ないぎき
〔内聞〕改まらずに内々(ないない)に聞く。

ないきゃく
〔内客〕秘密の客。

ないげんかん
〔内玄関〕家庭内の人が出入するために表玄関のほかにこしらえた玄関。うちげんかん。
ないしょ
〔内所〕吉原の廓で遊女屋の主人のいる部屋。品川ではお部屋といったという。御内所(ごないしょ)。
ないふく
〔内福〕うちわの生活が楽なこと。生活が豊かなこと。有福。
ないぶんざた
〔内聞沙汰〕うちわの話。内々での解決。内済(ないさい)。
なうて
〔名うて〕名題。有名。

なか
○○など。○○なんか。「等(なか)いいまして」
なかあい
〔交情〕間柄(あいだがら)。
なかいりまえ
〔中入前〕寄席で3分の2の演芸がすむと、中入り(休憩)をする。その少し前をいう。中入前にでられる芸人は相当な所で、若手ならホープ。
なかうり
〔中売り〕劇場や寄席の場内で菓子その他を売りに来る人。「甘納豆はよしかな、ラムネはよしかな」といって歩いた。
ながき
〔名書〕落款(らっかん)。署名。サイン。
なかご
〔中子〕刀の身の柄(つか)に入った部分で、ここに銘が打たれている。
なかじきり
〔中仕切〕部屋と部屋の間を区切ってある障子やふすま。
ながじけ
〔中時化〕雨つづき。
なかじく
〔中軸〕芝居の看板や寄席の出演者の名をかいたびら(ポスター)などのまん中にある名のことをいう。書出し (右端)とおさえ(左端)と中軸(中央)とにかかれるのが、最も大家や花形なのである。
ながしら
〔名頭〕源(げん)・平(ペい)・藤(とう、藤原)・橘(きつ)にはじまって、いろいろさまざまの氏名をならべてある、子供たちに教える手本。
ながす
〔流す〕遊里で翌日も帰らず、いつづけること。
ながそで
〔長袖〕武事に参与せず長袖の衣服を着した医師、神主、僧侶、画家をいう。
ながぢょうちん
〔長提灯〕弓張(ゆみはり)提灯。
ながつぼね
〔長局〕殿中で局(つぼね、しきりをへだててもうけた、つとめている女たちの部屋)のながくつづいているところ。
なかどこ
〔中床〕床屋の職人で親方の次位にある若い衆。
なかどん
〔仲どん〕女部屋の若い衆。
なかなかもって
〔中々もって〕どうつかまつりまして。どういたしまして。
なかにわ
〔中庭〕家の中の室と室との間にある庭で、昔は料亭や遊女屋ばかりでなく、町中の普通の家にもあった。
「研出(とぎだ)した様な月は中庭の赤松の梢(こずえ)を屋根から廊下へ投げて居る。」(広津柳浪「今戸心中」)
なかぬき
〔中抜〕藁草履(わらぞうり)。
なかのちょうばり
〔仲の町張り〕吉原仲の町切っての。
ながばこ
〔長箱〕つなぎ棹(ざお)でなく、三味線全体をそのまましまえる箱。
なかばたらき
〔中働〕奥と勝手(台所)との間の雑用を働く女中。「下働き」に対するいい方。
ながもちのふた
〔長持の蓋〕こっちがあいて向うがあかないこと。長持の蓋は長くて重いからそういうことがあった。
ながもの
〔長もの〕長脇差。
ながよじょう
〔長四畳〕横一列に畳の4枚並べて敷いた部屋、所謂座敷でなく、実用本位に道具の置いてある部屋に多い。
なから
〔恰ら〕さながら。
「お前様の顔を一日みねえとは、恰ら百日も見ねえやうで、」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)
ながれ
〔流れ〕不用品。質流れの品。
「奥蔵(おくぐら)の左の方に積んである模様物の流れの口を目を通したいから、一寸一しょに来ておくれ。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
ながれのしち
〔流れの質〕質流れの品。
なかをとる
〔仲裁を取る〕間へ入る。仲裁する。
なぎなたぞうり
〔薙刀草履〕カカトがすり切れて薙刀の刃のような形になっている草履。
なきをかける
〔泣きを掛ける〕泣かせる。苦しませる。他に、催涙戦(さいるいせん)に出る、という場合にも、いう。
「女房が死んで一周忌もたたねえうち、女郎を買って子供に泣きを掛けるやうな、」(三遊亭円朝「敵討札所霊験(かたきうちふだしょのれいけん)」)
なぐれる
道楽者になる。売れのこった品、のこと。
なげこみ
〔投込み〕投込寺(かねてもうけてある大穴へ死骸を投込むことを許した寺)から転じて、葬礼も何もしないでわずかの銭で埋葬だけすることをいう。
なさけらしい
〔情らしい〕人情がありそう。親切そう。
なざし
〔名指し〕売女などの場合、客が特に誰某を買度(かいた)いと指名して登楼するをいう。今日では、女給、ダンサーにもつかうが、ただし「御指名」という無風流ないい方になっている。「鈴木主水」のご瞽女(ごぜ)唄に「我も我もと名指しであがる」。
なしじ
〔梨地〕金銀の粉を散らした蒔絵(まきえ)の一種。梨の実の肌に見立てての「となえ」であるが、その蒔絵を連想させるよう、夜空に火事の火の子のちらばっているのを形容する場合にもいう。
なだかのほねだか
〔名高の骨高〕きいているほどの値打ちのないもの。
なだれくだりに
〔なだれ下りに〕傾斜の地を下って。
なだれぐちした
〔雪崩口下〕傾斜している。山坂のとばくち。
なだれした
〔なだれ下〕なぞえ(傾斜)な坂になっているその下の方。
なつけ
〔夏気〕夏に同じ。
なってえ
何でえ。
「なツてえなツてえ(中略)一人二人の色があったってなんでえ、男の働きで当前(あたりめえ)だ。」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
なつばおり
〔夏羽織〕いてもいないでもいい人のこと。
なっぱのこやし
〔菜っ葉の肥し〕菜(な)の肥料は根にやらないでかけるから、かけ肥(ごい)ーー掛け声のシャレで、掛け声だけで実行のできない人。

