
かどわかし
〔誘引〕誘拐。誘拐者。
かなきん
〔金巾〕堅くよった綿糸で目をかたくこまかく薄地に織った広幅(ひろはば)の綿布。
かなどうろう
〔鉄灯籠〕鉄で造った灯籠で、庭へすえておくのとつるすのとある。一般に金(かな)灯籠といえば、鉄以外に銅や真鍮のもいう。
かなぼうひき
〔金棒曳〕鉄の棒を引きずったり突いたりしてその土地一帯の火の用心、戸締りをうながす人。芸者が祭礼の時、手古舞姿になり金棒をひいて歩くゆえ、手古舞のことをもいう。転じて、方々へいって噂をして歩くおしゃべりの人。「あいつの神さんは金棒曳でいけねえ。」
がなる
〔呶鳴る〕どなる。
かにがまんまたく
〔蟹が飯焚く〕蟹が泡を吹くことをいう。
かにからてんのうとらやあやあ
〔蟹から天王虎やアやア〕両手をおかしく組み合わせ、先ず蟹の形、つづいて神輿(みこし)の形などをかたどって見せる子どもの遊戯。
「千手陀羅尼経(せんじゅだらにきょう)」にある「なむからたんのとらやあやあ」なる文句の音感が日本人の耳には奇異・滑稽であるところからあほだら経などによく使われたのだが、さらに子どもの遊びにももちこまれたものらしい。
かにもじ
〔蟹文字〕外国語でかいた文章。横にかいてあるゆえ、蟹としゃれた。横文字。
かねさいかく
〔金才覚〕金算段。金策。
かねやき
〔金焼き〕牧場のしるしとして馬の股(もも)へ押す焼印(やきいん)で、結果として足が丈夫になる。
かのじ
〔かの字〕瘡(かさ)毒のかくしことば。
かばう
倹約すること。
30銭でも無駄な銭を、こんな中ぢやアかばひなせえ。」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)
かぶる
〔被る〕しくじる。また、他人の罪を引き受ける。
かへいじひら
〔嘉平次平〕埼玉県入間郡の人、藤本嘉平次がこしらえた銘仙織(めいせんおり)のはかま地。
かべす
菓子、弁当、すしの略。昔の劇場で、一ばん簡単な金のかからない見物は、このきまっている三種だけをとった。
かべちょろ
〔壁チョロ〕壁糸(強くよった太い糸と細い平糸とをよりあわせた糸)を横とし、縮緬(ちりめん)糸を縦として、縮みのような細かい皺(しわ)を織り出した絹布。地が厚く、頭巾(ずきん)や帯につかった。
かほうやけ
〔果報やけ〕果報負け。余りの幸福に罰が当りそう。
かまう
〔構う〕罪によって(ある地域、ある身分から)追放する。「江戸お構い」といえば二度と江戸へ帰るのを許されないこと。
かまくら
〔鎌倉〕祭礼囃子の一種。
かまける
拘泥(こうでい)する。とらわれる。
かまどをたてる
〔竈を立てる〕めしがくえる。生活ができる。
かまわれる
〔構われる〕追いはらわれる。→「かまう」
かみいれどめ
〔紙入留〕小刀。ちょうど紙入の落ちないよう差すと押さえになるゆえにいう。
かみおろし
〔神下し〕市子(いちこ、霊界の人々をよびよせて語る職業の女)が、いのるときに悲しげなふしでうたう唄。端唄(はうた、俗曲)にもあり、これは神さまづくしといった歌詞で、寄席でも歌われ、新内「弥次喜多」にもある。
かみかくし
〔神隠し〕幼児(まれには成年者も)が急に行方不明となったのを、神隠しにあったとか、天狗にさらわれたとかいう。幾月かを経てかえって来たとき、早発性痴呆症のごとくなっているものもあった。
「明治7年ーー3歳。5月下旬の夕刻のことなり。おきんといふ若い女中に連れられて、中坂の金魚湯といふ湯屋へゆく途中、おきんが知人に蓬ひて立話をしてゐる間に、岡本はゆくへ不明となる。大騒ぎになりて捜索したれど判らず翌日の早朝、おきんが再び中坂辺へ探しに出でたる時、岡本は30歳前後の袴(はかま)羽織の男に手をひかれて往来にたたずみてゐるを発見せり。驚き喜んで駈けよれば、男は岡本をおきんに渡して早々に立去る。岡本は手に菓子の袋を持ちゐたり。若い女中のことなれば、その男を追ひかけて詮議もせず。したがってその事情は不明に終る。」(「岡本綺堂年譜」)
かみきり
〔髪剪〕当時はいのちより尊しとした女の黒髪を切って、夫婦約束の印(しるし)に男にあたえた。
「指切・髪剪・起証文(きしょうもん)なんてえ訳にはゆかないから、腕守(うでまもり)でもとりやりするくらゐさ。」(三遊亭円朝「名人くらべ錦の舞衣」)
かみどこ
〔髪床〕髪結床(かみゆいどこ)が、かみいどこになり、かみどこになった。いまの理髪店。
かみどりしゃしん
〔紙取写真〕昔はガラス板へ撮影されている写真が多かったゆえ、印画紙へ焼かれた写真をこういった。
かみのぼり
〔紙幟〕刑死人を死刑の当日、町々を引き廻す折、その罪状を記して先頭に立てた紙の旗。
かめ
〔洋犬〕明治初期、西洋犬をかめ、かめ犬などと呼んだ。英米人が来い来い(Come here)といったのを、犬のことをそういうのだとおもい、そう呼びならわしたという説がある。石井研堂「明治事物起原」も同様の説をあげ、又、文久3年版「横浜奇談」にも「呼招くの言葉にて、犬の惣名(そうみょう)には非ず」とあるとかいている。「カムイン」から来たともいう。
かめのしょうべん
〔亀の小便〕ほんの少しずつだす形容。
かやく
〔加役〕臨時にふえた役。役者が急に別の役を余計につとめるときにいったのにはじまる。
「いい面皮(つらのかわ)だ、とんだ加役をいひつからア。」(仮名垣魯文(かながきろぶん)西洋道中膝栗毛」)
かよいばんとう
〔通い番頭〕他に世帯を持って、日々、店へかよって来る番頭。「与話情浮名横櫛(よわなさけうさなのよこぐし)ーー切られ与三郎」の太左衛門が格好の例。
から
接頭語で、下にくる「主によくない形容」ことばを強める役をする。てんから。全く。土台。「からっペた」ははなはだしく下手。「からどうも尻腰(しっこし)のねえ」「から意気地がねえ」
からき
〔唐木〕紫檀(したん)、黒檀(こくたん)、白檀(びゃくだん)、たがやさんなど熱帯産の木材。昔、中国渡来の品だったので唐木という。
からきし
すっかり。まるっきり。
からくりのしんしょう
〔機繰の身上〕やりくりの世帯。からくりの仕掛が多くの糸を引っ張っては背景の絵を変えるごとく、いろいろの苦しい仕掛をして生活して行く姿をいったもの。
からすなき
〔烏啼〕烏のなき声で吉凶(いいことわるいこと)をうらなった。
「けしからぬ烏啼き。お使に行くを否ぢやと思ふその矢先き、あれあれ烏啼きの悪さ悪さ。」(容楊黛(ようようたい)「鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」足利塀外烏啼の場)
からっきし
→「からきし」
からど
〔唐戸〕縦の中央に一本横に数本の桟(さん)がまじわってその間に入子板(いれこいた)(唐戸の框(かまち)と桟の間に差し込んだ板)を張った開き方。
からはな
〔唐花〕唐めいた花を図案化、紋章としたもの。
からもち
〔唐土餅〕もろこしもち。
からものどんす
〔唐物緞子〕中国から渡来した緞子。
からろ
〔空艪〕船頭だけで客ののっていない船の艪をいう。
「同じ早船の船頭が、お客を廓へ送り込んだ帰りの空艪を押しながら、摺れちがひに、其の唄って釆た船歌の声を止めて互に声を掛け合って行き過ぎる。」(永井荷風「夢の女」)
からをふむ
〔殻を踏む〕一文にもならないこと。「仕方がねえから、これ兄貴、殻を踏んで帰りねえ。」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」
かりたく
〔仮宅〕吉原遊廓が焼けたとき、深川また浅草山の宿、花川戸辺に臨時にできた、バラックの遊女屋。大店(おおみせ、第一流)の遊女がささやかな家におり、素一分(すいちぶ、一分ギリギリしか持っていない)の遊客にも近づけたので大そう賑わった。もちろん吉原以外の廓の火災には、他の土地へ仮宅の建設のことはなかった。
 深川や仮宅百戸明がらす 竜雨
かりはなみち
〔仮花道〕舞台へ向って右手に仮設するやや細い花道で、「戻橋」(もどりばし)の綱が小百合を送る所や、「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」の吉野川の定高(さだか)と大判事(だいはんじ)の出、「新版歌祭文(しんばんうたざいもん)ーー野崎村」のお染・久松が帰る所、「曾我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」の御所五郎蔵・星影土右衛門の出などにつかう。「東の歩」ともいう。本花道とこれとで、いわゆる「両花道」を形成する。→「あゆみいた」
かれこれし
〔かれこれ師〕何でもすぐに儲かることなら次々と商売を変えてやる人。
かわすじ
〔河筋〕河岸(かし)っぷち。川の多い土地。
「『深川は生憎(あいに)く河筋で……』と車夫(くるまや)は梶棒を上げながら、『夜になりません中(うち)に、大急ぎで参ります。』」(永井荷風「夢の女」)
かわぼう
〔皮坊〕皮太郎。皮太。動物の皮をはぐ商売。皮はぎ。昔は特殊部落の人々の仕事とされた。
かわらもの
〔河原者〕役者をさげすんでいう。昔、京都四条河原に歌舞伎の小屋があったのによる。河原乞食。
かわりうら
〔変り裏〕衣服の裏地の裾廻(すそまわ)しの部分だけを色の異る布で仕立てたもの。
かわりだい
〔代台〕遊女屋で代りの料理をだすこと。→「だいのもの」
かんいん
〔官員〕役人のこと。のちには官吏(かんり)といった時代もあった。いわゆる新政府の官員は薩摩・長州あたりの旧藩士が多く、海外の新思想をも導入したかわりには、野暮な言動や趣味を示したので、保守的な東京人からは少なからず軽蔑されきらわれた。「いやだいやだよ、官員さんはいやだ」という唄さえあったほどである。

