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紡績機械の世界

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解体された梳綿機(そめんき)


 かつて綿糸を作るときは、非常に多くの工程が必要でした。おおまかな工程ごとに使われる機械をまとめると、以下のような感じです。

<綿を取り出し、ゴミを落として、幅や厚さをそろえる>

(1)開俵機 ……おおざっぱに開綿し、ゴミを除き、混綿する
(Hopper bale breaker)

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(2)開綿機(ホッパーオープナー)……綿の塊を小さくする
(Hopper opener)
(3)給綿機……綿の塊をほぐし、一定の大きさにする
(Hopper feeder)

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(4)ポーキュパイン開綿機……さらに打綿、開綿を繰り返し、ゴミを落とす
(Porcupine opener)

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(5)クライトン開綿機……打綿して、重いゴミを落とし、綿を浮かす
(Crighton opener)

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(6)排気開綿機……ビーターで打綿し、ゴミと分離させ、綿をケージに集める。
(Exhaust opener)

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(7)打綿機……ゴミを除き、均整にし、ふわふわで帯状のラップを作る
(Scutcher)

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<もつれた繊維を解きほぐす>

(8)梳綿機(そめんき)……櫛でならして繊維の方向を揃え、太い紐状のスライバーに
(Card)

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ラップを梳綿機に通す

<太さをそろえ繊維を平行にする>

(9)練篠機(練条機)……スライバーの太さを揃え、繊維を平行にする
(Drawing frame)

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スライバーの太さを整える

<粗糸にする>

(10)粗紡機(始紡機、間紡機)……フライヤーで粗糸をボビンに巻く
(Fly frame)

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<糸に撚りをかけ、強度をつけ、完成>

(11)精紡機、リング撚糸機 ……糸に撚りを加えてボビンに巻く
(Ring spinning frame)

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精紡機


 最後に捲糸機などで、用途に応じた最終加工をして完成です。 
 はっきり言って、素人には違いがわかりませんが、ものすごく大変なことはわかりますね。

 ここで出てくる梳綿機というのはかなり重要な機械なんですが、なかなか国産化できませんでした。トヨタを生んだ豊田佐吉の会社「豊田式織機(現豊和工業)」も、苦労に苦労を重ねて、開発まで10数年かかったと社史で書いてます。

 余談ながら、かつて技術力のなかった韓国は、1980年代、日本に半強制的に技術供与させていたんですが、1985年の段階でも、綿精紡機や梳綿機の製造技術が要望に含まれていました。このときはほかにCD、VTR、プロペラ、半導体、マイクロモーターなどハイテク関連の技術も要求しており、いかに紡績技術が重要だったかわかります。

 さて、そんな梳綿機ですが、2012年5月、群馬県高崎市の元ふとん工場で3台が廃棄されました。その中の1台は日本に現存する唯一のものでしたが、あえなく鉄くずとなりました。そんなわけで、廃棄直前に撮影した写真を掲載しておきます。

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ラップを作る

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梳綿機

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 写真上が日本唯一の梳綿機。中央のドラムと、上にかぶさる部分には、とげ状の短い針がびっしり埋め込まれていて、その隙間に綿が送り込まれます。ドラムが回ると綿の繊維がほぐされ、揃えられる仕組み。

 糸を作る場合、ここから練篠機に回しますが、布団屋の場合、綿を大きくしないといけないので、梳綿機の後はそのまま製綿機に通します。右手の青い機械が1964年製の製綿機。これを通すと、脱脂綿の親玉のような巨大な綿の塊ができるので、これを布団の中に入れるんですね。

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こちらも梳綿機(手前)。いずれも、鉄くずとなってしまいました。

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国産の自信を感じますな。

 なお、掲載した紡績機械の写真は「豊田式織機株式会社・創立30年記念誌」(1936)より転載しました。