なつもこそで
〔夏も小袖〕小袖は冬の着物であるが、貰えるものなら夏も貰おう。即ち、無代で入手するのなら、どんな不急不用品も貰うの意味。同じ意味で「冬も帷子(かたびら)」ともいう。
ななこ
〔魚子〕斜子ともかく。金彫の技法で、粟粒を並べたように細い粒を凸起(とっき)させ、先端を鑿(のみ)で打ったもの。
ななつさがり
〔七つ下り〕古いよごれたきもの。七つ(午後4時)下り(日暮れ以後)でないとみっともなくて着られないか
らいった。
なぬか
〔七日〕初七日、なのかでなく、なぬかである。江戸のなまり。
なべしまだんつう
〔鍋島緞通〕鍋島藩の領土、佐賀県下に産する絨毯(じゅうたん、絨毯は、敷物や壁掛などにつかう毛を主体とする交織(まぜおり)物)。
なまえい
〔生酔〕微醺(びくん)。少し酔っている状態。「生酔本性(ほんしょう)たがわず」
なまえにん
〔名前人〕戸主。
なまえもく
〔名前目・名号〕名前のこと。こういうと意味が強くきこえる。
「これ、己(おれ)の名号(なめえもく)をきいてきもツ玉を天上(てんじょう)に飛ばすな。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
なまぎき
〔生利〕生意気。生じ。半可通。未成熟。
なまこ
〔海鼠〕有松絞(ありまつしぼり)をもっと細かくしぼったもの。布がなまこのような形をしているので、いう。「藤むらさきのなまこ」
なまざいかく
〔生才覚〕生じの知恵。猿知恵。
なまなか
なまじ。
「この家の留守を預って、女の役の針仕事、勤着替(つとめぎかえ)の裾直(すそなおし)、楽すぎるだけ生なかに、」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
なまりほうげん
〔訛方言〕なまりのこと。昔は重ねて強くこういった。
なまわかい
〔生若い〕まだ一人前になっていない。

なみぎり
〔浪ぎり〕浪しぶき。
なみよけぐい
〔浪除杭〕烈しく浪の打ち寄せるを緩和するため、岸近くの水中へ立てた棒杭。震災前の東両国百本杭(ひゃっぱんぐい)もその一つ。河竹黙阿弥作の世話狂言「小袖曾我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)ーー十六夜清心(いざよいせいしん)」稲瀬川百本坑の場、「三人吉三廓初買」(さんにんきちさくるわのはつがい)大川端庚申塚の場では舞台中央に立っている。
なやばき
〔納屋穿き〕物置へものの出し入れに行くときのための履物、おもに草履。
ならうちわ
〔奈良団扇〕奈良市で産する風流な団扇。春日神社につかえる人の創案で、判じ物の絵(わざと奇妙な絵をかいておき、何であるかを当てさせる)がかいてある。
なりたけ
〔成たけ〕じつに。
なるみのようろう
〔鳴海の養老〕愛知県鳴海産の養老しぼりの意味。縦(たて)ヒダをつくって染め、縦の線の模様をあらわした杢目絞(もくめしぼり)が、養老絞である。
なわつき
〔縄付〕しばられること。「うちから縄付を出したくないから」
なわぬけ
〔縄脱〕脱獄囚。
なわめのほだし
〔縄目の絆〕縄でしばられ、手伽(てかせ)をはめられていること。
「落す涙を隠さうにも身はままならぬ縄目の絆。」(三遊亭円朝「後開榛名梅香(おくれざきはるなのうめがか)ーー安中草三郎」)
なんきんさん
〔南京さん〕中国人。
なんたら
〔何たら〕何という。「なんたら事」「なんたら愚痴(ぐち)」
なんどりと
じっくりと。事を分けて。
なんぴ
〔難批〕わるいところを批評する。「難批をいう」
なんぶ
〔南部〕南部(岩手県)産の紬(つむぎ)織物。