もうしかけ

〔申掛け〕いいかけ。いいがかり。
もうしぐち
〔申ロ〕いうこと。
もうろうしゃふ
〔朦朧車夫〕客にいいがかりをつけたり、ひどい高い値段をふっかけたりする人力車夫。もちろん、きまった車宿(くるまやどーー人力車の置き場)に属していない存在で、今日、雲助、朦朧タクシーとよばれる流しの自動車の悪質な運転手に同じ。
もうろくずきん
〔耄碌頭巾〕濃い浅黄の太織(ふとおり)の頭巾で、中流以下の老人が寒さしのぎにかぶったもので、みるからにじじむさい(貧弱な)感じゆえにいう。
もくぎょこう
〔木魚講〕輪姦(りんかん)のこと。念仏講(ねんぶつこう)ともいう。葬式の費用を平常からためておく講中が、葬いのとき首に紐をかけた大木魚を鳴らし、順送りに念仏をいう。その順送りから輪姦の意味になった。単にはらんだことをも木魚の形に見立てていう。
もぐり
免許を得ないでやっている医者や弁護士。セミプロの芸人をもいう。むぐり。
もくろく
〔目録〕金一封。人におくる品物の名をかいた紙。芸道や武道では、一と通り教えつくしたとき門人にその由をかいて渡す紙。また、実物の代りに、まずかりにその品目の名のみを記しておくるもの。
もくろんじ
〔木欒子〕もくげんじのこと。無患樹科(むくろじか)にぞくす中華産の落葉喬木(らくようきょうぼく)。葉は羽のようで、小さい葉はまわりが鋸(のこぎり)のようになっており、花は小さく黄色。多く寺院にうえられ、薪(まき)になるし、種は珠数(じゅず)の玉にもちいる。
もじ
物品や状態をあらわにいわずに、そのことばの頭字につけて感じをやわらげる用法。いわゆる女房ことばの一つで、宮中の官女や将軍家大奥の女中たちの編み出したことばである。鯉は「こもじ」、すしは「すもじ」、髪および添(そえ)髪は「かもじ」、気の毒は「気もじ」、お気の毒さまは「お気もじさま」、お恥ずかしいは「おはもじ」、湯巻(腰巻)および浴衣は「ゆもじ」となる。「もじことば」という。
「おさめ『オヤオヤおしゃもじとは杓子の事でございますよ、オホホホホホ』むす『おさめさん、ほんにかえ。私は又おしゃべりの事かと思ひました。鮨(すし)をすもじ、肴をさもじとお云ひだから、お喋舌(しゃべりい)もおしゃもじでよいがネエ』(略)むす『此湯もじがあんまり熱(あつ)もじだからつい火傷(やけど)もじ』初『アレ又じやうだんをおっしゃるよ、オホホホホホ』ト二人大笑ひに笑ふ。初『チット水をうめませうか』むす『それはお憚(はば)もじだネ』」(式亭三馬「浮世風呂」)
もじっか
モジモジ。「ごろつか」「ぞろつか」のたぐい。
もじりつくぼう
〔錑突棒〕錑は、長柄(ながえ)の先に鉄製のTのような形のものが上下に沢山ついていて、捕物のとき先方の衣類へ引っかけて召し捕る。俗に袖がらみ。突棒は、鉄製で形は撞木(しゅもく)に似たやはりT字型、このTの先に多くの歯があり、やはり長柄で錑とほぼ同じ働きをする。
もじりまわす
グルグル廻すこと。「酔って首をもじり廻した」
もたつく
いちゃつく。もたもたする。
もちおもり
〔持重り〕やや身に余るほど重たいこと。
「そばに居た侍が持重りのするほど金を持ってるので、」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
もちざっペい
〔持ざっぺい〕物持ち。
もちゃすび
「もちあそび(もてあそび)」のなまり。すなわち、おもちゃ。元来「おもちゃ」は「おもちあそび」つまり「おもちゃすび」のつまったことばである。
もっそうめし
〔物相飯〕刑務所でたべさせる飯。
「わっちも堅気の髪結ならお礼を申してお貰ひ申すが、きざなことだが獄中(なか)へも行き物相飯も喰って来た上総無宿の入墨新三だ。」(河竹黙阿弥「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)ーー髪結新三」富吉町新三内の場)
もときにまさるうらきなし
