じあか

〔地赤〕赤地に松竹梅など豪華な刺繍のある女性用の晴れ着。じあけ。
「はい。と出て来た姿は文金の高髷、地赤の縫模様、大和錦の帯を締め、白の掛で、」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)」)

しいくる
生活の苦しいこと。苦しいを逆さにいった。「何しろ今はシイクルですから」

じいじいもんもん
字と絵。児童語。

しいたけたぼ
〔椎茸髱〕髱を張り出し、椎茸のような形にした御殿女中特有の髪。
しいのみ
〔椎の実〕幼い男の子の局部をいう。
しおいり
〔汐入〕海の水が流れいっている川口の川。
「江戸向(えどむき)都心には見られぬ汐入の高く反(そり)の附けられた小橋を幾つともなく渡って、」(小栗風葉「恋慕(れんぼ)流し」)。邸や別荘や料亭で海や川の水をそのままとりいれた池をも、汐入の泉水という。

しおき
〔仕置〕取締り。処罰。親が子をしかってぶったりすることも仕置をしたという。
しおく
〔仕置く〕しておく。仕置いたこともあるという風につかう。
しおたれる
〔萎たれる〕しょんぼりする。今日でも出版界では、保管不完全や売残りのため見るかげもなくなることを「しょたれる」といい、そうなった本を「ショタレ本」といいならわしている。
しおばな
〔塩花〕芸者屋でいやな客がかえるとまく塩。葬礼からかえったときにまくのもいう。
しおびき
〔塩引〕塩引(塩漬)の鮭の略。
しおふき
〔汐吹〕ひょっとこ。
しおものだち
〔塩物断ち〕→「たちもの」
しおものや
〔塩物屋〕塩づけの魚や漬物を多く売っていた店。
じか
〔自火〕自分の家から火事をだすこと。
しかくなじ
〔四角な字〕漢字。本字。かなに対していう。
しかけ
〔襠〕帯をしめた上にうちかけて着る長い小袖。うちかけ。
じかぜ
自然に吹いて来る風。「帯まきつけて風(じかぜ)の透(す)く処へ行けば、」(樋口一葉「にごりえ」)

しかたばなし
〔仕方話〕身振り手真似をまじえてする(ジェスチュアたっぷりの)。
じがみおり
〔地紙折〕扇に使う紙を折って売る商売人。画商(画家の所へ出入りしてその絵を売りさばく商人)をもいう。
しがらき
〔信楽〕信州産の籐(とう)の一種。笠にもなる。
しき
手数料。
「お嬢様を自分の三階で男と密会(そっとあわす)をさせて、いくらかしきを取る。」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)

しぎ
〔仕儀〕次第。「殺さにやならぬ今日の仕儀」(二上り新内「うつぼ猿」)
しきがみ
〔敷紙〕紙製の敷物。厚く貼り合わせた渋紙。
しきしがあたっている
〔色紙が当っている〕貼交屏風(はりまぜびょうぶ)の色紙のように、着物の諸方へ継があたっていることのユーモラスな表現。
しきせ
〔仕着〕季節に応じて商家が奉公人へ、また客が芸者幇間にやる絆纏(はんてん)や羽織。ユニ・フォーム。牢獄における囚人服をもいった。多く「お」をつける。→「そうばおり」
しきだいぐち
〔敷台口〕玄関先の板敷の一ばん外にちかい部分。
じきに
〔直に〕じかに。直接に。
しきぶくろ
〔四季袋〕手さげ袋ーー今日のボストンバッグの一種。布でできている。
しきまつば
〔敷松葉〕庭の苔や芝などが霜の害を受けぬよう枯松葉を敷いて予防とするをいう。松などへ雪よけをしたのと共に、いかにも冬の庭らしい風情が、あの枯れた松葉の色から感じられた。
じきょうきごうとう
〔持凶器強盗〕刃物やピストルをたずさえていて入る強盗。
しきり
〔欄木〕昔の劇場の、約4人ずつ入れた場席と場席の間を仕切ってある細い棒にちかい歩み板。
「左右の人の肩を押分けて、危険相(あぶなそう)に細い欄木を渡ると、」(小杉天外「初すがた」)

しきり
〔仕切〕取引の決算。計算書・勘定伝票のことを今でも「仕切書」というところが少なくない。
しきりば
〔仕切場〕昔の芝居小屋で、金主座元会計方などが詰めていて勘定をした場所。木戸の左手にあった。
じぐち
〔地口〕蕎麦(そば)がいい、側(そば)がいいという風に、似た音でしゃれること。
じぐちあんど
〔地口行灯〕洒落(しゃれ)をかき、その洒落をも絵にした行灯で、初午祭などにかけつらねる。絵の具が一種変っていて、いかにも市井的(しせいてき)な色調に、かえって味がある。例を引くなら、婉豆(えんどまめ)の顔をした鎧武者(よろいむしゃ)がもりそばを10個たべている絵に、えんどうむしゃもり十(遠藤武者盛遠(もりとお))とあるたぐい。
じくねる
すねること。グズグズいうこと。反対すること。じぶくる。

