蒸気機関車は石炭を燃やして蒸気を発生させ、その蒸気で車輪を回転させます。当然、常に石炭と水を積んでおく必要があります。
機関車本体に炭庫と水槽を装備するタイプを「タンク機関車」と呼び、石炭と水を積んだ別の車両(炭水車)を接続したタイプを「テンダー機関車」といいます。
蒸気機関車の構造は、
●乗務員の作業する運転室
●蒸気を発生させる罐
●蒸気によって車輪を回転させる機関
●速度を制御するブレーキ装置
●炭と水を搭載する炭水車(テンダー形式の場合)
に分かれます。以下、旅客列車用に使われたC57(2C1過熱テンダー機関車)の全体図から、それぞれの構造を解説します。
【運転室】
機関士、機関助士が執務する場所で、室内には操縦と焚火に便利な諸機器がまとまっている。
(1)加減弁ハンドル……このハンドルを開くと罐内の蒸気がシリンダに入り、機関車が起動する。
(2)逆転機ハンドル……機関車の前進・後進を制御する機器。前端に入れれば前進、後端に入れれば後進。端にすれば出力が最大となるので、列車を引出す際はこの位置に置く。
(3)制動弁……自動制動弁と単独制動弁があり、前者は全列車の制動操作に、後者は機関車のみの制動操作を行うときに使う。
(4)圧力計……罐用、蒸気室用、蒸気暖房用、空気ブレーキ用などがある。
(5)注水器……罐水を補給する機器で、罐の蒸気圧力を利用して水槽内の水を吸引する。蒸気の熱エネルギーが運動エネルギーとなることで、加速された水が罐内に入る。
(6)水面計……罐水の量を知る装置(ガラス管)。
(7)焚ロ……火室へ燃料を投入するロで、ふだんは焚ロ戸で覆い、必要なときに開いて焚火する。
【罐】
火室、腹胴、煙室の3部分からなり、原動力となる蒸気を発生させる。
(8)火室……内火室、外火室でできていて、内火室の周囲・上方は水に覆われている。底には(9)火格子があり、燃料はこの上で燃焼し、熱ガスを周囲の水に伝え、蒸気を作る。火格子の下には(10)灰箱があり、落下した炭殻を溜める。同時に、燃焼に必姿な空気の量を調節する。
火室内には(11)煉瓦アーチがあり、冷気の浸入を防止し、燃焼を平均化する。また、(12)アーチ管という水管があり、水の循環を向上させる。
内外火室は罐圧による(罐内の圧力は13〜16kg/㎠)膨出変形を防ぐため、各種の(13)扣(フック)でつながっている。
(14)腹胴……火室と煙室との中間にある円筒部で、内部に100本前後の(15)小煙管と、20本前後の(16)大煙管がある(大煙管は過熱蒸気機関車のみ)。火室で燃焼した熱ガスはこの管を通って煙管から外気に放出される。その過程で煙管周囲の水に熱を与え、ここでも蒸気が発生する。
罐胴の上部には(17)蒸気溜と(18)罐安全弁がある。蒸気溜は罐の最上部に作られ、乾燥蒸気を蓄える場所。内部には(19)加減弁があり、運転室で(1)加減弁ハンドルを開けば、蒸気は弁から(20)乾燥管、(21)過熱管寄、(22)過熱管を2往復し、(23)主蒸気菅をへてシリンダに至る。
罐安全弁は、罐の所定の圧力を超えないよう、自動的に噴出して罐の安全を図る。
(24)煙室……火室内の通風と、炭燼の貯蔵を目的とする。前方に開閉自由な(25)煙室戸があり、常に密閉されている。内部には(23)主蒸気管、(26)吐出管、(27)反射板、上部には(28)煙突。
シリンダで使用した不用蒸気は、吐出管から煙室に向かって放出され、煙室内に真空を作る。これにより、火室の通風が生まれる。反射板はこの通風が均等になるようにするもの。
【機関】
弁装置、走り装置を総括して機関と称する。蒸気によって車輪を回転させ、牽引力を発生させる。
・(29)シリンダ……罐からの蒸気を受け入れ、(30)ピストンを動かし、これに連結された(31)ピストン棒、(32)滑頭、(33)主連棒を介して(34)主動輪を回転させる。このとき、主動輪と(36)連結捧でつながった(35)連結動輪も一緒に回転する。
・弁装置……(37)ピストン弁、(38)加減リンク、(39)偏心棒などからなり、蒸気の給排と機関車の前進、後進を行う。
前方には(40)先輪がつき、カーブの通過を容易にしている。
【ブレーキ装置】
機関車と列車の停止装置で、(41)空気圧縮機、(42)元空気溜、分配弁、制動弁、制動管、制動筒、制輪子などの機構からなっている。
空気圧縮機には単式(小形機)、複式(大形機)の2種類ある。大気圧をポンプ作用で6.5〜8kg/㎠に圧縮し、元空気溜に蓄え、それを機関車および列車の制動菅に5kg/㎠で送る。(3)制動弁で制動管の圧力を減圧(0.4〜1.4kg/㎠。緊急時は全部)すれば、機関車の分配弁や列車の動作弁が作動し、車輪が制動される。
【炭水車】
テンダー機関車は、機関車の後方に炭水を搭載した車両が連結される。普通、石炭は6〜12トン、水は10〜20トン搭載できる。
【そのほか】
・点火装置……(43)タービン発電機によって、夜間の列車標識となる(44)前照燈や運転室内の照明をつける。
・油ポンプ……シリンダ、蒸気室に給油する。
・砂まき装置……(45)砂箱に蓄えた乾燥砂を、必要に応じて、圧搾空気によってレールの上に撒布する。空転防止。
・(46)気笛……警笛および合図に使う。
・(47)煙除け装置……屏風形の板で、機関車前方に受ける風圧を使い、排煙を上空に流して煤煙を軽減。
・連結装置……機関車の前後には(48)自動連結器がある。
蒸気機関車の構造
(1)加減弁ハンドル(2)逆転機ハンドル(3)制動弁(4)圧力計(5)注水器(6)水面計(7)焚ロ(8)火室(9)火格子(10)灰箱(11)煉瓦アーチ(12)アーチ管(13)扣(14)腹胴(15)小煙管(16)大煙管(17)蒸気溜(18)罐安全弁(19)加減弁(20)乾燥管(21)過熱管寄(22)過熱管(23)主蒸気菅(24)煙室(25)煙室戸(26)吐出管(27)反射板(28)煙突(29)シリンダ(30)ピストン(31)ピストン棒(32)滑頭(33)主連棒(34)主動輪(35)連結動輪(36)連結捧(37)ピストン弁(38)加減リンク(39)偏心棒(40)先輪(41)空気圧縮機(42)元空気溜(43)タービン発電機(44)前照燈(45)砂箱(46)気笛(47)煙除け装置(48)自動連結器