kanin
平服の官員

かんか
〔漢家〕漢方医。
かんかい
〔勘解〕裁判官が原告と被告の間へ立って、民事の問題を和解させること。また、その場所。
かんかん
児童語。髪のことも簪(かんざし)のことも、噛むことをもいう。
かんかんぽうず
〔カンカン坊主〕鉦(かね)を叩いて軒に立ち物乞いして歩く乞食僧。昔の子どもの遊戯の唄に「このカンカン坊主くそ坊主、後(うしろ)の正面だあれ」とある。
がんぎ
〔雁木〕海や川へのぞむ桟橋の階段。
かんげ
〔勧化〕仏寺の建立などに寄附をつのること。昔は、「勧化のたぐい入るを禁ず」と村の入口に札が建てられていたほど、一般語であった。
かんげちょう
〔勧化帳〕寺の建立に寄附金をつのるときつかう帳面。
かんこう
〔勘考〕考えること。「間違へんやうによく勘考いたせ。」(三遊亭円朝「名人長二」)
かんこうば
〔勧工場〕デパートの小さいもので、大都会の諸所にあった。定価で売ることをかたく守ったのも勧工場からだった。
かんごえ
〔寒声〕音曲を習う者が寒中早朝に其の技を練習すること。
 寒声や月に修羅場の講釈師 紅葉
がんごめ
〔願込め〕願がけ。
かんざらい
〔寒浚い(寒復習)〕→「かんごえ」
がんしゅ
〔願酒〕禁酒のこと。願をかけて酒をたつこと。
 馬楽忌や願酒の勇酔柿紅(すいしこう) 吉井勇
かんじょう
〔勧請〕神仏の霊を分け移して祭ること。
かんそう
〔檻倉〕牢屋。
かんたい
〔緩怠〕失礼。不とどき。「かんたいながら……
かんだい
〔棺台〕早桶。
かんち
〔閑地〕閑静な土地。しずかなところ。郊外。
かんつう
〔貫通・寛通〕はじめから終りまで。一切。どんなことがあっても。「お前には寛通貸しません」
かんどうきん
〔勘当金〕絶縁のさいくれてやる金。
かんとんおり
〔広東織〕広東地方産出の縞織。男性用としては色の派手やかなもの。
かんなべ
〔燗鍋〕酒の燗(かん)につかう鍋。多く銅製で、蔓(つる)と口とがある。
かんにとじられる
〔疳にとじられる〕癪(しゃく、胃けいれん、胆嚢や肝臓の痛み)に苦しむ。
かんばりぢょうし
〔甲張り調子〕カン高い調子をいう。
かんばん
〔看板〕法被(はっぴ)。マーク入のユニ・フォーム。紺色が多かったので武家屋敷の仲間(ちゅうげん)などを「紺看板」といった。人力車の梶棒につるす細長い提灯(紋や屋号や姓名を書き入れてある)をも看板といった。
かんびょうふ
〔看病婦〕看護婦。
かんぶつや
〔乾物屋〕干瓢(かんぴょう)や麩(ふ)や干鱈(ひだら)や昆布(こぶ)や豆類などを売っている店。
「神田鍛冶町の角の乾物屋の勝栗アかたくてかめない」などカの字づくしをおもしろがって、明治時代の少年は歌った。
かんべや
〔燗部屋〕遊女屋でお酒のお燗をする部屋。
かんべんづよい
〔勘弁強い〕堪忍深い。
かんぼずおはぐろもつけず
〔かんぼず鉄漿も附けず〕身なりもかまわず、やつれて働く。
「それに児(がき)を可愛がって、カラどうもかんぼず鉄漿も附けず、ぼろを着てはだしで駈けずり廻ってる姿は、」(三遊亭円朝「後閑榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
がんほどき
〔願ほどき〕かけた願が叶ったので、御礼詣りに来ること。落語「甲府い」に「甲府い、おまいり願ほどき(豆腐い、胡麻入り、がんもどき)」のサゲがある。
かんぼやつす
〔観貌窶す〕顔容も貧しくやつれる。
かんろう
〔疳労〕疳が強く、身のおとろえやせること。
きあい
〔気合〕心もち。心意気。
きいきい
病気、気分の児童語。きいき。
きいたふう
〔利いた風〕気のきいたような顔をすること。生意気。「きいた風な口を利きやァがるな」
きうち
〔気打〕心配してクヨクヨしていること。気鬱(きうつ)。
きおい
〔俠〕勇み肌。鳶などをいう。
きおち
〔気落〕精神的に打撃を受けた状態。ガッカリすること。ガックリと参ること。
きかい
〔器械〕道具。器。
きがちる
〔気が散る〕気が晴れる。→「きさんじ」
きがつく
〔気がつく〕元気が出る。
きがわるい
〔気が悪い〕妙な気になる。
「やあ、膳の上のは鰹の刺身か、皮作りは気がわりいな。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
「年の頃は二十二三、女盛りの御守殿風(ごしゅでんふう)、まだ男の味は知るめえ。どんな奴が女房にするか、気のわりい話しだなあ。」(同「網模様灯寵菊桐(あみもようとうろのきくきり)ーー小猿七之助」永代橋の場)
ききうで
〔利腕〕右の腕。右の方が何にでもよくきいてつかえるゆえにいう。
きぐすりや
〔薬種屋〕今日なら、ただ薬屋という。
きくとうだい
〔菊灯台〕台座を菊花の形にした灯明台で、朱塗、黒塗、白木や真鍮がある。
きこえあい
〔聞え合〕おたがいにすぐきこえること(例えば長屋の壁一つで)。
きごみ
〔著込〕上衣(うわぎ)の下に着る鎖帷子(くさりかたびら)の略。→「くさりかたびら」
ぎごわ
〔擬強〕からだにあわない、ゴワゴワしたきものを着ていること。
きさく
〔気さく〕気のおけない態度。気軽なこと。「さくい人」などという。
きさん
〔帰参〕主君へ再び呼び返されてつかえること。家宝紛失の責めで浪々となった主人公が辛苦の末に悪人を成敗し家宝を入手して「帰参がかなう」という例は多い。→「めしかえす」
きさんじ
〔気散じ〕気晴らし。気保養。鬱を散ずること。気苦労のないこと。のんきな状態。「気散じもの」などという。
「問はれて何のなにがしと、名乗るやうな町人でもごぜやせん。しかし生れは東路(あづまじ)に、身は住みなれし隅田川、流れ渡りの気散じは、江戸で噂の花川戸。」(桜田治助「鈴ケ森」)
きしょう
〔起請〕起請文の略。
きしょうな
〔気象な〕勇気凛々たる。気象の凛然(りんぜん)たる。
「仙太郎の身がまへがいかにも気象な奴でございますから、心のうちにてこいつ中々尋常(ただ)の奴ではない。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
きしょうの
〔気象の〕気象の烈しい。強い性格の。気象な。
きしょうもん
〔起請文〕神仏にちかっていつわりのないことを記した文書。遊女が夫婦約束の起請文には、「天にあっては比翼(ひよく)の鳥、地にあっては連理の枝」などの美文がかかれた。誓紙。誓文。
きしょく
〔気色〕気分。心もち。今日では大阪弁にのこっている。「気色の悪い男やな」など。
きずい
〔気随〕わがままのこと。
きずもつあし
〔疵持足〕脛(すね)に疵持つと同じ。秘密にしている弱点をもいう。
きせん
〔木銭〕木銭宿(きせんやど)の略。
きぜん
〔気前〕心持ち。腹の虫のいどころ。
「わっしが悪かった、ツイいいそくなったのだが、お前も気ぜんの悪いとこ。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
きせんやど
〔木銭宿〕木賃宿。安い宿屋。後に「もくちんホテル」などともいう。
きたい
〔希代〕奇体。奇妙。不思議。「希代なものを見るものぢやなあ。」(河竹黙阿弥「浪底親睦会」(なみのそこしんぼくかい))
きたきりすずめ
〔着た切り雀〕一枚しかないきものをしじゅう着ていること。「舌切り雀」のしゃれ。
きたけ
〔木竹〕木石(ぼくせき)。非情。感情のない人。
きたむきてんじん
〔北向天神〕へんくつな人。天神のしゃれで、変人さまともいう。
きつい
強い。
きっさきぜりあい
〔切先ぜり合〕剣の尖(さき)と尖とを双方が打ち合わせ、折り込む気合をはかっている状態。
きっそう
〔吉左右〕よいしらせ。喜ばしいたより。「よき吉左右を相待ちおるぞよ」などと重ねる場合もある。
きっそう
血相(けっそう)の江戸なまり。
きったて
〔切立〕きりたて。こしらえたて(衣類の場合の)。「きっ立てのふんどし」
きつねがおちる
〔狐が落ちる〕狐つき(狐がついたと信じる一種の神経病)が直る。古川柳に「狐つき落ちれば元の無筆なり」「狐つき鼠とまでは望みかね」。大正期の川柳には「木なし幕狐の落ちた気味があり」。
きっぱらい
〔切払い〕無銭遊興。
きっぷ
〔気っ風〕気前。心もち、性質。「いい気っ風だ」
きづま
〔気褄〕心もち。「きげんきづま」などという。
きど
〔木戸〕江戸の町々には木戸があり、非常の捕物の場合などこの木戸をしめた。広重の画中にも木戸の図は見られる。浄瑠璃「伊達娘恋緋慶子(だてむすめこいのひがのこ)ーー八百屋お七」火の見櫓の段およびそのパロディである「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」本郷火の見櫓の場では、この木戸の機能をよく活用してある。
きどばん
〔木戸番〕商売女がムダにお客を待ちあかす場合をいう。「今夜もまた木戸番か。」(樋口一葉「にごりえ」)
きどる
〔木取る〕材木をひき、製作の用材に適すよう見積って用意する。製材する。
きなきな
くよくよ。
きのえねのなないろがし
〔甲子の七色菓子〕十干(じっかん)の「きのえ」と十二支の「ね」とに当る年月日には、昔、大黒天を祭ったが、おこし、落雁など打物(うちもの、みじん粉に砂糖をまぜ、型に入れて打った乾菓子)の菓子で七いろにそれぞれ着色したものをそなえた。この風習、20余年前までは残存したーーと、五世田辺南竜談。
きふ
〔帰府〕江戸御府内(ごふない)へかえること。
きぶい
〔豪い〕割のいい。大そう儲かる。「きぶい仕事だ」という風につかう。
きふく
〔帰伏〕心服(しんぷく)。尊敬。
「お医者儒者売卜者(うらないしゃ)なんぞといふものは、少し頭に白髪がはえてなければ向うで帰伏しません。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
きぶっせい
〔気烟霧〕煙ったく。気兼(きがね)。
「何となく江沼の様子が気烟霧に見えるから、」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)
きまくら
〔木枕〕木賃宿で貸した木で作った枕。手拭をあててねた。講釈場(こうしゃくば)ーー講談の寄席でも貸した。ねながら講談をきいたのである。
きまずな
〔気まずな〕気まずい。
きまり
〔定り〕おきまりのぞんざいないい方。おきまり文句。「へん、きまりをいうぜ」といえば、だれにでも使う嬉しがらせを、特別めかしていったって真(ま)に受けないよ、という意味になる。この辺、都会人の潔癖と含羞(はにかみ)がよくあらわれている。
きみあい
〔気味合〕その場の空気。「只ならざる気味合ネ。」(梅亭金鵞(ばいていきんが)「滑稽立志編」)
きみ・ぼく
〔君・僕〕江戸時代にも「君」「僕」のよび方はあった。三遊亭円朝の「牡丹灯籠」の萩原新三郎と医師山本志丈(しじょう)の会話にも「君」「僕」があるし、岡本綺堂「温泉雑記」中の旗本2人も「君」「僕」を使用している。もって文明開化以前の、下町人以外の用語であったことを知るべきである。
きめる
くらわせる。牢屋で新入(新しく入って来た囚人)をなぐる板を、きめ板という。
きもじ
〔気もじ〕→「もじ」
きやぁぱぁ
キャーキャー。「何をする。てめえがきやアぱアいやア、よん所なくたたっ斬るぞ。」(三遊亭円朝「敵討札所霊験」(かたきうちふだしょのれいけん))
きやい
気合(きあい)のなまり。「きやいがいい」
きやきや
①ひやひやと心配する様子、②きりきりとさしこんでくる痛み、③いても立ってもいられなくなる刺激的な状態。芸人の人気が急テンポで出てくるときにも、「きやきやと来た」などといった。
きゃくしゅう
〔客衆〕お客。衆は「子ども衆」「女郎衆」「兄弟衆」「芸者衆」の「衆」。
きやすめ
〔気休め〕一時だけ相手が安心するように口から出まかせをいうこと。「一どの気休め二どのうそ、三どのよもやにひかされて」の俗曲がある。
ギヤマンどくり
〔玻璃徳利〕ガラス製の酒瓶。
きやみ
〔気病み〕くよくよ思いなやむこと。流行語でいえば「一種のノイローゼ」といったところ。
きゅう
〔給〕月給の略。
きゅうきんをうつ
〔給金を打つ〕給金を手渡しする。芝居用語。
きゅうこ
〔舅姑〕しゅうと、しゅうとめ。
きゅうしゅう
〔旧習〕時代おくれ。古臭い。不開化。
きゅうち
〔旧地〕昔からいた土地。
きゅうとう
〔旧冬〕昨年末が正しいが、年礼、年始の用語で、単に昨年という意味にもちいられる。
きゅうばくさま
〔旧幕様〕旧幕府(徳川)への敬称。
きゅうへいあたま
〔旧弊頭〕ちょん髷。
きゅうめい
〔窮命〕苦しいおもいをさせること。「少し窮命をさせてやろう」
きゅうりがく
〔窮理学〕物事の理屈をきわめる学問。
きゅうりきる
〔久離切る〕永久に縁を切ってその家から追う。人別(にんべつ)帳からのぞく。戸籍を抜く。「お前のようなやつは、きょうこう限り久離切って勘当だ」
きょうかく
〔胸膈〕胸のつかえ。
「アノきょうかくの間に、何やら和(やは)らかなくくり枕のやうなものが二ッ下って、先に小さな把手(とって)のやうなものがあったが、ありゃなんぢゃ。」(津打半十郎他「鳴神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」)
きょうげべつでん
〔教外別伝〕その道の普通のおしえ以外の、特別な方法。本来は仏教語。お秘伝(ひでん)。
きょうこう
〔向後〕今後。この後。「向後来てはいけない」「向後かぎりいたしません」
ぎょうさん
〔仰山〕大袈裟。「え〜、何を、仰山な、静(しずか)にしろえ。」(三遊亭円朝「名人長二」)
ぎょうじ
〔行事〕世話役。「長屋の行事は誰々がやっている」という風につかった。それが1カ月交替のものであるなら「月行事」「月番」というように。
きょうじや
〔経師屋〕女をやたらにくどく人。経師屋は張るというしゃれ。
きょうしんかい
〔共進会〕殖産、興業の改良進歩をはかるがために、ひろく産物、製品を集め、公衆に観覧させ、その優劣を批評してきめる会。その組織は、品評会と博覧会を折衷したもので、明治12915日、横浜に製茶共進会をひらいたのがはじまり。
きょうだいしゅう
〔兄弟衆〕御兄弟。この場合の衆は複数ではなく、敬語である。大阪弁でお子さんというところを、子たちというにひとしい。
ぎょうてい
〔業体〕家業。「かやうな業体ゆゑ、知りつつ存外(ぞんがい)私もごぶさたをいたしました。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
ぎょく
〔玉〕遊女をあげる代金。狂せる三代目蝶花楼馬楽の句に「夜の雪せめて玉丈けとどけ度い」。
ぎょこん
〔御懇〕御親切なお言葉。
きょじ
〔凶事〕災難。今の人は「きょうじ」と発音。
ぎょしん
〔御寝〕おやすみ。お眠り。御就寝。「ぎょし」とも発音する。→「げし」
きらをはる
〔綺羅を張る〕着かざる。見得を張る。いつも体裁をよくしているのを「常綺羅を張る」。
きり
〔切〕演劇の最終番組。大切。「切幕」
ぎりあい
〔義理合〕義理。「空合」「意味合」「色合」などの「合」と同じ。
きりぎりすをきめる
〔蟋蟀をきめる〕遊女が、昔、張店(はりみせ)といって店頭に盛装して並び、客をよんでいたころ、その店の格子につかまって客を待つ姿を、虫籠のなかのきりぎりすにたとえた。
「店の格子に蟋蟀をきめたり為(し)て居た癖に、」(広津柳浪(ひろつりゅうろう)「今戸心中」)
きりざんしょ
〔切山椒〕山椒入りの餅を平らにのばし、25分位の長さに小口から細く切った紅白茶いろの菓子。
きりたとう
〔裁片畳〕小さいきれを入れる厚紙を折りたたんだもの。「宮は故(わざ)と打背(うちそむ)きて、裁片畳の内を撈(かきさが)せり。」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
きりだめ
〔切溜〕野菜などの切ったものを入れておくフタのある箱で、春慶塗が多い。
ぎりづく
〔義理づく〕義理のためのなりゆきといった意味。→「づく」
きりどう
〔桐胴〕胴が桐で造られた火鉢。
きりぬきえ
〔切抜き絵〕物の形を切り抜いて取るようにかいてある絵。
きりみせ
〔切店〕ごく下等な遊女屋。
きりもち
〔切餅〕25両の紙包み。正月の切ったお餅(かちん)に似ているゆえにいう。
きりょう
〔器量〕才能。器。人物のスケール。「あの男にはそこまでの器量はない」「なかなかの器量人だな」
きればなし
〔切れ話〕離縁ばなし。別ればなし。
きをうつ
〔気を打つ〕おどろく。
きをおく
〔気を置く〕気をつかう。「気の置けない人ばかりだから」
きをつめる
〔気を詰める〕気がねする。気詰り。
きん○
〔近〕近喜近五(きんききんぐ、江戸訛りで「ご」を「ぐ」という呼び方の商店が沢山あった。近江屋喜兵衛とか近江屋五助とか、すべて近江屋なにがしの略である。近時、東京へ進出した大阪の商店は、例えば田中宗一という主人だと、最後の一を略し、田中宗商店という風によぶ。それに似ている。
きんえん
〔金円〕金(かね)のこと。
ぎんかん
〔銀笄〕銀のかんざし。
きんぎょくとう
〔金玉糖〕寒天に砂糖をまぜて作った上にザラメ糖をまぶした夏季の菓子。
きんごう
〔近郷〕→「きんざい」
きんこまおびつきのたすかり
〔金牒帯附きの助場〕いい後援者がついての上での助けてもらう花会(演芸会その他をやってその利益をもらう会)。
きんざい
〔近在〕都下や周辺をいう。「近在者(もの)」とは、その土地の人々。→「ざいご
もの」
きんしずるめ
〔錦糸鯣〕細かくきぎんだ鯣。金糸鯣。
きんじゅうろう
〔金十郎〕金十、きん。寄席界のテクニックで馬鹿という意味。語源は禽獣(きんじゅう)に等しいから来ていて、それを人間らしく「郎」の字をつけたのである。
きんじょしゅうとめ
〔近所姑〕近所の人が姑のようにうるさいこと。
きんたまひばち
〔睾丸火鉢〕股間へ入れてあたるための火鉢。そうした行動をもいう。
きんちょう
〔金打〕武士が違約せぬしるしに、両刀の刃または鍔(つば)などを打ち合わせたこと。
きんちょうまぢかい
〔禁朝間近い〕天皇陛下のおいでの所に近い。お膝元。仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」に「禁朝間近へ神田の八丁堀でお茶の水を産湯にあびて」。神田の八丁堀は、もちろん今日の中央区京橋のではなく、神田今川橋界隈(今川橋は神田駅と本石町の中間)だった。
ぎんながし
〔銀流し〕銀メッキから転じて、実力がなくて表面だけかざる人。
きんぱく
〔金箔〕実際よりよくみせかけていること。金箔付(つき)というと、決定版という意味になる。
きんぴか
豪華な装(なり)をすること。「きんぴかづくめ」
ぎんみ
〔吟味〕調べ。探査。
きんりさま
〔禁裏様〕天皇陛下のこと。なまって、「きんりんさま」という。禁裏は皇居のこと。
くいかた
〔喰方〕喰うこと。生活。→「かた」
くいこみ
〔喰込み〕収入が少なくて支出が多く蓄えを減らす。マイナス。
くいぞうよう
〔食雑用〕食費。
ぐいちさぶろく
〔五一三六〕特別にすぐれた人はいないという意味。みな同じくらい。どんぐりのせいくらべ。五をぐというのは、ばくちの用語。
くいつめ
〔喰詰め〕生活の立たなくなること。その土地にいられなくなった人を「くいつめもの」ともいう。
くう
〔喰う〕情交する。「喰い散らかす」というと、いろいろの女に関係すること。
くうきラムプ
〔空気ラムプ〕光りを強くするため、芯を丸い筒の形にし、口金の下に穴を多くあけ、空気のよくかようようにした石油ランプ。
「間毎(まごと)の天井に白銅鉱(ニッケルめっき)の空気ラムプを点したれば、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
くえき
〔苦役〕刑務所で働くこと。
くくす
〔括す〕くくりつける。
くくり
〔括り〕おしまい。くくりをつける、しめくくりというのも、これからでている。
くぐり
〔潜〕木戸。
くくりまくら
〔括枕〕中に綿または蕎麦殻、茶殻などを入れ、両端をくくってこしらえた枕。
「生れてはじめて女の懐中へーー見れば、アノきょうかく(胸膈)の間に、何やら和(やは)らかなくくり枕のやうなものが二ッ下って、先に小さな把手(とって)のやうなものがあったが、ありやなんぢゃ。」(津打半十郎他「鳴神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」)
くげん
〔苦患〕苦しみわずらうこと。
くごなわ
〔九五縄〕折詰(おりづめ)をゆわえる細い縄。
くさりかたびら
〔鎖帷子〕小さい鎖をつなぎ合わせた襦袢。歌舞伎では美しいいろどりのを、児雷也(じらいや)や天竺徳兵衛が着ており、仇討の孝子なども白衣の下へ着込んでいる。斬りつけられたときに、刃(やいば)が肉体へふれないためである。→「きごみ」
くさりつきのちょうちん
〔鎖附の提灯〕提灯の手で持つ部分に鎖の付いているもの。
くさをはやす
〔草を生やす〕おとろえさせる。その家がおとろえれば大屋根へペんぺん草がはえる。「あいつの家の屋根へ草をはえさせてやる」
くしこうがい
〔櫛笄〕櫛と笄。語呂の上から昔の人々は重ねていった。笄は、婦人の髪飾りで、金銀、鼈甲(べっこう)、水晶、瑪瑙(めのう)などでつくる。
くじをくう
〔公事を喰う〕裁判になること。「公事をくってひどい目にあった」
くすぬき
楠(くすのき)のなまり。「くすぬき正成」などと発音したものである。
くすりぐい
〔薬喰い〕補強用にする肉食を、昔はこういった。
くそごなし
〔糞ごなし〕めちゃめちゃにけなすこと。頭ごなし。
くそったれ
何の足しにもならない。むだめし喰い。
くださらぬ
〔下さらぬ〕ありがたくないもの。感心できないもの。
くだり
〔下り〕→「のめり」
くだりあめ
〔下り飴〕地黄煎(じおうせん)をいれた茶色のかたい飴。
くちとりもの
〔口取物〕口取肴(さかな)の略。口取りともいう。あまい照焼にした肴を、きんとん、蒲鉾(かまぼこ)、玉子焼、寄せもの、杏(あんず)などと取り合わせ、5品または7品、また3色から9色の数で浅い皿に盛り、お膳のはじめに吸物と共に出すもの。昔は広蓋(ひろぶた)に盛り、硯蓋(すずりぶた)にとりわけてすすめたという。
くちにどよう
〔口に土用〕腹にあることをみんないう。土用干しをさせるという意味だろう。
くちまえ
〔口前〕口先。弁舌(ベんぜつ)。
くちわけ
〔口分〕種類によって区別すること。分類。
くちをすごす
〔口を糊す〕生活ができる。その日その日をしのぐ。
くでま
〔諄手間〕「くどきてま」「くどでま」の略。「くでまがかかった」
ぐでれん
ひどく酔った姿。ぐでん。ぐでんぐでん。ずぶろくぐでん。やたらにいばることもいう。
くにづくし
〔国尽し〕国の名をかきあつめた本。寺子屋で教科書につかった。
くにもの
〔国者〕同郷人。ただし、地方人に限る。いなかもの。
くにゅう
〔口入〕世話。とりもち。
「さうして柳(りゅう、女の名前)が其方(そのほう)へ嫁の口入をいたしたかどうぢや。」(三遊亭円朝「名人長二」)
くねんぼ
〔九年母〕芸香(ヘンルウダ)科の高いときわ木になる柚(ゆず)に似た果実で、香よく甘味がある。香橙。江戸時代にはこの果実を好み、劇場の幕間にも売り歩き、「九年母」の小咄さえあるが、明治中頃以後はすたれた。
くびったけ
〔首ったけ〕大へんにほれること。ほれて深間(ふかま)へはまり込むこと。「足駄をはいて首ったけ」
くびぬきゆかた
〔首抜き浴衣〕首から前後の襟(えり)へかけて、大きな紋や図案が染めぬいてある派手な浴衣。白地や鼠や浅黄や紺で図案され、紺地なら白ぬきになり、祭の揃いなどにみられる。
くもすけ
〔雲助〕宿駅、渡船場、街道を徘徊(はいかい)し、駕籠をかつぎ、または川を渡るのを助け、荷をかつぐ、住所不定の人夫。一定の住所なく雲水(うんすい)のごときゆえ雲助という説と、街道で旅人に駕籠をすすめるさまが蜘蛛の巣を作って虫を捕えるのに似ているという説と、語源が2つある。いまでもあやしげな流しのタクシーの運転手を雲助とよぶ。
くやしんぼう
〔口惜しん坊〕くやしがること。「ふりこかされたくやしんぼうで身請(みうけ)してつれて行(ゆこ)うといふからとても生きてはゐられぬわい。」(仮名垣魯文(かながきろぶん)「西洋道中膝栗毛」)
くらしかた
〔暮し方〕生活。→「かた」
くらびらき
〔蔵開き〕111日、商家で蔵開きと称して鏡餅を割って雑煮を作り、店員らをねぎらって祝宴をもよおすことをいう。
「雑談抄」に「和俗、年の始に蔵を開きて、積蓄(せきちく)の金銀米銭にかぎらず、一切の貸財(かぎい)金を取出して用に充て、売買の事を調(ととの)う。もっとも其年始なれば吉日をえらびて庫(くら)を開くことをいふめり。」(小泉迂外「俳句雑事記」)
ぐりぐり
商売女が甘えて男をいじめるとき、ひじで相手の膝の上をぐりぐりと廻してこづく。「ぐりぐりをきめる」という。
くるしがりの
〔苦しがりの〕貧乏な。
くるる
〔枢〕戸をあけたてするためにこしらえてある「とぼそ」と「とまら」。
ぐれはま
ちぐはぐ。手ちがい。ぐりはま。「万事がぐれはまだ」
くろかも
〔黒鴨〕供の男をいう。江戸時代には供の者が、明治以後は車夫馬丁が黒づくめの服装であり、黒い鴨を連想させたゆえにいう。
くろがんじ
〔黒丸子〕漢方薬で腹痛用の丸薬(がんやく)。
くろざん
〔黒桟〕印度サントメに産する黒のサントメ革、皺(しわ)のあるなめし皮。
くろばおり
〔黒羽織〕黒紋付。
くろぺらの
〔黒ペラの〕黒い、ペラペラの。
くわえぎせる
〔啣へ煙管〕身体に楽をさせていること。坐ったまんま。立ち働きをしない。
「座蒲団の上で啣へ煙管をしながら、一つ首を捻(ひね)れば五千も八千も儲かる。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
くわせもの
にせもののこと。
くわせる
刑務所へ入れておくこと。
くん
〔君〕明治中年の、そのころを扱った講談や小説では、金銭をもらいに来た後輩の書生が君(くん)と呼んでいる。君は敬称で(明治末年まで)、同僚を呼ぶ場合の言葉ではなかった。当時の書籍の広告には、氏もしくは先生とあるところを、○○君著と記してあった。→「きみ・ぼく」
くんじゅ
〔群衆〕大ぜい人がむらがること。「随分くんじゅしている」
ぐんだい
〔郡代〕江戸時代は郡代屋敷といって、幕府直轄地ーー管理の土地の民政を扱う屋敷があった。いまの中央区日本橋馬喰町(ばくろちょう)4丁目(浅草より本石町へむかってゆく西側裏)にあり、大正初年まで矢場という売笑街になり、その名称となる。多くこの辺の商店の番頭手代を客にしていた。

gundai
郡代付近の図

くんだり
〔辺〕どこそこあたりの、あたりという意味。「目黒くんだりまでわざわざ来た」などとつかう。
ぐんないじま
〔郡内縞〕山梨県郡内地方に産する縞(しま)、甲斐絹(かいき)の一種。
けあう
〔蹴合う〕喧嘩をすること。軍鶏(しゃも)の蹴合いからでたことば。
けいあん
〔桂庵〕職業を斡旋(あっせん)する所。あてにならない好意的な口ぶりを「桂庵口(ぐち)」といった。実在の桂庵が全部そうだったわけではないのだろうが、それにしても桂庵の生態をよくえぐった形容である。仲人口(なこうどぐち)と同じ。中年以上の婦人が多かったようで「桂庵婆」(ばばあ)ということばもできている。
けいききゅう
〔軽気球〕空気より軽い水素ガスを絹でできた袋へ入れ空中へ昇降させるのだが、その袋の下へ籠をつけ、人をのせる。風船ともいい、のる人を風船乗りといった。飛行機以前のただ一つの昇空手段であったところから、民衆の好奇心をあおり、見世物化したほどであった。
「風船乗りをする人は、何といふ人でござりますな。」(河竹黙阿弥「風船乗噂高閣(ふうせんのりうわさのたかどの)」)

keikikyu
軽気球

けいきょう
〔景況〕様子。有様。
けいこじょっぱいり
〔稽古所這入〕町内の若い衆が湯がえりに邦楽や舞踊の稽古所へかよい、わかい女師匠相手に面白半分教わることをいう。
けいずや
〔故買屋〕盗んだ品を引き取ってさばく店。ずや。
けいど
〔警動〕警官の臨検で売笑婦がつかまること。
けいま
〔桂馬〕理屈のちがうこと。すじ違いなこと。
けいらく
〔経絡〕からだじゅうの筋肉の道。
けえけえ
お化粧の児童語。「きれいきれい」の意味か。
「お湯(ぶう)から上って、おけえけえが出来て、おぐしが出来て、お可愛いな、どうも。」(落語「つるつる」)
けがれびと
〔不浄人〕「不浄役人」に同じ。
げきしゅとう
〔劇酒党〕酒の強い人たち。
けこみ
〔蹴込〕人力車へのった客が足をそらして休むところ。階段の爪先前方にあたる垂直面(つまり踏板と直角になる部分)をもいう。

kekomi
初期の蹴込の浅い人力車

けころみせ
〔蹴転店〕最下級の遊女屋。下等な女郎を「けころ」という。
げざ
〔下座〕寄席の三味線をひく女。
けさぶんこ
〔袈裟文庫〕袈裟をいれるいれもの。
げし
〔御寝〕お眠り。就寝の敬語「御寝」はつまって「ぎょし」とも発音されるから、これが「げし」となまったのであろう。さらに「お」をつけて「おげし」ともいった。
けじけもの
小ざかしい人。ませた娘。
けしだまのてぬぐい
〔罌粟玉の手拭〕芥子粒(けしつぶ)のような細かい玉を並べた、豆絞りの一そう細かい染模様の手拭。
「二人が影のまた二人、月にうつるも追人(おって)かと、気をけしだまのほうかむり」(新内「明烏後真夢(あけがらすのちのまさゆめ)」)
けしぼうず
〔芥子坊主〕子供の頭の周囲をすって、中央にだけ髪をのこしたもの。また、昔の中国人の弁髪(ながい髪)をもいう。
「ざまア、わアいわアい、芥子坊主のおかみさんが何所(どこ)にあるもんか。」(式亭三馬「浮世風呂」)
けじめをくう
〔恥辱を食う〕バカにされる。
(で)げす
「ございます」の意味の崩した江戸語。「何々でごす」ともいう。
「これは、何々でといふ言葉のあとにつくのだが、字にかくとハッキリして了ふが、ごく軽く出るので、大店(おおだな)の商人だの、粋な人だののくだけた、世慣れた物言(ものいい)で、げすは寧ろゑすにきこえる。助六の『冷えものでエす』あすこいらから来てゐる蔵前の札差(ふださし)あたりの用語ではなかったのだらうか。いやみな通人(つうじん)のげすは、やはり助六の狂言に出る通人の『恐れべでゲス』といふあれになる。」(鏑木清方「明治の東京語」)
「げす」は明治の落語家ーーことに初代三遊亭円遊の幇間(たいこもち)物や「五人廻し」の通人などにつかわれ、後者は下町の旦那衆がつかったが、一般人がつかうときは「げ」「ご」が強くなかったから、イヤ味にひびかなかった。
げせわ
〔下世話〕下等社会。「そこが下世話に申す魚心あれば水心で」
けだし
〔蹴出〕腰巻。女の腰から脚にかけてまとう布で、古い甚句に「赤い蹴出しに迷わぬ奴は、木仏金仏石仏(きぶつかなぶついしぼとけ)」。
げたをはく
〔下駄を履く〕10円のものを15円だといい、5円自分のふところへ入れるのをいう。下駄をはけば、自分の足でじかに地面を歩くより高いからである。
けちりんも
ほんの少しも。「いわない」「しない」と否定した場合につかう。
「けちりんも嘘は申しません。」(三遊亭円朝「名人長二」)
げっきん
〔月琴〕中国から来た楽器で、琵琶に似て小さく、胴が丸く、絃(いと)が4本、柱が8つある。
けっちゃく
〔結着〕おさまりがつくこと。きまること。「話がそういう風に結着した」
けづな
〔毛綱〕女人の髪で編んだ綱。女の髪の毛大象をつなぐたとえのように、大へん強いもの。
げっぱくする
〔月迫する〕12月も末に迫る。
けどり
〔気取り〕他から気がつかれること。けどられる。
けぬきあわせ
〔毛抜合せ〕はずれようとしてやっとあうこと。印刷技術の世界では今日なおこのことばが生きている。すなわち、多色刷の場合にA色とB色とを重ねず離さず、ぴったりと隣接させる技術をいう。粗悪なマンガなどは、「毛抜合せ」のうまくいっていない好例である。
げびぞう
〔下卑造〕下等な性格の人。げびた男。
けぶ
〔煙〕フイといなくなること。
けぶだし
〔煙出し〕けむだし。きゅうくつな人がいて困ること。煙りにいぶされて苦しむことからはじまった。
けぶり
〔気ぶり)ほんのちょっとした態度。「そんな下心は気ぶりにも出さなかった」
げほう
〔外法〕上が大きく下が小さい頭。福禄寿をもいう。
けむだし
〔煙突〕エントツ。
けらざえ
〔螻才〕オケラほどの才。少しずつあれこれとできはするが、一つとして満足なことはできないこと。
げりょう
〔外療〕外科の医者。外療(がいりょう)ともいった。古川柳に「外れうを祭の形(な)りで呼びにやり」。落語「百川」で、「魚河岸(かし)の若い方が今朝がけ(袈裟がけ)四五人来られ(斬られ)やして」と聞いて駈けつける鴨地大哲(鴨池玄林)なる先生もその一人。
けれん
インチキ。舞台でアクロバットにちかい早変りを専門にする役者を、けれん師といった。浪曲では、笑わせることを「ケレンをふる」。反響があって客が笑うと、「ケレンが落ちた」という。
けろけろと
ケロリと。すぐ全快する。
けん
〔権〕権利のこと。
「いや小僧だって番頭だって、開化の世界は同じ権だ。」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
げん
〔顕〕ききめ。けん。験(しるし)。「いくら薬をのんでもはかばかしくげんがみえない」
けんかすぎてのぼうちぎり
〔喧嘩過ぎての棒ちぎり〕いろはがるたにあり、喧嘩の終ったあとで手に手に棒を持って駈け付けること。あとの祭。無意味のこと。
げんかんをひらく
〔玄関を開く〕玄関附の邸宅へ入り、門戸を張る。
けんさば
〔検査場〕遊女が性病の検査をうけにゆく所。
けんしざた
〔検視沙汰〕変死体を役人が来て取り調べる手続き一切。
げんじな
〔源氏名〕おいらんがつけている名前。高尾とか、薄雲とか、千早とか、小式部(こしきぶ)。落語「千早ふる」によれば千早太夫の本名は「とわ」というのだそうだが。
けんじょうはかた
〔献上博多〕博多帯地に独鈷形(とっこがた)の模様を織り出したもの。藩主黒田侯から江戸幕府に献上したので、こうよばれる。→「いっぽんどっこ」「こんけんじょう」
けんそう
〔見相〕人相。
けんちゅう
〔繭紬〕杵蚕(さくさん)の糸で織った、淡茶いろで節のある織物。中国山東省産が多いが、日本では多く合羽にもちいられた。
けんつく
〔剣突〕頭ごなしにおどかすこと。
げんとう
〔幻灯〕映画以前にはやった、ドイツ人キルヘルの発明した娯楽品で、ガラスに色とりどりにかいた風景や草木花鳥を、幻灯機械の中から灯火をつかって、大きく映像幕へうつしだしてみせた。ゆめのように美しいエキゾティック(異国情緒ゆたか)な画面が、明治の少年をたのしませた。今日のスライド。