じぐる
地口をいう。

じくん
〔二君〕「にくん」と現代ではいうが、昔は「じくん」といった。
しけこむ
一室へ入りこむ。情痴にもつかい、男女が泊りに行くこと。

じこう
〔時好〕はやり。時代時代の好みという意味。「時好に投じる」
じごく
〔地獄〕淫売。私娼。
「坊間の隠売女にて、陽は売女に非ず、密に売色する者を云。昔より禁止なれども、天保以来特に厳禁也。」(「守貞漫稿(もりさだまんこう)」)

しこくざる
〔四国猿〕昔、四国の人をののしっていった言葉。
じごくばら
〔地獄腹〕女の子ばかり生む女のこと。
しこたま
たくさん。どっさり。

じざい
〔自在〕自在鈎(かぎ)の略。炉(ろ)、竈(かまど)の上につるし、自由に鉄瓶、鍋、釜を上下させる装置の鈎。
じじっけ
襟(えり)の毛のこと。児童語。
しじめ
蜆(しじみ)のなまり。

しじめっかい
〔蜆貝〕内にいては大きな顔をし、外へでると小さくなっている子供。内弁慶に同じ。「内の中の蛤貝、外へでると蜆ッ貝」とはやした。
じしょくしょ
〔辞職書〕辞職届。
じそ
〔自訴〕自首。みずから訴人(そにん)すること。→「そにん」
しそく
〔紙燭〕松の木を長さ約15寸、太さ3分(ぶ)ほどの棒のようにけずり、先の方を炭火であぶって黒くこがし、その上に油を塗って火をつけるもの。下を紙屋紙(かみやがみ)で左巻きにした。これが宮中でつかわれた紙燭であるが、粗末な手燭(てしょく)のまわりを紙で筒のようにおおい、上部だけあけたものをもいう。
じだい
〔時代〕古びがかかっている様子。「この茶碗は時代がついた」などという。「過去」「歴史上」をも「時代」と表現した。例「時代狂言」。いまだに「時代劇」「時代小説」のよび方がある。
しだいがら
〔次第柄〕経路。すじ道。
したかた
〔下方〕弟子(植木屋などの)。見習職人。また、囃子(はやし)とその演奏者である囃子方(はやしかた)をもいう。→「かた」
したかねかし
〔下金貸〕下等な金貸。
したぐみ
〔下組〕下地。土台。
したじめ
〔下締〕着物(上衣)の下、つまり下着にしめるひも。「うわじめ」の対。
したっぱらにけのない
〔下っ腹に毛のない〕男から男をあさりつくし、下腹部の毛がすり切れてしまっているほどのあばずれ女という意味。
したて
〔仕立〕往来で客待ちをしている辻車でなく、若い衆を沢山かかえ、一軒構えている宿車(やどぐるま)をいう。今日ならハイヤーである。
じたて
〔地たて〕すんでいる土地から立ち退くこと。家を追われるのは「店(たな)だて」という。
したみ
〔下見〕家の外部の壁をおおうもの。普通は横板張りで、その上に薄板を直角に15寸〜3尺の間隔で縦に打って押さえにする。下層の家ではねじけた竹(ひしぎ竹)などを使っている。
じだらける
〔自堕落ける〕のぼせ上がる。理性、判断力が低下する。自堕落になる。
しちがつのおやり
〔七月のお槍〕ぼんやりーー盆の槍だからーーというしゃれ。
しちけつ
〔七穴〕左右の耳、左右の目、左右の鼻孔、口。「七穴から血を吐いて死んだ」
しちょう
〔紙帳〕紙製の蚊帳。
しちりけっぱい
「七里結界(仏教語で七里四方に境界線を結ぶこと)」のなまり。きらって寄せつけないこと。
「金がなければ七里けつぱい、摘(つま)んで捨てるげじげじ同様。」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)

しちりょうがえや
〔質両替屋〕質屋と両替屋をかねている店。→「りょうがえや」
じつ
〔実〕真実。まごころ。誠実味。「実をつくす。」
じつい
〔実意〕真情。まごころ。
しっこし
〔尻腰〕気概(きはく)。決断力。気魄。なまってヒッコシという人もいる。忍耐力。気力。
しっちょぐる
放尿する。小便をする。→「しょぐり」。もとは「ひょぐる」であろう。
「ヱヱ己(おれ)も小便がしたくなった。一寸ひょぐって来よう。」(芝全交「年寄之冷水曾我(としよりのひやみずそが)」)

じってい
〔実体〕実直。まじめ。誠実。
じっぷ
〔実否〕今日では「じっぴ」と発音する。ほんとうかどうか。「実否をたしかめよう。」
じつめい
〔実銘〕実直。
してかた
〔仕手方〕自分に従う職人。「棟梁のはしくれをいたし、仕手方を使ふ身分になりました。」(三遊亭円朝「英国孝子之伝」)。
じてんしょう
〔自点鐘〕音立てて鳴る時計の針。
じとう
〔地頭〕土地の頭立つ人。土地の管理役人。「泣く子と地頭には勝てぬ」
しどけない
取り乱している姿。

