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これは何かというと、かつてこの場所に存在した同潤会アパート(青山アパートメント)を模しているんですね。
同潤会アパートは、関東大震災で廃墟になった東京に、次々と建っていった集合住宅の総称です。青山だけでなく、代官山や大塚など、東京のいたるところに建てられました。
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しかし、竣功から長い年月が経ち、現存するのは上野下アパートメントだけになりました。しかし、このアパートも、2013年6月に取り壊されました。

東京は、関東大震災と太平洋戦争で、都市全体が2度にわたって消滅しました。また、日本人は木と紙で作られた家屋に住んできたせいか、「建物を保存する」という意識に乏しく、歴史的建造物があっという間に取り壊されていきます。
最近では、旧来の建物の外壁だけ残して、巨大なビルをその上に建てるという建築(俗に言う腰巻ビル)も多いです。その元祖は京都の中京郵便局(1978年竣工)で、東京ではGHQに接収された第一生命ビルが有名です。東京中央郵便局跡に作られたJPタワーもそうですね。しかし、歴史的なデザインが極端に無視されるなど、名建築の保存とは言いがたいケースも多いのです。
要は、経済原則が優先する日本では、歴史的建造物を残すのはかなり難しいのです。
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問題はそれだけではありません。
表参道ヒルズは、著名な建築家の安藤忠雄が設計しましたが、日本で最も有名な建築家といえば、東京都庁や赤坂プリンスホテル新館を設計した丹下健三でしょう。
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しかし、丹下健三の設計図は、現在日本には1枚も存在していません。そのすべてがハーバード大学の建築学大学院フランセス・ロウブ図書館に保存されているのです。
こうした状況に危機感を感じた文化庁は、2013年5月、建築資料を収集する「国立近現代建築資料館」をオープンさせました。
そこで、さっそく見てきたところ、丹下健三の代表作「国立代々木競技場」を中心にした「建築資料にみる東京オリンピック」という特別展を開催していました。これはこれで、まぁ、それなりの展示でしたが、しかし、資料館としては非常に未熟で、ほとんど何の足しにもならないような状況でした。
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あんまりお粗末なんで、本サイトでは、勝手に建築資料を公開することにしました。特に、関東大震災後に建てられた「復興建築」を中心に資料を公開していきます。
復興建築は、短期間に一気呵成に作られたため、「没個性的」「類型的」と評されることが多く、耐久性にも疑問符がつくような建物ですが、それでも現代の建造物に比べれば、はるかにおしゃれで素晴らしいデザインとなっています。
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にもかかわわらず、復興建築に関する書籍はほとんどなく、ウィキペディアにも項目が立たない(2013年5月現在)ようなひどい扱いを受けています。
日本人って、やっぱり建築に興味がないんでしょうかね。
そんなわけで、本サイトでは、「国立近現代建築資料館」に負けないような資料を公開していきたいと思います。まずは、『東京・横浜 復興建築図集1923-1930』(丸善、1930)を完全復刻していきます。
●文化住宅・同潤会アパートの誕生
●大倉財閥とホテルオークラの誕生
●三井本館
●第一生命館の誕生
●第一生命館、幻のデザイン
●三井本館
●横浜プリンスホテル貴賓館へ行く
●「ライト式建築」の発展
●帝国ホテルの誕生
●丸の内と東京駅
●万世橋駅
●幻の煉瓦建築を見にいく