gento
幻灯のビラ

げんなり
いやになること。あきてガッカリすること。「たべすぎてゲンナリした」
けんにかける
〔権にかける〕鼻にかける。「権にかかったもののいいようだ」
けんにかぶる
〔権に冠る〕勢力を笠に着る。
「宮さまを権に冠って理不尽に(中略)さうなっちゃア事が面倒(めんどう)だが、」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
けんにんじ
〔建仁寺〕建仁寺垣の略。京都市東山区小松町建仁寺ではじめて造って以来、一般につたわった垣根。四つ割竹の皮を、外にして平たく並べ、竹の押縁を三段横に取り付け、縄で結んだ垣。
けんのん
〔剣呑〕あぶないこと。「けんのんだからおよし」
げんばいし
〔玄蕃石〕3尺に1尺ぐらいの長方形の蓋石(ふたいし)。敷石または蓋石につかう。略して玄蕃。
げんばおけ
〔玄番桶〕水汲用の大桶。
けんぷぐるみ
〔絹布ぐるみ〕常に絹の衣類に包まれて生活している状態。贅沢な生活。おかいこぐるみ。
けんべつ
〔軒別〕軒並。一軒一軒。戸別。
けんぽうぎょうぎあられ
〔憲法行儀あられ〕黒茶に小紋の霰(あられ)が行儀正しく並んでいる模様。明暦から万治のころ、京都で染物屋で剣術の達人だった吉岡憲法(けんぽう)が黒茶に小紋を染め出したので、この名称がある。
げんまん
〔拳万〕子供が小指をくみ合せ、約束すること。指切りげんまん。
けんもん
〔見聞〕権門(けんもん)にこびる賄賂(わいろ)や宴会。大名屋敷で、その藩のえらい人が集まるときをもいう。また、権力のある人のことにもつかう。
「しかし、またかうなると見聞があって、重役達に御馳走をしたり、遣ひ物や何や彼やで、物入(ものいり)が多い。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
こ○○
〔小○○〕「小綺麗」「小長い」「小甘い」「小ざっばり」「小ぎてい(気体)」「小気のきいた」「小憎らしい」「小汚い」「小じれったい」「小しゃくにさわる」など、それほど物量の大小にこだわらず「小」の字をかぶせることばが幕末明治の江戸弁には多い。元禄時代の豪放な感覚から、文化文政以後、繊細な情調に変っていったことがよくわかる。洗練された都会人感覚の一つである含羞(はにかみ、はじらい)から、自分の話の内容を卑下する意識が働くからであろうか。
こあきない
〔小商売〕ちょっとした商売。大規模でない営業。
「蘭蝶どのに身を立てさせ小商売でも始めさせ人並相応な暮しもして末々長う添はうとの楽しみばかりに恥も世間もかえりみず」(新内「若木仇名草(わかぎのあだなぐさ)ーー蘭蝶」お宮くどきの段)
こあげ
〔小あげ〕「小挙ーー小挙人足で、普通には舟着場、宿場の荷物を運搬する人夫をいふが」(杉浦正一郎「続猿簑註釈(ぞくさるみのちゅうしゃく)(六)」)とあるが、転じてその小挙人足の待機している宿場の入口ーーという意味のときもある。浄瑠璃「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」沼津の段の序は、小挙人足(平作)と旅人(十兵衛)とのやりとりがあるところから俗に「小あげ」とよばれている。
ごあんない
〔御案内〕ご存じ。既知。
こいぐちをきる
〔鯉口を切る〕すぐ刀の抜けるよう鯉口(刀の鞘と鍔(つば)のあうところ)をゆるめておく。
こいち
〔小一〕芝居の舞台の一ばん前の桝(ます、座席)でたった2人入れる所。
ごいんもん
〔御印文〕御印というにおなじ。
「老中方(ろうじゅうがた)の御印文が据(すわ)らぬうちは御処刑には相成らぬぞ。」(三遊亭円朝「名人長二」)
こう
江戸人はいせいを付けてものをいうとき「コー」をもちいた。「コ一聞いてくれ」「コーおぼえとけよ」のごとし。「オイオイオイ」と畳みかけて掛け合う場合は「コーコーコー」といった。
こうえきしょこく
〔交易諸国〕貿易をし、つきあっている諸外国。
こうえんげいしゃ
〔公園芸者〕浅草の芸者。
こうか
〔後架〕便所。夏目漱石「吾輩は猫である」の珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)先生がいつも便所で用便中、「これは平の宗盛にて候」などと下手な謡をうなるので「後架先生」と仇名をとっている。→「そうごうか」
こうがんじ
〔仰願寺〕江戸浅草仰願寺でつかいはじめたゆえにいう小蠟燭。
「仰願寺様(よう)な(仰願寺のような)蠟燭を点(つ)けて和尚は一人でお経をあげ、」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
ごうぎ
〔強気・豪儀〕大そう。立派。えらく。「強気と」「強気な」「強気に」と使う。
「親方、ごうぎに手を広げなさるね。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
こうきゅう
〔口吸〕キッス。接吻。「くちくち」と「土佐日記」にあり、又その元日の項には「ただおこあゆのくちをのみぞすう」とある。
こうきん
〔高金〕高価。
こうしつ
〔後室〕良家の未亡人。
こうしどづくり
〔格子戸造〕中流以上の家。こうしづくり。
こうしゃ
〔功者〕技術の巧い人。河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」に「功者な医者が其辺(そのへん)にござります」。単に巧いことという意味にもつかわれ、「功者のことをいうねえ」。
こうじる
〔嵩じる〕つのる。増長する。「酒が嵩じて」
こうしんのよる
〔庚申の夜〕庚申の夜に情交して宿った子は盗人になるの俗説が、江戸時代にはあった。(岡田甫「川柳末摘花詳釈」有光書房版・上巻弐篇に詳しい。)
こうすい
〔香水〕明治中年までの香水はじつに珍しがられたもの。
「香水を附けると、親父が頭が腫(は)れるといって心配する。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)
こうずに
〔好事に〕凝って。センシブルに。
こうぞり
〔香剃〕死者に戒(罪悪防止のいましめ)を与えて、戒師(かいし、戒を与える僧)がその仏の髪をそること。「髪剃(かみそり)がこうぞりになった」
ごうせい
〔豪勢〕ごうぎに同じ。「このごろは豪勢おかせぎになるそうで」
ごうだん
〔強談〕強談判(こわだんぱん)。無理に激しく掛け合うこと。
ごうつく
〔業突〕強情。強情な人を「ごうつくばり」という。
ごうてんじょう
〔格天井〕格子組(格子の形に組み合わせた)にした天井。
こうとうちゅうがく
〔高等中学〕今日の六三制以前の高等学校を明治時代にはそういった。
こうばいがのろい
〔勾配がのろい〕気が長い。
こうばいやき
〔紅梅焼〕梅の形に焼いたあまい煎餅の一種。浅草仲見世のが殊に有名で、うどん粉に米の粉をまぜ、卵と砂糖で堅くこねて薄くのばし、胡麻(ごま)油で焼く。
こうばこ
〔香箱〕香を入れる箱。猫が背を高くうずくまっている姿が似ているので、昔の人はそうした場合の猫の姿を香箱をつくると呼んでいた。
こうばしい
〔香ばしい〕いいこと。プラスになること。「香ばしい話」
ごうはらがつっぱる
〔強腹が突っ張る〕腹が立ってならない。ムシャクシャしていけない。
こうもと
〔講元〕組合を組んで神仏へ詣でる講中の主催者。
こうようにん
〔公用人〕大名小名の家で、主君の公用をした人。
ごうりき
〔合力〕金をめぐむこと。「合力しよう」
こうろへる
〔甲羅経る〕年をとって熟練すること。年を経てその道でえらく物凄くなること。
こかあいがり
〔子可愛がり〕子煩悩(こぼんのう)。
こがいのこめ
〔小買の米〕少しずつ買い入れる米。
こがえり
〔子返り〕器量の好かった幼児が、年と共に大した器量でもなくなること。
ごかじゅう
〔御家従〕御家令(ごかれい)。その邸の支配人にあたる人。
こかす
〔転かす〕ひそかに品物を他へ移す。無断で商品を転売する。
こがら
〔子柄〕青少年の容貌(姿や形)。
こぎく
〔小菊〕鼻紙に用いる小型半紙。
ごきこんに
〔御気根に〕ごゆるり。
こぎれい
〔小綺麗〕ちょいと気が利いて綺窟の意。→「こ○○」。江戸弁に「小」をかぶせた言葉の多いのは、元禄時代の豪放な感じから、文化文政以後、繊細な情調に変っていったことがよく分かる。
ごきんとうさま
〔御均等様〕うらみっこなしに。一列一体に。「おかどの多い(おつきあいの多い)のに、こんなものをとどけて下すって、御均等様で……
ごくさいしき
〔極彩色〕ゴテゴテに厚く化粧すること。
こくしょく
〔国色〕この国にならぶものなき美人。
こくす
〔告す〕いうこと。「ぽくが引き受けると告しやァ彼だって困るよ」という風に、漢語を自慢に明治の書生がつかった。
ごくせい
〔極製〕上等品。念入りにこしらえたもの。極上製。
こぐち
〔小口〕端緒。はじまり。発端。悪事の発覚するいとぐちを「あらわれ小口」という。
ごくない
〔極内〕ごく内しょのこと。大へん秘密のこと。
こくぼたん
〔黒牡丹〕紫黒色の牛。その色にちなんで白髪染にもこの名があった。
ごくもん
〔獄門〕刑死後、犯罪者の首を、獄門台へ乗せ、刑場または犯罪地ちかくへさらす昔の極刑(重い刑)のこと。
こくる
くくるのなまり。
ごけ
〔後家〕一と組そろっている器の一つがこわれ、半パになったもの。
こけおどし
〔白痴脅し〕つまらぬ奴がビックリするようなあさはかな方法。表だけすばらしそうで、内容が下らないやり方。
ごげじょう
〔御下城〕お城へおかえりになること。
ごけにん
〔御家人〕将軍直参(じかにやとわれている)の家来で、お目見得以下(将軍にお目通りのできぬ)の身分の低い武士であるが、それでも直参なので、天下の御家人であるとうそぶき、良民を苦しめるものが多かった。幕府が倒れてからは困って人力車夫となるものが多かった。三遊亭円朝「松と藤芸妓(げいしゃ)の替紋(かえもん)」の車夫大西徳蔵や、河竹黙阿弥「女書生」の御家直(ごけなお、御家人の直の通称)のごときである。
こけのみれん
〔こけの未練〕おろかしいほどの未練。こけみれん。
こけをおどす
〔こけを脅す〕こけおどかし。「こけおどし」をする。
こけん
〔沽券〕値打。
ごこうおんさまになる
〔御高恩さまになる〕大へん御恩になる。
ごこうせい
〔御厚情〕厚いなさけ。親切。今日はゴコウジョウと発音する。
「返す返すも御厚情、有難うござりまする。」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」)
こごころ
〔子心〕わかいものの量見。
こころぐみ
〔心組〕心づもり。思案。
こころだて
〔心術〕心のあり方。気だて。
こころづきのある
〔心附のある〕気のつく。
こころにおちる
〔心に落ちる〕満足する。納得する。得心(とくしん)する。腑に落ちる。
こころのたけ
〔心のたけ〕心のあり方。心にあるすべて。心のありったけ。
こころやすだて
〔心安立て〕親しきに馴れて遠慮のないこと。
ごこん
〔御懇〕御懇意。おねんごろ。したしく。
ごこんめいをこうむる
〔御懇命を蒙る〕お引立てを頂く。
こざこざがり
〔こざこざ借り〕コマコマした借金。小さく方々へした借金。
こざつ
〔小札〕小額紙幣。中で、20銭紙幣は青い印刷ゆえ青べらといった。→「さつぎって」
ごさっこん
〔御昨今〕きのうきょうのお交りーーの意味であるが、「お宅さまとは御昨今で」などという風につかった。
こざんくずし
〔小算崩し〕小さいそろばん玉をくずした模様。
こしかけ
〔腰掛〕ベンチのことだが、裁判所のベンチから変って、民事の腰掛にいるというと、民事の裁判所にいるということになった。
「両御番所は言ふに及ばず、御勘定から寺社奉行、火附盗賊改めの加役へ出ても深川の、長兵衛といやあ腰掛で誰知らねえものもねえ金箔附の家主だ。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
こしごろも
〔腰衣〕下半身へまとう衣。
ごじさん
〔御持参〕他人の子を宿しながらそれをかくして嫁に来たとき、その腹の子をいう。
ごして
〔後して〕後日を期して。のちになって。「後してお目にかかろう」「後してはいざしらず」
ごしはい
〔御支配〕お取締り。
こしべん
〔腰弁〕腰弁当の略。小役人。
こしゃく
〔古借〕古い借金。「古借の抵当(かた)に家蔵(いえくら)を渡して家がござりませねば、」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
ごしゃくじょうご
〔五酌上戸〕5酌の酒でトロリとするくせに酒の大好きな人。
こしゅ
〔古主〕昔の主人。旧主人。
「古主のために斬取りも鈍き刃(やいば)の腰越(こしごえ)や、」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」稲瀬川勢揃の場)
ごしゅいん
〔御朱印〕将軍の朱印。徳川幕府で将軍みずから朱の印をおしたかきものを、名高い神社や寺へつかわして、その社や寺の領している土地をみとめた。
こじゅうはん
〔小中飯〕ちょっとの間にたべる食事。
「小中飯に野良(田畑)へ持って行々、くすぶり返った銅薬鑵(あかがねやかん)。」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」)
ごじゅうめかけ
〔五十目掛〕50日というに同じ。かけは、荷物を数えるにつかった言葉で、荷という字をほんとうはあてた。
ごしゅつやく
〔御出役〕役目として御出張。
ごしゅでん
〔御守殿〕三位(さんみ)以上の諸大名に嫁にいった将軍家の姫の尊称。大名にとっては荷厄介で、ありがた迷惑だった。河竹黙阿弥「網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)ーー小猿七之助」で、御殿女中の滝川が数奇(さっき)な運命に弄ばれて、切見世女郎にまで転落するが、立居振舞のはしばしにノーブルな品が消え残っているところから「御守殿お滝」と異名をとる。「御守殿」の権高(けんだか)さがうかがえる。
ごじゅらい
〔御入来〕おいでで。
「これはこれは御両所共に、見苦しきあばら屋へ、ようこそ御入来。」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵」与市兵衛内勘平腹切の場)
ごじゅんかとく
〔御順家督〕年の順にその家の跡をつぐこと。
ごしょうぎ
〔後生気〕死後の安楽を願う心。「そのとしで、もう後生気が出たのか」
ごじょうぐち
〔御錠口〕城内の女たちのいる局(つぼね)の入口。
ごじょうまわり
〔御定廻り〕→「じょうまわり」
こしらえ
〔拵え〕扮装。
「五分月代(ごぶざかやき)に着流しで、小長え刀の落し差。ちよっと見るから往来の人も用心する拵へ、」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
こじりとがめ
〔鐺咎め〕ほんの一寸したことを、うるさくとがめる。昔、侍が刀の鐺のふれたことで口論したことからでたことば。
ごしんさま
〔御新様〕御新造様の略。おくさま(今日ならば)。→「しんぞう」。
「商人なら、たいていの大所(おほどこ)でも『おかみさん』であり、徳川時代なら苗字帯刀御免(ごめん)といふ格ぐらゐのを『御新造』、ものを学ぶ先生の夫人を呼ぶにもさう呼んでゐた。」(鏑木清方「明治の東京語」)
ごしんさん
〔御新さん〕御新造(ごしんぞ)さんの略。当時は中流以上の町家の家庭では奥さまでなく御新造さん。奥さまとは山の手の高級官員(役人)や軍人の家庭でよばれた。→「しんぞう」

sinzo
御新造

ごしんし
〔御親子〕親と子を一しょに呼ぶのにこうしたいい方があった。
「殊に御親子お揃ひで斯様(かよう)な処へおいでは何とも痛入(いたみい)りましてござる。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
ごしんるい
〔御親類〕自分と同じ女に情交した人々。似ているもの同士をもいう。御親類筋。「すぐ泣くから、あの女はきりぎりすの御親類筋だよ」
こずむ
かたよる。偏在する。「くすむ」こともいう。
ごずめず
〔牛頭馬頭〕牛の頭をした鬼と馬の頭をした鬼とで、閻魔大王に従う地獄の獄卒。尾崎紅葉「金色夜叉」に「間貫一が捨鉢(すてばち)の身を寄せて、牛頭馬頭の手代とたのまれ」とあるのは、鬼のような高利貸の下ではたらくことをいったのである。
コスメチック
チック。今日ならばポマードをコテコテに塗った人という所。ややキザないい男ぶった人をからかっていうことばにつかった。
こする
〔擦る〕いたしめる。「こいつをこすってやった」
ごぜ
〔瞽女〕めくらで町を唄を歌い、三味線をひいて流して歩く乞食芸人。彼女らと関係をしたあとは、悪女の深情(ふかなさけ)をはらう心でか、わざとなぐる習慣があった。