〔元木に勝る末木なし〕幾回取り代えて見ても最初に関係したものにまさるものはない。
もとじめ
〔元締〕親分。
もとすえ
〔本末〕原因と結果。
もとのもくあみ
〔元の杢阿弥〕昔、筒井順昭病死ののち、その子順慶の成人まで、遺言により南都の盲人で音声のよく似た杢阿弥という者を招いて、ほの暗い寝所に置き、順昭病気の体として外来者にみせていたが、順慶の相続年齢に達したとき、はじめて順昭の喪を発表し、杢阿弥は再び元の町人に戻った。これを語源とし、出世したものが再び貧乏人となるをいう。
もとべつに
〔元別に〕元々、改めて。
「元別に証文をしたてえわけぢゃアねえ。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
ものいり
〔物入〕出費。外へ支払う金。「今度の会では随分物入りがした」
ものなり
〔物成〕物価。
「最(い)とど物価(ものなり)の高え吉原ぢゃねえか、五厘で腹のくちくなる食ひ物のあるところはねえやな。」(初代柳家小せん(盲人)の落語「白銅(はくどう)」大正8年版)
ものみだかい
〔物見高い〕見る価値のないものを珍しがって見ることをいう。
ももんじい
猪肉のこと。肉食をいやがった江戸時代には、今日高価な猪の肉も、下等な人たちや「ごろつき」の専用食品であった。
式亭三馬「浮世風呂」の「うんざり鬢(びん)とかいふ、ちうッぱらの中年増(ちゅうどしま)」が「例所(えて)へ行って、ももんぢいで四文二合半(しもんこながら)ときめべい」と生活ぶりをあらわしているが、この「ももんぢい」には「猪鹿の料理屋」と註がふってある(明治元年より57年前の文化8年に刊行)。
もよぎ
〔萌黄〕もえぎ。青と黄との間のいろ。
もらいにん
〔貰人〕物貰い。人の家へものをもらいに来る乞食。人の門(かど)に立つ乞食。
もらいひき
〔貰引〕もらって妓籍(芸者の籍ーー花柳界での存在)を抜くこと。
もりきり
〔盛切〕一ぱいにくむこと。盛切りの水。
もりじお
〔盛塩〕料亭や待合や遊女屋その他客商売の家で、縁起を祝って入口に三角型に塩をもる。玄宗皇帝が牛にのって、連夜、愛妾の所へ行くとき、牛が足をとめた家へその夜は宿る。牛は塩を好むので、愛妾たちが争って塩をわが家の入口へもったのがはじまりだという伝説がある。
モレアン
モールに同じ。緞子(どんす)に似た浮織(うきおり)の織物で、経(たて)は絹糸、横は金糸又は銀糸。金糸のを金モール、銀糸のを銀モールといった。後世の金モール銀モールは、金糸または銀糸のみをよりあわせたもので全く性質を異(こと)にしている。
もろこしで
〔唐土手〕中国産の系統のという意味。手は、種類と解すべきで、もろこし種。
もんがた
〔門形〕門の左右の柱だけあって、屋根のない入口の構え。
もんぎれ
〔門切〕門限。
もんじやき
〔文字焼〕今日のお好み焼。今日のは花街や歓楽街に小意気な一軒をかまえるようになったが、大正震災までは駄菓子屋の店頭、または往来を荷をひいて売り歩いていた。
もんぜんばらい
〔門前払い〕追放。客をことわること。
もんそ
〔門訴〕多くの人数が連れ立ち、領主代官の門前におしかけ自分たちの希望を訴えること。佐倉宗五郎の劇に見られた。今日の大臣や知事、議員に対して行う陳情運動に似ている。
もんどりうつ
とんぼがえりをする。さかさまに投げ飛ばされる。
もんながや
〔門長屋〕表に形ばかりの門がある長屋。
もんにゅう
〔門入〕入門。弟子入り。
もんば
〔紋羽〕地質があらくやわらかく毛の立った一種の綿布(めんぷ)。
もんびのしまい
〔紋日の仕舞い〕物日(ものび)ともいう。五節句、祭その他の遊里の行事当日を紋日といい、その日の遊興費は高価であるし、遊女自身も新しい着物をこしらえ交際費も多分にいるので、ためになる客に一切を負担させ、あそんでもらうをいう。
「廻(めぐ)る紋日や常の日も、新造禿(かむろ)にねだらせて」(新内「若木仇名草(わかぎのあだなぐさ)ーー蘭蝶」)
もんもん
「じいじいもんもん」