しとしと
しとやかに。しずかに歩いて来るとき。しずかにふる雨などにいう。

しとみ
〔蔀〕家の前にはめ込む2枚の横戸。昼は柱の上部に取り付けた戸決(とじゃくり)にしまい、夜だけ下ろして戸締とする。商家に多い。
しとをつけ
「ひとをつけ」のなまり。

じない
〔地内〕境内。浅草観音境内に河竹黙阿弥が住んでいたときは、「地内の師匠」とよばれた。
しにがね
〔死金〕老人が自分の葬式費用にたくわえておく金をいう。効果のない金を浪費する場合にも死金をつかうという。
しのびがえし
〔忍返し〕東京下町風景の1つだった忍返しは、いまや二番目狂言の舞台面以外には見られなくなった。塀の上にとがった板や木(明治以後の鉄のは風情がない)を組み合わせて取り付けた設備。盗賊の入るのを防ぐためである。
しばや
〔芝居〕明治中頃までは、東京人はシバイと発音しなかった。そのころの畳をしいて飲食しながら観劇した劇場の内部は図のごとくで、上流の客は芝居茶屋から行き、茶屋へ一々食事に戻り、この料理が大へん美味。女客は、茶屋へ着替えの衣類を預けた。大衆的な人たちは出方(でかた、たッつけばかまをはいた男の案内人)からじかに入場した。みな午前中に早くはじまり、夕方に終った。ただし午前11時開演だと午後8時頃まで。のちに松竹経営となって一手に本家茶屋ができたが、それも廃止された。中流席の後方には松・竹・梅の区別もあり、また前船という席もあった。→「まえふね」
sibaya
2階の左右のさじきは高級。正面さじきは土間と同じ中流席。その後が大入場(おおいりば)の大衆席、その又後に立見(たちみ一ーと幕見)があった。(鈴木とみ手記)

しばり
〔○○縛り〕金貸しの返却期限。四月(よつき)縛りといえば4カ月を切って貸す金。「二月(ふたつき)縛りで一割」とは期限2カ月、利息1割。
じひき
〔地弾き〕舞踊の伴奏者。地方(じかた)。
しぶいちごしらえ
〔四分一拵え〕銅にその重さの4分の1以上銀をまぜた、日本独自の合金で、朧銀(おぼろぎん)ともいい、暗い茶色の美しい金属。落語「錦明竹(きんめいちく)」中の「お道具七品」のいい立てにもでる。
じふく
〔地幅〕玄関先のタタキまたは土になっているところ。
じぶくる腹を立つこと。「いつまでじぶくれているんだ」
じぶくろ
〔地袋〕床脇にこしらえたちがい棚の下にある小さな袋戸棚(ふくろとだな)。
しぶとい
強情なこと。ガンコなこと。

じぶんてに
〔自分手に〕自分の手で。
じぶんどき
〔時分時〕食事をするのにちょうどいい時間。
「時分になったら御膳でも食べておいでなさい。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)

じぶんみがたつ
〔自分身が立つ〕自分ひとりのからだがたべて行かれる。
しべがたつ
〔蘂が立つ〕袋物(ふくろもの)の革に立っている皺の具合に味のあること。
しま
〔島〕洲崎の廓。一般の花柳界のことも「どのシマも忙しい」という風につかう。花柳界のある土地。
しまいしごと
〔仕舞仕事〕仕事の完成したことをいう。
しまかず
〔島数〕流罪になった数。
しまつかた
〔始末方〕始末。方法。→「かた」
しまつや
〔始末屋〕遊廓で勘定のできない客を引き受け、着物をはいだり、金算段のできそうな家までその家の若い者がついていって解決することを一切代行する店。
じまま
〔自儘〕自分の自由。
しみん
〔四民〕士農工商をいう。
しめし
〔戒示〕意見。いうこと。みせしめ。また「お前がしっかりしないとほかの人にしめしがつかない」という場合にもつかう。
じめんうち
〔地面内〕地所の内。地内(じない)。
しもがた
〔下方〕武士階級が町人の世界をさしてよぶことば。
しもよけのかざりなわ
〔霜除けの飾縄〕霜の害を防ぐため草木に藁(わら)や莚(むしろ)などをかこむが、雪による松の枝折れの予防には黒く染めた縄を張る。すなわち、その縄。
「蛇の目をひろげたように幾条もの縄が」と山本勝太郎「江戸趣味の話」にはある。→「しきまつば」

しもゆば
〔下湯場〕花魁が客とねたあと、洗滌する所。
しゃあつく
心臓の強いこと。ツラの皮のあついこと。しゃあつくばり。いけしゃあしゃあ。

じゃがぬまでへびをとるまでしっている
〔蛇が沼で蛇を捕るまで知っている〕自分のもっている財布の中の金額を暗記しているごとくよく知っているという意味。
「どうしたって蛇が沼で蛇を捕るまで知って居るのだ。すっかり種が上(あが)っているのだ。」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)