goze
瞽女

ごぜん
〔御膳〕膳部、転じて食事・米飯をていねいにいうとき。
ごぜんかご
〔御膳籠〕食品を入れ、天秤の両端にかけてかつぐ籠。
ごぜんじょうとう
〔御膳上等〕とんでもなくすばらしいこと。第一級品。「御膳上等の料理屋だ」「御膳上等の別嬪だ」
ごせんそく
〔御洗足〕足を洗う盥(たらい)。
ごぜんてい
〔御前体〕殿さまの前。「御前体よしなにお願い申す」など。
こぞう
〔小僧〕膝のこと。膝ッ小僧。児童語。
ごそうばしゃ
〔護送馬車〕犯罪者をのせて行く馬車。
ごそしょう
〔御訴訟〕公的な裁判的な意味でなく、個人同士で心の内をうったえるという場合につかった。
こそっぱゆく
きまりが悪い。面羞い。くすぐったい。
こそで
〔小袖〕袖の小さいふだん着。河竹黙阿弥作・髪結新三の外題(げだい、タイトル)に「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」。
ごぞんりょ
〔御存慮〕お考え。
ごだいしゅうな
〔五大洲な〕大へんな。世界的な。「五大洲な熱」とは、勝手ないいぐさ。
「此奴(こいつ)五大洲な熱をふき出したナ。野蛮土人のぶんざいで、」(仮名垣魯文(かながきろぶん)「西洋道中膝栗毛」)
ごたいしん
〔御大身〕いい身分。立派な地位と財産のある人。
ごたく
〔御託〕いい気なこと。勝手なこと。能書(のうがき)。
「柄(え)のねえ所へ柄をすげて油ツ紙へ火のつくやうに、べらべら御託をぬかしゃあがりゃア、こっちも男の意地づくに……」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」永代橋の場)
こたつびょうほう
〔炬燵兵法〕実地の役に立たない話。「畳の上の水練(すいれん)」に同じ。
こたつべんけい
〔炬燵弁慶〕「内弁慶」に同じ。
ごたぶん
〔御他分〕世間並。「御多分にもれず私も……」。何でも大ぜいのいうとおりになる人々を、御多分連(ごたぶんれん)。
ごちゃまかす
いい加減なことをやる。無責任なことをやる。
ごちょうじ
〔御停止〕高貴の人が死んで何日か歌舞音曲を御遠慮の意味で中止すること。大老の死が10日、老中が7日、若年寄が3日と、篠田鉱造「明治開化奇談・塚越繁子談」にある。
こづつ
〔小筒〕小銃。大筒(大砲)の対。
こっぽり
ふくよか。ふっくら。
ごてい
御亭主の略。
こていた
〔小手板〕壁などへ鏝(こて)で泥などを塗りつけるとき、また漆喰(しっくい)を塗るとき、その泥や漆喰をもるのにつかう小さい板。鏝板。
ごてごて
弥造(拳を固めて胸の辺りへ入れる)。
こどうぐや
〔小道具屋〕刀剣の附属品を売る店。
ごどうながや
〔御同長家〕おなじ長屋。相長屋。
「御同長家の内に懇意な者が居りますので、」(三遊亭円朝「業平文治漂流奇談」)
ことずみ
〔事済〕解決。
ことばをつがえる
〔言葉を約える〕約束をする。
ことばがえし
〔辞返し〕口答え。かえしごと。
こども
〔子供〕芸者置屋・遊女屋が、自家のかかえている芸者・遊女をいう。また、遊女が禿(かむろ、遊女づきの少女)を呼ぶ場合にも使う。
こどもしゅう
〔子供衆〕こども。「こどもし」とも発音する。→「しゅ(う)」
ことをわける
〔事を分ける〕道理を説く。「事を分けてのお話で恐れ入ります」
ごないじん
〔御内陣〕内幕。内容。「とんだ御内陣を拝見しちまった」
こなべだて
〔小鍋立〕小鍋でものを煮ながらむつまじくたべること。冬の夜、愛人と一杯やりながらのたべものをいう。→「ちんちんかもなべ」
こにだ
〔小荷駄〕小荷駄馬の略。馬におわせる荷を小荷駄という。だから小荷駄をはこぶ馬。
こぬかさんごう
〔小糠三合〕小糠を3合でももっていられる身分、つまり最低の余裕があったら養子にはゆくなというたとえがあり、小糠三合といえば養子のことになった。
こねつける
〔捏つける〕あっちを叱り、こっちを直して、芸を大成させる。
こはく
〔琥珀〕琥珀織。平織で、「ななこ」に似た織目のある絹織物。羽織地袴地(はかまじ)にもちい、天和年間、京都西陣で織り出したもの。
こはな
〔小花〕無尽(むじん)で当る小さい花。かりに一等を1円とすれば、10銭の当りくじ。無尽で、本くじ以外になにがしかの金銭を分配するため、引かせるくじを花くじという。ゆえに、小花。
こはるなぎ
〔小春凪〕風のない小春日和。
ごばん
〔御番〕→「ばん」
ごばんしょ
〔御番所〕奉行所。両御番所といえば北・南の町奉行所をいう。
「両御番所は言ふに及ばず、御勘定から寺社奉行、」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
ごぶいん
〔御無音〕ごぶさた。のちに「ごぶおん」と発音した。武家用語。
ごふくがみ
〔呉服紙〕衣類を包んで売っている厚紙。
ごふくりゅう
〔御腹立〕お腹立ち。御立腹。
ごぶだめし
〔五分だめし〕憎い相手を一どに殺さず、苦痛を深くあじわわすために全身を五分ぐらいずつ斬りきざむをいう。一寸刻み五分だめし。
ごふだんめし
〔御不断召〕ふだん着。
ごふない
〔御府内〕江戸。
ごふれい
〔御不例〕貴人の御病気。
こほうか
〔古方家〕古医方(こいほう、漢方医学のルネッサンス)のよさをとなえる人。杉田玄白もその脈を引く。
こほうばい
〔古朋輩〕旧友。昔の友達。
こほん
〔小本〕人情本(昔の恋愛小説)のこと。
ごま
〔胡麻〕追従。おべっか。「おつう胡麻をいうぜ」「胡麻をすりやがる」など。
こまいかき
〔小舞かき〕壁の下地にわたす竹をこしらえる職人。
ごまいがさね
〔五枚重ね〕刑死直前の囚人には、この世の名残りにひとえものの差入れを大幅に許したから、1人で5枚も重ねて着るものもあったのである。差入れは、1人で5枚送る場合もあるし、5人から1枚ずつ送る場合もある。
こまいぬ
〔狛犬〕神社の前に2頭並んでいるあま犬こま犬の石像のよう、いつも2人づれで歩く人々。男女のアベックではなく、お神酒徳利(みきどくり)に同じ。コンビにもあたるか。
こまえのもの
〔小前の者〕貧民。
ごまがらじま
〔胡麻がら縞〕ごまがら(ごまの実を取り去った茎)にかたどった縞。唐桟(とうざん)などに使われた。
こまたがきれあがった
〔小股が切れ上がった〕キリリとした女の形容。
「女がソク(足を割らないでまっすぐに立つこと)で立つ場合に、内輪の足つきは、足が両方からつくに反して、踵(かかと)は双方離れる。ーーこの間にスキ間があいて、『小股が切り上る』のであるーーと僕は解釈する。」(木村荘八随筆「しばや・モード・粋」)
ごまのはい
〔胡麻の灰〕旅人の懐中をねらう盗人(旅人風をしていて相手をあざむく)。昔、高野山の僧の姿をして、弘法大師の護摩の灰だといって押売りしたものからこの名が起った。
ごまふだ
〔護摩札〕護摩を上げて祈ってもらった記念の札。
こまよせ
〔駒寄〕馬の逃げ去るを防ぐために門前などに設ける低い柵(さく)に似せて、墓碑や境内の神木の廻りを囲む石造の柵。
ごみくた
〔塵芥〕ごみのこと。ものをゾンザイにすること。「ごみくたにする」
ごみょうせき
〔御名跡〕名字の跡目をうけつぐこと。
こめつきばった
〔米搗ばった〕むやみに頭を下げる人。
こめやかぶり
〔米屋冠り〕米屋や搗屋(つきや、米つき)が糠(ぬか)のかからぬようにする手拭の冠り方。
こめる
〔籠める〕圧迫する。圧力をくわえる。いじめる。やっつける。いいこめる。
「囲者(かこいもの)や芸者屋を年中籠(こ)めて幅をきかせる二つ名のある弥太五郎源七。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
「遊び交際(づきあい)をするものが、籠められぎりぢゃあ顔が立たねえ。」(同・深川閻魔堂橋の場)
こもちじま
〔子持縞〕太い線と細い線と並行している縞。
こもの
〔小物〕遊廓で勘定書へつけてだす雑費のこと。
「小物とは雑費を意味するよし、この程は明かに書出すやに聞けど、囊に大阪に徙(うつ)りし老作者の、之(これ)を香の物とおもひとりて、楼丁共(おとこども)に打向ひ、もっと小物を持って来い。」(斎藤緑雨「ひかへ帳」)
こもりっこ
〔児守子〕子守。守(も)りっ子ともいう。今日のターバンのように手拭で額(ひたい)を結び、子供をおぶい風車(かぎぐるま)などであやしていた姿は、邦楽や舞踊にもとり上げられている。
こもん
〔小紋〕小形の模様を織物の地一面に染め出したもの。
ごもんきって
〔御門切手〕大名屋敷の門を通用できる証明の切手。門鑑札。
ごもんしゅ
〔御門主〕門跡(もんぜき、本願寺の俗称)の住職。江戸人はなまって、もんずきさまといった。浅草菊屋橋及び築地本願寺。
こや
〔小屋〕大名屋敷にあるその藩の武士の住居。
こゆすり
〔小強請〕ちょっとしたゆすり。
「小耳に聞いた音羽屋の似ぬ仮声(こわいろ)で小強請(こゆすりかた)り」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)
ごよう
〔御用〕「御用聞」の略。
ごようおお
〔御用多〕お忙しいという場合につかう。「御用多の所をすみません」
ごようきき
〔御用聞〕岡っ引。手先。下っ引。与力や同心の下に付いて捕物のとき働く者。商店の注文取りをもいう。
ごようたし
〔御用達〕諸大名(維新後は華族)の金融を引き受ける商人。ただし御用達も金融以外単にそれぞれの営業面のものだけを引き受ける人々もあった。
ごりん
〔五厘〕寄席出演者のブローカー。昔、1人に付き5厘ずつの周旋料を取っていた。
ころころ転がるように。手の舞い足の踏むところを知らないほどに。
ころす
〔殺す〕質へ入れること。ぶち殺す。「この時計を殺して一ぱいのもう」
ごろっか
ごろごろ。「暑かったので、家でごろっかしていた」
ころっぷ
〔コロップ〕ブドー酒や洋酒の壜(びん)の口に、昔は多くキルクの栓がしてあり、それをコロップといった。のちにコルクともいい、その栓ぬきをコロップぬき。
ころまけ
〔転負〕一も二もなく負けること。
こわげだつ
〔怖げ立つ〕ぞっとする。
こわごわしい
〔怖々しい〕怖らしい。怖そうな。
こわたり
〔古渡り〕古く異国から渡来した品。「古渡り唐桟(とうざん)」
こわめし
〔強飯〕昔は、葬礼の会葬者に白くたいた強飯を与えた。人情噺「子別れ」の上には、この光景がえがかれている。
こわもて
〔怖もて〕畏怖して応待すること。こわごわうやまってもてなすこと。
ごん
〔権〕「権妻(ごんさい)」の略。
「それぢやどこかへ権のやうな者でも置きますか。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)
こんかんばん
〔紺看板〕→「かんばん」
こんけんじょう
〔紺献上〕紺色の博多帯。→「けんじょうはかた」
こんこんちき
狐のこと。言葉の調子で「そんなことは大知(おおし)りのこんこんちきでさあ」という風にもつかう。
ごんさい
〔権妻〕お妾。権妻二等親(にとうしん)ともいった。略して、権。今日でなら、二号。
「明治二十年前後までで、用ひた間はさう永くない。」(鏑木清方「明治の東京語」)
こんで
〔込んで〕一しょに。コミーー入れ込みで。
ごんてき
〔権的〕権妻(ごんさい)をふざけていったことば。
ごんのじ
〔五の字〕5銭とか5円とか50円とか500円とかいう代りにつかうことば。
ごんぱち
〔権八〕居候(いそうろう)のこと。白井権八が、幡随院長兵衛宅の厄介になる筋の数種の芝居(史実とは違う)にはじまる。「権八をきめている」
ごんべえ
〔権兵衛〕頭のつむじの後方。
さいくはりゅうりゅうしあげをごろうじろ
〔細工は流々仕上げを御覧じろ〕胸を叩いて引き受け、安心して出来栄(できばえ)を期待せよ、というときに江戸人が使ったややユーモラスな表現。
ざいご(う)ことば
〔在郷言葉〕田舎ことば。
ざいご(う)もの
〔在郷もの〕田舎者。
さいそくかた
〔催促方〕催促する役。→「かた」
さいづちあたま
〔才槌頭〕頭の前後が突き出て、小形の木の槌(つち)の頭に似た頭。
さいづちやろう
〔才槌野郎〕出しゃばり野郎。
ざいてい
〔在体〕在郷らしいありさま。田舎風。
さいとり
〔才取〕ブローカー。「さやとり」のなまり。
さいとりぼう
〔宰取棒〕足場の上の左官にしっくい壁土を、下から差し出してあたえるため適当の容器や「たち板」を一端に取りつけた棒。
さいふじり
〔財布尻〕金銭の出入りする権利をもっていること。「財布尻をおさえる」
ざいめい
〔在銘〕刀に製作者の銘(署名)があること。
ざいもくやのとんび
〔材木屋の鳶〕お高くとまっている人。「火の見のからす」ともいう。
さいりょう
〔宰領〕団体旅行の取締人。
さかとんぼ
〔逆蜻蛉〕まっさかさま。とんぼが飛びながら急にくるりところがって又飛び上るが、その逆の道の方向ーーつまり爆撃機の急降下のような形で落下することを「さかとんぼを打つ」という。
さがみおんな
〔相模女〕相模生れの女。昔、相模者は多情として、「相模下女いやとかぶりを縦に振り」以下、古川柳にいろいろとりあげられている。斎藤昌三氏に「相模女考」がある。
さかやきぎわ
〔月代際〕額の頭髪を半月の型にそった際(きわ)のところ。
さかん
〔壮〕嫁取り盛り。結婚適齢期。
さかん
〔査官〕巡査のこと。査公ともいった。
さきずら
〔先遁〕先へずらかるの略。先へ逃亡すること。
さきども
〔先供〕主人の先に立って供をすること。
さきばらい
〔先払い〕行列の先頭に立ち、往来の人たちに道をさけさせる。
さきぼう
〔先棒〕駕籠の前部。またそこをかつぐ者。先肩。他人の手先に使われる人をもいい、やたらにことあれかしと騒ぎ廻る者を「先棒かつぎ」ともいう。→「あいぼう」
さくい
きさく。気がる。淡白。
さくりょう
〔作料〕製作料。お代。
ざくろぐち
〔柘榴ロ〕銭湯の湯ぶねの前を湯がさめないように深くおおった入口。鳥居のような形で、芝居絵・武者絵などが美しくえがかれてあったという。(今日の湯屋のペンキ絵はそのなごりか。)
「寒いはな。ちょっと温(あったま)って聞かう。オオ寒。柘榴ロヘ這入(はい)り、からだをしめしながら」(式亭三馬「浮世風呂」)。
「風呂の柘榴口と云ふものは矢はり十八九年頃から段々に姿を変へてしまった。あれも一種の装飾であって、なかなか金のかかったものもあった。今日のやうに着物をぬいで流しへ這入ると、正面の風呂のなかには幾つもの首が浮いてゐるなどは、あまり見よい図ではない。矢はり正面に立派な柘榴口が立ってゐる方が感じがいいやうである。その代り、柘榴口のある風呂はどうしても踏み段をまたいで這入らなければならない。あわてて飛込まうとすると柘榴口でこつッと遣られる。おまけに風呂のなかは昼でも薄暗い。人の悪口を云って、その人が隅の方にゐたなどと云ふ失敗はしばしば繰返された。」(岡本綺堂「銭湯今昔物語」)

zakuro
柘榴ロ

さげしたじ
〔さげ下地〕諸大名の奥方、姫君が多くゆった髪。大きな輪に結び、櫛(くし)、笄(こうがい)、簪(かんざし)、色元結(いろもつとい)を配した派手な髪。

sage
さげ下地

さげもの
〔提物〕腰へ下げるもの。
さざえのしり
〔栄螺の尻〕心のねじれている人。世間づきあいのきらいな人。木村友衛の浪曲「河内山」に「栄螺のけつではないけれど、どこまでねじれてでるやも知れぬ」。
さし
〔差・縒〕わらや紙でよったひもで、穴開き銭をさしとおすもの。両端に結びこぶをつくって止める。また、さしにとおされた一定のーー100文、300文という単位の銭をもいった。上品ぶりたがった遊女が、これをわざと大きな毛虫と見違えたふりをして失敗するユーモアが江戸小咄にある。さしの有様がわかる。
さし
〔差〕差さわり。具合が悪いこと。差合。
さじ
〔匙〕薬の調合。「匙を投げる」というと、医者が病人をあきらめたことから、一般にあきれて手をひいた意味になった。「さじかげん」も薬をもる塩梅(あんばい)からはじまって、自分の考え一つでどうにでもなることをいうようになった。
さしあい
〔差合〕差しつかえ。差。
さしうら
〔差裏〕腰にさした場合、刀の鞘(さや)の内方(からだにちかい方)。「差表」の対。
「かように切れる刀でも、差裏・差表にガマの油を引くときは、引いて切れない、叩いて切れない。」(落語「蟇(がま)の油」)
さしおもて
〔差表〕腰にさした場合、外側を向く方。「差裏」の対。
さしかつぎ
〔差担ぎ〕前後2人で荷物をかついでいくこと。また、棺桶をそうして運んでいってやるような、まずしくさびしい葬い。さしにない。
さしがみ
〔差紙〕政府が特別に目をつけた人を指名して呼び出す命令状。
ざしききり
〔座敷限り〕遊女が顔を見せるだけで、共に寝ないこと。
ざしきろう
〔座敷牢〕自家内にもうけた檻禁所(かんきんじょ)。狂人や遊蕩児を入れた。古川柳に「座敷牢大工を入れてしめて見る」
さしこみ
〔差込〕胃痙攣
さしぞえ
〔差添〕大刀にそえて身につける短刀。
さしぞえ・さしぞい
〔差添〕介添(かいぞえ)。附添い。「差添は別府新八で、曲者(くせもの)は森山勘八と申す者で、」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
さしにない
〔差担〕→「さしかつぎ」
さしひかえ
〔差控〕武士があやまちをおかしたとき、出仕(お城へ出ること)をやめ、自分の家につつしんでいること。謹慎。
さしむき
〔差向〕さしあたり。
さしりょう
〔差料〕自家用の刀。自分が差してつかう刀。
さすまた
〔刺股〕突棒(つくぼう)、袖搦(そでがらみ)と共に、江戸時代3道具の1。二叉(ふたまた)にわかれた鉄製の頭部に長い木の柄(え)を付け、狼籍者をおさえるのに使った。
ざそう
〔坐相〕坐っている姿。
さたやみ
〔沙汰止〕中止。取り止(や)め。
さっきがた
〔先刻方〕いまし方。
さつぎって
〔札切手〕紙幣(さつ)のこと。
さつく
さくく。砕けて。さばけて。
さっしごころ
〔察し心〕察し。デリカシイ。
さつまげた
〔薩摩下駄〕書生がはいた、台の幅がひろく、杉でできた駒下駄。「書生さん、ことば鹿児島さつま下駄」という「まっくろけぶし」がはやった。
ざとうしらず
〔座頭不知〕粟餅。青森地方では今日も粟餅を座頭不知という。
さとっこながれ
〔里っ子流れ〕里にやっていた子の、そのまま実家へかえらずじまいになったもの。
さとなれる
〔里馴れる〕廓に馴れる。里は、色里。「勘平が妻のおかるは酔さまし、はや里馴れて吹く風に、憂(う)さを晴らしてゐる所へ、」(竹田出雲他「仮名手本(かなでほん)忠臣蔵」祇園町一力の場)
さとぶち
〔里扶持〕子供を預けてある家へおくる毎月の扶育料。
ざどる
〔座取る〕場所を取る。
さなだひも
〔真田紐〕平たく組み、または織った木綿の紐で、天正のころ真田家で刀の柄を巻くにつかった。明治の中期まで真田家の遺法として織り出していたゆえに、この名がある。古川柳に「重宝な紐に勇士の名がのこり」。
さはいにん
〔差配人〕貸地や貸家の取締をする人。
さばをよむ
〔鯖を読む〕数をごまかすこと。鯖をとる網は大へん大きく、一と張りの長さ1213ヒロあるのを五重にしたもので、むらがる鯖を一どにとるゆえ、これを数えるとき、使用人がごまかすことからはじまったのではないかといわれる。
さびた
さびたは木材の名称で、明治時代にはさびたのパイプが流行した。単にさびたといえば、パイプの代名詞だった。
さびれ
〔寂れ〕衰微。繁昌しないこと。賑やかでないこと。
さま
〔様〕お方。
さみする
〔悔みする〕あなどって悪くいう。
さむさをひっこむ
〔寒さを引っ込む〕風邪をひく。
さむらいぶん
〔侍分〕侍の身分。息子分、養子分などの「分」である。
さや
〔紗綾〕さあやの略。綾に似て、鞘形(さやがた)その他の模様をあらわした絖(ぬめ、光った絹)の織物。
「をんな肌には白無垢(しろむく)や、上にむらさき藤の紋、中着緋紗綾(なかぎひざや)に黒繻子(くろじゅす)の帯。」(岡本綺堂「鳥辺山心中」)
さようしからば
〔左様然らば〕改まった口のききようをいう。「左様然らばで口をきかれると困るんですが」。
さらす
〔曝す〕太陽の光りの下に「もの」をだしておくことがはじめで、刑場で死体の首を多くの人々に見せること。隠したことが世間へ分かるときにも、恥をさらすなどという。
さらんばん
めちゃめちゃ。元も子もなくなるという意味。
さりじょう
〔去状〕離縁状。退(の)き状。
さるばしご
〔猿梯子〕取りはずしの出来る室内用の梯子。
さわさわそわそわ。「なんぼ年がいかないからといって、さわさわばかりして居るよ。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
さわり
〔触り〕聞かせどころ。義太夫においてその以前の音曲の曲節をとり入れて節づけした所を、他の節にさわっているとの意味でいう。主に女主人公の心理、弁明、詠嘆などの「くどき」の部分に使われたところから、「くどき」およびクライマックスの表現にも転用するようになった。
ざん
〔残〕残金のこと。
「旦那、残(ざん)を忘れちやいけませんぜ。」(河竹黙阿弥「富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま)ーー女書生」)
さんかい
〔参会〕集会のこと。寄り合い。「参会の崩れ」といえぼ今日の二次会である。
さんきらい
〔山帰来〕中国や印度にある竹に似た木の根からこしらえた梅毒の薬。古川柳に「いただいてのむもくやしき山帰来」。
ざんぎり
〔散髪〕明治4年断髪令がでて、髷(まげ)をそり落したころ、その頭をざんぎりととなえた。今日も河竹黙阿弥の「島鵆」(しまちどり)その他明治の世界を扱った戯曲をざんぎり物といっている。当時の俗謡に「ざんぎり頭を叩いて見れば文明開化の音がする」。

zangiri
ざんぎり

さんざい
〔散財〕多くの金をつかうこと。色町で派手に遊ぶこと。「散財するがいい」「とんだ散財だった」
ざんさいいれ
〔残菜入〕油紙製の、食品を入れるもの。多く茶人が使用した。
さんしたやっこ
〔三下奴〕バクチ用語。三という数は、およそ勝てない目で最高点の九に遠いが、さらにその三より下なら二と一しかなく、全然問題にならない奴という意味。
さんじつ
〔三日〕朔日(ついたち)、15日、28日を三日(さんじつ)といい、江戸時代、毎月の3つの式日(しきじつ)。おついたち、お十五日、廿八日ともいい、きょうは廿八日あしたはおかめの団子の日ともいった。おさんじつ。
さんじゃく
〔三尺〕へこ帯。兵児帯とは、はじめ薩摩の兵児(へこ、15歳以上25歳以下の青年)が使ったからによる。三尺とは、木綿などを長さ鯨尺3尺くらいに切った帯のことで、三尺帯をしめる人種が活躍するため、浪曲や講談では俠客物を三尺物(さんじゃくもの)という。
さんじゃくたかいところ
〔三尺高い処〕はりつけのお仕置になること。土で3尺、木で3尺、6尺高い木の空ーーそうした高さのところに、はりつけになる自分がしばり付けられる木が立てられていたという意味。
さんじゃくど
〔三尺戸〕木戸におなじ。縦が3尺あるのでいう。
さんじゅうりょうひともとで
〔三十両一資本〕30両あると、最低ながら一仕事の資本となったことをいう。
さんだらぼっち
〔桟俵法師〕米俵の両端にある太い藁(わら)の蓋(ふた)。桟俵(さんだわら)の江戸弁。さんだらぼうし。
さんどがさ
〔三度笠〕面部をおおえるように深く造った菅笠。月に3回往復の三度飛脚が冠ったゆえ。

