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たばこと塩の博物館

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江戸時代のタバコ屋の店先


 1978年11月3日に開館した「たばこと塩の博物館」は、JT(日本たばこ産業)の企業博物館です。なぜJTかというと、かつて煙草と塩、樟脳(防虫剤、かゆみ止め)は日本専売公社の独占事業だったからです。

 たばこの専売は、日清戦争後の財政確保と、欧米資本による市場独占を防ぐため、明治37年(1904)7月に始まります。塩の専売は翌年です。

 そして、専売公社は、1985年にJTになりました。

 樟脳の専売は1962年に終了し、塩の専売も1997年に終わりました。たばこ製造は今でもJTの独占事業ですが、逆に国産葉タバコの全量買取が義務づけられています。

 そんなわけで、煙草と塩という何の関係もない商品の博物館ができたわけですね。

 ただ、この博物館、けっこう所蔵品は多いんですが、展示は代わり映えせず、あんまりリピーターがいなさそうな感じでした。ですが、いちおう、展示品を振り返っておきます。

 渋谷での展示は、もちろんたばこと塩で分かれていました。

<たばこ>

 明治中期から煙草の生産が増加し、庶民の間で人気が高まると、たばこ商は猛烈な宣伝合戦をくり広げました。特に、東京の岩谷商会と京都の村井兄弟商会の宣伝合戦が有名でした。

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岩谷松平の岩谷商会が発売した「天狗たばこ」のパッケージ

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村井吉兵衛の村井兄弟商会が発売した輸入葉たばこのポスター

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村井兄弟の煙草パッケージ

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煙草の自動販売機

 昭和27年(1952)に発売されたピースは、鳩がオリーブの葉をくわえている斬新なものでした。このデザインはアメリカの商業デザイナー、レイモンド・ローウィによるものです。
 首相の月給が11万円だった時代に、デザイン料150万円を払ったことで、大きな話題になりました。

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ローウィのデザインした煙草の箱

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世界の煙草

<塩>

 日本では、長らく海水から濃い塩水(鹹水=かんすい)を採り(「採鹹」=さいかん)、それを煮つめて(「煎熬」=せんごう)塩の結晶をつくってきました。

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塩田での製塩作業の様子

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昭和30年頃に普及した流下式塩田

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現在は「イオン交換膜法」によって塩を作る

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重さ1.2トンというポーランドのヴェリチカ産の岩塩

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左からボリビア、アルゼンチン、チリの湖塩

 たばこと塩の博物館は、長らく渋谷に開設されていましたが、2013年9月1日、老朽化のため閉鎖。2015年4月、墨田区横川に再オープンしています。