じゃがらっぽい
じゃけらっぽい。ジャガタラ(蘭領バタヴィアーー現インドネシア共和国の首府)唐人臭い、西洋臭いという意味。目につくような、派手な、ということになる。邪綺羅(じゃきら)っぽい。またジャガタラっぽいから変ったという説もある。真山青果は「西鶴語彙考証(さいかくごいこうしょう)第一の「好色一代女、一ノ一」で、「邪気乱(じゃけら)つのってたどり行かれし道は」という所をあげて、「着物の模様のぱッと目に立つをいう」と解釈し、さらに青果は、文政時代の方言集「浜荻(はまおぎ)」をも引き、作者の郷里仙台にもこの言葉はかなり近頃までのこっていたと書いている。
「へだての襖(ふすま)をあけて入った人の扮装(なり)はじゃがらっぽい縞の小袖にて、」(三遊亭円朝「真景累ケ淵(しんけいかさねがふち)」)

しゃぎり
〔砂切〕歌舞伎や寄席で、一つの番組が終ったときの後奏楽。それを奏するのを「シャぎる」という。
しゃく
〔癪〕烈しい胃けいれん。または胆嚢炎(たんのうえん)や、肝臓障害などの痛みをもいう。
しゃくきれ
〔尺切れ〕一尺切れくらいの小さい布。
しゃくざいかた
〔借財方〕借財。借金。→「かた」
しゃくとりおんな
〔酌取女〕酌婦。
「『姐さんここのおかみさんですか。』『酌とり女さ。白粉(おしろい)で面(つら)の皮が焼けてる阿婆摺(あばず)れさ。』」(長谷川伸「一本刀土俵入」取手宿安孫子屋の場)

しゃくばや
〔借馬屋〕馬を貸してのらせる店。その家の馬場の中でのる者と、馬を借りて市中をのり廻す者とあり。都内の火除地(ひよけち)に多くあった。→「ひよけち」
しゃぐま
〔赭熊〕赤く染めた白熊(はぐま)の毛に似た髪の毛やちぢれ毛で作った入れ毛をいう。遊女の髪に多い。「赭熊立兵庫」(しゃぐまたてひょうご)
しゃくる
そそのかす。
「どうしたんだ。何か人にしゃくられでもしたのか。」(三遊亭円朝「名人長二」)

じやしき
〔地屋敷〕地面と邸。
しゃじくをながす
〔車軸を流す〕大雨の形容。
じゃじゃちんちん
そのころは珍しかった時計の鳴る音。→「じてんしょう」。
「追々(おいおい)夜がふけてまゐりますと、地主の家の時計がじやじやちんちんと鳴るのは最早十二時でございます。」(三遊亭円朝「英国孝子之伝」)

じゃじゃばる
〔邪々張る〕出しゃばって邪魔をする。
しゃしんきょう
〔写真鏡〕箱の中をのぞくと正面に写真があり、それがレンズの仕掛で拡大されてみえる。
しゃっきんをしちにおいても
〔借金を質に置いても〕どんなひどい工面(くめん)をしても。
しゃっぴてえ
〔しゃっ額〕額(ひたい)を強めていう言葉。しやっつらともいった。
しゃっぷ
しゃっぽ(帽子のフランス語シャポウー
chapeauの日本読み)のなまり。
しゃにかまえる
〔斜に構える〕おつに気取る。おごそかに身構える。剣道で手にしている得物(えもの)をななめにかまえることにはじまる。「しゃに構えやがって、いやな野郎だ」
じゃのみちはへび
〔蛇の道は蛇〕蛇の通路は他の蛇がよく知っているごとく、同類のもののすることは同類のものが一ばんよく知っている。
しゃばっけ
〔婆婆っ気〕世間体を考え、体裁をつくる人。老いて野心のある人もいう。
しゃばっぷさぎ
〔娑婆っ塞ぎ〕いつまでも下らなく生きている人。しゃばッぷさげ。
しゃばりでる
〔しゃばり出る〕しゃしゃり出る。邪魔するように横合(よこあい)から出る。
しゃも
〔軍鶏〕肉食をいやがった余風で、明治中頃まで軍鶏は中流以下の食品、軍鶏屋はのちの馬肉屋級の存在であった。東両国には坊主しゃもが今日ものこっている。
じゃらくらイチャイチャすること。
しゃりき
〔車力〕大八車をひき、荷の運搬を業とする人。
しゃりむり
〔差理無理〕無理にの意を強めた場合。「遮二無二(しゃにむに)」のなまりか。
しゃれもん
〔洒落もん〕意気なやつ。
じゃんこ
〔菊石〕アバタのこと。
しゅ(う)
〔○○衆〕複数の表現よりもむしろ敬意をこめた使い方である方が多い。「芸者衆」「新造衆」「子ども衆」
じゅうあくにん
〔重悪人〕大悪人。
しゅうごくしょ
〔囚獄所〕刑務所。
じゅうそうのしのびがえし
〔銃槍の忍び返し〕軍隊で突撃用に銃の先へつける短剣の払い下げでこしらえた忍び返し。無風流な感じだった。→「しのびがえし」
じゅうにざかぐら
〔十二座神楽〕12の曲目があるお神楽。
じゆうのけん
〔自由の権〕自由にしていられる権利があること。自由権ともいった。
「好い着物を着ようと、どんな真似をしようと、私が自由の権で当り前です。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)