sandogasa
三度笠

さんとめじま
〔桟留縞〕はじめ印度の東岸Santomeから渡来した絹物をいうが、のちには竪縞(たてじま)、赤または浅葱(あさぎ)のまじった縞柄の織物はみな桟留縞と呼んだ。
さんのきり
〔三の切〕義太夫狂言(人形浄瑠璃芝居)の三段目の最終部。五段形式のクライマックスにあたるところから、ほとんどが切腹や殺人、別離などの悲劇になっている。愁嘆場(なげきかなしむ場面)ともいわれる。それから応用して「昨夜はあれからとんだ三の切さ」などと使う。
さんばらがみ
〔散ばら髪〕バラバラに乱れた髪。
さんぴんやっこ
〔三一奴〕バクチ用語で、三両一人扶持(ぶち)だから、下級の武士を三一といったのとはまたちがう。九を最もよしとするバクチの勝負、三だの二だの一だのという目は、どうでても勝利への途ではない。すなわち、出世のおぼつかない奴の意味。
さんぷ
〔三府〕江戸、京、大阪。
さんまい
〔三枚〕「三枚肩」の略。駕籠は普通は2人でかつぐものだが、特に急ぐ場合は3人でかついだ。明治になって人力車が駕籠にとって代るようになっても、このことばはそのまま残り、「三枚で急がせる」などといっていた。人力車の三枚とは梶棒をにぎる車夫と梶棒につけた綱を引く車夫と車体の後押しをする車夫とである。「後押し綱引き三枚」などとつづけていう。
さんみょうさわがし
〔三めう騒がし〕辺りを騒がす。(春陽堂版円朝全集鈴木行三氏註に「さんまいさわがして」とある。)
「そんな事をしても三めう騒しで、やっぱり内を外にして、尚、心配でございまする。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
じあか
〔地赤〕赤地に松竹梅など豪華な刺繍のある女性用の晴れ着。じあけ。
「はい。と出て来た姿は文金の高髷、地赤の縫模様、大和錦の帯を締め、白の掛で、」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)」)
しいくる
生活の苦しいこと。苦しいを逆さにいった。「何しろ今はシイクルですから」
じいじいもんもん
字と絵。児童語。
しいたけたぼ
〔椎茸髱〕髱を張り出し、椎茸のような形にした御殿女中特有の髪。
しいのみ
〔椎の実〕幼い男の子の局部をいう。
しおいり
〔汐入〕海の水が流れいっている川口の川。
「江戸向(えどむき)都心には見られぬ汐入の高く反(そり)の附けられた小橋を幾つともなく渡って、」(小栗風葉「恋慕(れんぼ)流し」)。邸や別荘や料亭で海や川の水をそのままとりいれた池をも、汐入の泉水という。
しおき
〔仕置〕取締り。処罰。親が子をしかってぶったりすることも仕置をしたという。
しおく
〔仕置く〕しておく。仕置いたこともあるという風につかう。
しおたれる
〔萎たれる〕しょんぼりする。今日でも出版界では、保管不完全や売残りのため見るかげもなくなることを「しょたれる」といい、そうなった本を「ショタレ本」といいならわしている。
しおばな
〔塩花〕芸者屋でいやな客がかえるとまく塩。葬礼からかえったときにまくのもいう。
しおびき
〔塩引〕塩引(塩漬)の鮭の略。
しおふき
〔汐吹〕ひょっとこ。
しおものだち
〔塩物断ち〕→「たちもの」
しおものや
〔塩物屋〕塩づけの魚や漬物を多く売っていた店。
じか
〔自火〕自分の家から火事をだすこと。
しかくなじ
〔四角な字〕漢字。本字。かなに対していう。
しかけ
〔襠〕帯をしめた上にうちかけて着る長い小袖。うちかけ。
じかぜ
自然に吹いて来る風。「帯まきつけて風(じかぜ)の透(す)く処へ行けば、」(樋口一葉「にごりえ」)
しかたばなし
〔仕方話〕身振り手真似をまじえてする(ジェスチュアたっぷりの)。
じがみおり
〔地紙折〕扇に使う紙を折って売る商売人。画商(画家の所へ出入りしてその絵を売りさばく商人)をもいう。
しがらき
〔信楽〕信州産の籐(とう)の一種。笠にもなる。
しき
手数料。
「お嬢様を自分の三階で男と密会(そっとあわす)をさせて、いくらかしきを取る。」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)
しぎ
〔仕儀〕次第。「殺さにやならぬ今日の仕儀」(二上り新内「うつぼ猿」)
しきがみ
〔敷紙〕紙製の敷物。厚く貼り合わせた渋紙。
しきしがあたっている
〔色紙が当っている〕貼交屏風(はりまぜびょうぶ)の色紙のように、着物の諸方へ継があたっていることのユーモラスな表現。
しきせ
〔仕着〕季節に応じて商家が奉公人へ、また客が芸者幇間にやる絆纏(はんてん)や羽織。ユニ・フォーム。牢獄における囚人服をもいった。多く「お」をつける。→「そうばおり」
しきだいぐち
〔敷台口〕玄関先の板敷の一ばん外にちかい部分。
じきに
〔直に〕じかに。直接に。
しきぶくろ
〔四季袋〕手さげ袋ーー今日のボストンバッグの一種。布でできている。
しきまつば
〔敷松葉〕庭の苔や芝などが霜の害を受けぬよう枯松葉を敷いて予防とするをいう。松などへ雪よけをしたのと共に、いかにも冬の庭らしい風情が、あの枯れた松葉の色から感じられた。
じきょうきごうとう
〔持凶器強盗〕刃物やピストルをたずさえていて入る強盗。
しきり
〔欄木〕昔の劇場の、約4人ずつ入れた場席と場席の間を仕切ってある細い棒にちかい歩み板。
「左右の人の肩を押分けて、危険相(あぶなそう)に細い欄木を渡ると、」(小杉天外「初すがた」)
しきり
〔仕切〕取引の決算。計算書・勘定伝票のことを今でも「仕切書」というところが少なくない。
しきりば
〔仕切場〕昔の芝居小屋で、金主座元会計方などが詰めていて勘定をした場所。木戸の左手にあった。
じぐち
〔地口〕蕎麦(そば)がいい、側(そば)がいいという風に、似た音でしゃれること。
じぐちあんど
〔地口行灯〕洒落(しゃれ)をかき、その洒落をも絵にした行灯で、初午祭などにかけつらねる。絵の具が一種変っていて、いかにも市井的(しせいてき)な色調に、かえって味がある。例を引くなら、婉豆(えんどまめ)の顔をした鎧武者(よろいむしゃ)がもりそばを10個たべている絵に、えんどうむしゃもり十(遠藤武者盛遠(もりとお))とあるたぐい。
じくねる
すねること。グズグズいうこと。反対すること。じぶくる。
じぐる
地口をいう。
じくん
〔二君〕「にくん」と現代ではいうが、昔は「じくん」といった。
しけこむ
一室へ入りこむ。情痴にもつかい、男女が泊りに行くこと。
じこう
〔時好〕はやり。時代時代の好みという意味。「時好に投じる」
じごく
〔地獄〕淫売。私娼。
「坊間の隠売女にて、陽は売女に非ず、密に売色する者を云。昔より禁止なれども、天保以来特に厳禁也。」(「守貞漫稿(もりさだまんこう)」)
しこくざる
〔四国猿〕昔、四国の人をののしっていった言葉。
じごくばら
〔地獄腹〕女の子ばかり生む女のこと。
しこたま
たくさん。どっさり。
じざい
〔自在〕自在鈎(かぎ)の略。炉(ろ)、竈(かまど)の上につるし、自由に鉄瓶、鍋、釜を上下させる装置の鈎。
じじっけ
襟(えり)の毛のこと。児童語。
しじめ
蜆(しじみ)のなまり。
しじめっかい
〔蜆貝〕内にいては大きな顔をし、外へでると小さくなっている子供。内弁慶に同じ。「内の中の蛤貝、外へでると蜆ッ貝」とはやした。
じしょくしょ
〔辞職書〕辞職届。
じそ
〔自訴〕自首。みずから訴人(そにん)すること。→「そにん」
しそく
〔紙燭〕松の木を長さ約15寸、太さ3分(ぶ)ほどの棒のようにけずり、先の方を炭火であぶって黒くこがし、その上に油を塗って火をつけるもの。下を紙屋紙(かみやがみ)で左巻きにした。これが宮中でつかわれた紙燭であるが、粗末な手燭(てしょく)のまわりを紙で筒のようにおおい、上部だけあけたものをもいう。
じだい
〔時代〕古びがかかっている様子。「この茶碗は時代がついた」などという。「過去」「歴史上」をも「時代」と表現した。例「時代狂言」。いまだに「時代劇」「時代小説」のよび方がある。
しだいがら
〔次第柄〕経路。すじ道。
したかた
〔下方〕弟子(植木屋などの)。見習職人。また、囃子(はやし)とその演奏者である囃子方(はやしかた)をもいう。→「かた」
したかねかし
〔下金貸〕下等な金貸。
したぐみ
〔下組〕下地。土台。
したじめ
〔下締〕着物(上衣)の下、つまり下着にしめるひも。「うわじめ」の対。
したっぱらにけのない
〔下っ腹に毛のない〕男から男をあさりつくし、下腹部の毛がすり切れてしまっているほどのあばずれ女という意味。
したて
〔仕立〕往来で客待ちをしている辻車でなく、若い衆を沢山かかえ、一軒構えている宿車(やどぐるま)をいう。今日ならハイヤーである。
じたて
〔地たて〕すんでいる土地から立ち退くこと。家を追われるのは「店(たな)だて」という。
したみ
〔下見〕家の外部の壁をおおうもの。普通は横板張りで、その上に薄板を直角に15寸〜3尺の間隔で縦に打って押さえにする。下層の家ではねじけた竹(ひしぎ竹)などを使っている。
じだらける
〔自堕落ける〕のぼせ上がる。理性、判断力が低下する。自堕落になる。
しちがつのおやり
〔七月のお槍〕ぼんやりーー盆の槍だからーーというしゃれ。
しちけつ
〔七穴〕左右の耳、左右の目、左右の鼻孔、口。「七穴から血を吐いて死んだ」
しちょう
〔紙帳〕紙製の蚊帳。
しちりけっぱい
「七里結界(仏教語で七里四方に境界線を結ぶこと)」のなまり。きらって寄せつけないこと。
「金がなければ七里けつぱい、摘(つま)んで捨てるげじげじ同様。」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
しちりょうがえや
〔質両替屋〕質屋と両替屋をかねている店。→「りょうがえや」
じつ
〔実〕真実。まごころ。誠実味。「実をつくす。」
じつい
〔実意〕真情。まごころ。
しっこし
〔尻腰〕気概(きはく)。決断力。気魄。なまってヒッコシという人もいる。忍耐力。気力。
しっちょぐる
放尿する。小便をする。→「しょぐり」。もとは「ひょぐる」であろう。
「ヱヱ己(おれ)も小便がしたくなった。一寸ひょぐって来よう。」(芝全交「年寄之冷水曾我(としよりのひやみずそが)」)
じってい
〔実体〕実直。まじめ。誠実。
じっぷ
〔実否〕今日では「じっぴ」と発音する。ほんとうかどうか。「実否をたしかめよう。」
じつめい
〔実銘〕実直。
してかた
〔仕手方〕自分に従う職人。「棟梁のはしくれをいたし、仕手方を使ふ身分になりました。」(三遊亭円朝「英国孝子之伝」)。
じてんしょう
〔自点鐘〕音立てて鳴る時計の針。
じとう
〔地頭〕土地の頭立つ人。土地の管理役人。「泣く子と地頭には勝てぬ」
しどけない
取り乱している姿。
しとしと
しとやかに。しずかに歩いて来るとき。しずかにふる雨などにいう。
しとみ
〔蔀〕家の前にはめ込む2枚の横戸。昼は柱の上部に取り付けた戸決(とじゃくり)にしまい、夜だけ下ろして戸締とする。商家に多い。
しとをつけ
「ひとをつけ」のなまり。
じない
〔地内〕境内。浅草観音境内に河竹黙阿弥が住んでいたときは、「地内の師匠」とよばれた。
しにがね
〔死金〕老人が自分の葬式費用にたくわえておく金をいう。効果のない金を浪費する場合にも死金をつかうという。
しのびがえし
〔忍返し〕東京下町風景の1つだった忍返しは、いまや二番目狂言の舞台面以外には見られなくなった。塀の上にとがった板や木(明治以後の鉄のは風情がない)を組み合わせて取り付けた設備。盗賊の入るのを防ぐためである。
しばや
〔芝居〕明治中頃までは、東京人はシバイと発音しなかった。そのころの畳をしいて飲食しながら観劇した劇場の内部は図のごとくで、上流の客は芝居茶屋から行き、茶屋へ一々食事に戻り、この料理が大へん美味。女客は、茶屋へ着替えの衣類を預けた。大衆的な人たちは出方(でかた、たッつけばかまをはいた男の案内人)からじかに入場した。みな午前中に早くはじまり、夕方に終った。ただし午前11時開演だと午後8時頃まで。のちに松竹経営となって一手に本家茶屋ができたが、それも廃止された。中流席の後方には松・竹・梅の区別もあり、また前船という席もあった。→「まえふね」

sibaya
2階の左右のさじきは高級。正面さじきは土間と同じ中流席。その後が大入場(おおいりば)の大衆席、その又後に立見(たちみ一ーと幕見)があった。(鈴木とみ手記)

しばり
〔○○縛り〕金貸しの返却期限。四月(よつき)縛りといえば4カ月を切って貸す金。「二月(ふたつき)縛りで一割」とは期限2カ月、利息1割。
じひき
〔地弾き〕舞踊の伴奏者。地方(じかた)。
しぶいちごしらえ
〔四分一拵え〕銅にその重さの4分の1以上銀をまぜた、日本独自の合金で、朧銀(おぼろぎん)ともいい、暗い茶色の美しい金属。落語「錦明竹(きんめいちく)」中の「お道具七品」のいい立てにもでる。
じふく
〔地幅〕玄関先のタタキまたは土になっているところ。
じぶくる腹を立つこと。「いつまでじぶくれているんだ」
じぶくろ
〔地袋〕床脇にこしらえたちがい棚の下にある小さな袋戸棚(ふくろとだな)。
しぶとい
強情なこと。ガンコなこと。
じぶんてに
〔自分手に〕自分の手で。
じぶんどき
〔時分時〕食事をするのにちょうどいい時間。
「時分になったら御膳でも食べておいでなさい。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
じぶんみがたつ
〔自分身が立つ〕自分ひとりのからだがたべて行かれる。
しべがたつ
〔蘂が立つ〕袋物(ふくろもの)の革に立っている皺の具合に味のあること。
しま
〔島〕洲崎の廓。一般の花柳界のことも「どのシマも忙しい」という風につかう。花柳界のある土地。
しまいしごと
〔仕舞仕事〕仕事の完成したことをいう。
しまかず
〔島数〕流罪になった数。
しまつかた
〔始末方〕始末。方法。→「かた」
しまつや
〔始末屋〕遊廓で勘定のできない客を引き受け、着物をはいだり、金算段のできそうな家までその家の若い者がついていって解決することを一切代行する店。
じまま
〔自儘〕自分の自由。
しみん
〔四民〕士農工商をいう。
しめし
〔戒示〕意見。いうこと。みせしめ。また「お前がしっかりしないとほかの人にしめしがつかない」という場合にもつかう。
じめんうち
〔地面内〕地所の内。地内(じない)。
しもがた
〔下方〕武士階級が町人の世界をさしてよぶことば。
しもよけのかざりなわ
〔霜除けの飾縄〕霜の害を防ぐため草木に藁(わら)や莚(むしろ)などをかこむが、雪による松の枝折れの予防には黒く染めた縄を張る。すなわち、その縄。
「蛇の目をひろげたように幾条もの縄が」と山本勝太郎「江戸趣味の話」にはある。→「しきまつば」
しもゆば
〔下湯場〕花魁が客とねたあと、洗滌する所。
しゃあつく
心臓の強いこと。ツラの皮のあついこと。しゃあつくばり。いけしゃあしゃあ。
じゃがぬまでへびをとるまでしっている
〔蛇が沼で蛇を捕るまで知っている〕自分のもっている財布の中の金額を暗記しているごとくよく知っているという意味。
「どうしたって蛇が沼で蛇を捕るまで知って居るのだ。すっかり種が上(あが)っているのだ。」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
じゃがらっぽい
じゃけらっぽい。ジャガタラ(蘭領バタヴィアーー現インドネシア共和国の首府)唐人臭い、西洋臭いという意味。目につくような、派手な、ということになる。邪綺羅(じゃきら)っぽい。またジャガタラっぽいから変ったという説もある。真山青果は「西鶴語彙考証(さいかくごいこうしょう)第一の「好色一代女、一ノ一」で、「邪気乱(じゃけら)つのってたどり行かれし道は」という所をあげて、「着物の模様のぱッと目に立つをいう」と解釈し、さらに青果は、文政時代の方言集「浜荻(はまおぎ)」をも引き、作者の郷里仙台にもこの言葉はかなり近頃までのこっていたと書いている。
「へだての襖(ふすま)をあけて入った人の扮装(なり)はじゃがらっぽい縞の小袖にて、」(三遊亭円朝「真景累ケ淵(しんけいかさねがふち)」)
しゃぎり
〔砂切〕歌舞伎や寄席で、一つの番組が終ったときの後奏楽。それを奏するのを「シャぎる」という。
しゃく
〔癪〕烈しい胃けいれん。または胆嚢炎(たんのうえん)や、肝臓障害などの痛みをもいう。
しゃくきれ
〔尺切れ〕一尺切れくらいの小さい布。
しゃくざいかた
〔借財方〕借財。借金。→「かた」
しゃくとりおんな
〔酌取女〕酌婦。
「『姐さんここのおかみさんですか。』『酌とり女さ。白粉(おしろい)で面(つら)の皮が焼けてる阿婆摺(あばず)れさ。』」(長谷川伸「一本刀土俵入」取手宿安孫子屋の場)
しゃくばや
〔借馬屋〕馬を貸してのらせる店。その家の馬場の中でのる者と、馬を借りて市中をのり廻す者とあり。都内の火除地(ひよけち)に多くあった。→「ひよけち」
しゃぐま
〔赭熊〕赤く染めた白熊(はぐま)の毛に似た髪の毛やちぢれ毛で作った入れ毛をいう。遊女の髪に多い。「赭熊立兵庫」(しゃぐまたてひょうご)
しゃくる
そそのかす。
「どうしたんだ。何か人にしゃくられでもしたのか。」(三遊亭円朝「名人長二」)
じやしき
〔地屋敷〕地面と邸。
しゃじくをながす
〔車軸を流す〕大雨の形容。
じゃじゃちんちん
そのころは珍しかった時計の鳴る音。→「じてんしょう」。
「追々(おいおい)夜がふけてまゐりますと、地主の家の時計がじやじやちんちんと鳴るのは最早十二時でございます。」(三遊亭円朝「英国孝子之伝」)
じゃじゃばる
〔邪々張る〕出しゃばって邪魔をする。
しゃしんきょう
〔写真鏡〕箱の中をのぞくと正面に写真があり、それがレンズの仕掛で拡大されてみえる。
しゃっきんをしちにおいても
〔借金を質に置いても〕どんなひどい工面(くめん)をしても。
しゃっぴてえ
〔しゃっ額〕額(ひたい)を強めていう言葉。しやっつらともいった。
しゃっぷ
しゃっぽ(帽子のフランス語シャポウーchapeauの日本読み)のなまり。
しゃにかまえる
〔斜に構える〕おつに気取る。おごそかに身構える。剣道で手にしている得物(えもの)をななめにかまえることにはじまる。「しゃに構えやがって、いやな野郎だ」
じゃのみちはへび
〔蛇の道は蛇〕蛇の通路は他の蛇がよく知っているごとく、同類のもののすることは同類のものが一ばんよく知っている。
しゃばっけ
〔婆婆っ気〕世間体を考え、体裁をつくる人。老いて野心のある人もいう。
しゃばっぷさぎ
〔娑婆っ塞ぎ〕いつまでも下らなく生きている人。しゃばッぷさげ。
しゃばりでる
〔しゃばり出る〕しゃしゃり出る。邪魔するように横合(よこあい)から出る。
しゃも
〔軍鶏〕肉食をいやがった余風で、明治中頃まで軍鶏は中流以下の食品、軍鶏屋はのちの馬肉屋級の存在であった。東両国には坊主しゃもが今日ものこっている。
じゃらくら
イチャイチャすること。

