〔鵜〕底の底まで知りつくしていること。通(つう)なこと。鵜は水深くくぐって魚をとるからである。「あの家のことなら俺は鵜だ」
うかと
〔浮かと〕うっかりと。

うけしょ
〔請書〕うけたまわったことを記して差し出す文書。

うけたまわり
〔承り〕遊女が自分の金で情人をあそばせること。→「みあがり」

うけにん
〔受人・請人〕保証人。身許引受人。

うける
〔受ける〕もらう(バクチ用語)。

うこんのかみなり
〔鬱金の雷〕うこんは黄色ゆえ、黄色い雷でキライというシャレ。

うこんのはちまき
〔鬱金の鉢巻〕黄色い鉢巻で額(ひたい)を廻して巻くゆえ、気(黄)が廻るというシャレ。大阪の花柳界では、永くつかっていた。

うさあねえ
〔嘘はねえ〕ほんとうだ。ちがいない。

うさいかく
〔烏犀角〕黒色の犀の角。子どもの熱さましにつかう。
うさぎ
〔兎〕明治
4年から兎の売買が大流行し、方々に「兎市」まで立って変った毛並の兎は600円に売れるなど、話題をのこし、同6年弊害多く、ついに禁止されたが、それまでつづいた。
「いつか兎で
30円お前に貸した金があるが、」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかながき)ーー高橋お伝」)
うじうじ
優柔不断の形容。にえきらないこと。ハッキリしない人のこと。

うじこはんじょう
〔氏子繁昌〕身内(同志)が賑わうこと。転じて、自分自身が儲かることにもいう。

うしにもうまにもふまれぬ
〔牛にも馬にも踏まれぬ〕孤児がだれからも迫害されず、成長して社会へ出ることをいう。

うしぬすっと
〔牛盗人〕無口でハキハキしない人。

うしみつ
〔丑三つ〕午前
3時。丑の刻(とき)は四分されており、丑一つ(2時)丑二つ(2時半)丑三つ(3時)丑四つ(3時半)。そして寅一つが4時。
うしろかげ
〔後影〕後というにおなじ。後姿。
「見すぼらしげなうしろ影」(近松門左衛門「丹波与作待夜小室節(たんばよさくまつよのこむろぶし)」上の巻・道中双六の段)

うしろまく
〔後幕〕寄席の高座の正面にかけられている花やかな色彩の幕。客から芸人へおくった幕で、昔はこれの多い少ないで人気が分かった。今は改名や真打になった祝いのときだけにおくられる。

うしろみ
〔後身〕後へ身体全体を振り向けること。
「達者で屋敷へお帰んなせえよ」と後見になって此方(こなた)を伸び上って見る。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)

うしろみ
〔後見〕その人の背景になって力を貸すこと。今日では「こうけん」とだけ発音する。

うすがいぶんがわるい
〔簿外聞が悪い〕うすみっともない。少しみっともない。

うすかわ
〔薄皮〕皮の薄い今坂餅。→「いまさかもち」

うずら
〔鶉〕劇場の観客席の名称。舞台へむかって左右の一ばん後(その代り一般席より座席が高くなっている)の席で一つの桝(ます)へ約
4人入れる。
「うづらを取置けとて、都なれぬ書生を芝居茶屋に遺(つかわ)せしに、」(斎藤緑雨「おぼえ帳」)

うそっぺい
〔嘘っペい〕うそ。うそっ八。

うたいこみ
〔うたい込み〕遊女屋その他の色町で、特に目的の女の名をいって遊びにあがること。名ざし。

うたぐちをしめす
〔歌口を湿す〕笛の唇へあてがう孔(あな)の部分を唾液(つばき)でぬらす。
「すすめに随ひ藤の方、涙にしめす歌口も、震(ふる)うて音をぞ、すましける」(並木宗輔他「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」熊谷陣屋の場)

うたぐり
〔疑り〕うたがい。

うだつ
〔梲〕新築で棟上(むねあげ)するときに立てる柱をいう。出世することを「うだつが上がった」。

うたぶくろはいかいぶくろ
〔歌囊俳諧囊〕短歌をつくるセンス、俳詣俳句に遊ぶセンス。囊は、知恵袋の袋。

うちかた
〔内方〕夫。うちのひと。
「うちかたは何でもハアひとりで心配ぶって、みっともねい事はしたくねえが、誰か識者(ものしり)に儀式(ようす)を聞きてえもんだ。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)

うちかぶと
〔内兜〕内幕。その人、その家の何から何まで。「内兜をみすかされた」

うちげいしゃ
〔内芸者〕料理屋、遊女屋にかかえられ、その家に居住の芸者。内ばこ。

うちつけ
〔打つけ〕無遠慮。だしぬけ。露骨。

うちは
〔内端〕控え目。遠慮がち。
うちひも
〔打紐〕二筋以上の糸で組んだ紐。

うちょうてんかい
〔有頂天界〕天高く舞い上がるよう。喜びにワクワクフワフワ夢中になること。有頂天。
「このような若いきれいな別嬪(べっぴん)にもたつかれた事なれば、有頂天界に飛上り、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)