しゅうは
〔秋波〕ながしめ。ウインクのこと。→「あきのなみ・はるのいろ」
じゅうばこよみ
〔重箱読み〕「じゅう(重)ばこ(箱)」のように上の字を音(おん、漢字本来のよみ方)で、下の字を訓(くん、漢字の日本語よみ)でよむよみ方。甲高(こうだか)、古渡(こわたり)、先殿(せんとの)など。合羽(かっぱ)読みともいう。「湯桶(ゆとう)読み」の対。
じゅうはちばん
〔十八番〕天保年度、7代目市川団十郎が市川家代々のヒット作品、「暫(しばらく)」「矢の根」以下18種あつめて、歌舞伎十八番と名づけた。以後、他の人の得意な芸も十八番という。
じゅうや
〔十夜〕陰暦105日から14日まで、浄土宗の寺院で、十昼十夜(じゅっちゅうじゅうや)の法会を行なう。
しゅくゆう
〔祝融〕火災。中国で火をつかさどる神の名が語源で、火事の意味。
しゅっせい
〔出精〕元気をだす。熱心にやる。
じゅっぽうはっぽう
〔十方八方〕諸所方々。
しゅでい
〔朱泥〕中国江蘇省宜興窯(ぎこうがま)に産する黒っぽい赤茶色の陶器。質が緻密で、石器のような質になるまで焼いたもの。多く急須(きゅうす)にもちい、愛知県常滑(とこなめ)、岡山県伊部(いんべ)、三重県四日市にも産する。
じゅはい
〔受杯〕杯をうけること。「受杯したまえ」
しゅふく
〔修復〕修理。修繕。こわれている所を直すこと。のちには「しゅうふく」という。
しゅみだん
〔須弥壇〕寺院の中堂にそなえ、仏像厨子(ずし)を安置する壇。もとは須弥山(しゅみせん)にかたどった。
「さっき来たが人目がある故、須弥壇の下に隠れてゐた。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買」(さんにんきちさくるわのはつがい)巣鴨在吉祥院の場)

じゅみょうのばし
〔寿命延し〕長生きのできるようにたのしみをすること。→「しわのばし」
しゅようはんた
〔主用繁多〕御主人の用が忙しい。
しゅらば
〔修羅場〕講談の合戦のくだりをいう。江戸のなまりで、ヒラバ。張扇の拍子(ひょうし)おもしろく、美文沢山で戦場の光景、勇士のいでたち、名乗りなどを朗々と口演し、戦場の光景をアリアリと写しだす。空板(からいた、前座)の舌をほぐれさせ、地方出身者のなまりを直す基本となるが、同時に老練の真打がやればまた無限の興味がある。ゆえに講談の妙は修羅場にはじまって修羅場におわるといわれている。
しゅらをもやす
〔修羅を燃やす〕ヤキモチをやく。じりじりして怒る。修羅は仏教に説かれている神で、ねたみ、うらみ、うたがい、いかりの妄念。阿修羅。
しゅをうつ
〔朱を点つ〕相手のいうことを直す。
じゅんこう
〔順講〕一中節のみ、おさらいのことを、こうとなえる。
じゅんたつちょう
〔順達帳〕順次に送達する廻状。今日の回覧板。
じゅんようし
〔順養子〕長男がその家を相続できぬため、次男をくり上げし相続人にするのをいう。
しょう
〔妾〕めかけ。二号。
しょう
〔小〕小刀のこと。「大(だい、大刀)」に対する。
しょう
〔性〕品物・人物のたち。「この珊瑚の性はいいかしら」などいう。
しょう
〔生〕生きているよう。そっくりそのままのよう。「○○は××に似ていて生でみるようだ」
しょうえんじ
〔生臙脂〕中国渡来のクッキリと美しい紅色の染料(友禅、更紗染または絵の具用)で、綿に染めてかわかしたものを湯にひたし、その汁をしぼって使用する。
じょうかく
〔定格〕格式を正しく守ること。堅苦しいこと。
じょうがこわい
〔情が強い〕気が強い。感情が烈しい。転じて泪もろい。泣きすぎる。
しょうかん
〔傷寒〕烈しい熱病、今日のチブス。
しょうぎこじり
〔将棋鐺〕将棋の型をした刀の鞘の末端。
じょうきしゃ
〔蒸汽車〕汽車のこと。
jyokisya蒸気車(小林清親筆)
じょうぎら
〔常綺羅〕いつもすばらしい着物をまとっていること。
「上(常)綺羅で光って居るのが流行(はや)るから、」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)