しゃりき
〔車力〕大八車をひき、荷の運搬を業とする人。
しゃりむり
〔差理無理〕無理にの意を強めた場合。「遮二無二(しゃにむに)」のなまりか。
しゃれもん
〔洒落もん〕意気なやつ。
じゃんこ
〔菊石〕アバタのこと。
しゅ(う)
〔衆〕複数の表現よりもむしろ敬意をこめた使い方である方が多い。「芸者衆」「新造衆」「子ども衆」
じゅうあくにん
〔重悪人〕大悪人。
しゅうごくしょ
〔囚獄所〕刑務所。
じゅうそうのしのびがえし
〔銃槍の忍び返し〕軍隊で突撃用に銃の先へつける短剣の払い下げでこしらえた忍び返し。無風流な感じだった。→「しのびがえし」
じゅうにざかぐら
〔十二座神楽〕12の曲目があるお神楽。
じゆうのけん
〔自由の権〕自由にしていられる権利があること。自由権ともいった。
「好い着物を着ようと、どんな真似をしようと、私が自由の権で当り前です。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)
しゅうは
〔秋波〕ながしめ。ウインクのこと。→「あきのなみ・はるのいろ」
じゅうばこよみ
〔重箱読み〕「じゅう(重)ばこ(箱)」のように上の字を音(おん、漢字本来のよみ方)で、下の字を訓(くん、漢字の日本語よみ)でよむよみ方。甲高(こうだか)、古渡(こわたり)、先殿(せんとの)など。合羽(かっぱ)読みともいう。「湯桶(ゆとう)読み」の対。
じゅうはちばん
〔十八番〕天保年度、7代目市川団十郎が市川家代々のヒット作品、「暫(しばらく)」「矢の根」以下18種あつめて、歌舞伎十八番と名づけた。以後、他の人の得意な芸も十八番という。
じゅうや
〔十夜〕陰暦105日から14日まで、浄土宗の寺院で、十昼十夜(じゅっちゅうじゅうや)の法会を行なう。
しゅくゆう
〔祝融〕火災。中国で火をつかさどる神の名が語源で、火事の意味。
しゅっせい
〔出精〕元気をだす。熱心にやる。
じゅっぽうはっぽう
〔十方八方〕諸所方々。
しゅでい
〔朱泥〕中国江蘇省宜興窯(ぎこうがま)に産する黒っぽい赤茶色の陶器。質が緻密で、石器のような質になるまで焼いたもの。多く急須(きゅうす)にもちい、愛知県常滑(とこなめ)、岡山県伊部(いんべ)、三重県四日市にも産する。
じゅはい
〔受杯〕杯をうけること。「受杯したまえ」
しゅふく
〔修復〕修理。修繕。こわれている所を直すこと。のちには「しゅうふく」という。
しゅみだん
〔須弥壇〕寺院の中堂にそなえ、仏像厨子(ずし)を安置する壇。もとは須弥山(しゅみせん)にかたどった。
「さっき来たが人目がある故、須弥壇の下に隠れてゐた。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買」(さんにんきちさくるわのはつがい)巣鴨在吉祥院の場)
じゅみょうのばし
〔寿命延し〕長生きのできるようにたのしみをすること。→「しわのばし」
しゅようはんた
〔主用繁多〕御主人の用が忙しい。
しゅらば
〔修羅場〕講談の合戦のくだりをいう。江戸のなまりで、ヒラバ。張扇の拍子(ひょうし)おもしろく、美文沢山で戦場の光景、勇士のいでたち、名乗りなどを朗々と口演し、戦場の光景をアリアリと写しだす。空板(からいた、前座)の舌をほぐれさせ、地方出身者のなまりを直す基本となるが、同時に老練の真打がやればまた無限の興味がある。ゆえに講談の妙は修羅場にはじまって修羅場におわるといわれている。
しゅらをもやす
〔修羅を燃やす〕ヤキモチをやく。じりじりして怒る。修羅は仏教に説かれている神で、ねたみ、うらみ、うたがい、いかりの妄念。阿修羅。
しゅをうつ
〔朱を点つ〕相手のいうことを直す。
じゅんこう
〔順講〕一中節のみ、おさらいのことを、こうとなえる。
じゅんたつちょう
〔順達帳〕順次に送達する廻状。今日の回覧板。
じゅんようし
〔順養子〕長男がその家を相続できぬため、次男をくり上げし相続人にするのをいう。
しょう
〔妾〕めかけ。二号。
しょう
〔小〕小刀のこと。「大(だい、大刀)」に対する。
しょう
〔性〕品物・人物のたち。「この珊瑚の性はいいかしら」などいう。
しょう
〔生〕生きているよう。そっくりそのままのよう。「○○は××に似ていて生でみるようだ」
しょうえんじ
〔生臙脂〕中国渡来のクッキリと美しい紅色の染料(友禅、更紗染または絵の具用)で、綿に染めてかわかしたものを湯にひたし、その汁をしぼって使用する。
じょうかく
〔定格〕格式を正しく守ること。堅苦しいこと。
じょうがこわい
〔情が強い〕気が強い。感情が烈しい。転じて泪もろい。泣きすぎる。
しょうかん
〔傷寒〕烈しい熱病、今日のチブス。
しょうぎこじり
〔将棋鐺〕将棋の型をした刀の鞘の末端。
じょうきしゃ
〔蒸汽車〕汽車のこと。

jyokisya
蒸気車(小林清親筆)

じょうぎら
〔常綺羅〕いつもすばらしい着物をまとっていること。
「上(常)綺羅で光って居るのが流行(はや)るから、」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)
しょうごくがつ
〔正五九月〕正月・5月・9月のこと。今日も正月・5月・9月には、成田不動への参詣が多い。「成田山史」はこの事実に何ら意味付けた説明はしていないで、1年のうちで右の三月が一ばん参詣者の多いときであるとのみ記しているが、正月・5月・9月は忌むべき月で結婚などを禁じ、災厄を祓うために神仏へ詣ったのである。正月が忌むべき月とはまことに奇妙な話ではないか。
じょうさま
〔嬢様〕当時はお嬢さまでなく、嬢さまであった。「うちの嬢が」などという呼び方が落語「おせつ徳三郎」にはのこっている。→「おじょう」
しょうしけん
〔小試験〕臨時試験のこと。本試験のことは大試験(おおしけん)といった。
しょうじびょうぶ
〔障子屏風〕衝立(ついたて)障子のごとく、障子仕立の屏風。
じょうじゅう
〔常住〕しじゅう。ふだん。「常住坐臥、それを忘れない」
じょうじゅうぎのはれぎなし
〔常住着の晴着なし〕いつもいいキモノを着ているくせに、それに手入れをしないで常に汚したまま着ている人。
しょうじんもん
〔精進もん〕魚肉以外の料理。「もん」は「もの」。
しょうつう
〔小通〕小便のこと。
しょうでん
〔聖天〕庄伝ともかく。祭礼囃子の名称。宮庄伝(みやしょうでん)なる囃子も、他にある。
しょうどう
〔正道〕正直。行いの正しい。「正道の者であると榊原様おかかえになり、後には立派な棟梁に、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)
しょうどがない
〔生度がない〕生度は生きている程度。生きているか死んでいるか分からないの意味。
「やいわれのやうな生度のねえ畜生はねえなア。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
しょうとく
〔生得〕生れながら。
しょうねだま
〔生根玉〕量見。性質。
しょうばいて
〔商売手〕本職。専門家。
じょうふだん
〔常不断〕常日頃(つねひごろ)。常に絶えず。
しょうぶつ
〔正物〕ほんもの。
しょうへい
〔正平〕染料の一種。正平染。
しょうへいがわ
〔正平革〕唐草(からくさ)、獅子、牡丹などの模様と正平661日の文字を柿色地(かきいろじ)に白く染出したなめし皮で、後年はその染め方を応用して、衣服の定紋など速製した。
しょうへいぞめ
〔正平染〕正平革の模様の染め方。
しょうほう
〔商法〕商売。「商法にならない」。幕臣の奉還金(ほうかんきん)で不馴れの商いをして
失敗するものを士族の商法といった。落語「素人鰻(しろとうなぎ)」は士族の商法をえがいた名作。「商法事」は商用、「商法師」はすばやい商売をする人、「商法仲間」は商売なかま、同業者。「商法向き」は商売上。
しょうほうねこ
〔娼法猫〕娼妓(しょうぎ)のようにだれとでも客とねる芸者。みずてん。二枚鑑札。商売を商法といったので、娼と商とをしゃれていった。
じょうまわり
〔定廻り〕八丁堀の同心で専門に市中を見廻っている者。岡っ引同道のときと単独のときとあった。
「お前の悪事が露顕して定廻りへ御下知になり、」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)
しょうみょう
〔称名〕仏の名号(みょうごう)をとなえること。転じて南無阿弥陀仏をとなえる場合にも俗間では称名といった。念仏称名。
しょうめいのうぶげ
〔蟭螟の産毛〕蚊のまつ毛へ巣をくう虫。
「蟭螟の産毛ほどもこめられて(やりこめられて)なるものか。」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)
しようもよう
〔仕様模様〕方法。やり方。「仕様模様もあったろうに」と、ことばを重ねて意を強める場合につかった。
じょうもんく
〔定文句〕きまり文句。→「きまり」
しょうもんにさせる
〔証文にさせる〕遊客が勘定に困ったとき、証文をかいて金は一時そのままにすること。
しょうろ
〔正路〕正しい行状。正常ルート。
「何を隠さう、これまでに遣った金は百でも、正路な金はありやアしねえ。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村大口寮の場)
じょうをさす
〔丈をさす〕長さを計らせること。
じょうをたてる
〔情を立てる〕真心(まごころ)を示す。
しょかい
〔初会〕はじめてある遊女を買ったときをいう。そのときに遊女が客に惚れるのを「初会惚(ぼ)れ」という。「初買惚れしてわしゃはずかしと、ウラ(再会)に来るやら来ないやら」と篠田実の浪曲「紺屋
高尾」にある。→「うら」
しょき
〔書記〕遊女屋の書記は遊女屋の事務をとり、遊女のてがみの代筆もした。
しょくかた
〔職方〕職人。→「かた」
しょくだい
〔食台〕テーブル。
しょぐり
放尿のこと(多く幼児の)。ひょぐりともいう。→「しっちょぐる」
しょけん
〔初見〕初見参。初対面。
じょさい
〔如才〕ぬかり。ておち。「如才ない人」といえば万事によく気のつく、察しのいい人の意となる。また「あなたのことだから、そこは御如才はございますまいが」などと念を押すのに使う。
しょしき
〔諸式〕諸物価。また、日用品。「かう諸式が高くっちゃあ、うっかり嫁にもいけねえのさ。」(小山内薫「息子」)
しょせいばおり
〔書生羽織〕普通より丈長(たけなが)の羽織。
しょちふり
〔処置振り〕態度。進退挙措。
しょて
〔初手〕はじめ。
「断られても為方(しかた)がないが、ナゼ初手から云うては呉れぬ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醍(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)
しょてっぺん
〔初天辺〕一ばん最初。一ばんいいことをもいう。すてッぺん。
しょにん
〔諸人〕多くの人々。
しょにん
意地悪。不愛想。
「『湯から上(あが)ったらの、あのの貝々打(けえけえぶち)をしねえか』『おいら否(いや)』『しょにんな子(がき)だなア。そんなら今度(こんどっ)から、おめえたア遊(あす)ばねエ』」(式亭三馬「浮世風呂」)
しょぼくたない
しょぼしょぼした。よぼよぼした。老衰した。
しょむずかしい
七面倒臭い。小むずかしい。
じょろうこども
〔女郎子供〕遊女の世間見ずであるところからいう。類語「役者子供」
じょろうのせんまいぎしょう
〔女郎の千枚起請〕遊女が起請を1000枚もかく。真実のないことをいう。「女郎の誠と卵の四角、あれば晦日(みそか)に月が出る」の唄があった。→「きしょうもん」
しらをきる
〔しらを切る〕知らないような顔をする。
しらたまじり
〔白質まじり〕杉材の白い部分がまじっているもの。
しらち
〔為埒〕ハッキリした結果。してらちをあけること。処置。始末。「しらちをつける」
しらっこ
〔白っ子〕全身の皮膚の色素が足りないため、皮膚が純白で、髪も白色または黄白色、多くはからだが弱くて若死するものが多い。
しらはり
〔白張〕提灯・傘に字も紋もかいてないもの。
「覚えはねえと白張のシラを切ったるからかさで、」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」永代橋の場)
しらみひも
〔虱紐〕昔は衛生のためノミやシラミの発生しないような薬を入れた細紐を発売していた。
しらりっと
〔白りっと〕カラリと。夜明けの形容。
しりくらいかんのん
〔尻喰い観音〕尻に帆をかけて逃げてしまうこと。アトはどうでもなれと逃げること。
「自己(おのれ)は尻くらい観音にて何処(どこ)をぶらつきゐるやらん。」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)
しりつき
〔尻突〕第三者がしゃべって(悪事を)しらせること。
「『聞込んであることがあるから、一調(ひとしら)べ調べてやらう。』『それぢゃア尻突がありますか。』」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」
しりにめぐすり
〔尻に目薬〕何のききめもないこと。見当ちがいのこと。
しりもみやもこず
〔臀も宮も来ず〕苦情も来ず。
しるこぼし
〔汁翻し〕高瀬舟へ屋根を付けたような形の船。遊覧用の船の一つ。
しるし
〔効〕甲斐。験。効果。ききめ。
「一日逢はねば千日の、思ひにわたしゃ患(わずろ)うて、針や薬の効さへ、泣きの泪に紙濡らし」(清元「忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)ーー三千歳)」
じれつく
じれて腹を立てる。
しろうま
〔白馬〕どぶろくのことを、白馬と呼んだ。大正中頃になくなった盲の落語家柳家小せんの落語集にも白馬の語があり、下谷の佐竹に専門店があり、神楽坂では戦前まで市販していた。
しろおに
〔白鬼〕酌婦。淫売。今日ではパンパン、それも青線にあたろう。白鬼がのちに白首(しろくび)と変った。白粉をつけた鬼という意味。
「誰れ白鬼とは名をつけし、」(樋口一葉「にごりえ」)
しろこくら
〔白小倉〕白の小倉織(木綿糸を織り合わせた博多織の類似品)。
しろねずみ
〔白鼠〕忠実な番頭。転じて「あの白鼠はただの鼠ではない」などともいう。
しろむくでっか
〔白無垢鉄火〕表面は上品に見せていて、じつは破戸漢(ごろつき)。しろむくてっか。
しわのばし
〔皺伸し〕老人の気晴らしの意。
「たまだから皺伸しでもしておいでよ。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
しん
〔真〕真実。まじめ。
じんあい
〔人愛〕人に好まれる愛嬌。
しんうち
〔真打ち〕講談・落語の中堅以上で、その晩の最後に力演する人。最後に出演するを、真をうつという。真剣にその興行をうつという意味。今日は主任という。→「とり」
しんかい
〔新開〕新しくひらけた町。新開地。
「誰しも新開へ這入(はい)るほどの者で菊の井のお力を知らぬはあるまじ。」(樋口一葉「にごりえ」)
しんかぞく
〔新華族〕大名や公卿(くげ)でなく、単なる武士だったものが、明治維新の勲功で華族になった、その人々をいう。
しんがん
〔心願〕今日は、単に願(がん)という。心に念じた願の意味で、円朝作の禅味ある落語にも盲人の煩悩をテーマとした「心願」があり、初代円左、三世円馬を経て、当代桂文楽の専売となっている。
じんく
〔甚句〕七七七五の歌詞の派手な唄で、角力甚句、品川甚句、日露戦争記念のラッパ甚句は俗曲で、名古屋甚句、米山甚句は民謡からでて都会化した。甚九と昔はかいた。
しんけいびょう
〔神経病〕神経衰弱。ノイローゼ。明治の文明開化時代、幽霊はないという言論が一世を風靡し、すべて神経病(強度の神経衰弱)のゆえであるとした。河竹黙阿弥「木間星箱根鹿笛(このまのほしはこねのしかぶえ)」は神経病がテーマであり、三遊亭円朝「真景累ケ淵(しんけいかきねがふち)」の真景は神経をきかせたもの。
しんこ
〔新子〕新しくでた遊女や私娼をいう。→「こども」
しんざん(もの)
〔新参もの〕きのうきょう来た奉公人。「古参」の対。
しんしょうはたく
〔身上はたく〕のこらず持っている金をつかってしまうこと。
じんじんばしょり
〔じんじん端折〕背縫(せぬい)の裾(すそ)から78寸上をつまんで、帯の結び目へはしょり込むこと。
じんすけ
〔腎助〕多淫な人。やきもちやき。「あいつがじんすけを起している」というと、後者にあたる。
しんせいこう
〔真誠講〕今日の交通公社に似たもので、諸国の旅館とタイアップして道中の便宜をはかる。宿の前には指定旅館である看板がでており、他に浪花講とか一心講とか、いろいろあった。
しんぞ
→「しんぞう」
しんぞう
〔新造〕若い女の総称。20歳前後の嫁入り前をいうこともあれば、新妻をさすこともある。→「としま」。
「お前もいい新造になったねえ」といえば前者、「あすこへいくなあ、娘(処女)か新造か」「どこの新造だ」といえば後者。吉原ではお職女郎(スター級の遊女)につき従って働く遊女をいう。昔は番頭新造、振袖新造などの別があり、それぞれ番新、振新と略称もあった。
しんぞうおち
〔新造落〕遊女が売れなくなり、引き取る客もなく、おばさん(遊女の世話をする女)に転落すること。
しんそこ
〔心底〕ほんとうに。
しんぞしゅう
〔新造衆〕→「しゅ(う)」。「しんぞし」とも発音する。
しんだいかぎり
〔身代限〕破産。
しんたか
〔新高〕新高土間の略。高土間の前列にある席。→「たかどま」「しばや」
しんち
〔新知〕新しくもらえる知行(ちぎょう、禄)。
しんちゅうまき
〔真鍮巻〕仲間(ちゅうげん)の差す真鍮胴輪(どうわ)の木刀から転じて、仲間。→「かん
ばん」
しんてい
〔心底〕量見。本心。胸底。本心がわかったとき「心底見えた」といった。
しんにゅうをかける
〔辵をかける〕一般の場合以上にひどいこと。「あいつにしんにゅうをかけていらあ」
しんぱつ
〔進発〕でかけること。ゆこうゆこうということを「サー進発進発」。
しんばのちょうちん
〔新場の提灯〕日本橋本材木町(江戸橋の南)の魚河岸から、浅草観世音へ奉納した大提灯のこと。
しんびょう
〔神妙〕今日は、神妙(しんみょう)と発音する。
「まづ今日は何事も、言はぬが花の花道をお下りなすつて神妙に、御見物をなさいまし。」(河竹黙阿弥「極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべい)」村山座舞台喧嘩の場)
しんぷく
〔心腹〕心と腹。量見。胸中。
しんぼうにん
〔辛抱人〕あきず怠けずに働く人間。また、道楽をやめ、改心して働く人間をもいう。
しんみち
〔新道〕露地(ろじ)のこと。町中の裏のしずかな横丁。
「表通りに門戸(もんこ)を張ることの出来ぬ平民は大道と大道との間に自(おのずか)ら彼等の棲息(せいそく)に適した露地を作ったのだ。(中略)夏の夕は格子戸の外に裸体で涼む自由があり、冬の夜は置炬燵に隣家の三味線を聞く面白さがある。新聞買はずとも世間の噂は金棒引(かなぼうひき)の女房によって仔細(しさい)に伝へられ、喘息持(ぜんそくもち)の隠居が咳嗽(せき)は頼まざるに夜通し泥棒の用心となる。かくの如く露地は一種云ひがたき生活の悲哀の中(うち)に自(おのずか)ら又深刻なる滑稽の情趣を伴(ともな)はせた小説的世界である。」とある永井荷風の「日和(ひより)下駄」がよく意をつくしている。
「何処ぞ近所の新道へ小粋な家を拵(こしら)へて、こっそり囲っておく心。」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)
じんみらい
〔尽未来〕未来のそのまた未来。
じんみんほご
〔人民保護〕よんで字のごとく、人民の安全を保障するという意味だが、明治初年には「人民保護の警官が」とよくいった。
しんもって
〔真以て〕ほんとうに。心から。
しんわら
〔新藁〕稲の新しいのへ熱湯をかけ、かわかした浅黄いろのを、そのころの女は髪のかざりにかけた。植えつけられるほどの稲がよいそうで、明治の東京下町の夏の風物詩として、これを売りに来る小商人(こあきんど)があった。
「七月五日。朝、雨のざあざあ降る中を、女の子が、『新藁あ新藁あ。』と売って歩く声が、何となく悲しい。」(小山内薫「瓦町にて」)
ずいいち
〔随一〕一ばん。
すいくち
〔吸口〕煙管の、ロをあてがってすうところ。
すいこみ
〔吸込〕遊びにゆく気のないものを、金のない男が巧くおだて、だましてつれて行くこと。
すいする
〔推する〕推量する。察しる。遊女が情人との苦労を朋輩にうちあけて「推してくんなまし」などという。
ずいそう
〔瑞相〕めでたいきざし。神々しい人相。
すいづつ
〔吸筒〕瓢箪(ひょうたん)。酒や水をいれて持ち歩いたからいう。今日の水筒の役目をした。
ずいと
つと。ずかと。「のれんをはねてずいと入る」
ずいとくじ
〔随徳寺〕ズイと逃げ出すこと。「随徳寺をきめよう」。落語の「山号寺号(さんごうじごう)」に「一日山(一目散)随徳寺」というしゃれがある。
すいばれ
〔水晴れ〕雨天。寄席用語。涙を出すことを眼水(がんすい)ばらしという。
すいもんぐち
〔水門口〕樋(ひ)の口。鶴屋南北「東海道四谷怪談」隠亡堀(おんぼうぼり)の場の幕切れに、佐藤与茂七が非人の姿で出てくる所がそれである。
すいれんば
〔水練場〕水泳のけいこ場。大正の初期まで両国大川端には夏期に何々流水練場とあった。
ずうにょう
図う体(ずうたい)。身体。
「手前はづうねうが大きいから我慢してもぐり出しゃア後のものが楽に出られらア。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
すえ
取るに足りないもの。つまらぬもの。「宅(うち)のお父さんが鍛(う)っておいたお誂(あつら)へのすえが一挺(いっちょう)残ってあるんですが。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
すえつかた
〔下院〕下旬。「時は八月末つ方」と日露戦争の軍歌「橘中佐」にある。
すがたみ
〔姿見〕鏡。
すがも
〔巣鴨〕狂人のこと。あいつは巣鴨だとか、巣鴨行だとか、いった。今日の世田谷区松沢の精神病院が、豊島区巣鴨にあったからである。なおここには幾十年にわたって芦原金次郎という職人が入院しており、芦原将軍とよばれて大将軍を気取りつづけ、日華事変のころその一代は映画化までされて亡くなった。
ずから
接尾語で、「によって」「をもって」などの意味をあらわす。わざわざ自分の手でを「手ずから」、隣人のよしみをもって、隣同士なのでを「隣ずから」、自分の心からを「心ずから」という。自分から、わざわざ、手を下しての意味の「みずから」もこれであろう。
すがれる
〔梢枯れる〕ほんのいささか老(ふ)けかける。
すかんぴん
〔素寒貧〕一文なし。貧乏。
ずきがまわる
身辺が(犯罪者の)危険になる。ずきは、庇(きず)を逆さにしたもので、手負(ておい)の者から、手が廻ったという意味になった。
すきみ
切身。すきみというと鮪(まぐろ)が多く、落語「雑俳(ざっぱい)」の地口(じぐち)には「禿(かむろ)の月見、まぐろのすきみ」のしゃれがあった。
すぐち
〔燧口〕小さい銃の口。
すくなずくな
〔少々〕少なくとも。「すくなずくなも○○円ぐらいはあろう」
すこあま
少し足りない人。「あいつはスコアマだから」
すこうべ
〔素頭〕素っ首(そっくび)。首とただ単にいう場合よりも、やや強い意味になる。
すごす
〔過す〕生活する。生きてゆく。
すこぶるつき
〔頗るつき〕大へんに。途方もなく。超(ウルトラ)の意味。「頗るつきの別嬪(べっぴん)だよ」
すごろく
〔双六〕古代のは盤(ばん)双六といって、盤の上に左右に5本の罫(けい)を引き左方右方に各々黒白の石を6個ずつ2段に並べるゆえ双六というのであるが、賽を振ってその目により例えば三一ならば自分の陣地の3列目の石1個と1列目の石一1個とを取る。六三ならば6列目と3列目の石各1個を取る。自分の石を取りつくしたら相手の石を取り盤面の石が無くなった時数多く取ったものを勝ちとする。
歌舞伎の「玉藻前曦袂」(たまものまえあさひのたもと)三段目の道春館(やかた)で使用する双六で、のちに双六の盤の代りに官位(かんい)をかいたり、五十三次の宿場をかいたりした絵双六(官位双六、道中双六)が発達、今日に至った。子供の新春の遊戯で、道中双六は江戸の日本橋を振出して上り(終点)の京まで、賽の目の数につれて進み、早く着いた方が勝ち。途中、大井川とか箱根とかに「泊」(とまり)があって、ここへ入ると1回休むといったようなスリルがあった。
近松門左衛門「待夜小室節(まつよのこむろぶし)」およびその改作「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)ーー重の井子別れ」に見ることができる。