うっさん
〔鬱散〕気晴らし。

うっすらあけ
〔うっすら明け〕やっと夜の明けそめたころ。

うでこき
〔腕こき〕「腕ッこき」ともいう。その道の腕におぼえのある者(職人などの場合に一ばんつかう)。今ならべテランとかエキスパートとかいうところ。

うでまもり
〔腕守〕二の腕につけた腕貫(うでぬき、二の腕にはめて飾りとする環)などに入れた神仏の守り札。

うでをつっぱる
〔腕を突っ張る〕腕力をふるう。

うどたら
〔独活鱈〕ウドと鱈の煮付け。

うなう
〔耘う〕たがやす。
「あるときは畑を耕ひ、庭や表のはき掃除をし、」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)

うなや
おだやか。
「どうせな、家もうなやにやアゆくめえと文吉も心配して居るが、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」

うのう
「打つ」の児童語。

うまがよい
〔馬通い〕馬へ荷を付け商売に行くこと。

うまご
〔午後〕正午(うまのこく)以後を、「ごご」といわず、「うまご」といった。大正末年、京都落語界の老匠桂枝太郎(先代)は「雷の褌(ふんどし)」という落語の中で「明日のうまご三時に夕立がござります」といっていた。

うまにはのってみろひとにはそってみろ
〔馬には乗って見ろ、人には添って見ろ〕何でも人間、一どは体験して見るものだ。

うままつり
〔午祭〕はつ午。

うまや
〔馬屋〕しまつや(始末屋)に同じ。勘定のできない客についていって、支払いをもらう、附馬(つきうま)を専門にする店。

うまれだち
〔産れ立〕生れながらの性質。「この子の性格は産れ立で直らない」などという。

うめあわせ
〔埋合せ〕差引ゼロ。バランスがとれた状態。

うやふや
要領を得ないこと。ウヤムヤ。

うら
〔裏〕「初会(しょかい)」のつぎ。二度目。「裏を返す」という。三度目から馴染(なじみ)になれる。廓のことば。

うらがえり
〔裏帰り〕裏切り。「ひっくり返る」ということばもある。

うらだな
〔裏店〕→「たな」

うらどおしをする
〔間道をする〕本街道以外を通る。

うらばしご
〔裏梯子〕料亭や遊女屋などで(一般の家にもあったが)入り口には大きな梯子段があるが、別に座敷の裏から下へかよう細い梯子があり、それをいった。
「手をたたいて会計なんざ野暮ですよ。いいかい、程のいいところで、お前が裏梯子かなんかから厠(はばかり)へいくふりをして降りてツて、一ツ手で会計をします。」(落語「明烏(あけがらす)」)

うらや
〔うら家〕便所。

うりたおす
〔売り倒す〕売りとばすこと。

ウルコール
「オルゴール」のなまり。

うるしい
「嬉しい」のなまり。

うるしのごとくにかわのごとく
〔漆の如く膠の如く〕男女の情交の余りにも濃やかで離れない姿。

うろうろぶね
〔うろうろ舟〕水上で菓子、酒、くだもの、その他を売る舟。うろうろこいで廻っているところから、いう。

うろっか
うろうろ。

うろん
〔胡乱〕あやしい。身の上の分からないこと。「うろんなものじゃない」とか、「うろんな奴だ」という風につかう。

うわじめ
〔上締〕衣類の上へしめる伊達巻またはその代用。「下締」の対。

うわぞうり
〔上草履〕遊女が遊女屋にいるときに、はいて歩く厚い草履。深夜、廊下を歩くその昔に、悲しい廓情調が感じられ、古川柳には「廊下から秋をおぼえる上草履」。
uwazori上草履
うわて
〔上手〕上流。ただし江戸、東京でただ「うわて」といえば隅田川のそれにきまっている。「船頭さん、船をもう少し上手へやってもらおうか。船もいいが一日中乗っていると、退屈で退屈でならない」などと落語「あくび指南」の隠居もいう。

うわてくんだり
〔上手くんだり〕「うわて」にあった忍び逢い好適の茶屋。水神の八百松、梅若境内の植半など。

うわながし
〔上流し〕家の中にある流し(炊事場)。

うわのり
〔上乗〕荷とともに船へ乗り、それを処理、監督すること。今ではトラックの上乗などにいう。

うわんまえ
〔上ン前〕「上前(うわまえ)」のなまり。着物を重ねたとき、おもてへでる方。

うんしゅう
〔雲州〕金のない人。雲州みかんは種がないからである。

うんじょうじょ
〔運上所〕税関のこと。

うんぜえまんぜえ
大ぜいの意味。雲勢(雲霞の如くという意味で)万勢とかくのであろう。
「君方(きみがた)は大ぜい寄って集(たか)ってうんぜえまんぜえ他人(ひと)の宅へ押込んで何をするんです。」(三遊亭円朝「黄薔薇(こうしょうび)」)

うんてれがん
間が抜けてデレッとだらしのない男。好色でおろかな人。

うんでんばんり
「雲泥万里(うんでいばんり)」のなまり。うんでんばんてん。

うんどう
〔運動〕散歩のこと。
うんぷてんぷ
〔運否天賦〕そのときの運しだいという意味。