科学朝日が選定した科学遺産
すでに廃刊した『科学朝日』1955年11月号が、文化の日特集でまとめた「日本の産業遺産」を公開しておきます。
●八木アンテナ第1号
昭和5年(1930年)2月、八木秀次、宇田新太郎らによって製作された方向探知用の極超短音受信機
●日本初の人絹
日本の人絹製造は大正7年(1918年)、旧米沢高等工業学校(現山形大学工学部)で秦逸三が完成させた。大正10年には帝国人絹が山口県岩国に工場を移転。写真は糸を捲きとる木製手回し糸繰機
●本多光太郎博士使用の高周波電気炉
「鉄の神様」「鉄鋼の父」と呼ばれる本多博士が、昭和2年(1927年)、ドイツから購入してきたローレンツ型高周波炉
●最古のポーラログラフィー
大正13年(1924年)、志方益三がチェコスロバキアのプラハ・カレル大学で開発したポーラログラフィー。電圧と電流曲線を自動記録する装置で、分析化学など各方面に使われる。京都柳本製作所で製造された国内最古のもので、蓄音機のゼンマイで印画紙のドラムを回す
●小型ディーゼル機関
ヤンマーディーゼル社長の山岡孫吉が、昭和3年(1928年)に完成させた世界初の5馬力小型ディーゼル機関。毎分500回転し、この開発をきっかけに個人向けに普及が進んだ
●磁気録音機の改良
デンマークのポールセンが、1898年、円筒に鋼線を巻いた録音機を発明。その後、東北大学の永井健三らが高周波バイアス録音方式を発明し、雑音の少ない録音ヘッドを開発。さらにドイツで磁性酸化鉄を用いる録音テープが発明され、一般的なテープレコーダーが完成した。写真は昭和15年のエンドレス磁気録音機
●日本初の水力発電所
明治24年(1891年)11月に送電を開始した琵琶湖疏水脇の蹴上発電所。80kWの発電機2台
●光学ガラスの大型熔融炉
大阪工業試験所の高松亭が作った世界有数の2トン坩堝の熔融炉3基。この炉のおかげで大型レンズ製作が進んだ
●印刷された日本初の天気図
内務省地理局気象台で印刷された明治16年(1883年)3月1日の天気図。添付の天気報告には《晴雨計低度の位置は九州沖に現出し 南西部は都で晴雨計沈下すること急なり 而して 其最高は東海岸の沖にあり 風は静穏より軟に至る速度を以て吹けり 鹿児島は雨降り始め其他は多く曇天なり 温度は南西及南部に於て上昇せり》とある
●TYK式無線電話機
逓信省電気試験所の鳥潟右一、横山英太郎、北村政治郎らが明治45年(1912年)に完成した無線電話。海上30マイルの距離で通話に成功し、イギリス、フランス、ベルギーなどで特許を得た
●西洋式ガラス工場
品川に明治6年に建造された日本初の西洋式ガラス工場。太政大臣三条実美が賛助し、興業社と称して洋式ガラスの製造を開始した。後に官営品川硝子製作所に改称
●足踏旋盤
島津製作所を創設した島津源蔵が明治8年(1875年)の創業当時に使用していたもの
●スタンホープ印刷機
嘉永2年(1849年)、オランダ政府から徳川幕府に献上された金属製印刷機。イギリスのスタンホープが19世紀の初めに発明したもの
●白瀬隊が持ち帰った南極の岩石
明治45年(1912年)、白瀬矗中尉の南極探検隊がエドワード7世半島のアレキサンダー山から持ち帰った岩石
●早稲田式テレビジョン
早稲田大学の山本忠興、川原田政太郎が昭和5年(1930年)に完成させた機械式走査方式のテレビ装置(走査線60本)。左がニポー円板(ニプコー円板)による送像機、右がワイラー鏡車による受像機
●浜工式テレビ送像機
旧浜松高等工業学校の高柳健次郎、中島友正が開発したテレビで、光電管とニポー円板を組み合わせた光点走査方式。1926(大正15)年12月25日に「イ」の文字をブラウン管に映し出すことに成功した(機械と電子の折衷方式、走査線40本)。
その後、高柳は1937年に世界最高水準の走査線441本の受像機を完成させた。1939年にNECと東芝が初の国産受像機を開発