docyusugoroku
道中双六

すさ
〔苆〕壁土にまじえてひびを防ぐツナギ。普通の荒壁にはきぎんだ藁(わら)、上塗にはきざんだ麻、または紙を海草を煮た汁にまぜてつかう壁すさ。壁つたともいう。
すじ
〔筋〕理屈。また筋道の略にもつかう。方向。「あいつはすぐスジをいう」。女とあいに行くのをからかって、「おたのしみすじなんだよ」。→「おつかれすじ」
すじがねいりのはちまき
〔筋金入りの鉢巻〕金属でできた筋がぬいこまれている鉢巻。斬り込まれたときの用心である。
すじっぽい
〔筋っぽい〕理屈っぽい。
すじっぽねがぬける
〔筋骨が抜ける〕筋と骨とを抜かれたように気力なく疲れはてる。
すじぼり
〔筋彫〕輪画だけで彩色のされていない文身(いれずみ)。痛くて中止したために、筋彫だけになった人もあり、気がきかない、だらしがないといわれた。
すじをだす
〔筋を出す〕額(ひたい)へ青筋を立てる。
すすきだたみ
〔芒畳〕芒の一めんに茂っているところ。
すすはき
〔煤掃〕江戸時代には、1213日、一斉に煤掃(煤はらいーー大掃除)をやった。「手の甲で餅を受取る十三日」の古川柳があり、赤穂義士の大高源吾が売る竹も、煤掃用の竹である。明治期にも春秋の大掃除以外に12月に行ったが、初旬から年末にかけて各戸別々にやった。広津柳浪(ひろつりゅうろう)「今戸心中」は、吉原の遊廓の煤掃と終了後の酒宴の光景をえがいて余さない。
すそさばき
〔裾捌き〕立居振舞。
すたりもの
〔廃り物〕通用しないもの。流行おくれ。時代にズレているもの。処女が姦された場合にもいう。
すっとこかぶり
〔すっとこ冠り〕手拭をひろげたままスッポリ頭を包み、顔面は出し、顎(あご)でその手拭を結ぶ滑稽な冠り方。馬鹿囃子のひょっとこなどが冠るやけな冠り方。ひょっとこかぶり。
すっぱいうちまく
〔酸っぱい内幕〕情ない苦しい生活の秘密。
すっぱいこと
〔酸っぱいこと〕やましいこと。
すっぱぬき
〔スッパ抜〕侍が往来で抜刀して暴れるのをいう。後には暴露することにもいう。「スッパ抜き記事だ」
すっぱり
そっくり。
すっぽりめし
〔すっぽり飯〕湯茶をかけずに食べる飯。お茶なしで喰うめし。
「『茶も何もありゃしねえ。六里の間家もねえから。』(略)『ひどいねえ、すっぽり飯を食ふのだ。』と小言をいひながら弁当をつかって、」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
すてがね
〔捨鐘〕時の鐘をつくときは、その時間より3つ多くつき、それを捨鐘といった。
すてごきょうじょう
〔捨子兇状〕捨子をする罪。
すてっぺん
〔素天辺〕一ばん最初。大正時代の川柳に「薩摩琵琶すてっぺんから目をつむり」。この上ない、絶頂という意味にもつかわれる。→「しょてっぺん」
すててこ
ナンセンス舞踊。吉原の幇間(たいこもち)の民中(みんちゅう)が乞食の踊りからおもいつき、初代三遊亭円遊(厳格には3代目)に教えた。円遊は自分の大きな鼻をなでたり、脛(すね)をたたいたりして一流のものにして踊り、人気をとった。今日もこの踊にはいたので、ズボン下をステテコという。
「向う横丁のお稲荷さんへ、ざっとおがんで渋茶をのんで……」が原歌である。

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三遊亭円遊(初代)

すてふだ
〔捨札〕罪人を死刑にするとき、氏名年齢罪状を記して街道に立て、刑を執行した後もかかげておいた高札。
「松の六分板を横にし垂木(たるき)にて足を附し名前罪状を犯せしものを持行き之は梟首(さらしくび)の場へ建置くものなり。」(高砂屋浦舟「江戸の夕栄」)
ずぬけ
〔図抜け〕大へん。とんでもなく。特大を図抜け大(おお)一番などという。落語「附き馬」にも使われる。
すばく
〔寸白〕婦人の下腹の痛む病。すばこ。
すぶた
〔簀蓋〕人力車の腰掛の部分になっている簀の子製の蓋。取りはずしができた。
ずべらしまりのないこと。
すまたをくわせる
〔素股を喰わせる〕スカをくわせる、ウラをかいてやる、意表にでてやるの意味。「すまた」は膣を使わない性交のことで、遊女などが嫌な客に対しておこなったりすることから、ごまかしたり期待をはずしたりすることにいう。
すみいろ
〔墨色〕筆蹟の墨色によってその人の吉凶をうらなうこと。墨色判断。
すめんすこて
〔素面素小手〕剣道に面小手をつけないこと。
すもうじんく
〔角力甚句〕江戸末期から明治時代を通じて歌われた流行歌。元来は越後地方の盆踊歌であったが、力士が土俵で余興に歌い、以来、一般の流行を見た。代表歌に「櫓太鼓にふと目をさまし、あすはどの手で投げてやろ」がある。→「じんく」
すもどし
〔素戻し〕何にももてなさないで来た人をかえすこと。
スモル
small〕少女。「横浜市史稿」風俗篇(横浜市役所版)の「横浜言葉の資料」に、「小さきもの、すもる」とあり、立川談志が明治20年代のナンセンス舞踊「郭巨(かっきょ)の釜掘り」にも「座蒲団かかへてスモルに見立てて」とある。スモルは横浜からの伝来の流行新語としていい。
ずや
「故売屋(けいずや)」の略。→「けいずや」
ずらかす
〔退かす〕ずらせる。ずらす。ずらかる。ーー逃げるにもいう。
すりあし
〔摺足〕足をするようにして、畳ざわりしずかに歩む能狂言の人物の登場につかう歩き方。
すりこかす
〔剃こかす〕剃り落す。
すりこわす
〔摺りこわす〕すりむく。
すりそこなう
〔摺り損う〕胡麻(おせじ)を摺りそこなう。「しまった。すりそこなった」などという。→「ごま」
すりつけぎ
〔擦附木〕マッチ。はやつけぎ。
すりびうち
〔摺火打〕火打ち石のとがった角を火打ち鎌と打って火をださせる道具。
すれすれ
仲が悪くなること。
すわけ
〔分配〕それぞれに分けること。
ずんずら
みじかい太く短い。
すんど
人力車夫が夏だけ着る白い法被(はっぴ)上着。
すんぽう
〔寸法〕具合。「いい寸法になりました」
せいしごえ
〔制し声〕大名の行列に際し一般通行人に注意をあたえる掛声。「下にいろ下にいろ」「下にィ下に」など。
せいぞうば
〔製造場〕工場のこと。
「夜のことなれば製造場も見えず橋場今戸の人家鐘ケ淵小松川の樹影(じゅえい)唯(ただ)蒼茫(そうぼう)として月光にかすみ渡りたる河上の光景。」(永井荷風「大窪だより」)
せいふとう
〔情婦湯〕清心丹と共に中央区日本橋元大阪町(八重洲口の東)高木与兵衛が発売した血の道(婦人病)の薬。
せいようい
〔西洋医〕漢方医に対して、いう。
せいようかざり
〔西洋飾り〕祝祭日につくるアーチなど。
「山轢(だし)や踊り屋台、又大通りの西洋飾り、」(河竹黙阿弥「朝日影三組杯觴」(あさひかげみつぐみのさかづき))
せいようげんぷく
〔西洋元服〕眉もそらず鉄漿(おはぐろ)も付けず大丸髷にゆうこと。→「はんげんぷく」
せいようしょうほう
〔西洋商法〕親兄弟でも利害はハッキリとしている商取引。→「しょうほう」
せいようづくり
〔西洋造〕西洋館。洋館。
せいようどこ
〔西洋床〕斬髪専門の床屋。今日の理髪店。ちょんまげをゆう髪結床(かみゆいどこ)に対していった。
「明治二年に銀座四丁目東仲通りの中央の処に開業せる松村庄太郎の床なり、庄太郎は、横浜の西洋人に斬髪法を習い来りて開店せしものにて当時第一着に来りて断髪せしは、鳶頭の亀と市と笊勝(ざるかつ)なりとの説あり。」(石井研堂「明治事物起原」)
せいようばな
〔西洋花〕ダリヤ、コスモス、サルビア、ベコニア、グラジオラスその他、今日ではありふれた西洋種の花をも、そういっていた。
せいようひばち
〔西洋火鉢〕ストーヴ。
せきぞろ
〔節季候〕年末、忙しい町々へやかましく三味線をひいて口早に歌って金をもらい歩く女。特殊部落の出身が多かった。

sekizoro
節季候

せきてい
〔席亭〕寄席の亭主の略。寄席のことを、席亭というのはまちがっている。ただ「席」というと、関西では寄席のことになるが、今日では東京でも席といい、逆に関西で寄席というようになっている。
せきのやま
〔関の山〕せいぜい。せめてもの絶頂という意味。やっとこさ。「あすこへ行く位が関の山だ」
せぎょう
〔施行〕僧侶貧民などにものをやって功徳(くどく)をすること。布施の行(ぎょう)。
ぜげん
〔女衒〕遊女専門の紹介、あっせん人。例外はあったが、概して口先が達者で相手の弱身につけこみ、不当な安値で身売りを強行したり、契約金のさやを抜いたりした非人道的な人間がほとんどであった。
「今世に人の口入するを『けいあん』といひ、遊女の口入するを『ぜげん』といひ、これらのことを媒するをすべて肝煎と云。」(山崎美成「世事百談」)
せけんしなれない
〔世間師馴れない〕世わたりになれていない。世なれない。
せっき
〔節季〕歳末。年がおしつまったことをいう。「怠け者の節季働き」
せっくせん
〔節句銭〕1年に5回あったいわゆる五節句(正月7日=人日(じんじつ)、33日=上巳(じょうし)、55日=端午(たんご)、77日=七夕、99日=重陽(ちょうよう))に長屋中がつきあいにだす銭。
せっくまえ
〔節句前〕五節句の前、遊女は節句のたびに美しい衣裳をこしらえたり、つかっている人たちへ祝儀をやったり、金がかかり、いい客のないものは鞍替(くらがえ、さらに借金して他の廓へ行く)したり、自殺したりした。
ぜっけ
〔絶家〕家名が絶えること。断絶。
せつせつ
〔節々〕ちょいちょい。「節々うかがいますから」
せった
〔雪駄〕近時すたれたが、千利休の創案とされ、竹の皮の草履(ぞうり)の裏に牛皮を張り、多く後部の裏に金物が打ってある。
明治30年代の俗曲さのさ節には「それだから、僕が注告(ちゅうこく)したではないか、芸者の誠と雪駄の裏の皮、金のある内アちゃらちゃらと金がなくなりや切れたがる」。

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雪駄の看板

せっちんのじょうまえ
〔雪隠の錠前〕昔はノックで答えないで、便所へ入っている人が「エヘン」と咳(せき)をした、それをいう。
せっぱつまりになる
〔切羽詰りに成る〕ギリギリのところに追いつめられた心持ちになる。そののちの時代の人々は、「切羽詰る」といった。
ぜっぴ
〔是非〕ぜひ。通人のことば。
せびら
〔背びら〕背中。そびら。
「デップリ肥って居る身体を、肩口から背びらへ掛けて斬付ける。」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
せみおもて
〔蟬表〕下駄の籐表(とうおもて)で、蟬の羽に似ているゆえにいう。
せりごふく
〔糶呉服〕諸家へ店員をつかわし、品物を販売している呉服店。
せわりばおり
〔背割羽織〕背縫(せぬい)の中央以下を裂けたようにしたもの。乗馬、旅行用に便利。ぶっさきばおり。
せんおくさま
〔先奥様〕前の奥様ーー現在の夫人の母で故人になったをいう。「先殿様(せんとのさま)」の対としてよかろう。
せんがじまいり
〔千ケ寺詣り〕方々の寺を詣って歩く一種の乞食。
せんきすじ
〔疝気筋〕「他人の疝気を頭痛に病む」のたとえから、まちがった方面を気にすること。
せんこくしょうち
〔先刻承知〕いわないでもよく分かっていること。衆知(しゅうち)のこと。
せんころ
〔先頃〕先ごろ。いつぞや。
せんざいもの
〔前栽物〕野菜。前栽は庭さき。
せんじゅかんのん
〔千手観音〕虱(しらみ)のこと。観音さま。
せんしゅじん
〔先主人〕昔の主人。
ぜんぜん
〔前々〕以前。かって。ズッと前に。
せんぜんの
〔先前の〕かっての。昔の。
せんたくばなし
〔洗濯話〕同じ話を何べんもすること。
せんだんまき
〔千段巻〕槍の柄(え)の刃と接する部分を麻苧で巻いてある、そこをいう。
せんとう
〔煎湯〕茶湯(ちゃとう)に同じく、茶を煎じた湯。牢内で囚人が飲むのであるが、ツル(金)さえあれば鰻飯すら食べ得たのだから煎茶などは容易に入手できたろう。→「つる」
せんばい
三杯酢(さんばいず)の江戸なまり。また、塩物の魚を汁で煮だしたのを船場煮(せんばに)ともいい、古川柳に「から鮭をせんば煮にする照手姫(てるてひめ)」。
「お前が鮭のせんばいでお酒を飲みてえものだといふから、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
ぜんび
〔全尾〕結末。完結。
せんぴ
〔先非〕昔の悪事。昔のよからぬおこない。「先非を悔いています」
ぜんぴょう
〔前表〕前(まえ)じらせ。前兆。
せんべいにかなづち
〔煎餅に金槌〕何の苦もなくこわされること。楽にモノを解決することを、「鬼が煎餅を噛むようだ」といった。
そうごうか
〔総後架〕裏長屋にあった共同便所。三びき立ちの総後架というと、大便所が3戸ならんだ共同便所ということになる。落語「へっつい幽霊」の熊五郎が道具屋の裏手の総後架で用便中、道具屋夫婦のひそひそ話を聞いて運をつかむ。もって総後架の長屋における位置が察しられよう。→「こうか」
そうざい
〔惣菜〕家庭でつくるありあわせの料理。惣菜屋はそれにひとしい簡単な食品を売る店。惣菜料理屋という軽い食事をさせる店もあった。「ほんのお惣菜ですが召し上がって下さい」
ぞうさく
〔造作〕顔立ち。目鼻立ち。建築用語の転用。
そうししばい
〔壮士芝居〕明治20年度の保安条例で、東京から3里以外の地へ追われた政治家のひとりに中江兆民があり大阪へ下ったとき、政府へ対する反抗を自分たちで劇にして自作自演しようと、大阪市新町の高島座で、兆民を顧問として須藤定憲(さだのり、世間ではていけんとよんだ)一座が旗上げをした。女形が裾(すそ)をまくって舞台から政府攻撃をしたり、殺伐な立廻りをやって評判になった。つづいて川上音二郎一座が起り、山口定雄の一派が出来、これを壮士芝居といったが、のちに書生芝居、また新派劇と改められた。
そうじまい
〔総仕舞〕その店のものをのこらず買ってやること。「ないが意見の総じまい」などという。
そうじや
〔掃除屋〕下肥(しもごえ)の汲取人。汲取屋。おわいやに同じ。
そうじゅうろうずきん
〔宗十郎頭巾〕黒縮緬(ちりめん)の袷仕立(あわせじたて)で四角な筒の形をし、額(ひたい)、頬、顎(あご)を包む。寛永のころ俳優沢村宗十郎がはじめてつかったので、この名がある。
そうする
〔相する〕人相を見る。
そうせき
〔送籍〕戸籍謄本。
そうはい
〔壮俳〕壮士俳優の略。できはじめたころの新派俳優。→「そうししばい」
そうばおり
〔総羽織〕関係者全部へ羽織を新調してやる。「総花」の「総」に同じ。→「しきせ」
そうはつ
〔総髪〕額の月代(さかやき)をそらず、全体の髪をのばし、束ねてゆったもの。茶筌髪(ちゃせんがみ)の遺風といい、若年の茶坊主、医師、山伏がゆった。おなじみのところでは由比正雪、天一坊らの髪。
そうばな
〔総花〕花柳界で全員にやるチップ。
そうもんぐち
〔総門口〕本郷根津遊廓の入口。吉原の大門に当る。
そえぶし
〔添臥〕添寝(そいね)。同衾(どうきん)。そいぶし。男女が一しょにねること。
「見れば見るほど美しい、そんな殿御と添臥の身は姫御前(ひめごぜ)の果報ぞ。」(近松半二他「本朝廿四孝」十種香(じゅしゅこう)の場)
そくそく
スーッと。
「すぐにそくそく玄関から案内も待たず上り込みます。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節(つきにうたうおぎえのひとふし)」)
そくにたつ
〔束に立つ〕両足を揃えることをソクといい、足をわらず、両足をつけて真直に立つこと(芝居用語)。
そくらをかう
おだてること。けしかけること。
そこつ
〔粗忽〕念の入らないこと。つまらない。つまらない男だと自分でへりくだっていうときにもつかう。
「浪島文治郎と申します。エエ粗忽の浪士でござる。」(三遊亭円朝「業平文治漂流奇談」)
そこをいれる
〔底を入れる〕振舞いにあずかる公の席へ出るか、または見栄の場へ出るかする前に、自費でまかなえるような安い酒を呑んだり飯を食ったりすること。
そぜいきょく
〔租税局〕税務署のこと。
そそける
髪がみだれていること。「そそり髪」
そそり
芝居の千秋楽(最終日)に、シャレに女形の巧い役者が武士になったり、滑稽な役をやる人が悲しい役をして余興のような芝居をすること。廓をただ歩き廻ることもいう。ぞめき。
そだばし
〔麁朶橋〕海苔をつくるために切り取った木の枝をそだというが、それを組み合わせて庭へかけた風流な橋。
ぞっき
一とまとめに安く売買すること。売れない新本を安くうることをぞっき本という。また、何々一と色という場合もぞっきといい、「あいつは唐桟(とうざん)ぞっきだ」といえば、上も下も唐桟ばかり着ている人ということになる。
そっくび
〔素首〕首を強めた意味でいう場合。
そっくびだい
〔素首台〕獄門台。打たれた罪人の首をのせて、みせしめのため通行の人たちに見せる台。
そっくら
そっくり。残らず。
そっこうし
〔即効紙〕即効紙は頭痛膏(ずつうこう)。それを適当に四角に切ってこめかみ顳顬(こめかみ)へ貼った。即効紙には「江戸桜」などというのがあり、江戸前の癇癪持(かんしゃくもち)らしい女房が額(ひたい)へ貼っていると一種の風情があった。
ぞっこん
〔属根〕心底から。しみじみ。
そつじ
〔卒爾〕突然。
そっちゅう
〔始中終〕しょっちゅう。しじゅう。
ぞっとしない
いいものじゃない。
そっぽ
〔容貌〕器量。面体(めんてい)。顔。→「かんぼやつす」。落語「妾(めかけ)の馬」の大工八五郎、赤井御門守(あかいごもんのかみ)の邸で用人三太夫に「即答を打(ぶ)て」といわれ「そっぽをぶて」と聞き違えて三太夫の横顔をなぐりつける。
そでくらつき
〔袖蔵附〕店土蔵(みせぐら)とて、店の片方または両方に土蔵をもうけてあるのを、袖蔵という。中央の店を人のからだに見立てれば、左右の土蔵は、両方の袖の感じだからである。
そでない
つれない。無情なこと。袖にする(すてる)も、このことばからはじまる。
「花魁(おいらん)、そりやちと袖なからうぜ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醍(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)
そでなしばんてん
〔袖なし半纏〕ちゃんちゃん子。
そでにする
〔袖にする〕のけものにする。つれなくする。じゃけんにする。すててしまう。
そでのした
〔袖の下〕わいろのこと。
そどく
〔素読〕書をよむのに、意味を説かないでただ文字ばかりを読むこと。
「江戸の武士の男子の教育には文事と武事との二つがあった。文事の方は五歳から七歳までは手習ひ、七歳から読書をはじめる。最初から大学中庸(ちゅうよう)などと云ふものを読む。(略)十歳までの間に四書五経小学の素読を終る。(略)十一二歳の二年間は複習をして素読吟味を受ける準備をする。」(岡本締堂「聖堂講武所」)
そなわる
〔具わる〕人物ができている。
「多助は別に学問もありませんが、実に具はって居りますので」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
そにん
〔訴人〕訴えること。
そのひおくり
〔その日送り〕その日ぐらし。気まぐれの意味にもいう。
そのもと
〔其許〕あなた。
そばがき
〔蕎麦掻〕蕎麦粉を熱湯でこねて、餅のようにちぎり、蕎麦のつゆまたは生(き)醤油、辛子醤油でたべる。冬の夜にからだの暖まる食品。
そばやのゆとう
〔蕎麦屋の湯桶〕人の話へ口をだす人。そばやでそば湯を出す塗り桶は口がとがっているので、それにたとえた。
そま
〔杣〕木こり。
そら
〔空〕空々しい出まかせ。うそ。とぼけ。「空をつかう」「空をつく」という。
そりがあわない
〔反が合わない〕しじゅう一しょにいて気があわないこと。
そりをうたせる
〔反を打たせる〕刀をそらせてすぐ抜けるようにしておく。
それしゃ
〔其者〕その道の人。くろうと。商売人。色町育ちの女。
それだとって
それだといって。
「夫(それ)だとって貴君(あなた)今日お目にかかったばかりでは御座りませんか。」(樋口一葉「にごりえ」)
それというとそれ
何々をしようとおもいついたらすぐそれを気早に実行にうつすこと。
「それ例の気短かで、それといふとそれだから、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
ぞろっか
ぞろぞろ。
ぞんき
のんきで無責任な奴。「あいつはぞんきだ」
そんじ
〔損じ〕破損。こわれ。
ぞんじのほか
〔存じの外〕案外。おもいのほか。
ぞんしょう
〔存生〕生き永らえること。存命。生存。
「『由良之助は』『いまだ参上仕りませぬ』『存生に対面せで、残念なと申せ。』」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵」扇ケ谷塩冶館(おうぎがやつえんややかた)切腹の場)
ぞんじより
〔存じ寄り〕心得ていること。承知している所。考えるところ。
「もし隠すなら存寄があるから、ずんずん上って明けるからさう思へ。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節」(つきにうたうおぎえのひとふし))
ぞんじよりしだい
〔存じ寄り次第〕おもうまま。
ぞんぜえもん
〔ぞんぜえ者〕ぞんざい者。がさつな人。
ソンデイ
サンデイ(sundayーー日曜日)。明治初年の読み方。
そんりょう
〔損料〕損料貸しする衣裳。「これは損料物ですよ」
たあた
足袋のこと。児童語。
だい
〔大〕大刀のこと。「小(しょう、小刀)」の対。
だいがくよびもん
〔大学予備門〕のちの高等学校。今日の高校の3年から大学の2年までに当る。
だいかぐら
〔太神楽〕今は曲芸という。伊勢の神宮からでて、丸一、大丸、海老一、巴家、港家、寿家、宝家など流派があり、籠毬(かごまり)、一つまり、茶碗の立場(たてもの)、ナイフの曲、ビール瓶の曲、火焔撥(かえんばち、火を放つ輪の曲)その他があり、昔は往来でやったが、のちに寄席へ進出、道化役がからんで口上をいい、曲の間で音曲をきかせたりする。