しょうごくがつ
〔正五九月〕正月・5月・9月のこと。今日も正月・5月・9月には、成田不動への参詣が多い。「成田山史」はこの事実に何ら意味付けた説明はしていないで、1年のうちで右の三月が一ばん参詣者の多いときであるとのみ記しているが、正月・5月・9月は忌むべき月で結婚などを禁じ、災厄を祓うために神仏へ詣ったのである。正月が忌むべき月とはまことに奇妙な話ではないか。
じょうさま
〔嬢様〕当時はお嬢さまでなく、嬢さまであった。「うちの嬢が」などという呼び方が落語「おせつ徳三郎」にはのこっている。→「おじょう」
しょうしけん
〔小試験〕臨時試験のこと。本試験のことは大試験(おおしけん)といった。
しょうじびょうぶ
〔障子屏風〕衝立(ついたて)障子のごとく、障子仕立の屏風。
じょうじゅう
〔常住〕しじゅう。ふだん。「常住坐臥、それを忘れない」
じょうじゅうぎのはれぎなし
〔常住着の晴着なし〕いつもいいキモノを着ているくせに、それに手入れをしないで常に汚したまま着ている人。
しょうじんもん
〔精進もん〕魚肉以外の料理。「もん」は「もの」。
しょうつう
〔小通〕小便のこと。
しょうでん
〔聖天〕庄伝ともかく。祭礼囃子の名称。宮庄伝(みやしょうでん)なる囃子も、他にある。
しょうどう
〔正道〕正直。行いの正しい。「正道の者であると榊原様おかかえになり、後には立派な棟梁に、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)
しょうどがない
〔生度がない〕生度は生きている程度。生きているか死んでいるか分からないの意味。
「やいわれのやうな生度のねえ畜生はねえなア。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)

しょうとく
〔生得〕生れながら。
しょうねだま
〔生根玉〕量見。性質。
しょうばいて
〔商売手〕本職。専門家。
じょうふだん
〔常不断〕常日頃(つねひごろ)。常に絶えず。
しょうぶつ
〔正物〕ほんもの。
しょうへい
〔正平〕染料の一種。正平染。
しょうへいがわ
〔正平革〕唐草(からくさ)、獅子、牡丹などの模様と正平661日の文字を柿色地(かきいろじ)に白く染出したなめし皮で、後年はその染め方を応用して、衣服の定紋など速製した。
しょうへいぞめ
〔正平染〕正平革の模様の染め方。
しょうほう
〔商法〕商売。「商法にならない」。幕臣の奉還金(ほうかんきん)で不馴れの商いをして
失敗するものを士族の商法といった。落語「素人鰻(しろとうなぎ)」は士族の商法をえがいた名作。「商法事」は商用、「商法師」はすばやい商売をする人、「商法仲間」は商売なかま、同業者。「商法向き」は商売上。
しょうほうねこ
〔娼法猫〕娼妓(しょうぎ)のようにだれとでも客とねる芸者。みずてん。二枚鑑札。商売を商法といったので、娼と商とをしゃれていった。
じょうまわり
〔定廻り〕八丁堀の同心で専門に市中を見廻っている者。岡っ引同道のときと単独のときとあった。
「お前の悪事が露顕して定廻りへ御下知になり、」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)

しょうみょう
〔称名〕仏の名号(みょうごう)をとなえること。転じて南無阿弥陀仏をとなえる場合にも俗間では称名といった。念仏称名。
しょうめいのうぶげ
〔蟭螟の産毛〕蚊のまつ毛へ巣をくう虫。
「蟭螟の産毛ほどもこめられて(やりこめられて)なるものか。」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)

しようもよう
〔仕様模様〕方法。やり方。「仕様模様もあったろうに」と、ことばを重ねて意を強める場合につかった。
じょうもんく
〔定文句〕きまり文句。→「きまり」
しょうもんにさせる
〔証文にさせる〕遊客が勘定に困ったとき、証文をかいて金は一時そのままにすること。
しょうろ
〔正路〕正しい行状。正常ルート。
「何を隠さう、これまでに遣った金は百でも、正路な金はありやアしねえ。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村大口寮の場)

じょうをさす
〔丈をさす〕長さを計らせること。
じょうをたてる
〔情を立てる〕真心(まごころ)を示す。
しょかい
〔初会〕はじめてある遊女を買ったときをいう。そのときに遊女が客に惚れるのを「初会惚(ぼ)れ」という。「初買惚れしてわしゃはずかしと、ウラ(再会)に来るやら来ないやら」と篠田実の浪曲「紺屋
高尾」にある。→「うら」
しょき
〔書記〕遊女屋の書記は遊女屋の事務をとり、遊女のてがみの代筆もした。
しょくかた
〔職方〕職人。→「かた」
しょくだい
〔食台〕テーブル。
しょぐり
放尿のこと(多く幼児の)。ひょぐりともいう。→「しっちょぐる」

しょけん
〔初見〕初見参。初対面。
じょさい
〔如才〕ぬかり。ておち。「如才ない人」といえば万事によく気のつく、察しのいい人の意となる。また「あなたのことだから、そこは御如才はございますまいが」などと念を押すのに使う。
しょしき
〔諸式〕諸物価。また、日用品。「かう諸式が高くっちゃあ、うっかり嫁にもいけねえのさ。」(小山内薫「息子」)
しょせいばおり
〔書生羽織〕普通より丈長(たけなが)の羽織。
しょちふり
〔処置振り〕態度。進退挙措。
しょて
〔初手〕はじめ。
「断られても為方(しかた)がないが、ナゼ初手から云うては呉れぬ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醍(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)

