〔荷〕包み。荷厄介なこと。きらい。迷惑。
「拙(せつ)はもう割烹店(かっぽうてん)料理店のものなぞは荷でやすな。」(落語「酢豆腐」)
にうりざかや
〔煮売酒屋〕肴、莱(な)、豆などを煮て、酒も飲ませる簡単な飲食店。煮売屋。
にえちゃ
〔熱茶〕非常に熱いお茶。
にかい
〔二階〕遊女屋の2階をいう。一般に遊女屋では正面に大きなはしご段、2階に遊女と客と顔を合わせるひきつけもあれぼ、客がおひけ(寝にゆく)になる部屋もある。それゆえ2階廻しといえば、遊女屋の用事を取りしきるもの。2階をあずかるともいった。2階をとめるといえば、遊女のためにならない客の出入りをことわること。「おはきもの」に同じ。
にかいかた
〔二階方〕劇場の2階の頭で、権威のあった人。
「七口(くち)の頭から詫びをする事になりましたが、この七口と申しますのは西東の頭、大束(おほふだ)の頭、裏木戸の頭、小札場(こふだば)、二階等と申して七人の頭があります。」(伊坂梅雪「五代目菊五郎自伝」)
にくいたかにはえをかえ
〔憎い鷹には餌を飼え〕苦手の人には金や品をおくれ。
にげど
〔遁途〕逃げ道。「あいつは逃げどをうしなった」。にげは。
にごりや
〔濁屋〕濁酒(どぶろく)を売る大衆酒場。
にざいぐはつ
〔二罪倶発〕2つの罪が一しょに発見されるをいった。
にさんのみずだし
〔二三の水出し〕洗面器のようなものに水を入れ、紙切れを相手にとらせて水中へ入れる。一がでれば洗面器のまわりに積んである賞品が取れるが、二と三では駄目。ところがこの紙切れ、すかして見ると一、二、三がわかるので、客は一ばかり買うと、客に取らせる一は明礬(みょうばん)でかいてあるため、水中で一の字が消え、二か三になり、従って客は全くの損となる。その道では、水入れという由。→「やらずのもなか」
にしきたまご
〔錦玉子〕玉子を白味と黄味に分けて裏越しにかけ、味を付けてから蒸籠(せいろう)でむし、形は好みで角にも細長くもして、会席膳にだす。羊かんまたは伊達巻のようにしたもので、口取の前もの(そえもの)、拍子木(2つ揃えるのでひょうしぎ)にした場合は口取にもするし、また塩焼の前にもつかい、鮑(あわび)の塩むしにそえたりする。三色卵は同様の製法で白、黄、それに青海苔で青く着色して、口取につかう。
にしきで
〔錦手〕上絵附(うわえつけ)の磁器(いしやき)。五色の模様をかいたもの。上絵附とは、陶磁器に釉薬(うわぐすり)をつけて焼いた上に、さらに絵をかいて焼くこと。
にしさじき
〔西桟敷〕舞台へむかって西側の2階の上等な観客席。→「しばや」
にじゅうござ
〔二十五座〕25曲の種類がある里神楽で、東京界隈に多い。いわゆる馬鹿囃子、葛西(かさい)囃子など。
にじゅうさんや
〔廿三夜〕同夜の月を賞する風習は地方に多く、江戸では陰暦726日の月に興じて、廿六夜待と称え、「高きに登り、又は海川の辺酒楼(しゅろう、料亭)等において、月の出を待つ、左に記せる地は分(わけ)て群衆する事夥(おびただ)しく、宵より賑へり」と「東都歳事記」(天保9年刊)はつたえ、高輪、品川、築地、洲崎、湯島天神、九段坂、日暮里諏訪神社、目白不動尊などをあげている。庶民の生活にも「詩」の織り込まれていたことがうなずかれる。
にす
にぶい腕のこと。
「汝(うぬ)が腕の薄弱(にす)な所為(せい)だと言ひなさるか知らねえが、」(小栗風葉「恋慕流(れんぼなが)し」)
にたき
〔煮焚〕おかずごしらえ、御飯ごしらえ。
にたやま
〔仁田山〕まがいもの。仁田山という紬(つむぎ)に似て非なものが、明治時代にあった。
にたりぶね
〔荷足船〕下部は荷船に似て、上部は関船(せきぶね)に似ている小船。河川の運送や渡船などに使用し、漁船遊船にも用いられる。「高瀬船」「五大力」の類。
につき
〔荷付〕親がついて来ること。
にっきんぞうり
〔日勤草履〕毎日やたらにはいた草履。
にっこうおろし
〔日光颪〕日光男体(なんたい)山から吹き下ろす風。男体(なんたい)颪。
にっちもさっちも
〔二進も三進も〕どうすることもできないこと。進むも退くもならないこと。「二進も三進もいかねえ」
にどぞえ
〔二度添〕後妻。
にのまち
2回目の酉(とり)の町(二の酉)の略。美人でない女。一の酉にうれのこった熊手のおかめの意味。
にはちそば
〔二八蕎麦〕→「よそばうり」
にばん
〔二番〕二番煎じ(ふたたび煎じた分)。
にまいめ
〔二枚目〕第2位。色男のことをいう。劇場の看板の右から2番目に名前を書かれる役者のことで、多く恋愛を演じる美貌の役者だったところから一般に色事師(いろごとし)・濡事師(ぬれごとし)・和事師(わごとし)のことをいうようになった。→「つっころばし」。また遊女の位置にも使った。お職(ナンバー・ワン)のつぎの遊女、すなわち助六の芝居の揚巻に対する白玉などのことである。
にやす
なぐる。どやす。
にやっけえし
〔煮焼返し〕食物を煮たり焼いたりし直すこと。
にょい
〔如意〕説法や論義のとき仏家でたずさえるもの。骨、角、竹、木などにて雲の形のものを製し、これに1尺から3尺までの柄(え)を付けたもの。雲形は、仏徒は心という字を篆書の書きようで表現したという。
にょうぼうづくり
〔女房づくり〕女房でない女が女房らしい姿や態度をすること。
にょぼん
〔女犯〕

昔、肉食妻帯を許されなかったころ、僧侶がおかす色情の罪。にょはん。
にらみめ
〔白眼目〕白目を大きくだしてにらむ目付き。下三白眼(かさんぱくがん)。

「どうも白眼目が一通りでない。己(おれ)は気になって成らぬから、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
にをかきいれる
〔荷を書入れる〕責任を持つことをてがみにかく。
にんき
〔人気〕芸能人などの社会的に評判が高い意味のほかに、人柄(ひとがら)、住んでいる人たちの空気という意味もある。じんき。
「もっとも昔は人気が悪いから荒れて居りました。」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)
にんじんのしらあえ
〔人参の白和え〕赤い顔の女が、濃く白粉を塗ってはげたのをいう。