木製クレーン(杉田鋳造所の旧蔵資料)
・江戸から戦後まで文書約2万点(うち江戸時代のもの60点)
・木や土や鉄でできている生産用具、製品約400点(うち江戸時代のもの100点)(1984年寄贈)
奥にいる人物と比べるとクレーンの大きさがわかると思います
反対側から撮影
特筆すべきは、長さ約5.8メートル、幅約1.85メートルの木製天井走行型クレーンで、江戸時代末期のもの。 簡単に構造を説明すると、長方形の移動台が、輪軸(1本の巨大な木)や動滑車を備えた4点吊りの巻き上げ機を載せて工場の梁の上を移動したのです。固定式はけっこう残存してるようですが、前後左右に動くものはおそらく世界唯一(通称「ろくろ」)。
どうやって使われたのかというと、寺の鐘などを鋳造するとき、何トンもある鋳物を土の中から引き上げて前後左右に動かすわけです。今でこそ機械式のクレーンがありますが、当時は当然ながら人力です。人はクレーンの下にいてロープでひっぱってゴロゴロと動かします。移動には最低でも16人必要でした。
このクレーンは奈良県香芝町(当時)の町長さんの家(杉田家)にあったもの。杉田家は奈良の大仏を鋳造した棟梁の1人までさかのぼる歴史的な家系で、「五位堂鋳物師」3家のうちの1つとして有名。国内では、梵鐘を作れるのは杉田家しかなかったそうです。そのため、資料には梵鐘につける仏像レリーフの型やヘラなども大量にありました。
天井から吊す道具
杉田家は近世以降、鍋、釜、風呂桶、スキなどの日用品や農具を中心に製造を行い、戦前はアジア各地に輸出されていました。資料の多くは香芝市の博物館に移管されました。
こちらは2万点の文書資料の一部。エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)に移管。
(写真は「産業技術史資料収蔵品一覧(補訂版)」より)