しょてっぺん
〔初天辺〕一ばん最初。一ばんいいことをもいう。すてッぺん。
しょにん
〔諸人〕多くの人々。
しょにん
意地悪。不愛想。
「『湯から上(あが)ったらの、あのの貝々打(けえけえぶち)をしねえか』『おいら否(いや)』『しょにんな子(がき)だなア。そんなら今度(こんどっ)から、おめえたア遊(あす)ばねエ』」(式亭三馬「浮世風呂」)

しょぼくたない
しょぼしょぼした。よぼよぼした。老衰した。

しょむずかしい
七面倒臭い。小むずかしい。

じょろうこども
〔女郎子供〕遊女の世間見ずであるところからいう。類語「役者子供」
じょろうのせんまいぎしょう
〔女郎の千枚起請〕遊女が起請を1000枚もかく。真実のないことをいう。「女郎の誠と卵の四角、あれば晦日(みそか)に月が出る」の唄があった。→「きしょうもん」
しらをきる
〔しらを切る〕知らないような顔をする。
しらたまじり
〔白質まじり〕杉材の白い部分がまじっているもの。
しらち
〔為埒〕ハッキリした結果。してらちをあけること。処置。始末。「しらちをつける」
しらっこ
〔白っ子〕全身の皮膚の色素が足りないため、皮膚が純白で、髪も白色または黄白色、多くはからだが弱くて若死するものが多い。
しらはり
〔白張〕提灯・傘に字も紋もかいてないもの。
「覚えはねえと白張のシラを切ったるからかさで、」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」永代橋の場)

しらみひも
〔虱紐〕昔は衛生のためノミやシラミの発生しないような薬を入れた細紐を発売していた。
しらりっと
〔白りっと〕カラリと。夜明けの形容。
しりくらいかんのん
〔尻喰い観音〕尻に帆をかけて逃げてしまうこと。アトはどうでもなれと逃げること。
「自己(おのれ)は尻くらい観音にて何処(どこ)をぶらつきゐるやらん。」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)

しりつき
〔尻突〕第三者がしゃべって(悪事を)しらせること。
「『聞込んであることがあるから、一調(ひとしら)べ調べてやらう。』『それぢゃア尻突がありますか。』」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」

しりにめぐすり
〔尻に目薬〕何のききめもないこと。見当ちがいのこと。
しりもみやもこず
〔臀も宮も来ず〕苦情も来ず。
しるこぼし
〔汁翻し〕高瀬舟へ屋根を付けたような形の船。遊覧用の船の一つ。
しるし
〔効〕甲斐。験。効果。ききめ。
「一日逢はねば千日の、思ひにわたしゃ患(わずろ)うて、針や薬の効さへ、泣きの泪に紙濡らし」(清元「忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)ーー三千歳)」

じれつく
じれて腹を立てる。

しろうま
〔白馬〕どぶろくのことを、白馬と呼んだ。大正中頃になくなった盲の落語家柳家小せんの落語集にも白馬の語があり、下谷の佐竹に専門店があり、神楽坂では戦前まで市販していた。
しろおに
〔白鬼〕酌婦。淫売。今日ではパンパン、それも青線にあたろう。白鬼がのちに白首(しろくび)と変った。白粉をつけた鬼という意味。
「誰れ白鬼とは名をつけし、」(樋口一葉「にごりえ」)

しろこくら
〔白小倉〕白の小倉織(木綿糸を織り合わせた博多織の類似品)。
しろねずみ
〔白鼠〕忠実な番頭。転じて「あの白鼠はただの鼠ではない」などともいう。
しろむくでっか
〔白無垢鉄火〕表面は上品に見せていて、じつは破戸漢(ごろつき)。しろむくてっか。
しわのばし
〔皺伸し〕老人の気晴らしの意。
「たまだから皺伸しでもしておいでよ。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)

しん
〔真〕真実。まじめ。
じんあい
〔人愛〕人に好まれる愛嬌。
しんうち
〔真打ち〕講談・落語の中堅以上で、その晩の最後に力演する人。最後に出演するを、真をうつという。真剣にその興行をうつという意味。今日は主任という。→「とり」
しんかい
〔新開〕新しくひらけた町。新開地。
「誰しも新開へ這入(はい)るほどの者で菊の井のお力を知らぬはあるまじ。」(樋口一葉「にごりえ」)

