教育基本法
驚異の画像ワールドへようこそ!
教育基本法の成立
今上天皇の家庭教師になったヴァイニング夫人(昭和21年)
2006年、新「教育基本法」が公布、施行されました。旧法に比べ、生涯教育や家庭教育の理念が加えられました。
もともとの教育基本法は、
教育勅語
に代わるものとして、GHQの命令によって成立したものです。とはいえ、個人的には非常によくできた法律だと思います。敗戦の荒れた風土から国の将来を見据えて作られた、なかなかの名文なんですね。
そこで、旧教育基本法を全文公開しておきます。
で、その前に、教育改革の簡単な年表を書いておきます(
寺子屋についてはこちら
)。
●昭和16年04月01日
小学校
が廃止され、軍国教育を目的とした「国民学校」成立
当時の新聞よりこのときの様子を引用しましょう。
《アカイ アカイ アサヒ アサヒ(注:1年生用の『ヨミカタ一』冒頭部分)
……さあけふから新しい國民學校が始まります、紀元は二千六百一年、世紀の第一年に國民學校最初の一年生に入學する光榮の坊ちやん嬢ちやん達は、春陽うらゝかな一日お母さまやお姉さまに手を引かれて國民學校の校門をくぐりました、七十年來親しまれた“小學校”の門標は一夜のうちに代へられて、墨の色も乾かぬ『何々國民學校』の標札が掛つてゐる(中略)國民學校入學式は即ち“皇國民基礎的錬成”の第一日でもあった》(朝日新聞・昭和16年4月2日)
●昭和20年08月15日 敗戦
●昭和20年09月01日 国民学校再開
●昭和20年09月04日 東久邇内閣、国体護持の「新日本建設の教育方針」発表
●昭和20年10月22日 GHQ、軍国教育の禁止などをうたった「日本教育制度に対する管理政策」発表
●昭和20年12月31日 修身、地理、歴史の授業禁止
●昭和21年03月05日 教育改革のために第一次教育使節団来日
●昭和21年04月07日 使節団による「平和国家への道」発表。9年制の義務教育、ローマ字の採用などを勧告
ちなみに当時は漢字=悪の象徴とされて、志賀直哉なんかは「フランス語公用語説」を発表しています。
《日本は思ひ切つて世界中で一番いい言語、一番美しい言語をとつて、その儘、國語に採用してはどうかと考へてゐる。それにはフランス語が最もいいのではないかと思ふ》(『改造』昭和21年4月号)
●昭和22年03月31日 教育基本法施行
●昭和22年04月01日 教育基本法と学校教育法に基づく民主教育スタート
新聞社は、漢字制限(1850字の当用漢字しか使わないこと)開始
それでは旧「教育基本法」を全文公開しましょう。
教育基本法
昭和22年3月31日法律第25号
われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
第一条(教育の目的)
教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
第二条(教育の方針)
教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
第三条(教育の機会均等)
〔1〕すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。
〔2〕国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。
第四条(義務教育)
〔1〕国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
〔2〕国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
第五条(男女共学)
男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
第六条(学校教育)
〔1〕法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
〔2〕法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。
第七条(社会教育)
〔1〕家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。
〔2〕国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。
第八条(政治教育)
〔1〕良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
〔2〕法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
第九条(宗教教育)
〔1〕宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
〔2〕国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第十条(教育行政)
〔1〕教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
〔2〕教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
第十一条(補則)
この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
更新:2004年9月23日
<おまけ>
参考までに、現在の教育基本法の前文と第1条はこんな感じです。
我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
教育の目的(1条)
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
<おまけ2>
旧教育基本法の制定に先立って、東大でも男女共学の入試が行われるようになりました(昭和22年)。定員2660人中、女子は63人合格。なかには36才の奥さんもいたそうです。
広告