daikagura
太神楽

だいくみあい
〔代組合〕組合代理。江戸時代には近隣数戸を一と組に五人組という自治組織があって、共同責任で取りしまりに任じた、その総代。
だいげんにん
〔代言人〕弁護士。「三百代言」と軽蔑的にもいった。
だいこく
〔大黒〕寺の住持(じゅうじ)の女房(昔は世をはばかって持ったから)。
だいこくがさ
〔大黒傘〕番傘。
「一銭職(いっせんしょく)と昔から下った稼業の世渡りで、にこにこ笑った大黒の口をつぼめた傘(からかさ)も、列(なら)んでさして来たからは、相合傘の五分と五分。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」永代橋の場)
たいこしゅ
〔幇間衆〕太鼓持ち。→「しゅ(う)」
たいこばり
〔太鼓張〕戸または間仕切(まじきり)の両面を張って中に「すき」をのこしたもの。書斎とか別荘とかによくつかった。
たいこをもつ
〔太鼓を持つ〕たいこもちをする。
だいそれる
〔大それる〕その人の柄にないとんでもないことをする。
たいだん
〔対談〕話すこと。
「それは対談が違ふが、請人(うけにん、保証人)のお前のいふことだから、それでよろしい。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節(つきにうたうおぎえのひとふし)」)
たいちょう
〔隊長〕軍隊用語からでて、その道の一ばんえらい人という意味。酒のみの隊長といえば、大酒のみになる。
だいちょうこみせ
〔大町小店〕遊女屋の中流のなかで第一流にちかい店。
だいてゆく
〔抱いて往く〕相手の悪事をもいい立て、共に犯罪者として入牢させるの意味。
たいてん
〔退転〕その家にいられなくなって引越すこと。
「抵当(かた)に取られて定(じょう)は退転、家内の衆も散り散りに、」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
だいどうごうしゃく
〔大道講釈〕高砂屋浦舟著「江戸の夕栄(ゆうばえ)」に「木戸銭なし其講談の漸く佳境に入らんとする所へ来れば先生自ら笊(ざる)を提げて持廻り銭を集めて又話し始む天気なれば夕景より始め四ッ時近くまで納屋前(なやまえ)或は川岸蔵前(かしぐらまえ)などにてやる」とあるとおり、野天の往来で口演していた講談師である。やや高級なるが辻講釈とて葭簾(よしず)を張り、莚(むしろ)を敷いて客を集めた。これも演者みずからが口演料を集めること前者と変らず、明治の中頃まで残存していた。通行の人々へ呼びかけて演じ、収入を得るのであるから、悪達者にもせよ、相当の腕のある人々のみであったとつたえられる。

daidokosyaku
大道講釈

だいなし
〔体無し〕元も子もない。全然仕様がない。台なし。
だいのもの
〔台の物〕吉原の遊女屋に上った客がとりよせる料理。豪華なもの、手がるなものといくつかの種類、段階がある。豪華なものを「大台」、手がるなものを「小さい台」、お代りの料理は「代り台」、瓦せんべいや餅菓子だけをとりよせるときには「甘台」。

dainomono
台の物

たいはく
〔太白〕太い絹糸。
たいへいらく
〔太平楽〕勝手な気焰(きえん)。「太平楽をならべる」。オダを上げるに同じ。
だいみゃく
〔代脈〕代診(だいしん)。古川柳に「代脈はやんまを追った小僧なり」
だいみょうあるき
〔大名歩き〕楽な道路を選んで(本街道を)歩くこと。
だいもん
〔大門〕その寺の入口の山門をいう。今日、芝大門と都電停留場にあるは、芝増上寺山門前の意味である。総門。
たいや
〔逮夜〕忌日(きじつ、命日)の前夜。
「取分け今宵は殿の逮夜。ロにもろもろの不浄を云うても、慎みに慎みを重ぬる由良之助に、よう魚肉をつきつけたなア。」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵」祇園町一力(いちりき)の場)
だいや
〔台屋〕台の物の仕出しをする家。→「だいのもの」。
「よし原の台屋は、ずっと古くは、喜の字屋と云った。また、『向ふの人』も台屋の代名詞であった。『向ふの人と呼子鳥』といふ小唄もある。これは、どこの台屋を指したのか、その台屋の前側に遊女屋が軒を並べてゐたやうに見られる。おそらく明治以前に新町と云った、京町二丁目ではあるまいか。これは最初片側町であったから、」(増田竜雨「浅草寺を中心に」)
たいろく
〔大禄〕沢山の知行(ちぎょう、俸禄)。
たいわんいちょう
〔台湾銀杏〕台湾が日本の領土となった時代に、在来の銀杏返(いちょうがえ)しへ新しい工夫をこらした、それをいう。日露戦争の記念に、激戦地だった二〇三高地という名の束髪(そくはつ)がはやったのに似ている。
たか
〔高〕禄高の意味。武士として主君から貰っている米禄(ろく)の額。
たかしょう
〔鷹匠〕将軍家の鷹狩に使う鷹を世話する人。
「鷹匠はその役目として、あづかりの鷹を馴らすために、時々野外へ放しに出るのである。由来、鷹匠なるものは高百俵、見習五十俵で、決して身分の高いものではないが、将軍家の鷹を預ってゐるので、『お鷹匠』と呼ばれて、その拳(こぶし)に据ゑてゐるお鷹を嵩(かさ)に被(き)て、むやみに威張りちらしたものである。彼等は絵で見るやうに、小紋の手甲脚絆草鞋(てっこうきゃはんわらじ)穿きで菅笠をかぶり、片手に鷹を据ゑて市中を往来する。その場合にうっかり彼等にすれ違ったりすると、大切のお鷹をおどろかしたと云って、むづかしく食ってかかる。その本人は兎も角も、その拳に据ゑてゐるのは将軍家の鷹であるから、それに対しては何(ど)うすることも出来ないので、お鷹をおどろかしたと云ひかけられた者は、大地に手をついて謝(あやま)らなければならない。万事が斯(こ)ういふ風で、かれ等はその捧げてゐる鷹よりも鋭い眼をひからせて、江戸市民を睨みまはして押歩いてゐた。」(岡本綺堂「半七捕物帳・鷹のゆくへ」)
たかどま
〔高土間〕劇場の舞台の前の観客席を平(ひら)土間といったが、それよりやや高い所にこしらえてある席。→「しばや」「しんたか」
たかはた
〔高機〕手織磯(ておりばた)の一種。丈(たけ)も高く、構造やはたらきも普通のよりは一段進歩したもので、踏木(ふみき)を踏んで織る仕掛のもの。大和機(ばた)、京機(ばた)ともいう。
たかはり
〔高張〕高張提灯の略。長い竿(さお)の頭に付けて高くあげるようにこしらえた提灯。
たかもち
〔高持〕禄のもらえる身分。
たき
〔滝〕明治10年代の夏、東京都内の諸所に人造の滝をこしらえて、涼みの客をむかえた。
「何でも今年の当りは、滝に温泉に氷屋だ。」(河竹黙阿弥「千種花月氷(ちぐさのはなつきのこおり)」)
たぎって
特別に。
「器量はたぎって好いと云ふのではありませんが、何処(どこ)か男惚れのする顔で、」(三遊亭円朝「業平文治漂流奇談」)
だきね
〔抱寝〕抱いて寝ること。同衾(どうきん)。都々逸(どどいつ)に「色は黒うても浅草のりは白いマンマを抱寝する」。
だくだく
ボテボテ。部厚な。
「だくだくした股引(ばっち)をはきまして、どうだ気がきいてるだらうと、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)
たくでし
〔宅弟子〕内弟子。
たくばん
〔宅番〕蟄居(ちっきょ)を申し付けた家来に番をする侍を付け、その家を看守させたこと。
たけなが
〔丈長〕平元結(ひらもとゆい)。また奉書(ほうしょ)のごく厚い、ノリのきいていない紙をもいった。
たけのふし
〔竹の節〕若い男の髪。前髪立ちで、うしろの髷が小姓髷に次いで一文字に太い。
「竹の節といふ近年商家の丁稚皆此風なり。」(「魯文珍報(ろぶんちんぽう)」明治6年版)
「年ごろ十五六の小僧が髪を竹の節といふ若衆に結(ゆ)ひ前髪を取り、」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)

takenofusi
竹の節

たけやのかじ
〔竹屋の火事〕ポンポンいうこと。「竹屋の火事じゃあるまいし、ポンポンいいなさんな」
たけん
〔他見〕はたの見る目。
たこにゅう
〔蛸入〕蛸入道の略。
たこをつる
〔蛸を釣る〕人を詰問して掣肘(せいちゅう)を加える。
たしなめる
注意をする。しかる。小言をいう。嗜(たしな)みとは、心がけ、作法、教養などの意ゆえ、転じて「たしなめ」は無分別を気を付けて改めろとなる。
だしめぬき
〔出し目貫〕本来は柄糸(つかいと)の下にある目貫(刀の柄を刀の身に固く着けさせるための目釘の頭の部分)が外部から見えるようになっていて、装飾も美しいもの。
たしゅつ
〔他出〕外出。
たじるし
〔田印〕田舎者の田で、地方人をののしっていった。赤毛布(あかげっと)。いな。
たじれる
夢中になって気ちがいじみる。
たたきしめる
〔叩きしめる〕ぶちのめす。のす。
たたきっぱなし
〔叩きっ放し〕さんざ使ってわずかの金で追っ払うこと。刑罰としても竹で叩いて放免した。
ただのねずみじゃない
〔通常の鼠じゃない〕「伽羅(めいぼく)先代萩」床下(ゆかした)の場における荒獅子男之助(あらじしおとこのすけ)のセリフ「うぬもただの鼠じゃあンめえ」が一般に流行し、尋常一様の人ではあるまいの意味。
たちくらみ
〔立暗〕立ったまま目まいがすること。
たちまえ
〔出立前〕出発直前。
たちまえ
〔立前〕労働に相当した賃金。利益。稼ぎ。日給。日当。「これっぱかしじゃ、立前にもなりやしません」「いくらの立前になっても、そんなことはいやだ」
たちめえ
→「たちまえ」
たちもの
〔断物〕神や仏に念願したことが成就するまでは口に入れないとちかった食物・飲物。塩を使ったものを食べないのは「塩物断ち」、煮焼きしたものを断つのは「火の物断ち」。
たちやく
〔立役〕歌舞伎で和事実事荒事(わごとじつごとあらごと)の主人公である善人になり、その一と狂言をしょって立つ役をいう。転じて、現実の社会でも同様の立場にある人を「何といっても今回は君が立役だ」とユーモラスにいう場合もある。
たちゆき
〔立行〕世間を立って行くこと。世間を渡って行くこと。
たちんぼうのやすぐるま
〔立ん坊の安車〕車もきたなく、素性の分からない人力車をいう。多く客をゆすって高い酒手(さかて)をとったり、のせた女をもてあそんだりした、悪質の車夫が多かった。
だっそう
〔脱走〕一座(酒席などの)からそっとぬけ出すことにいう。幕臣の函館五稜廓脱走などから流行したとみている。
たっち
立つこと。児童語。
たっつけ
〔裁着〕たっつけ袴(ばかま)の略。裾(すそ)を紐(ひも)で膝のところにくくり付け、脚絆(きゃはん)をはいたようにするもの。旅行用。伊賀袴(いがばかま)ともいう。
だっても
だって。
たてうたい
〔立謡〕邦楽でその曲の重要中心の部分を歌う人。タテ唄。
たてすごす
〔立て過す〕女の方が働いて、男をたべさせてやる。
たてばぢゃや
〔立場茶屋〕街道筋の立場(人足たちが休む場所)にある茶屋。立場酒屋(ざかや)。
たてひき
〔立引〕意気地を張って、することをいう(金をだしてやる場合もあり、喧嘩の味方をしてやる場合もある)。
たとう
〔畳紙〕糸屑(いとくず)や櫛(くし)などを入れるように紙を折りたたんだもの。
たな
〔店〕建築物としての家屋を広く「たな」といった。表通りにある大きく豊かな家を「表店」、裏通りにある小さく貧しい家を「裏店」、家賃を「店賃」、立退要求を「店立て」、貸家を「貸店」、家の貸借を「店貸」「店借」、借家人を「店子」、母屋によせかけた小さな建物を「孫店」という。また「みせだな」、つまり商店の総称でもある。大商家を「大店」、商店員を「店者(たなもの)」、店頭を「店先」「店下」、商人らしさを「店風(たなふう)」、開店を「店開き」、商家の転宅祝いを「店振舞(たなぶるまい)」という。借屋住まいの町人は××町○丁目のだれそれ店(たな)というふうに住所をとなえる。職人などが「お店へいってくる」という時の「お店」は恩ある出入り先のことである。
たないど
〔棚井戸〕井戸のそばに柱を立て、屋根をつくり、棚を作って、手桶(ておけ)その他を置く。
たなっちり
〔棚っ尻〕棚のように大きく突き出た尻。
たなふう
〔店風〕→「たな」
たなぶるまい
〔店振舞〕→「たな」
たなもの
〔店者〕→「たな」
たにのもの
〔谷の者〕浅草山谷(さんや)、新谷町辺には非人が多く居住したので、谷の者といった。
だによって
であるから。講談の神田派にはこの語がのこっており、先代ろ山、当代松鯉は常にもちいている。文学作品では、岡鬼太郎の花柳小説に見られたのが、最後であろう。
たぬきのくそ
〔狸の糞〕石衣(いしごろも、干菓子)の下等品。
たねとり
〔種取〕探訪新聞の社会面の記事をさがして歩く下級記者。
たのしみなべ
〔楽鍋〕寄せなべ。鳥や魚や野菜をいろいろいれて、自分で煮ながらたべる鍋。
たばね
〔束ね〕取締。監督。
たびざかなや
〔旅魚屋〕方々、旅をしながら売り歩く魚屋。
たびたもう
〔給び給う〕「給(た)ぶ」と「給(たま)ふ」を合わせてつかう。「下さる」の非常にていねいないい方。「守らせたびたまえ」などと使う。
たべよう
〔喰べ酔う〕酔っ払う。昔は飲酒に「たべる」という動詞をも頻用した。落語「妾(めかけ)の馬」でも殿さまが八五郎に「その方、ささ(酒)をたべぬか」という。
たま
謀者のこと。→「ちょうじゃ」
たま
〔玉〕利益を得る手段、道具となる人間、物品、人身売買によく使われた。大いに役だちそうなものを「上玉」、男を「男玉(おだま)」、女を「女玉(めだま)」などという。
「男玉はおいてもいいが、女玉だけ渡してくれねえか。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
たま
〔玉〕○○玉刻(きぎ)み。たばこの数え方。→「つかみたばこ」
だまくらかす
〔訛くらかす〕訛す。
たませえ
魂(たましい)のなまり。
たまり
〔溜〕控え所。待合室。
たもとおとし
〔袂落し〕「町家の旦那衆は、銀の長い鎖の両端へ、青ラシヤでこしらへた、今でいふ巻煙草入みたいなものをつけて、懐中を通して、両の袂へ落してゐました。ソレを『袂をとし』と申したもんです。」(篠田鉱造「明治幕末女百話」)
たもともち
〔袂持〕袂持の煙草入れの略。すなわち腰さげでないもの。
たゆう
〔太夫〕五位の通称であるが、江戸時代の庶民語では、芸人・遊女の一定の格式に対するよび方であったり、単に敬称であったりする。
たらずまえ
〔足らず前〕足りない分。
たらたら
不平、せじなどをいうさま。噂たらたらというと、噂ばかりしていたの意味。「たらだら」ともいう。
「ある行為をさんざんするといふ意味でたらだらといふ語を用ひる。即ちお世辞たらだらとか愚痴たらだらとかいふのである。この語は勿論たらと上を澄んで発音し、下をだらと濁って発音するのだ。ところがその頃の印刷物には上のたらをだらと印刷してゐるのを度々見受ける。尤もこの方は誤植の場合もあらうかとは思ふものの、同じ新聞などで、何時もたらだらがだらだらなってゐるのを見ると全く誤植とも断じ兼る。」(馬場孤蝶(こちょう)「変りゆく東京語」)
だらにすけ
〔陀羅尼助〕だら助。陀羅尼(だらに、梵文を原語で音読するお経)をよむとき眠くならないため僧侶が口中にふくんだ薬。黄蘗(おうばく)の生の皮やせんぶりの根など煮詰めたもので、今日は腹病薬。
たるい
不足。未熟。充分でない。「あの人の腕ではたるい」。舌たるい、おかったるい、など。
たるだい
〔樽代〕酒を買う金のこと。祝儀におくる酒の代金。昔は家を借りるのに敷金はほとんどなく、前家賃と小額の樽代というものを支払った。それは、敷金とちがい、移転にも返金はせず、明治のはじめまでこの風習がのこっていた。
だるまがえし
〔達磨返し〕「下等の年増にこの風あり」と岡本昆石「吾妻余波(あずまのなごり)」にはあり、多く酌婦などのゆう髪である。特に意気がって中流以上の人がゆう場合もあった。じれった結びを髪のうちへおし入れたもの。

daruma
達磨返し

だんき
〔暖気〕あたたかいこと。
「外は殊の外、曖気であった。」(河竹黙阿弥「富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま)ーー女書生」)
だんじる
〔談じる〕文句をいう。掛け合う。
だんだん
〔段々〕数々。次第。「段々との仔細」「段々御苦労」など。
だんなば
〔旦那場〕得意先。
ちいちい
虫のこと。児童語。
チーハ
〔字花・一八〕筋紙(すじがみ)に36の言葉を記してくばり、胴元の伏せた言葉をあてると、かけた金の30倍がもらえ、当らないと胴元にとられる。中国の下等社会で行われ、明治年間、わが国の中国居留地から一般にはやり、大正初年までつづいた。36の言葉とは合海(ごうかい)がはまぐりで、安土(あんし)が狐といった式のもの。「うんそう」という配達人が、このクイズの紙を毎朝配達して来るバクチ。
チェスト
演説のクライマックスヘ、聴衆がかける声。Chesttone voice(チェスト・トーン・ボイス)の略。
ちかげどんす
〔千蔭緞子〕天明のころの歌人であり賀茂真淵門下の国学者であり八丁堀の与力であり、かつ最高度に洗練された通人でもあった加藤千蔭が、自筆の「蓄薫鶯(ちくくんおう)」の歌を織り出したどんす。吉原や深川の芸者に帯として与えていたという。
ちかづき
〔近づき〕知己。知り合い。
「まだ知己(ちかづき)にゃあならねえが、顔は覚えの名うての吉三。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
ちからもち
〔力餅〕一種の捩切(ねじきり)餅。たべると力が強くなるという。
「小麦粉を鉄板で焼いて赤蜜をかけたうどん粉餅、油くさいのを我慢して、」(染谷忠利「食道楽三日行脚」)
ちからもちのいし
〔力持の石〕力くらべをして持ち上げるための石。神社境内に何貫匁ときざんだ丸い石が、今日も置かれている。明治の中頃までは各町内の力持の番附までできた。現代ならボディ・ビル。
「是でも能登の七尾在で五十貫目の石をさした、人に負けねえこの次六。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)
ちぎしょう
〔血起請〕血でかいた起請文。→「きしょうもん」
ちちくりあう
〔乳繰り合う〕いい仲になる。
ちどりがけ
〔千鳥掛〕千鳥の飛び方のように、糸を交互に斜めに交叉させていくのを「千鳥かがり」というが、そのように糸をかけていくこと。また、単に斜に交叉する状態をもいう。
「からかさの骨はばらばら紙や破れても離れ離れまいぞえ千鳥がけ」という意味深長な小唄もある。
ちのみ
〔乳呑〕乳呑子(ちのみご)。
ちびっちょ
小男のこと。
ちびる
少しずつ出すこと。チビチビ出すこと。だしおしむように金をつかう場合にもいうし、放尿のときにもつかう。
ちみちをあげる
〔血道をあげる〕夢中になる。
ちみどり
〔血みどり〕血みどろ。血だらけ。
ちみどろちんがい
血まぶれ。血みどろ血がい。
ちゃう
〔茶宇〕茶宇縞(ちゃうしま)の略。印度Chaulという地の産でポルトガル人のもたらした舶来(はくらい)の薄琥珀織(うすこはくおり)の一種。いい絹糸をつかって織ったのを本練(ほんねり)という。わが国では袴地(はかまじ)にする。天和年間には、京都の織物師も製するに至った。
チャキチャキ
生粋(きっすい)。
「おぎやアと生れると水道(すいど)の水で、産湯(うぶゆ)を使った江戸っ子のチャキチャキが、」(竹柴其水「会津産明治組重(あいづさんめいじのくみじゅう)」)
ちゃじん
〔茶人〕変り者。粋狂な人。