しんかぞく
〔新華族〕大名や公卿(くげ)でなく、単なる武士だったものが、明治維新の勲功で華族になった、その人々をいう。
しんがん
〔心願〕今日は、単に願(がん)という。心に念じた願の意味で、円朝作の禅味ある落語にも盲人の煩悩をテーマとした「心願」があり、初代円左、三世円馬を経て、当代桂文楽の専売となっている。
じんく
〔甚句〕七七七五の歌詞の派手な唄で、角力甚句、品川甚句、日露戦争記念のラッパ甚句は俗曲で、名古屋甚句、米山甚句は民謡からでて都会化した。甚九と昔はかいた。
しんけいびょう
〔神経病〕神経衰弱。ノイローゼ。明治の文明開化時代、幽霊はないという言論が一世を風靡し、すべて神経病(強度の神経衰弱)のゆえであるとした。河竹黙阿弥「木間星箱根鹿笛(このまのほしはこねのしかぶえ)」は神経病がテーマであり、三遊亭円朝「真景累ケ淵(しんけいかきねがふち)」の真景は神経をきかせたもの。
しんこ
〔新子〕新しくでた遊女や私娼をいう。→「こども」
しんざん(もの)
〔新参もの〕きのうきょう来た奉公人。「古参」の対。
しんしょうはたく
〔身上はたく〕のこらず持っている金をつかってしまうこと。
じんじんばしょり
〔じんじん端折〕背縫(せぬい)の裾(すそ)から78寸上をつまんで、帯の結び目へはしょり込むこと。
じんすけ
〔腎助〕多淫な人。やきもちやき。「あいつがじんすけを起している」というと、後者にあたる。
しんせいこう
〔真誠講〕今日の交通公社に似たもので、諸国の旅館とタイアップして道中の便宜をはかる。宿の前には指定旅館である看板がでており、他に浪花講とか一心講とか、いろいろあった。
しんぞ
→「しんぞう」

しんぞう
〔新造〕若い女の総称。20歳前後の嫁入り前をいうこともあれば、新妻をさすこともある。→「としま」。
「お前もいい新造になったねえ」といえば前者、「あすこへいくなあ、娘(処女)か新造か」「どこの新造だ」といえば後者。吉原ではお職女郎(スター級の遊女)につき従って働く遊女をいう。昔は番頭新造、振袖新造などの別があり、それぞれ番新、振新と略称もあった。

しんぞうおち
〔新造落〕遊女が売れなくなり、引き取る客もなく、おばさん(遊女の世話をする女)に転落すること。
しんそこ
〔心底〕ほんとうに。
しんぞしゅう
〔新造衆〕→「しゅ(う)」。「しんぞし」とも発音する。
しんだいかぎり
〔身代限〕破産。
しんたか
〔新高〕新高土間の略。高土間の前列にある席。→「たかどま」「しばや」
しんち
〔新知〕新しくもらえる知行(ちぎょう、禄)。
しんちゅうまき
〔真鍮巻〕仲間(ちゅうげん)の差す真鍮胴輪(どうわ)の木刀から転じて、仲間。→「かん
ばん」
しんてい
〔心底〕量見。本心。胸底。本心がわかったとき「心底見えた」といった。
しんにゅうをかける
〔辵をかける〕一般の場合以上にひどいこと。「あいつにしんにゅうをかけていらあ」
しんぱつ
〔進発〕でかけること。ゆこうゆこうということを「サー進発進発」。
しんばのちょうちん
〔新場の提灯〕日本橋本材木町(江戸橋の南)の魚河岸から、浅草観世音へ奉納した大提灯のこと。
しんびょう
〔神妙〕今日は、神妙(しんみょう)と発音する。
「まづ今日は何事も、言はぬが花の花道をお下りなすつて神妙に、御見物をなさいまし。」(河竹黙阿弥「極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべい)」村山座舞台喧嘩の場)

しんぷく
〔心腹〕心と腹。量見。胸中。
しんぼうにん
〔辛抱人〕あきず怠けずに働く人間。また、道楽をやめ、改心して働く人間をもいう。
しんみち
〔新道〕露地(ろじ)のこと。町中の裏のしずかな横丁。
「表通りに門戸(もんこ)を張ることの出来ぬ平民は大道と大道との間に自(おのずか)ら彼等の棲息(せいそく)に適した露地を作ったのだ。(中略)夏の夕は格子戸の外に裸体で涼む自由があり、冬の夜は置炬燵に隣家の三味線を聞く面白さがある。新聞買はずとも世間の噂は金棒引(かなぼうひき)の女房によって仔細(しさい)に伝へられ、喘息持(ぜんそくもち)の隠居が咳嗽(せき)は頼まざるに夜通し泥棒の用心となる。かくの如く露地は一種云ひがたき生活の悲哀の中(うち)に自(おのずか)ら又深刻なる滑稽の情趣を伴(ともな)はせた小説的世界である。」とある永井荷風の「日和(ひより)下駄」がよく意をつくしている。
「何処ぞ近所の新道へ小粋な家を拵(こしら)へて、こっそり囲っておく心。」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)

じんみらい
〔尽未来〕未来のそのまた未来。
じんみんほご
〔人民保護〕よんで字のごとく、人民の安全を保障するという意味だが、明治初年には「人民保護の警官が」とよくいった。
しんもって
〔真以て〕ほんとうに。心から。
しんわら
〔新藁〕稲の新しいのへ熱湯をかけ、かわかした浅黄いろのを、そのころの女は髪のかざりにかけた。植えつけられるほどの稲がよいそうで、明治の東京下町の夏の風物詩として、これを売りに来る小商人(こあきんど)があった。
「七月五日。朝、雨のざあざあ降る中を、女の子が、『新藁あ新藁あ。』と売って歩く声が、何となく悲しい。」(小山内薫「瓦町にて」)